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京都旅行~3日目~

 3日目、旅行の最終日は綺麗な青空が広がりました。まずはホテルをチェックアウトし、京都駅のロッカーに荷物を預け、『華陽』さんへ着物と簪を返しに行きました。


 その後、出町柳駅へ。ここから、叡山電鉄へ乗り換え、鞍馬山へ登ります。


 あ、その前に、出町柳といったら『ふたば』さんです。豆大福が美味しくて、いつも行列が出来ているのですが、さすがに早朝だけあってお客さんも少なく、直ぐに購入することが出来ました。


 電車の中で、朝食代わりに、豆大福と一緒に買ったお団子を食べました。好きな時間に好きな場所で、好きなご飯を食べられるというのは、旅行の醍醐味の一つですね。


 鞍馬山へ行くには2つのルートがあります。終点の鞍馬駅で降りて、階段やケーブルカーを使う方法。もう1つは手前の貴船口駅で降りて、山道を登る方法です。


 則子さんと美和さんは、山道を登りました。最初は、雪が積もっているので変更しようか検討しましたが、ハイキング程度の山道だし、雪も降っていないので大丈夫だろうってことで決行しました。


 貴船口駅からはアスファルトの車道を歩きます。同じ電車で乗って来た年配の男性と一緒に歩きました。その男性は何度も鞍馬に登っているとか。


 しばらく歩くうち、ようやく登山口に到着しましたが、鞍馬山を登る前に、近くにある貴船神社へ参拝。男性とは、そこでお別れしました。


 貴船神社は手前に本宮、次が結社、一番奥に奥宮があります。本宮は社務所などあり、巫女さんがお守りやお札などを売っています。本殿に参拝した後、水占いをやってみました。


 水占いとは、一見、何も書いていない紙ですが、池に浮かべると御神籤おみくじが浮かび上がってくるのです。美和さんは中吉、則子さんは大吉でした。2人でお互いの御神籤を読み合うと、則子さんの御神籤には、こんな一文が。


『恋愛:そのまま進んでよし』


「誰か好きな人でもいるの?」

「え~?誰もいるはずないじゃない!」


 実は、則子さん。ネットのお見合いに登録した話を誰にもしていませんでした。もちろん、美和さんにも。不思議そうに尋ねる美和さんに、則子さんは笑って首を振りました。


 その後は、結社と奥宮も参拝することに。結社と奥宮は人が常駐しておらず、特に奥宮の参道は、朝から誰も訪れていない様子です。しかも、どう見ても膝丈ほどの雪が積もっています。


「鳥居の脇から入れば、それほど濡れないんじゃない?」

「でも、参道を通るのが筋だし、誰も歩いてない道を歩くのって面白くない?」

「じゃあ、則子さんが先に歩いてね」


 余計なことを言ったな、と思いつつ、則子さんが先頭を歩きましたが、雪は思いのほか深く、そして柔らかだったので、則子さんの足跡を踏んでいた美和さんも、結局、膝から下は雪まみれになりました。


 境内ではアフロ犬のように、頭に雪をこんもり積もらせた狛犬が出迎えてくれました。


 参拝後は、貴船川沿いのアスファルトの道を下るのですが、道と川の境には料亭というか、川床料理のお店が軒を連ねています。たぶん、お店の方も気を配ったのだと思うのですが、お湯がまかれて雪が溶けていました。


 しかし、溶けた水分が凍ってツルツルになり、滑ること滑ること。行きは上りだったため、それほど苦痛に思わなかったのですが、下りは滑りそうになるたび、腰がグキッといきそうで、ちまちま歩いていたら上りの倍は時間がかかりました。


 そんなこんなで、ようやく鞍馬山の登山口へ戻ると、別れたはずの男性がコーヒーを飲んでいましたが、私たちの姿を認めると、さっと手を上げ、山を登っていきました。


 一瞬、ストーカーかな、と思ったのですが、後から考えると、人気の少ない貴船神社を参拝した則子さんたちを心配して待っていてくれたようでした。良い人だね、と頷き合うと同時に、疑ってすみませんと2人で反省しました。


 旅先は、ちょっとした親切が身に沁みます。


 神社と同じく、いえ、それ以上に訪れる人の少ない鞍馬山は、どこもかしこも雪だらけでした。足元の雪はもちろん、木の上に積もった雪もドサドサーッと落ちてくるので気が抜けません。牛若丸が剣の修行をしたとされる木の根道なんて、雪に埋もれて存在すら分かりませんでした。


 そんなこんなで、あっちこっち寄り道しながら山頂にある鞍馬寺の背後から正面の拝殿へ出ました。がさがさ、雪まみれの2人組みが突然、姿を現し、参拝していたカップルを驚かせてしまいました。


 前述の鞍馬駅から進むルートは、山道ではありません。それどころか、階段、もしくはケーブルカーがあるので普段着で参拝できます。それに比べ、則子さんたちはトレッキングブーツに雪まみれ、汗まみれのボロボロな姿。


 貴船から登る道を知らなければ驚くというか、知っていても、雪道を登ったのかと驚かれて当然かもしれません。(笑)


 則子さんたちも、ちょっと恥ずかしくて、そそくさと参拝を済ませ、今度は鞍馬駅へ向かって階段を下りていきました。


 下りきった所に、牡丹鍋のお店、『雍州路』さんがあり、そこで牡丹鍋コースとビールで疲れを癒しました。牡丹鍋といっても、全然臭みなどなく、とても美味しかったです。


 お腹が一杯になった後は、鞍馬温泉まで歩いて、露天風呂につかりました。


 温泉に入っていると、ちらちら雪が降ってきました。雪を見ながら熱い温泉につかるのは、なかなか贅沢な気分です。ハイキングの疲れも一気に癒されました。


 こうして、則子さんと美和さんの短い旅は幕を閉じました。則子さんの胸に、「このまま進んでよし」という言葉を残して。


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