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再出発へ!

 その後、会社の方も違約金は脅しだったのか、あっさりと手を引き、徹さんは店を手放しました。まあ、本当はあっさりじゃなくて、二転三転したのですが、それでも、2012年1月にはクリーニング店から開放されたのでした。


 徹さんは、貯金を崩して、運転免許を取り直しました。同時に、徹さんと則子さんが出会った頃から、いつか実行したいね!と思っていた田舎暮らしに向けて始動することになりました。


「田舎で暮らしたいね」

「いいよね。どこで暮らしたい?」


 そんな、いつもの会話の後、徹さんは、突然、言い出しました。


「串本町が良い!」

「え?どこ、そこ?」


 徹さんは、台風が来るたび、ニュースで合羽を着たアナウンサーが、「凄い風です!今にも吹き飛ばされそうです!」と実況している姿を見ていたそうで、その実況場所が和歌山県串本町だと言うのです。


 早速、則子さんがネットで調べると、串本町は本州最南端の町だとか。マグロの養殖やダイビング、釣りやマリンスポーツで盛んな観光地らしいのです。


 しかしながら2人とも和歌山県に行ったことがありませんでした。とりあえず、行かなければ話になりません。則子さんの仕事の休みを利用しながら、串本町と那智勝浦町、古座町などを見て回りました。


 その他にも、あちこち資料を取り寄せたり、東京で和歌山県へアイターンした人たちの講演会などにも参加しました。


 そして、とうとう2013年3月から、那智勝浦町にある山村に移住することに決めたのです。


 その村は、駅から車で1時間ほど進んだところで、上下水道がありません。川から管で水を引き、燃料は灯油かプロパン。中には、江戸時代からある建物に住んでいて、未だに竃と五右衛門風呂を使っているというツワモノも住んでいます。


 段々畑に田んぼや畑、ブルーベリー、お茶など栽培し、全部が無農薬。専業農家は少ないけれど、みんな自分の家で食べる分は自分で栽培している自給自足の村です。


 徹さんは、かつてバイク修理をしていたので、農機具の修理が出来ないか模索中です。則子さんは、料理の腕を生かして、自作した作物や他の農家さんたちの収穫物で加工品を作り、農協や道の駅、ネットなどで販売するのが夢です。


 今、則子さんと徹さんは、引越しの手続きでてんやわんやな毎日です。でも、夢に向かって進むのだと思うと大変だけれど、嬉しさがこみ上げてくるのでした。


 とりあえず、則子さんと徹さんの話はここまでです。落ち着いたら続きを書きたいと思います。




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