サラ金
ちょうどその頃、則子さんは気になるハガキを見つけました。徹さん宛てに、CMで有名な某サラ金から中身が見えないよう圧着ハガキが送られてきていたのです。
「徹さんの郵便物を整理してたら、サラ金からハガキが来てるんだけど?」
「ええ~?ああ、そのサラ金なら大昔、元カノに頼まれてカードを作ったけど、すぐに解約したよ」
「そうなの?でも気になるから、あとで開けてもらって良い?」
「まあ、いいけど」
その晩、夕食を食べた後、則子さんは徹さんにハガキを渡しました。
「なんだ?!これ!!」
絶叫した後、徹さんは黙り込んでしまいました。則子さんは嫌な予感がして、ハガキを覗き見ると、そこには返済のお願いとして、利子が利子を呼んで600万円近い金額が書き込まれていました。
「13年くらい前に借りてるみたいだよ」
「くそ!元カノのヤツだ!カードを作るだけって言ってたのに、勝手に使いやがった!」
「っていうか、解約した時、確認しなかったの?!」
「……してない。あいつと別れた時、腹立ってたし、使われているとは思わなかった」
違約金と合わせると、1800万円になります。中古ならマンションが買える値段です。
「もういい。自己破産すれば一緒だし」
「う~ん。それよりさ、弁護士会で無料相談やってるから、一度、相談してみれば?」
則子さんは仕事柄、色々な電話番号や相談所を知っています。各地の弁護士会で、無料の債務相談をしているのも知っていました。そこで、インターネットで探すと、日本司法センター、いわゆる法テラスの相談窓口がありました。
これは国が設立した公的な法人で、法律相談までは無料で受けられ、必要とあれば弁護士や司法書士の紹介、費用の立替をしてくれるのです。
徹さんに電話番号を教えました。翌日、サラ金だけでなく、クリーニング店の規約も合わせて相談したところ、書類を見たいので、上野の相談所に来て相談しましょうと言われたそうです。
仕事をしながら帰宅して徹さんを待つ間、則子さんは心配でしたが、事態は思わぬ方向に転がりました。
いわく、どちらも支払い義務が生じないとのこと。
規約はあくまでクリーニング店が作った規約に過ぎず、法的効力は何もないのだとか。相手が1,200万円払えと言っているのは、単純に徹さんを脅しているだけで、払わなかったところで規約を元に裁判なんて起こせないとのこと。
そして、サラ金にいたっては、10年以上もの間、裁判を起こすなり、差し押さえするなり、行動に出なかったこと、徹さんも連絡を取っていなかったことから、サラ金側が請求権を放棄したとみなされるとのこと。今後も、払ってもらえたら儲けモノ的な意味でハガキは届くだろうけれど、強制力はないそうです。
恐らく、解約して直ぐ、徹さんが大事故に遭い、入院・リハビリの上、貯金はなくなるわ、仕事もなくなるわで先方も請求できなかったようです。
なんてまあ、徹さんは悪運強いことか!
そんなこんなで、とりあえず借金地獄がなくなった徹さんと則子さんでした。やれやれ。




