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閑話休題~京都旅行~

 京都へは2泊3日で、会社の同僚、美和みわさんと行きました。新幹線で京都駅を降り立つと、雪がちらちら舞っています。


 風情があるね、なんてのん気なことを言いながら、2人は知恩院へと向かいました。後で大変なことになるとも知らずに。


 知恩院は、浄土宗総本山です。お参りと兼ねて、お寺の一室で精進料理を頂くのです。


「予約した者ですが」


 入り口で告げると、紅い緋毛氈の敷いた廊下を通って奥の部屋へと案内されます。静かな中庭に面した部屋で、昼食の乗った膳が用意されていました。懐石のお弁当といった趣です。


 2人で美味しいね、と言いながら頂き、お寺の人は誰もいなかったので、中庭や部屋の中をちょっぴり探検して楽しみました。お寺の中というのは、こんな機会でもなければ入れませんから。


 十分に堪能した後、部屋を辞去し、知恩院の奥にある濡髪大明神をお参りしました。濡髪大明神というのは、縁結びの神様として知られていますが、元々は知恩院に住んでいた白狐が御影堂建造の際、住処を追われたため、哀れに思った霊巖上人が狐の住処として作った神社です。


 拝殿の後ろを見ると、白狐が出入りしていたという穴が開いているのです。そして、そのお礼として白狐が置いていった傘。その傘は今も御影堂の軒裏にあります。


 以前、何かでその話を読んで以来、行ってみたかった神社です。穴には金網が張ってありましたが、拝殿の正面ではなく、裏の穴から出入りする白狐様を想像すると失礼ながら、可愛いなぁと笑みがこぼれてしまいました。


 さて、お参りも済ませ、白狐様の忘れた傘も見て、そろそろ次の観光地へと思っていたら、御影堂の大改修にともなう資金集めのため、普段は登れない三門楼上が公開されていたのです。


 三門とは、国宝に指定されている木造の大きな門のことで、階段を登っていくと、門扉の上に広いスペースがあり、釈迦牟尼仏像や十六羅漢像などが安置されているのです。


 雪がちらちら舞って寒いけれど、戸がいっぱいに開かれており、京都の整然とした町並みが見下ろせました。ちょうど交代で入ってきたお坊さんの説明も聞けたし、外の眺めも最高でした。


 でも一番興味を惹かれたのは、柱や壁など至る所に墨で名前や住所が書かれていることでした。


 恐らく、明治時代や江戸時代、もしかすると、もっともっと昔の人たちかもしれません。観光か参拝で登って記念に書き記したのでしょう。読める字もあったし、読めない字もあったので、あくまで憶測ですが、でも山門のいたる所に書かれていたので偉い人の書などではないはず。


 美和さんと2人で読める字を探しながら、今も昔も変わらないんだなぁと思ったら妙に感慨深いものがありました。


 知恩院を後にした則子さんたちは、八坂神社を抜けて祇園へと向かいます。祇園といえば『徳屋』のわらび餅。あ、この旅行は、食べ歩きに特化していると言っても過言ではありません。則子さんも美和さんも食いしん坊なので、その辺はご容赦ください。


 『徳屋』のわらび餅はとろとろで、そりゃもう素晴らしいの一言に尽きるのですが、大抵は行列が出来ています。今回も長蛇の列だったら諦めようと思い、ひょいっと通りを覗いたら人っ子一人いません。


 もしや臨時休業?!などと考え、恐る恐る戸を開けると、ちらほら客の姿があり、入り口から直ぐの所に空席がありました。直ぐさま、席へと滑り込み、わらび餅を注文。


 氷の上に乗ったわらび餅が運ばれてきたかと思うと、美味しくてつるつる食べてしまいました。あっという間になくなってしまいましたが、直ぐに店を出るのも勿体無いので、焼き餅を追加で注文しました。電気の七輪が運ばれ、自分でお餅を焼いて食べるのです。醤油、黄な粉、わらび餅で残った黒蜜をつけ、美味しくいただきました。


 さて、次なる食べ歩きは、あぶり餅を食べに、今宮神社へ。今宮神社は、参道を挟んで『一和』と『かざりや』2軒のあぶり餅屋さんがあります。『一和』は創業千年で、お婆さんの作るあぶり餅が絶品なんだとか。一方の『かざりや』は創業400年。


 則子さんと美和さんは、不思議に思っていました。どうして同じ店が2軒建っていて商売が成り立つのか、と。


 百聞は一見にしかず。食べてみたら謎が解けました。則子さんたちが訪れた時、既に『一和』のお婆さんは引退し、お嫁さんが跡を継いでいたのです。


 お嫁さんが作るあぶり餅は、黄な粉餅に白味噌のタレをまぶした味で、いたって普通でした。一方、『かざりや』は、お婆さんとお嫁さんの間くらいの年齢の女性が、あぶり餅を作っていました。


 同じ材料を使っているはずなのに、『かざりや』のあぶり餅は微妙に配分が違うのか、黄な粉餅というより上品な和菓子を食べているようでした。


 1軒が世代交代して味が落ちても、もう1軒が熟練した味を作る。意図したかどうか分かりませんが、400年もの間、ずうっとお互いを切磋琢磨してきたのでしょう。それは、個人の技ではなく、何十年も、毎日、毎日、あぶり餅を作り続けることで磨かれる技。


 温かいお茶を頂きながら、則子さんと美和さんは凄いねぇと頷きあったのでした。


 それから、伏見にある稲荷大社へ向かいました。その日は、ちょうど初午祭りでしたが、着いたのは既に夕暮れで、門前で出店していた屋台は片付けの最中でした。


 しかし、則子さんたちの目当ては、別にあります。神社の表参道に並んだお店の一軒へ入ります。


「スズメの丸焼きとビール!」


 まだ食うのかと言われそうですが、稲荷大社へ参拝するのであれば、スズメの丸焼きは欠かせないアイテムです。文字通り、頭から丸ごとなので、見た目ちょっとグロいですが、骨も丸ごと食べられます。カリカリとした歯ごたえが美味です。機会があればお試しください。


 さて、ほろ酔い気分になった則子さんたちは、そのまま神社へお参りに。初午祭りは、大手の会社や芸能人、ことに歌舞伎役者などが奉納した品々がガラスケースに入って展示されています。


 知った名前を見つけながら、誰が何を奉納したのか見るのは、意外に面白く、あっという間に時間が経ってしまいました。


 その後、本殿を参拝し、奥へ進むとCMなどでお馴染みのずらりと並んだ千本鳥居があります。そこを抜けると、稲荷山があり、鳥居が並んだ階段を登って山中に祭られている神社巡りが出来るのです。


 既にとっぷりと日が暮れ、夜の帳がおりていました。夕暮れ時に騒いでいたカラスたちも寝付いたのか、しんと静まり返っています。


 そんな場所を鳥居をくぐりながら登っていくと、俗世間から隔離された、正に神様が住んでいる場所に相応しい荘厳さを感じました。


 以前、会社の同僚から聞いた話ですが、彼女の恋人は、稲荷神社が大好きなんだそうです。毎年、正月には東京にある稲荷神社を3~4ヶ所も挨拶して回り、普段の日は全国の稲荷神社を訪れるのが趣味だとか。


 そんな彼氏が稲荷大社を訪れ、則子さんたちと同じように山へ登っていると、風もないのに木の枝が折れて足元に落ちてきたそうです。


 これはお稲荷様の贈り物だと喜んで持ち帰えり、棚の上に飾ったそうですが、ある日、彼女が帰宅すると家の中が獣くさい。彼氏は電気もつけず眠っていたのですが、なんと持ち帰った枝が発光していたそうです。


 彼女が語るところによると、時々、お狐様が遊びにくるんだとか。目に見えないけれど、獣くさくなるから直ぐに分かると言っていました。


「困るんだよね~。臭いがなかなか取れなくて」


 とため息を吐いていました。拘るところは、そこっ?!(笑)


 幸い、則子さんたちもお稲荷様に嫌われてはいなかったようで、稲荷山にいる間、雪も雨もすっかり止んで、山間から綺麗な京都の夜景を堪能することが出来ました。


 が、その後、四条河原にある『瓢亭MARU』さんでスッポン鍋を美味しく頂き、おばんざいをつまみに呑んで店を出ると、外は吹雪で真っ白になっていました。


 ぎゃ~っ!明日はどうなるの?!


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