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ご対面~っ!

 とうとうやってきました。則子さんの両親と徹さんのご対面です。既に則子さんは両親に徹さんの話をしていました。過去に付き合った男性と比べ、結婚したい相手だと思ったからです。


「則子の引越し先を見てみたいわ。それから、彼のお店も!」


 母親の希望で、両親が則子さんの住む町に来ることになりました。


「お昼前に実家を出れば1時頃に近くの駅へ着くから、その頃、迎えに行くね!」


 則子さんは確かに母親に、そう伝えたのですが、いきなり11時に到着した両親。則子さん徹さんも、グースカ寝ていた所を到着の電話で起こされました。


 年寄りは朝が早い。(笑)


 とりあえず、手近にあった服を身に着け、ダッシュで駅まで迎えに行く則子さんと徹さんでした。父親はスーツ姿でしたが、背中に5kgの米袋をしょっていました。


「折角、来たんだから、ついでに新米を持って行ってあげようと思ってね!」


 母親の実家は新潟県魚沼郡。そうです。美味しいお米で有名なところです。当然、田舎の伯父さんもお米を作っていますので、毎年、母宛に新米が届くのでした。


 しかし、その姿で徹さんとご対面。そして、徹さんが父の代わりに米袋を担ぎ、それから皆で則子さんの部屋へ。


 朝、寝起きを起こされたものだから、掃除もしていないわ、ジュースやお菓子も用意していないわ、もう汗たらたらな則子さんでした。しかし、そんな娘心を知ってか知らずか、則子さんの両親は一通り部屋を見た後で宣言しました。


「さ、しながわ水族館へ行きましょ!」

「しながわ水族館?!なにしに?!」

「魚を見るに決まってるじゃない!ここから近いんでしょ?!」


 行ったことはないけれど、確か1つか2つ先の駅にあったハズ。


「じゃあ、さっさと行きましょ!!」


 ええええええ~~っ?!


 則子さんと徹さんも色々プランを用意しておりまして、一応、1時に部屋を見て、それから近所でも美味しいと評判の手打ち蕎麦で軽く食事した後、彼氏さんの店や町を案内して、夕方、銀座へ移動してビーフシチューのお店へ行くつもりだったのですが、さすが則子さんの両親です。


 こっちの都合はお構いなく、さっさと部屋を出て行きます。とりあえず、近所のお蕎麦屋さんへ、と思いきや、そこは12時から営業の為、まだ開店していませんでした。


 それから定休日で閉めている徹さんのお店へ行き、さ~っと中を見た所で、則子さんのお母さんが「お腹が減った」と。どこへ連れて行こうか則子さんと徹さんが小声で打ち合わせている間に、通りかかりの立ち食い蕎麦店を発見。


「あら、お母さん、ここでも良いわ!さあ、入りましょ!」


 ええええええ~~っ?!


 とっとと店へ入るお父さんとお母さんの後ろで、徹さんが一言。


「おい、ほんっとに、こんな店で良いのかよ?!」

「ってか、もう店に入ちゃってるじゃん!!」


 則子さんの両親は、超庶民的というか、立ち食い蕎麦でも全然OK。2人の意見などお構い無しにさっさと店へ入る2人の後から、慌てて徹さんが駆けつけ、食券機にお金を投入。


 静かな蕎麦店での顔合わせの食事会(?)がカウンターに座って食べる立ち食い蕎麦屋となりました。まあ、立ち食い蕎麦にしては、注文を受けてから石臼で挽いた蕎麦を茹で、天ぷらを揚げるので、とても美味しいお店でした。


 則子さんの両親も「へたな蕎麦屋に入るより、よっぽど美味しかったわ~!」と大満足の様子です。それから散歩がてら、歩いて、しながわ水族館へ。ここでも彼氏さんが、すかさず入場券を購入。


 東京に住んでいながら、しながわ水族館は初めて訪れる則子さん一行。小さいながらも『東京湾に生息する魚たち』とか、身近な感じで意外にはしゃいでしまいました。


 水族館を出ると、疲れたから喫茶店へ行きたいとのこと。ところが、しながわ水族館の辺りはあまり喫茶店がないのです。仕方なく、駅まで戻り、静かな喫茶店に入りました。


 それから、なんだか取り留めのない会話を交わし、則子さんの両親は帰途に着きました。最後まで2人のペースに引き摺られたまま、初の顔合わせは終了となりました。


「則子のお母さんって元気な人だなぁ!しかも、則子にそっくり!」


 ゲラゲラ笑う徹さんに、複雑な心境の則子さんでした。それでも、翌日、則子さんのお母さんから電話がありました。


「今度は徹さんを家へ連れてきなさい。手料理をごちそうするから!」とのお言葉。


 一見、社交的にみえるけれど、ホントは人見知り屋で、滅多に自宅へ他人を呼ばない則子さんのお母さんが手料理を御馳走するというのは、中々の誉め言葉です。


 則子さんは、ようやく、ほうっと溜息を吐いたのでした。



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