転職
引越しして1ヶ月。区切りの良いところで、ホームページの仕事を辞め、お店の手伝いと、週3日だけ池袋の職場へ通勤する日々。今まで職場から家までドアツードアで30分だったのが、1時間に増えた上、混雑しているJR山手線を使うので、通勤するだけでも疲れてしまう則子さんでした。
本格的に転職を考え、あちこち探していたところ、歩いて10分の距離で募集している会社を見つけたのです。それは、則子さんの勤務する会社の別の部署が担当している派遣業務でした。
今までと違って社内で仕事をするのではなく、派遣先の会社で仕事をします。お給料は下がりますが、それでも勤務時間の自由が利くので徹さんのお店を手伝いながら仕事が出来ます。
早速、則子さんの上司に頼んで、面接を受けさせてもらうことに。合格が決まるまでは、同僚たちに内緒にしていたのですが、ある日のこと。上司に呼ばれて出向くと、合格して移動が決まったこと、そして、先方は翌日から出勤してほしいことを告げられました。
そのまま移動になってしまったので、同僚たちに挨拶も出来ず、新たな職場の研修が始まりました。その会社は仕事が多岐に渡っていて、18年の経歴を持つ則子さんでも大変だと感じたのですが、一緒に研修を受けた人たちは、ほとんど素人同然だったので、次々と辞めていってしまいました。
則子さんは、それまで、週3日で大した仕事をしていなかったので、久々の仕事でパワー全開です。バリバリ仕事をこなし、それなりに一人前だと認められたところで、以前の職場のメンバーがお別れ会を開いてくれました。
「急に移動になるからビックリしたよ~!」
「というか、彼氏が出来た方がビックリした!」
「そうだよ!京都で何も言ってくれないし!」
ぷうっと膨れたのは、一緒に京都旅行した美和さんです。それでも、みんな新しい旅立ちに祝福してくれ、お祝いとして2つのカップに同時にコーヒーが淹れられるエスプレッソマシンをプレゼントしてくれたのでした。
「彼と2人で使ってね!」
「もしも別れたら、、、お代わり用に使ってね!」
長い人とは、18年一緒に仕事をしてきた気の置けない仲間です。もう一緒に働けないのかと思うと、ちょっぴり寂しくなってしまう則子さんでした。




