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人生の棚卸

 則子さんの引越し先は、それまで住んでいたところより格段に狭くなりました。ですので、全部を持っていくことは出来ません。というより、ほとんどを処分しなくてはならないのです。


 40年の人生、溜め込んだものはテンコ盛りです。あ、徹さんとの出会いから1年半経って、引越し当時、則子さんは大台に乗っていました。CDやDVDが300~400枚、本やお芝居、映画のパンフレットも床が抜けるほどあります。そのほか、ぬいぐるみや裁縫を作る道具も押入れにギュウギュウつまってます。


 とりあえず、必需品だけと思い、洋服タンスを開けると、Tシャツが150枚ほど、食器棚を開けるとマグカップが50個ほど出てきました。則子さんは、面白いTシャツとマグカップを集めるのも趣味だったのす。


 壁の棚には、ムーミンのフィギュアがずらり。押入れの天袋には、食玩の箱がずらり。どこもかしこも、則子さんの趣味がいっぱい詰まっています。


「あ~!なんで自分、こんなに多趣味なのよっ!」


 則子さんは自分で自分を愚痴りながら、売れるものはネットオークションや古書店で売り、食器や服などは海外や国内のボランティア団体に寄付しました。


 しかし、悩んだのはベランダにあるプランターたち。引越し先にベランダはないので、名残惜しいですが、処分しなければなりません。幸い、徹さんのお店を手伝うようになったので、その年は新しい種や苗を植えていませんでした。


 けれど、プランターに入った土は残ったまま。ネットで調べると、土は普通のゴミとしては出せず、行政に頼んで引取りに来てもらわなければならないとのこと。引越しが決まってからの1週間では手配できません。


 仕方なく、少しずつゴミ袋に詰め、夜な夜な、近所の植え込みや、街路樹の根元、公園などへ捨てに行きました。我ながら、怪しい人物だと思いながら。


 そんなこんなで、則子さん。趣味で集めたものを綺麗さっぱり処分したのでした。勿体無いとか、また何か蒐集したくなるのではないかと思いましたが、そんなこともなく今に至っています。


 つらつら考えるに、徹さんが次から次に事件を起こすので他所へ目を向ける時間もないというのが本当のところですが。(笑)



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