罰金
ある日、徹さんが裁判所へ呼び出され、罰金が確定しました。
罰金46万円。免許取り消し。支払いまでに3ヶ月の猶予がありますが、がんばって資金繰りをしても25万円足りず、分割も応じないと言われたとのこと。
『罰金が払えないと刑務所に収容されて強制労働させられるんだ!面会に来てね』
そんな泣き言メールが徹さんから届きました。則子さんもネットで調べたところ、確かに、罰金は分割できない様子。もし支払えない場合は、労役場留置といって刑務所に留置され、労働させられるようです。
日給の相場は5千円ですから46万円を払うには、92日留置される可能性があります。則子さんも罰金のシステムは良く分かりませんが、それなりの収入のある仕事を辞めさせてまで、強制労働させるなんて非効率的です。絶対に何らかの抜け道があるはずですが、則子さんが言っても徹さんは信じようとしません。すっかり強制労働させられると思い込んでしまいました。
やがて3ヶ月が経ち、検察庁へ出向く日が来ました。支払いが出来ないので分割してほしいと頼む徹さんに、「もう一度、よく考え直して3ヵ月後にまた来て下さい」と言われ、帰されたそうです。
「どういう意味だと思う?」
電話してきた徹さんに、則子さんは非公式だけど支払いを延ばしてくれるって意味でしょ!と答えました。
「でも、46万円なんて無理だよ~!」と、相変わらず、泣き言をいう徹さん。
確かに、則子さんは徹さんより高額な給料をもらっていますが、都内だけに家賃が高く、手取りから家賃を引いた残りは、ほぼ同額になるのです。そして、毎月5万円ほど貯金している則子さんですから、徹さんも頑張れば払えない金額ではないはず。
例えば、パソコンが壊れても契約を続けているプロバイダーを解約する、外食を止めて自炊する、酒・タバコを減らすなど、出来ることはいくらでもあります。
「そいうことを考え直せって意味でしょ!何もしないうちから、出来ない出来ないって言うな!」
会社帰りに、駅の改札で泣きながら怒鳴る則子さん。道行く人たちが驚きつつ、通り過ぎていくのを眺めながら、電話の向こうで「悪かった、努力する」と謝る徹さんの声を聞いていました。
やっぱり徹さんと付き合うのは、一筋縄ではいかないなぁと思いながら。




