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徹さんのお仕事

 徹さんが新しく勤務するのは、クリーニング工場でした。各地に取次店があり、その衣類を一括して工場でクリーニングする会社です。大量の洗濯物を一気に洗い、乾燥するので、冬でも汗だくだく、夏なんて汗で痩せてしまうほどハンパない重労働です。


 月1回のデートのたびに痩せていく徹さん。不謹慎ですが、則子さんも、ダイエットのためにちょっとだけ転職しようかと思ったほどでした。


 そして、工場で3ヶ月ほど働いた後、取次店の雇われ店長になったのです。このクリーニング会社の業務形態として、取次店には2種類あります。


 オーナーを募集し、自宅もしくは近隣で店舗を用意させ、売り上げに応じて20~30%を手数料として支払うオーナー店。もう一つは、会社が全てを経営し、給料として雇った店長に支払う直営店。


 オーナー店の利点は、売り上げに応じて手数料がUPすることですが、売り上げがないと諸経費や店舗の店賃などで赤字になる恐れもあります。反対に直営店は、どれだけ売り上げがUPしても給料制なので、収入が増えないこと。ただ、諸経費や店賃などはかからないので、会社が辞めると言わない限り、赤字になることはないということ。


 徹さんは、いずれはオーナー店を出すつもりでしたが、先ずは店舗の仕事を覚えるということで、直営店の店長になったのです。場所は、東京23区の南、川を越えたら神奈川という地域にあり、元々は、一家でオーナー店を経営していたのですが、数年前から売り上げが落ち、オーナー店として維持できないため直営店になったそうです。


 その店で働いていた女性、美佳さんは、前のオーナー店の娘さんで、お父さんが病で倒れ、お母さんは看病で病院通い。美佳さん1人では経営が難しいので、徹さんが研修傍ら、クリーニング店の雇われ店長をすることになったのでした。


 徹さんが工場で働いていた時は、会いに行けなかったのですが、店長になってからは徹さんの許可をもらって、週1回、則子さんのお休みの日にお弁当を持って通いました。美佳さんと、それから時々、顔を出す美佳さんのお母さん、近所でスナックを経営するお姉さんとも仲良くなったりして、なかなか面白いお店でした。


 しかし、徹さんと美佳さんは、経営上の考え方が異なり、しょっちゅうケンカというか、言い合いをしていました。徹さんは、ず~っと店舗経営をしていたので、業種は違えど接客のノウハウはお手の物です。美佳さんもずっとお父さんとクリーニング店の仕事をしていたので、自負があります。そして、2人とも負けん気が強い。よく、美佳さんのお母さんと私で、2人の仲裁に入ったものでした。やれやれ。


 しかし、徹さんが店長になってから、徐々に売り上げが伸びてきました。そして、その実績を元に、会社の上部を説得し、より売り上げを伸ばすため、お店の大改装を始めたのです。


 まずは、引き取りに来ない荷物の処分。クリーニング店に出したものの、何年も取りに来ない服や布団、毛布などが店の奥に誇りをかぶって山積みなっていました。普通、クリーニングに出したら取りに来るのが当たり前だと思っていたのですが、意外に来ない人が多いそうです。むしろ、毛布や布団などは粗大ゴミに出す手間を考えれば、クリーニングに出して、わざと忘れる人たちもいるそうです。


 それらを全て工場に引き取ってもらい、荷物の置く場所も整理整頓。お客が増えたため、新しく、ハンガーをかけるポールも増設しました。また、看板も色あせて煤けていたので、新しくしました。


 徐々に生まれ変わる店舗を見つつ、同時に売り上げがどんどん伸びていくのを見て、徹さんってすごいなぁと思った則子さんでした。


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