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疑心暗鬼

 結婚詐欺事件(笑)は、呆気なく幕切れとなりましたが、則子さんの心に、もやもやが残りました。


 一つは、金銭感覚の問題。動転していたとはいえ、借金を簡単に言い出せるということ。そもそも、部品代を忘れていたというのも、経営者としてどうかと思います。意外に金銭的に問題ある人なのかもしれません。とはいえ、則子さんもコツコツ貯金するタイプではないので、傍から見れば似たり寄ったりですが。


 もう一つは、過去に女遊びをしていたということ。出会った勢いで、気付かない振りをしてきたものの、複数の女性と遊ぶことに罪悪感を持たないのであれば、将来も繰り返さないとは言えません。本人は、結婚したら浮気はしない、だからこそ若いうちに遊んでみたかったと言っていますが、今現在、偽りのない真実でも、実際に結婚したら遊びたくなるかもしれないし、そもそも則子さんと結婚するかどうかも分かりません。


 一度、湧き上がったもやもやは、日ごとに膨れ上がっていきましたが、徹さんにはどうすることも出来ないのです。だって、もやもやは現在の徹さんが犯した『事実』ではなく、則子さんの心の中で生まれた未来の不確定な『不安』だからです。


 徹さんがどれだけ言葉を尽くしても、態度で現しても、現実に起こっていない、ただのもやもやは、則子さんにしか消すことが出来ないのです。


 その日から、則子さんは本を読みあさりました。恋愛に関する本を何冊も何冊も。


 どこかに、金銭や女性関係に問題のあった人が治ったという話がないか知りたかったのです。でも、どこにもありませんでした。それどころか、不安をあおる言葉ばかり。




『インターネットで出会った人と初めて会う時は、相手の車に乗ってはいけない』


 ぎゃ~!あっさり乗っちゃったよ!


『初デートでエッチしない』


 初日で、ラブホに泊まっちゃったじゃん!




 読めば読むほど暗くなってくる則子さんなのでした。


 そんな時、一冊の本に出会いました。石井稀尚氏の『本当に好きな人と世界でいちばん幸せになる!』という本です。石井氏は牧師であり、カウンセラーであり、はたまたゴスペル歌手でもある多才な人です。


 著書の中で、『どうすれば、彼が「信じられる存在」かわかる?』という章がありました。以下、抜粋してみました。




(前略)相手の人となりはどのようにしたら見抜くことができるだろうか?この点に関して、イエス・キリストが、愛弟子たちに教えた「見分け方の秘訣」がもっとも有効だ。


「あなたがたは実によって彼らを見分けることができます。ブドウはイバラからはとれないし、イチジクはアザミからとれるわけがないでしょう。同様に、良い木はみな良い実を結ぶが、悪い木は悪い実を結びます」(後略)




 この記述を読んだ時、目からウロコが落ちた気がしました。何かが起きた時、その都度、ベストな選択をすることが重要であり、結果は時間が経てば分かるということ。


 つまり、どんな実がなるかは時間が経たないと分からないのだから、良い実がなるよう今を大切に生きるという意味だと解釈しました。もしかすると、拡大解釈かもしれませんが。(笑)


 初めてのデートで徹さんの車に乗ったし、Hもしちゃって、確かに不注意だったかもしれません。一般的なやり方ではなかったかもしれません。それでも、則子さんは、四捨五入で40歳。人生の荒波を何度も潜り抜けてきた自信が大丈夫だと判断したのです。最悪、その判断が間違っていたとしても、自分で責任を取る覚悟はあります。


 この先、徹さんと付き合うことが良い実をつけるのか、悪い実をつけるのか時間が経たなければ分からないけれど、今の時点でベストな判断をしたのであれば後悔はしないだろうと思いました。


 だったらそれで良いかな、と思えるようになったのです。


 だって、人生も恋愛も山あり谷あり。だからこそ挑戦し甲斐があるし、面白いのです。



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