誰の物でもない彼女が良かった
誰の物でもない彼女が良かった。
ずっと一人でいる彼女に見惚れていた。
長い間目にうつしていても、醜い嫉妬心が湧きたたないから良かった。
隣に立つ誰かを思って、敵意を燃やさずに済んだから。
俺が隣に立つ事を想像して、無駄な努力をせずに済んだから。
美しく、気高く、優秀。
そんな君が誰の物にもならないから良かったというのに。
どうして、誰かの物になってしまうのだろう。
どうして、人の物になってしまうのだろう。
君は誰かと恋人になった。
誰か特定の人間への愛ばかり囁くようになった。
たった一人でいる存在ではなくなってしまった。
過去の君は良かったのに。
今の君は良くなくなってしまったから。
また良い状態に戻さなくてはならない。
決意した俺は、行動した。
君が好きだから。
君が誰かを好きになる事がないように。
誰かが君を好きになっても、手に入らないような存在になってほしくて。
「臨時ニュースをお伝えします。先ほど、俳優の〇〇さんが何者かに刃物でーー。一緒にいたアイドルの〇〇さんはショック状態で自重聴取ができないらしくーー」