4.欲望に任せちゃいけないね(湊side)
「あ、お待たせしました。これ、どうぞ。」
「ご親切に、ありがとうございます。」
これは、ココア...僕の好物だ。
知っているはずがないから、偶然だろうけど...嬉しいな。
ふふっ...。
「そ、それで、ここに来る前のことで覚えている事ってありますか?」
「ここに来る前は、ドラマの台本を覚えてて...。」
「なるほど、ドラマ...俳優とかなんですか...?」
「そうだね。最近なったばっかだけど...。」
1年もまだ経っていないはずだしね...。
「へぇ、凄いですね。私、俳優とか好きで...びっくりです。」
っ!?
自己紹介の部分に俳優好きとは書いてなかったはず...。
もしかして、ストーリー内で見逃し?
僕としたことが...。
ここで覚えておかないとだね...。
「ちなみにどんな俳優が好きとかありますか?」
「与川寿人さんですね。元気で良い演技なんですよ!」
「へぇ...元気な人とかが好みで?」
「は、はい...!」
...元気なら、莉央くんの方が好みだろうね。
僕は...。
「あっ、そういえば、元いた場所まで帰るまで、どうするんですか?」
「あぁ、それは...。」
僕は元の世界に戻れるのだろうか。
戻れるとしても、結構時間がかかるだろうし...。
雛ちゃんには悪いけど、交渉だけさせてもらおうか。
「...もし良かったら、ここに泊まらせてくれないかい?」
「え...。」
断られる可能性の方が高いのは分かっているけれども...もしこれからも一緒にいられるなら...いたいからね。
「いやだったら大丈夫なんだけれども...。」
「いえ、全然平気です!!」
...良かった。
「となると、部屋どうしよう。どの部屋も物置き部屋で、この部屋しか使えないし...あっ、敷布団あるし、私それ使うのでそのベッド使って良いですよ!物置き部屋が片付いたら、ちゃんとした部屋作るので!」
「いや、流石にそれは悪いよ...。」
「大丈夫です!!」
流石に貸してもらってる身だし...。
...それより。
「...なぜか僕に敷布団を使わせるのが嫌そうだね。」
...図星だね。
お人好しというかなんというか...。
...。
「...それなら、2人でベッド使うかい?」
「...へ?」
僕、今なんて言って...。
冗談にしておかないと...。
「なーんて...。」
「...わ、かり...まし...た。」
「...え?」
今、許可して...。
「...じょ、冗談のつもりだったんだけれど...。」
「そ、そうですよね!すみませんでし...。」
「けど、もし君が良ければ、僕はそうして欲しい...かも...///」
「ふぇ...///」
っ...!?
僕、また無意識で...!?
欲望に任せちゃ...ダメだね...。
「と、とりあえず夕飯近いんでなんか買ってきますね!!」
あっ...行って...。
「...推しに嫌われるとか...何してるんだろうね、僕...。」
後で、謝っておかないと。