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転生してサラリーマンになった  作者: リッチー
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能力(スキル)の考察と鍛錬

 梶原総合病院

 梶原医院長が個人で経営している総合病院である。

 救急患者の受け入れから眼科、皮膚科、泌尿器科、内科、外科に至るまでを総合的に診療する医療法人立の医療機関である。

 提携する病院も多く近隣の医学部を持つ国立大学附属病院とも医師の派遣などの交流も行っている。

 私立病院としては異例の心臓外科や脳外科の先端医療の設備も完備している。

 病院経営の全ては医院長である梶原の手腕によるところが大きい。

 石油産出国の石油王などが金に糸目を付けず、梶原にオペを依頼する為日本を秘密裏に訪れるなど表に出ない仕事も請け負っている。むしろ、そちらの収益でこの病院は成り立っていると言ってもよい。

 病床数は500を数え、内50床が特別室となっている。

 特別室の割合が他の病院より極めて多い。それだけVIPの入院患者が多いことを物語っている。

 本病棟に10部屋、第二病棟に40部屋の特別室が設けられており、第二病棟はほぼVIPの為の施設と言っても過言ではない。

 本病棟には医院長室と医院長専門の研究設備が設けられており、日々梶原の趣味のような実験が行われている。

 その実験により私立病院でありながら、先端医療を牽引する大学病院を凌ぐ結果を出しているのも事実である。

 梶原は自分の技術の研鑽と知識の探求にのみ興味があるため、論文を発表しない。

 その結果、梶原医師にのみ手術が可能とされる症例が幾つもあり、各大学病院の研究者たちはその技術を習得するため、医局員を数多く梶原総合病院に送り込んでいる。

 そういう理由から、図らずも潤沢な医療スタッフが整った医療機関が誕生した。

 

 「中山の方はどんな感じだ?」


 今日も仕事終わりに梶原総合病院の医院長室に集まった。

 「精神的にはストレス過多な状況ではあるが、身体は至って健康といえます。今のところ」

 連日、梶原からの実験を付け続けているのである。精神がおかしくなっても仕方の無いことだろう。

 かれんは少し嫌な顔をした。

 「星野くん、何か言いたいことがあるのでは?」

 所沢が言う。もちろん所沢にはかれんが思っていることなど筒抜けなのだが、口に出すことで発言に意味と責任をもたせるという考えなのだろう。

 「では、申し上げたいことがあります。いかに殺人鬼と言えど、あまりに人を苦しめ続けるのはどうかと思うんですが・・・」

 「長谷川、星野くんの意見について何か言いたいことは?」

 「いえ、特には・・・」

 嘘だ。俺は思っている。麗子に直接手を下した男が目の前にいるのだ。せめて麗子と同等以上の絶望と苦しみを味あわせてやりたい。

 この異能的なスキルの根源を探る意味もあるが、梶原に中山を任せたのにはそう言った側面もある。

 「梶原先生の方はどうだい?」

 「私としては、もう少し研究を続けたいですね。なんと言っても貴重なサンプルだ。今後またこのような能力者のサンプルは入手できるかどうかと思えばもっとじっくり調べたいところではあるね。」

 確かに、こんな人体実験の機会などもう無いかもしれない。

 「では、実験の結果どのようなことが判明したのですか?」

 「実に興味深いことも分かったね。」

 梶原は前置きをしてから続けた。

 自分が理解できた内容を要約すると以下の通りだ。

 1.転生した記憶がある者に発現する。

 2.前世の記憶の鮮明さと能力の強さが比例している。

 3.能力は親から子に遺伝しない。

 4.使用者がイメージ出来ないスキルは能力を発揮しない。

 5.能力の根源を理解することで発現する能力にバリエーションが増える。

 6.能力者同士が関わる事で相互に干渉しより複雑な能力を発現することがある。

 これらはもちろん中山の実験結果から分かったことだけではない。

 俺たち「ビジランテ」メンバーの今まで能力を使ったことからも推論した内容だ。

 前世の記憶は能力を使うほどに鮮明になっていくという関連性も確認できている。

 まだまだ分からないことだらけである。

 所沢が俺のことを「ティンダロス」と呼んだことで、かれんが面白がり、通り名を付けようと言い出した。

 かれん曰く前世はサキュバスだったことから「サキュバス」となった。

 誤解が無いように付け加えると露悪的な意味を込めて本人がそれがいいと言い出したのだ。

 所沢は領主だったことから「ロード」

 梶原は特に興味はなさそうだったが「ジャック」と所沢が決めてしまった。

 もちろん、かの有名な無免許医師から「ブラック」をとっただけという漫画の神様に謝らなきゃならないような命名の仕方であった。切り裂きジャックの皮肉も込めたのかもしれない。

 そして俺は自分の通り名について不本意であった。なぜなら他のメンバーは曲がりなりにもちゃんとした由来があるのだが、俺の「ティンダロス」に至っては猟犬と面白半分に所沢が言ったことで、小鳥遊に「ティンダロスですか?!」などというくだらないことこの上ない理由だからである。

 俺としては前世の名前であるセドリックでも良かったのだが、なんだか古い高級車みたいでかっこ悪いとか無茶苦茶言われてしまった。イギリス王室に謝れ!


 所沢からビジランテメンバーに課題が出されていた。

 基本的には全員の能力の底上げなのだが、メンバー同士が連携することも考えて「阿吽の呼吸」を身につけろということだった。

 例えば、所沢とかれんであれば、精神操作系のスキルの魅了だけでは及ばない統率という能力を発動できる。これはキャンプオフで所沢とかれんが使った能力である。命の危険もいとわず死地に赴く狂信的な操作系のスキルだ。これを広範囲で使用できれば恐ろしいことが可能になるだろう。

 俺の生成スキルと梶原の外科的スキルを駆使すれば即死で無い限り傷を癒やせる。

 能力には相性があるが組合せ的には物理的に作用を及ぼす梶原と俺、精神的作用の所沢とかれんの組合せがまずベターだろうという結論に達した。

 俺たちは個人で個別のスキルの習熟に励みつつ、コンビネーションでの能力の向上も図っていった。

 俺と梶原とのコンビネーションの実験台には中山が使われていた。

 まずは梶原が無作為にメスで切り裂き、それを俺と梶原の能力で回復させるという非人道的すぎる研鑽が日々行われていた。

 俺は毎晩、麗子の見舞いに行くし、そこで梶原と顔を合わす。

 所沢と麗子もウズメビルで働いているので問題なく時間と場所を共有できる。

 俺はスキルの精度を高めるため、医学書や機械の構造が書かれた本を読みあさった。

 素材は最新のものを合成できるし、特別複雑な構造でなければ組み上げた完成品として製造できるまでになった。

 例をあげると、火縄銃だ。

 構造は実に簡単で鉄のパイプに黒色火薬と鉛玉で完成する。

 ただ火薬に火を付けるのに火縄銃のような火口をいつも持っている訳にはいかないので、 マスケット銃のような火打ち石式にする。

 引き金を引くとバネ式で撃鉄が落ちて火薬に引火して発砲する仕組みだ。

 これなら火薬に弾丸を装填した状態の小型銃を製造できる。

 命中精度が低いので至近距離でしか使えないのと、発砲時にはかなりの爆音がするだろう。

 現実的な装備ではないが、一応構造と必要な素材の構成要素を記憶しておく。

 俺はネットの情報を拾い読みしていた。

 これだけ危険物の化学式や製造方法が誰にでも目にすることが出来るというのは、この世界が平和である証拠なのだろう。

 俺は自然発火する化学物質の項目を見ながらそう考えていた。

 自然発火や火薬に着火する火種についてはより深く資料を読みあさった。

 俺の能力だけでは着火するのが難しいからである。

 ただ自然発火する化学物質は色々と後始末が大変なのが多い。

 アルキルアルミニウムという化学物質がある。

 透明の液体なのだが空気中に放出されると同時に燃え上がる。

 水では消火できないというなんとも面倒な物質だ。

 どういう理屈かは未だに不明なのだが、構想式さえ理解すれば創造することができる。

 本当にチートな能力だ。

 ただ金など希少金属類はやはり時間がかかる。

 その製造に集中している時間を金の取引価格に換算すると時給500円程度にしかならないだろう。

 最低賃金を下回ってしまう。

 しかし裏道は何にでもあるもんで、金塊が沢山あるような場所では瞬時に生成できる。

 半径100mが目安になりそうだ。それ以上離れるとボーナス効果は無くなるようだ。

 沢山という概念もあやふやではっきりした決まりがないようだ。多分「沢山ある」という俺が持つイメージに左右されているような気がする。


 所沢とかれんはかれんチャンネルのライブ中にどれだけ広域に任意の行動を起こさせることが出来るかという実験を行っていたようだ。

 ライブの視聴数が上がった時点でキーワードと共に能力を発動。全員が「高評価」をクリックするという指示を出す。

 通常はライブの中後半に来て高評価が増えるものだが、序盤で視聴中のほぼ100%が高評価をクリックした。

 このコンビネーション能力は「統率」と名付けられ、後に上位互換の「狂騒乱舞」へと進化する。

 星野かれんが政治家に転身したらトップ当選間違いない能力である。もしかしたらいずれ必要になるのかもしれない。


 梶原医院長はコツコツと研究にいそしんでいた。

 ただ、彼はVIP患者の手術が月に10件以上入っているため、個人の趣味である研究をするため、日々手術の速度をひたすら上げていった。情熱を持って。

 その結果、もはや人が行っているとは思えない正確さとスピードで切開から縫合までを終えるスキルを身につけていた。表の世界では梶原の手術の腕前を「ゴッドハンド」と讃えていたが、本人は「デーモンズハンド」と皮肉っていた。


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