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転生してサラリーマンになった  作者: リッチー
20/48

襲いかかる虚無と

 「はせ・・はせがわ!おい!しっかりしろ!」

 俺は誰かに揺り動かされているようだ。遠くで何を言っているのか。

 考えるもだるい。

 バートンか?また剣でもへし折ったか?

 「おい!」

 目を開けるのが億劫だ。吐き気がする。

 ここは何処だ?

 俺は何をしていたんだ?

 そして突然襲われる喪失感と虚無感。

 何かがゴソリと俺の中から消えたような感覚。

 何か大事なものが消え失せたような・・・何だ?

 「しっかりしろ!」

 頬を叩かれたようだ。誰だいったい?

 俺はゆっくりと覚醒した。

 あ、所沢室長に抱えられている。

 「だ、大丈夫です。俺、どうしてここは?」

 俺は気がついた何か大きなモノを胸に抱えている。

 ゆっくりと確認する。

 これは・・・麗子の四肢だ。腕と脚だ。

 ああそうだ。俺は思い出した。

 麗子がいなくなってしまった。

 俺は吐き気に耐えられずその場で吐いた。

 「気を確かにもて!」

 所沢にしては言葉が強い。

 身体が引き裂かれるような喪失感と並行して客観的に物事を見ている自分がいることに気付いた。

 人の手脚って案外重いんだな。などどうでもいいことを思考の片隅で考えているのが自己嫌悪を呼び起こす。

 「だ、だれが・・・」

 「しゃべらなくてもいい。」

 所沢は俺の思考を読み取るからしゃべるなと言っていることはすぐに理解した。

 「俺が到着したのはお前が倒れてから15分位してからだが、もちろん他には誰もいなかった。」

 「その手脚は間違いなく山本くんのものなんだな?」

 「わかった。身体の方はマンションの中にはいなさそうだな?」

 「他の部屋は俺が見てこよう。」

 そう言うと所沢は俺の元を離れた。

 俺は座っていることも出来なくなりベッド際の床に倒れ込んだ。

 とにかく警察を呼ばねばなるまい。

 そう考えるも恐ろしい程の頭痛が俺を襲う。

 そしてまた俺は気を失ったようだ。

 次に目が覚めたときには病院のベッドの上にいた。

 「目が覚めたか?」

 「室長・・・」

 所沢がベッド脇に椅子を置いて座っているのが見えた。

 「状況だけ伝える。俺はお前と山本くんの手脚を持ってタクシーで梶原総合病院へ、そのまま病室を使わせてもらった。手脚の方は保存液に浸けて低温で保存している状態だ。」

 「警察はなんと?」

 「実は警察には連絡していない。」

 俺は驚いた。

 「なぜです?」

 「警察に任せても山本くんがまともに戻るとは考えられなかったからだ。」

 「彼女は今、手脚を切断されてはいるが、生死は不明だ。死んでいる確証が無い限り、生きているという可能性もある。少なくとも、彼女の部屋には大量の血痕などは発見できず、しっかり止血した上で四肢の切断をされている。まぁまともでは無いがな。切断された手脚を梶原には見せた。恐ろしく鋭利な刃物で一瞬にして切断されたのだろうと言っていた。あいつは色々と問題のある男だが、外科医としては天才と言ってもいい。

 とにかく、俺はその場の判断で、警察には知らせず、俺たちで犯人を追いかける方が山本くんが助けかる可能性が高いと判断した。」

 「でもどうやって?」

 「まず考えられるのはクロシエの事件とは関係しているだろうと言うこと。となれば必ず関係者は近くにいるはずだ。片っ端から俺が心の中を丸裸にしてやる。」

 確かに、室長の能力ならば相手に偽装工作はできない。関係者を最短コースで追い込める。警察のように証拠集めなどちまちましていたら助かる命も助からない。

 「そして、ここまでの事をした犯罪組織を、俺はもう法に頼った方法で裁くつもりは無い。」

 所沢の目つきが恐ろしいものになっていた。普段の仮面を外してしまったのだろうと俺は感じた。

 「怖がらせてしまったか?」

 「いえ、そういうわけでは・・・」

 「長谷川、腹をくくれ。俺は知ってるぞ。彼女をこんな目に合わせられて黙っていられるほどお前は冷めた男では無いだろう?ご両親が殺されたときの事を忘れていないじゃないか?」

 「どうして両親のことを・・・」

 「俺には隠し事はできないさ。親父さん、犯罪組織に殺されたと今でも思ってるんだろ?犯人を見つけたら始末するつもりでいる。」

 「お前のクールで理知的に見える人格の裏にある前世の記憶がそうさせるのか?」

 「俺は・・・ただのクラフトワーカーですよ。」

 「まあいい。少しは顔色が良くなったようだ。それと倒れている間にCTスキャンをかけさせてもらった。」

 「脳内出血でもしていましたか?」

 「いや、それは大丈夫だったが、前回倒れたときより前頭葉の形が変化していると梶原が言っていた。仮説だが限界を超えた使い方をしたのではないかという話だが、普通の人間では見られないそうだ。自覚症状はあるか?」

 「ない・・・ですね。たぶん。」

 「おまえ・・・まあいい。」

 「明日からは山本の居場所を探す。できるだけ早くだ。連れ去ったと言うことは利用価値があると言うことだが、とてもまともな状態とは思えない。早く見つけてやらないと。」

 「わかってます。」

 「今日一日はここで寝ていろ。点滴をあと一本入れてもらうよう頼んである。血糖値が低くなりすぎている。明日からしばらくは俺もお前も有給を使って病欠の予定だ。山本くんもな。」

 そう言うと所沢は病室を出て行った。

 麗子・・・駅で見た姿が脳裏に浮かぶ。俺はまた虚無感に押しつぶされそうになりながら眠りについた。


 翌日の目覚めは精神的には最悪なものだったが、身体的には不具合が無かった。

 欠乏していた糖類をしっかり吸収した脳はしっかり働いているようだ。

 所沢の考えでは麗子は生きている可能性が十分ある。ただ殺すだけなら遺体を部屋に放置していただろうということだ。

 麗子・・・苦しいだろう。一刻も早く救い出してやらねばならない。

 冷静に考えろ。そういつもしていることだ。

 高まった感情を心の不干渉領域にドラッグ&ドロップだ。

 俺の能力に関してもこの局面で使える方法を考える。

 俺の能力すなわち、創造する力。俺の記憶にあるレシピを呼び出しそれを作り上げる。

 作ることは出来るが消滅させることは出来ない。

 その能力の副次的産物として物質の素材やサイズ、質量、形状を正確に把握することが出来る。それを記憶にとどめることでいつでも条件がそろえば創造できる。

 正確にイメージできれば実物を見なくても書籍などのデータから素材の創造も可能だ。

 ただ、複雑な電子機器類などはコピーできない。創造できる距離は自分の身体から1mほどまでのようだ。これは使うごとに使う度に距離が伸びているようだが、それでも何メートルも先に創造物を出現させたりは難しいようだ。

 俺の能力は犯人捜しには不向きだ。その点、所沢室長の能力は相手の心を読めるというまさに捜査のための能力のようだ。

 通常の入院患者と扱いが違うらしく、朝から看護師がやってくることは無かった。その代わりと言ってはなんだが、室長が現れた。

 「少しは落ち着いたか?」

 ベッド際に椅子を引き寄せて座る。

 「おかげさまで、頭はすっきりしています。」

 メンタル的には不感症を装っているに過ぎないが

 「それは結構。では早速出かけるとしよう。」

 所沢がクリーニングに出してくれたスーツを俺に手渡してくれた。

 そうか、失念していたが自分の吐瀉物で服を汚していたんだな。

 「ありがとうございます。」

 「そういうこともあるさ。気にするな。」

 俺たちはまず麗子の部屋へ向かった。もう一度細かい遺留物を探すためだ。

 さすがに警察の鑑識のようには行かないだろうが、昨日のドタバタに比べれば少しは落ち着いて調べることが出来るだろうとの所沢の意見だ。

 途中、所沢の案内で特殊なショップに立ち寄った。

 防犯グッズや盗聴器、その発見器、護身グッズなど、普通じゃ無いものを扱っている。

 所沢が購入したものは血痕を浮かび上がらせるライトだ。

 薄暗い中でこのライトを点灯させると血の色に反応して見えやすくなるのだとか。

 そして再び麗子のマンションに侵入する。

 灯りを付けなければ部屋の中は遮光カーテンが掛かっていて薄暗い。

 早速、特殊ライトを使用する。

 まずはベッドのシーツの上だが、ここには麗子の手脚が転がされていただけあり、幾分血痕が残っている。

 しかし、目立つほど多くない。

 所沢によれば手脚の切断面は固く紐でくくられており、血止めがされていたという。

 それでもこの血液の少なさはなんだ?

 「どこか別の場所で切断して、四肢だけベッドに置いた可能性があるな。」

 それはそうだろう。ベッドの上での切断は安定しないと思い当たる。

 「一番考えられるのはバスルームか?」

 俺たちはバスルームへ歩を進める。

 一見、手脚を切り落とした現場のような凄惨な場所は無いが、特殊ライトで照らしてみると、浴槽とユニットバスの目地などに血液が付着しているのが発見された。

 「犯行はここで間違いないな。」

 俺はまた気分が悪くなってきた。頭がクラクラする。

 「大丈夫か?」

 「はい、これくらい、なんともないです。」

 そうは言ったものの心を覆う焦燥感に今にも膝から崩れそうになる。

 俺はまた深呼吸とともに心を不干渉領域にドラッグドロップする。

 「・・・無理はするなよ。」

 俺は頷くだけで答えた。

 所沢がいつになく心配そうにしている。

 俺の心の中を読んでいるのだろう。そして俺がいつも心が破れそうなとき感情を切り取り放り込んでいる不干渉領域に気がついたんだろう。

 俺は思うのだが、この不干渉領域が満杯の状態になったときに、別人格なんかが生まれるのでは無いか?そんな気がしてならない。

 もう一度バスタブをのぞいてみる。こちらは血痕の類いが発見できない。

 おそらく水で流してしまったのだろう。

 「これではどれくらい出血しているのかまでは想像できませんね。」

 「ああ、ただあれだけ止血をして有るくらいだから失血死するくらいでは無いだろうと思う。」

 希望的観測ではあるが、他人に言ってもらうことで少しは気持ちが立て直せる。

 俺たちはリビングに戻った。

 きちんと整理されたリビングに麗子が大事にしていた撮影機材が置かれているが、それが微妙に引っかかった。カメラバッグからカメラだけが取り出されてデスクの上に置かれていた。

 リビングにはローテーブルが一つとノートパソコンが置かれている作業用の小さなデスクが置かれているが、コンピュータの横にカメラだけが置かれていたのだ。

 レンズは70mm-200mmのズームレンズがマウントされていた。

 確か、麗子はカメラをカメラバッグに仕舞うときにレンズを取り外してカメラバッグに入れていた。

 帰宅してから何か撮影でもしたと言うことだろうか?

 それにしても室内で使うには長い焦点距離のレンズだ。

 俺はカメラを手に取ると、メインスイッチをオンにして画像の再生ボタンを押す。

 メモリチップが入っていないらしい。

 「メモリが入っていない。・・・と言うことは何かを撮影してメモリをどこかに仕舞い込んだか・・・誰かに持ち去られたか?」

 俺は隣に置いてあるノートパソコンのSDカードスロットを確認してみる。

 メモリカードが刺さっている。

 俺はカード取り出しカメラにセットし、画像を読み出す。

 そこには俺たちが出かけたあの場所での桜の写真が大量に写っていた。

 俺の姿も何枚も写っている。

 そして最後の数枚は色合いが違う。やけに暗い。

 どこか暗い場所を写している。

 人影が映っているがどうも判別しづらい。

 ピントも合っていない。

 麗子のカメラはもちろんオートフォーカスでレンズも明るいプロ仕様だ。手ぶれ補正機能もついている。

 「これは、ノーファインダーで撮ったんじゃないか?」

 確かにピント位置が中抜けして別のところにフォーカスされている。

 撮影時間は俺と別れて23時22分

 4枚の写真が同じ時間に撮られている。

 「何かを目撃して慌てて撮ったようにも見えるな。」

 とにかく証拠品と言えそうなので、ノートパソコン、カメラ、レンズ類は一旦借りていくことにした。

 最後に昨日俺がぶちまけた吐瀉物の始末をしてから麗子の部屋を後にした。


 俺たちはウズメの事務所でカレンに今回の事件について全てを話した。

 彼女も転生者で在る事を室長とは共有している中だが、俺の能力のことについては知らない。

 その件についてまず話すことにした。

 俺が広げた右手の上にソーマを合成したのを目の当たりにして一瞬だけ呆気にとられたようだったが、すぐに全てを理解したようだった。

 「長谷川さんも特殊な能力をお持ちだったんですね。なるほど・・・色々な謎が解けた気がします。」

 カレンはあまりに商品開発が早すぎることを訝しんでいたのだという。

 「考えれば全ての商品には長谷川さんが関わっていましたから、種明かしをされると納得するしかありませんね。」

 続いて、俺たちは麗子の失踪についても全て話した。

 カレンは目を大きく見開き、そして目を閉じると息を整えていた。

 「衝撃的なことを伝えて申し訳ない。だが俺たちも藁にもすがる気持ちなんだ。」

 室長が神妙に言った。

 「いえ、現場で目の当たりにした長谷川さんに比べれば私なんて・・・ただ、絶対に許せません。ええ、絶対に!」

 俺はハッとしてカレンの目を見た。いつもはブラウンのごく一般的な瞳の色が赤みがかって見える。感情で瞳の色が変わるなんて話は漫画やアニメの中でしかない話しだと思っていたが、彼女の能力と何か関係があるのだろうか?

 それにここまで感情に支配されているカレンを見るのも初めてだ。

 その姿はとても神々しく、俺は頭に霞が掛かったようになった。

 「長谷川!」

 俺ははっとして頭を振る。霞が消えた気がする。

 「星野くん、能力が漏れ出ているぞ。」

 「すいません。気をつけてるんですが・・・」

 どうやら俺は一瞬カレンの能力に当てられたらしい。これが魅了の力か・・・

 カレンの瞳の色はまたブラウンに戻っていた。

 今回、カレンに全てを打ち明け、仲間にすることで何が出来るのかは俺にはまだ不明瞭なのだが、所沢室長には考えがあるのだろう。

 「それよりも、急ぎたいことがある。星野くん、カメラのメモリーカードに写っている画像の解析をウズメのチームに頼みたい。」

 カレンはすぐにPHS型の内線電話で画像のプロを呼び出してくれる。

 編集室へ案内され、4枚の画像の解析を始める。

明度や彩度を変えて何が写っているのかを判別する。

 「ピントがずれているのでハッキリじゃないでけど、人物2名のようね。」

 画像をモニターで見ながらオペレーターがハスキーボイスで言った。

 「アキちゃん、輪郭だけでもなんとかならない?」

 カレンがモニターから目を話さずにリクエストする。

 「OK、ボス。」

 アキこと坂東アキオはトランスだ。

 見た目は女性にしか見えない。

 アキはものすごい速さで画像を加工していく。

 かなり粗いものの、なんとなく顔の形が分かる程度までになった。

 「これ以上はキツイわね。」

 全員が画像を覗き込む。

 「見覚えある人は?」

 所沢の質問には全員無言だ。

 「アキちゃん、とりあえずデータをコピーして私達のメールに送っておいて。あと、プリントアウトも3部。そしたら仕事に戻っていいわよ。」

 カレンがアキに指示を出す。

 「了解ボス」

 アキは多少不満げであるがPCを操作すると別のPC へ向かった。途中だった動画編集に戻った。

 俺達はプリントアウトされた写真を手に会議室へ向かう。

 席につくと所沢がタバコに火をつけ、俺にも回してくれた。

この会議室はウズメで唯一喫煙できる会議室として愛煙家に人気のスペースなのだがタバコを吸わないカレンも同席している。俺は一瞬躊躇したがカレンが目で合図してくれたので一本もらって火を付ける。

小さ目なテーブル据付の灰皿は常に換気をしており、副流煙は少な目だ。

 「さて、手がかりはこの写真なのだが、どう見るね?」

 「状況的に犯人がわざと手を付けなかった可能性もありますね。」

 「時間がなかったのかもしれないわ」

 「時間がない人間が猟奇的な犯行をわざわざするかね?」

 「部屋には荒らされた跡がなかったですし、麗子が抵抗したような形跡も」

 「一番考えられるのは山本くんを何らかの方法で無抵抗化しその上で肢体を切断した。実は昨日、マンションの隣室に訪ねて犯行当日を物音を聞いていないか探りを入れた。」

 「それって、ヤバくないんですか?警察に届けてないのに」

 「大丈夫。俺に会ったことなんか覚えてないさ。」

 室長の能力なのか?

 「長谷川、ご明察。最近なぜか俺の能力に枝葉のような能力があることに気がついた。」

 「枝葉ですか?」

 「俺の能力は二人共知ってる通り相手の心を読む能力なんだが、どうもそれ自体は発現の仕方の一つに過ぎないようだと気がついた。俺自身この能力に気がついてから15年ほどなんだが、心を読む能力とばかり思い込んでいたようだ。だからそこだけ成長していた感じだ。だが能力の種類にもよるのだろうが、根幹をなす能力が有って色々なバリエーションの能力は発現、成長可能ではないかと」

 俺とカレンは少し考え込む。

カレンの能力は魅了だと聞いている。さっき俺もその能力に囚われかけた。

 「そう言えば、私の能力って小さい頃は多少人から好かれる程度だった。」

 「俺は物心ついた頃からもののサイズや重さなどが自然と分かるというくらいで、去年、ちょうど麗子と付き合った日から・・・前世の記憶がハッキリして物を創造する力が発現した。」

 ダメだ、麗子の記憶な鮮明に蘇る度に虚無感が心を支配し始める。

 「長谷川!俺の目を見ろ!」

 所沢が俺の肩を掴んだ。

 途端に冷静な思考が戻って来る。

 「室長、これは・・・」

 「しばらくは山本くんのことは、客観的に見るように努力しろ。心が潰れそうになる度に俺が戻す作業は効率が悪いだろ?」

 やはりこれだけ冷静に何事もなく行動できていたのは室長の能力のおかげだったのか。

 「すいません。努力します。」

 カレンが目を真っ赤にして涙をこらえていた。

 「そうですよね。長谷川先輩が辛くないはずないんだもんね。」

 「すまん星野・・・」

 「切り替えていこう。」

 『はい』

 それから俺達は写真に映る謎の人物をどのように見つけ出すかに終止した。

 時間がない。

 そこでカレンが無茶なことを言い始めた。

 「ネットで公開指名手配しましょう!」

 「なるほど、そういう手があったか!」

 カレンと室長だけが理解している。

 「どういう事です?説明を」

 「私のチャンネルで人物捜索ゲームイベントとして画像公開してしまうんです。そして情報をダイレクトメッセージで受けて精査すると犯人に行き着く可能性は低くないはずです。」

 かれんチャンネルならすぐにゲリラライブをしても拡散力で高い。

 『メガインフルエンサーは伊達じゃない!』ってことだろう。

 「商品はあまり豪華すぎるといい加減な情報が集まりやすくなるんじゃ?」

 「大丈夫ですよ。コメント欄はなしにして、DMだけで受付にすれば」

 「あとはこの時間帯のこのエリアにこちらでフィルタリングして」

 「DMは正解した人だけに返信します。で、豪華商品はカレンとの一日デート券」

 俺は頭を抱えた。無茶すぎる。

 「それで行こう。」

 しばし沈黙していた所沢が声を上げた。

 カレンがピッチを出して大井D に指示を出す。

 「もしもし、今から10分後にゲリラライブやるからね。準備させて。大井さんは打ち合わせするから第8会議室へ来て。そうケムリ部屋よ!」







 



 

 


 

 

 

 



 

 

 

 


                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       


 

 

 

 




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