表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/92

50. 庭師の孫、シャルルとの出会い


 近衛兵達が図書室を出て行った事を確認して、レティシアはそっとしゃがみ込み、書架の中に隠れる子どもへ話し掛けた。


「さぁ、もう大丈夫。出て来なさい」


 そろそろと身体を書架の外に出した子どもは、まだ周囲の様子を窺っている。

 そしてレティシアの方に向き直ると、ペコリと頭を下げて感謝の言葉を述べた。クルクルと癖毛の目立つ髪がフワリと揺れて、その柔らかな見た目にレティシアの手が思わず触れた。


「わぁ! な、何するの?」

「ごめんなさい。あんまりフワフワして可愛らしいから……」

「可愛らしい……?」

「ええ、柔らかくて可愛らしい髪ね。ところで、あなたはどこの子どもかしら?」

「……庭師の孫だよ」


 宮殿には多くの庭師が居て、レティシアはこの子どもがどの庭師の孫かは分からない。そもそも本当に庭師の孫なのかどうかは、この子どもに嘘をつかれていれば分かりようもない。

 けれもレティシアは目の前の子どもの言葉を信じる事にした。


「その庭師の孫が、どうしてこんな所へ? 近衛兵に追われるような事をしたの?」

「最近遊びに来ない友達に……会いに行ったらアイツらに見つかって。入ったらダメな所だったから、追われる羽目になったんだ」

「そうなの。でも、カタリーナ様の宮の使用人にあなたくらいの子どもは居たかしら? ……もしかして、ニコラ殿下に?」


 第二皇子ニコラはこの時七歳となっていた。結局ニコラの為の新しい宮の建設は民達の反感を恐れた皇帝が許可をしなかった事で実現せず、ニコラと寵姫カタリーナは同じ宮で過ごしている。

 目の前の子どもはちょうどニコラと同じくらいの年齢に見えた事から、レティシアはそう推察したのである。


「ニコラは最近、僕らの秘密の場所に遊びに来ないんだ。だから心配になって……」

「そう。それは心配ね。だからカタリーナ様の宮に。でも、危険だわ。許可の無いものが侵入すれば、先程のような近衛兵達に何をされても文句は言えないもの」

「うん。分かってる。だからお姉さん、ありがとう。助けてくれて」

「大した事はしていないわ。それより、図書室から出る時にも気をつけないと。私があなたの居るべき場所まで送ってあげる。ニコラ殿下の様子も何とかして聞いて来てあげるから、今日は帰りましょう」


 レティシアは図書室を出る時にも細心の注意を払い、庭師の孫という子どもを連れて庭園に出た。庭園自体は宮殿で働く平民も通る事を許されていたので、すぐに先程の近衛兵に見つかりさえしなければ大丈夫だろうと考えた。


「ねぇ、あなたのお名前は? 今後ニコラ殿下の事が分かれば、どうしたらいいの?」

「僕の名前はシャルル。普段は皇太子宮の庭園をおじいちゃんが担当しているよ」

「そう、分かったわ。それじゃあまた会いに行くから。今日は気をつけて帰りなさい」


 シャルルはまだ少し不安そうにしていたものの、レティシアに小さく手を振るとあっという間に駆け出していった。


「皇太子宮の庭師の孫が、どうしてニコラ殿下とお知り合いになったのかしら」


 レティシアは不思議に思いつつも、ニコラの様子を知っている可能性のあるアヌビスのところへ行く事にした。

 アヌビスのもとには他の薬師からの情報や、その他どこから仕入れたのか分からないようなたくさんの情報が集まってくる。恐らくニコラの事も何か知っているだろうとレティシアは考えたのだった。


 医務室に続く廊下を歩いている時、レティシアの背後を何者かがついて歩くような気配がした。

 医務室のある一角、この辺りは薬草や薬品を保管する為の倉庫にしている部屋が多い為に人通りが少ない。医務室まではまだもう少し距離がある。


 自分に何か害を及ぼそうとする者などそうそう居ないだろうと思うし、自意識過剰だとは思ったものの、なんだか気持ち悪く感じたレティシアは、思い切って振り向く事を決意する。


「え……っ」


 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ