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47. 未来について、リュシアンが考える事


 過去では帝国の未来の為に革命を起こしたリュシアンだったが、この世界で同じように革命を起こすつもりは無い。

 どうしても革命ともなれば多くの命が失われる。リュシアンは身を持って経験した。だから出来る事なら今度こそ、もっと他のやり方で民達を守る事が出来ないかと模索しているのだ。

 

 レティシアもリュシアンのその考えに同調し、皇后付き女官とアヌビスの手伝いをしながら、今の自分にできる事をしていこうと思っている。

 

「今お父様も、色々と動いてくださっています。過去とは全く違ってきていますから、きっと帝国の未来は明るくなる事でしょう」

「ああ、そうだな。それはそうとレティシア、もうすぐ誕生日だろう。何か欲しい物は無いか?」


 レティシアは近々六歳の誕生日を迎える事になっている。

 魂はデビュタントを終えている年齢であるから二度目の誕生日となるが、過去でその頃と言えばリュシアンと疎遠になっていた頃であった。

 だから今度こそきちんと祝いたいと、リュシアンは考えていたのである。


「覚えてくださっていたのですね。ありがとうございます。欲しい物……は特に思い当たりません。お気遣いなく」

「そういう訳にもいかないだろう。何か無いのか?」


 レティシアは困ってしまう。元々宝飾品などには欲がないし、今の生活がとても満たされているから、欲しい物などすぐには思い当たらないのだ。


「それでは……皇太子宮の近くにある、あの……ヒソップをくださいませんか」

「ヒソップ? それだけか?」

「はい。私にとって、あの花はリュシアン様との大切な思い出なのです」


 以前レティシアはヒソップの刺繍を施したハンカチをリュシアンに手渡した。

 実はそれが今、リュシアンの執務机の引き出しに大切にしまわれている。執務の合間に時折リュシアンが取り出しては、嬉しそうに見つめるという時間もあるのだが、それはレティシアの知るところではない。


「分かった。必ず準備しておくとしよう」

「わぁ、とても嬉しいです。ありがとうございます!」


 花が綻ぶような笑顔を見せたレティシアを、リュシアンは思わず抱きしめたくなってしまったものの、グッと自制した。


「それでは、私はそろそろアヌビス様のところへ戻ります」


 レティシアが執務室を後にすると、笑顔から一転して厳しい表情になったリュシアンは、アヌビスからの書簡に目を通す。


「カタリーナ、あの女狐め。生まれてくるニコラには罪は無い。しかし、お前のことを俺は決して許す事は無い」

 

 あと数ヶ月もすればニコラと名付けられる予定の赤子が誕生する。アヌビスが言うには、カタリーナは生まれてくる赤子の為の新しい宮の建設を、皇帝と官僚達に強く求めていると言う。


 多くの平民達は未だ苦しい生活を強いられている中で、皇帝の味方となる高位貴族達は様々な点で優遇されていた。リュシアンは時折お忍びで街へ下り、その苦しい実情を身に染みて感じている。

 

 だからこそ、税についての革命を起こそうと水面下で動いているところであった。そこに寵姫カタリーナの我儘による散財となると、リュシアンだけが怒るのも無理はない。

 それどころか、民達がいつ反旗を翻してもおかしくはないほどに、平民からの皇帝への支持率は高くないのだから。


 そこで何とか皇族への不満が抑えられているのは、これまで親身になって民達に寄り添ってきたソフィー皇后の存在と、帝国の英雄である騎士団長ディーンという大きな柱が存在するからである。

 故にカタリーナは平民達にとっても稀代の悪女であり、ソフィー皇后を苦しめる絶対的な悪なのであった。


「過去に於いては母上が亡くなった後ということもあって、ベリル侯爵が爆発寸前の民達の心情を考えるよう皇帝に進言し、結局ニコラの宮を建設する事は無かった。しかし今は母上も存命で、ベリル侯爵は皇帝と距離を置いているから誰も進言する事が無いのだろう」


 あれほど敵として憎んだベリル侯爵は、今ではレティシアとも上手くやっているという。

 これほど過去との差異があれば、今後この帝国がどうなるのかリュシアンにも読みきれない。


「俺が革命を起こさずとも、民達が立ち上がる時が来るかも知れない」


 そうなった時には皇族として自分はどうすべきかを、リュシアンは考えねばならなかった。

 


 

 


 


 


 


 


 


 


 

 

 

 

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