最終話
最終話ですm(_ _"m)
十四、
「…。」
燈台のオーバーライトが激しさを増していく。キラキラキラキラ、青い雫がさよならを告げるように心を塞いだ天邪鬼を呼び起こした。
その声につられて、私は夜空を見上げた。そこにあったのは、天の川でも乙女座でもアクアマリンの世界でもない。ただの置き捨てられた廃劇場のプラネタリウムだった。
「嘘だ。」
黒猫が崩れ落ちる。
本物と区別の付かないほど、美しい天体は世界に北極点を落とす。サーチライトを青く、ぐるぐると回している燈台から生みだされているとは思えないほど、打たれた秘密を隠していた。
雷鳴を壊し、恐怖に負けた人々を抱き入れる宮殿は、星座図を鮮明に切り描いていく。やがて、開闢された液晶画面は虚空に紅娘を探していた。
「…。」
倒れ込んで、土でコートを汚している一人の男を見つめる。声を殺し、きっと頬には涙が伝っていた。
「黒猫。」
私はそのとなりに横たわると、彼を精一杯の力を込めて抱き締めた。彼の頭が私の肩に預けられるように、彼が私の背に手をまわせるように。すがり付いてくるその体を、受け止められるように。自分よりはるかに大きい体を、私は包み込んだ。
「本当に大事なものなんて、目に見えなくていい。難しい言葉でややこしくしなくていい。この星空だけが、あなたの希望じゃない。世界の希望でもない。見えないものが、私達を生かし、明日を越えようと働きかけるの。」
彼が私に覆い被さるように抱き締めてくる。私は、その肩越しに残酷にも明滅する。けれど、どこかの誰かの為に輝く模造品の宇宙銀河を追いかけ、四季折々の此岸を待つ。
映画に流れるモノクロをカタストロフィと暗雲は告げ、ハネムーンのアステロイド小惑星。宇宙服の主人公は魔法使いの肖像権を勝ち取り、飴玉を交差点にばら蒔いた。
「例えば、あなたが愛せるものが黒猫だって、足を怪我した少女だって、人工物の何かだって、静寂に生きる森だって、あなたがどう思うかで変わっちゃうんだよ。」
ガラパゴスの燈台で、あなたが泣いたように。放熱する新人類をASPARAGUSなんて言わないで欲しい。
「知ってる。」
私の肩に顔を埋めたままの彼が、首にかけられた木星を握りしめていた。
ガラパゴスの燈台より、一節の人生。
完結しました!
約一か月ぐらいだったかな?週に二回くらい投稿していたけれど、結構かかりましたね。
少女ちゃんと黒猫とも、これでお別れか…寂しいな。
近いうちに、noteでお別れ会と称した感想でも載せようと思います。
次回予告
一週間くらいかな?少し期間を開けて次の小説を投稿します。
題名は「篝人」。座敷童と化け狐の、お話です。
第一章の冒頭部分のみ、Twitterにあげておくので、ぜひ立ち寄ってみてください。
最後に、ここまで読んでくれた方へ
本当にありがとうございます!
この小説を読んでくださった方が、少しでも何か感じてくれたならば本当に嬉しいです。僕は、まだまだ小説で想いのすべてを伝えきれないけれど、これからも頑張っていきたいと思います。本当に、ありがとうございましたm(_ _"m)
では、次の作品でお会いしましょう。Mei.(神楽鳴)