十、
十、
「凍りついた世界を探索しているみたい。」
「ああ、名前もわからないものが蔓延っているな。植物には詳しくないから、どれが人間にとって毒か毒でないかもわからない。」
「私も。でもきっと、この場所にあるものは全て、毒でしょ?」
「間違ってはないだろうな。」
這うように広がる女神の裁き。緑化した街路樹を進んでいくような、はたまたエルピスを外縁としたスピリチュアルを、この森林から感じとるような、不思議な感覚だった。
獣の声もない。勿論、人の影もない。あるのは、虫が囁く音と大樹が侵入者を射殺す円筒形の上昇気流を綴る音韻のみ。
「昔からあったのかな。」
彼の胸元に光る木星のペンダントを見つめながら、ぽつりと呟く。
「必要だから生まれたんだろ。」
廃屋に取り残された、ハイテクノロジー。色素結膜の住人たちが、寄ってたかってアスペクトを計り合う。赤道を計算し、これぞ最愛を願う日々だと勘違いをする。
そして、この森を蝕む自分達も同じ生き物なのだと。地核のコンドルを接種する有害物なのだと。自覚してしまう。
「同じこと考えてそうな顔だな。」
「この森を見て、他のことを考える人がいるの?」
「緑が綺麗だなって、純粋に思える人こそ幸せだと。俺は思うけどね。」
風石した段々を、降りていく。目を閉じれば、エラ呼吸する水槽が私を振り向かずに游いでいく。パチョタパタ、ピシャプラパタ。染みていく樹液。
「そんなのは、生まれたての子供だけでいいよ。」
鼓動する心臓のない世界で、猫と私の二つだけがコドコド、と音を立てていた。
ようやく、ここまで来たか…。
もう少しで完結です。次の小説は、何書こうかな…。
あれかな、座敷童と狐の話とかいいかもしれない。