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変態と呼ぶな!

サリーナは叫びたい

作者: 伊勢


前半、学園の説明。

後半、リーリエの日常andサリーナ視点。



テソーロ国立魔法学園に入学して早くも半年がたった。


この学園は一定量の魔力持ちの子供たちが平民・貴族問わず集められているため、一応学園内では貴賎に問わず皆平等に接すること。と言う規則ではあるがそれでも選民意識の高い貴族達や貴族嫌いの平民同士で問題を起こさないように(どこにでも問題児はいるからね)とクラスが分けられるようにされている。

と言っても、クラスがある階は同じだし授業が被ることもある。食堂では王族と一部の高位貴族を覗いて皆同じ場所で食べることが義務付けられているし、何よりこの学園では同好会や研究会など多数ある為そこでかかわり合いになることは多い。


クラスはそれぞれ成績順で3つに分けられている。

まずA~Cが貴族クラス、D~Fが平民クラス。

貴族の中の成績上位者はAクラス。そしてB、Cクラスと続く。平民クラスも同じく、成績上位者はDクラス。そしてE、Fクラスと分けられている。

しかし試験の結果は貴族、平民混合の順位で張り出される為やっかみを受ける事もしばしばあるがそこは生徒会や教師がしっかりと見張っているため大きな問題が起こることは稀だという。



リーリエはEクラス。成績は丁度真ん中位である。

元々勉強があまり好きではないのと、余り目立ちたくない為手を抜いた結果である。


学園入学当初、迷子により入学式に大幅に遅れながらも何とか辿り着きその後クラスに向かう途中でも何故かまたも迷子になり教師から一人で行動するなとこっぴどく説教されるというトラブルはあったものの、何とかクラスメイトとも打ち解け学園に慣れてきた今日この頃。


今ではすっかり迷子マスターとして知られているリーリエである。


リーリエを1人にしては行けないという認識がクラス中、いや平民間(いつの間にか)で知れ渡っている為か昼休み以外常に周りに人がいる状態である。


…まぁ、本人は気付いていないが。


何故、昼休みは1人かと言うとその時間だけは時折、人気のない裏庭で動物たちとお昼を食べているからだ。

普通は学園の友人同士で食事をするだろうが、動物たちも大事な友達である為時折こうして共に食事をとる事にしているのだ。


クラスメイトや友人達もリーリエが動物たちとともいる時は迷子にならないと知っているので(最早学園公認である)リーリエが外で食べる時は皆ほっといてくれるのだ。

今日も購買で食事を買ったあと裏庭へ行き(途中までクラスメイトが案内してくれた)動物たちに囲まれてお昼をつつく。


頭や肩の上に数羽の鳥を乗せ、足元には何処からやってきたのか猫や犬、ネズミや猪など多種多様な動物たちがいた。リーリエが食事を終えるまで特に邪魔することも無くそれぞれ自由に時間を過ごす。


たったそれだけでも彼らにとって大切な時間であり、癒しでもあった。

傍から見ればなんてメルヘンな空間かと思われるが…

実際その通りなので否定のしようも無い。


暫くして食事を終えたリーリエは1度グッと背伸びをした後ぴょんとベンチから飛び降りた。


「ご馳走様でした!さてとー、じゃあ散歩に行こうかなぁ」


そう言って、リーリエは徐に叢の中へ飛び込むと猫の姿になった。


「にゃあ(じゃあ行こーか)」


「チィ」


「クルポー」


外で動物たちと食事をとる時ははこうして動物に変身し構内を散歩するのがリーリエ達の習慣となっていた。


動物たちもノリノリでリーリエについて行く。

勿論、人に変身する所を見られないようにひっそりと、そして素早くやるのがコツだ。


…が、その行動自体は全く潜んでなかったりする。


それは何故か?

考えてみれば当然の結果である。


1匹の猫にゾロゾロと多種多様な動物達が後を着いていっていれば嫌でも目立つ。

当の本人は全くそのことに気付いてないし、動物たちは気付いているがリーリエ意外どうでも良いと思っているので気にしていない。

その様子を何も知らない生徒たちは窓や廊下から微笑ましく見守るのがここ最近の恒例行事だったりする。


いつしかリーリエを筆頭にしたこの集団に『黒猫隊』なんて名前がつき学園の癒しとして広まっている。









「…あの子、アホなのかしら」


そんな中で1人だけ呆れたようにその様子を眺めている人物がいた。


サリーナ・ルネサンス侯爵令嬢。

入学式の場でリーリエとともに迷子になった少女である。


あの時、わたしくに口止めしておいて何を堂々と構内を散歩(散歩?最早行進よね…)しているのかしら、と一人呆れ返っていた。


「サリー?どうしたんですよ?」


「いえ…」


「あら!今日は黒猫隊の日なのね!ふふ、相変わらずなんて可愛らしいのかしら」


「…そうね」


…言えない。


噂の黒猫が実は同い年の人間の子供で、この国では変態の権化とされる変身魔法の使い手だなんて…。


絶対に誰にも言えないけれど…。

言ったら最後、鳥の餌にされてしまうのが分かりきっているのに言えるはずがないしっ!


それもそのはず。

あの時リーリエが言った言葉はただの冗談でもなんでもないのだから。その証拠に、時折あの時の雀と鳩がこちらを監視しに来ている。


その事もあり、サリーナには恐ろしくて口が裂けても絶対に言える筈がなかった。


でも、でもっ!!


「ふふ、見てサリー。黒猫隊長ったらお腹丸出しでお昼寝してるわ!」


「…ソウネ」


友人の視線の先を目で追えば、確かに黒猫が無防備にも腹を上にして堂々と木陰で寝ていた。

その傍らで動物たちが身を寄せあって昼寝を開始する。


なんともまぁ、微笑ましい光景である。


しかし、サリーナだけは違った。

唯一、リーリエの秘密を知る彼女は彼女にどうしても言いたいことがあった。


あなた!羞恥心というものないの?!!

一応女の子でしょう?!!


と。


サリーナは心底、叫びたい。



このっ変態!!

そんなところで寝るんじゃありませんっ!!









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