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無計画なオレ達は!! ~碌な眼に会わないじゃんかよ異世界ィ~  作者: ノーサリゲ
第三章-オレが何をしたって言うんだ異世界-
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21.攻撃性ASMR

 翌日。オレはふかふかで気持ちい布団の中でまどろんでいた。


 時間は早朝。寝ながらも少し覚醒した頭で、「金稼がなきゃな……ついでに御土産買わなきゃ……でも今は眠い……二度寝して起きたらまた考えよう」と思考しながらもまた眠りにつこうと思っていた矢先。


「お早うございます…であります」


 耳元で急に女の声がした。めっちゃ質いいなこの声。


「気持ちい気持ちい」


 その鼓膜をくすぐるようなウィスパーボイスは、まどろんでいる脳みそに浸透して脳を溶かしてくる。


 この世界に来てASMRが聴けるはずが無いから、これはきっと夢だろう。久々の夢だ。ああ、またあの蠱惑的で神秘的な音のソノリティを堪能したいな。元の世界に戻ったらすぐに聴こう。


「なぜ気持ちよくなってるのでありますか……」


 凄い。夢のASMRはオレの声に反応してくれているぞ。もしかしてこの夢を極めればいつでも好きなソノリティを堪能できるのでは?


「石鹸をカッターで切りながらスライムこねて、オレを甘やかしてくれ。罵倒でもいいぞ。あとカウントダウンよろしく」


 大体の音を網羅したオレに死角はない……が、久々に聞くのだからオーソドックスなものから聴きたいな。


「……丁度ここに剣があります。私があなたを切り刻むまで、十、九、八」


 何か思ってたのと違う。注文もごっちゃになってるし。それに、この夢オレにめっちゃ攻撃的。


「七、六、五」

 ってかこの声聞き覚えあるぞ。


「四、三」

 さっき「であります」ってワードも聴こえて来てたような……。


「二、一」

 ……もしかしてこれ現実?


「ゼ」

「ストーップ!! 起きた、今起きたから!!」


 オレは切り刻まれる寸前でベッドから飛び起き、声のするほうとは逆のベッドサイドに飛び降りて、やめてと言う意思を示した手を向ける。


「ようやく起きたでありますか」


 その人物はやれやれと言った表情でオレを見る。


 オレを切り刻もうとした声の主、コロロは早朝だと言うのになぜか完全武装した状態で剣を抜いてオレの向かい側に立っていた。

 薄暗い室内。そして武装をして寝込みを狙う……これは。


「えっ、オレを殺しに来たの? 昨日の今日で?」


 完全武装したその姿でオレの寝込みを襲いに来るって事はそうとしか考えられない。 

 確かに昨日、オレはコロロから絶大なる不評を買った挙句泣かせてしまったけど、まさか殺しに来るほどとは思ってなかった。


「何を物騒なことを言っているでありますか。違うのであります。私はあなたの性根を叩きなおしに来たのであります」


 呆れたような顔をしたコロロはそのまま剣を収めた。

 ……なんか不穏なワードが聞こえたな。


「誰の何を叩きなおすって?」

「イキョウ殿の根性をでありますよ。私の友達が所属しているパーティのリーダーが、あのような戦いをするなどありえないからであります」

「友達って?」

「ラリルレ殿、シアスタ殿、リリス殿、リリム殿であります」


 ラリルレとは仲が良さそうだったが、他とも仲良くなったのか。

 にしても、家の子達に友達か……。


「何を嬉しそうな顔をしているのでありますか?」

「してねーし。でも、そうか。ありがとな」

「……? あなたに感謝される謂れはないのであります」


 疑問の顔をしたあと、若干嫌悪が混ざっている表情をされながらオレの言葉は拒否される。

 確かにオレから感謝を言うようなことじゃないにしても、そんな反応されるとか、コロロから大分嫌われてんな。


 ま、昨日あれだけ泣かれたから仕方ないっちゃ仕方ないのかも知れないけど。


「そんな顔するくらいオレのこと嫌いならほっといてくれてもいいんだぞ」


 御前試合でやらかしたことが、未だにどれだけ非常識なことかオレはまだ実感できていないから、コロロに対してどんな言葉を掛けて良いのか分からない。謝ろうにも謝れない状態だ。ってかオレが謝る必要あるのかも分からない。


 オレを嫌ったところで仲間が嫌われてる訳じゃないから、別にこのままオレを嫌ってくれて構わない。仲間に影響ないなら問題なし。


「ダメであります」

「オレの事嫌いなのに積極的じゃん」

「あなたの事は、きっ、嫌い、っであり、ます」


 嫌いって言葉を言うのにコロロは苦しそうな表情をした。

 なにこの子。育ち良さそう。めっちゃ人格善性に寄ってそう。


「昨日の戦いに私は心を躍らされたであります。まだまだ未熟なれど、それでも立ち向かう意思を持つ者達。見たこともないスキルや力、武器で私達を圧倒する者。レベルだけが強さじゃないと再認識させられたであります」


 ごめんなさい。回避能力はそうですけど、あとはほとんどレベル全振りの強さです。


「だからこそ、あなたのような卑怯な戦い方を晒して得た勝利など、私は許すことが出来ないであります」

「卑怯って……あれはコロロの中の強さには入んないの? 一応オレの力なんだけど」

「あれは食事に毒を仕込んだり、眠っている者へ奇襲をする、言わば暗殺者のようなものであります。力をぶつけて勝利を掴み取るというよりも、手段を選ばずにただ勝つことを目的としている戦い方でありますよ。そんな戦い方を嬉々として御前試合で行える根性が気に入らないのであります」


 コロロの言っている事は当たっている。オレの戦闘理論は、「頑張って負ける」よりも「どんなことをしてでも確実に勝つ」だ。

 流石は王国四騎士様だ。昨日の戦いだけでオレの理論を見破るとは。


「全力を出して負けるのならば、それは己が未熟な証拠。負けを認めて更なる高みへ目指すことが出来るのであります。しかし、不意の一撃で終わるなど、その人の努力は一体どこへ行ってしまわれるのでしょうか。積み上げて来たものが、一瞬で無念にも奪い去られる理不尽など、私は嫌なのであります」


 苦虫を噛み潰したような顔でコロロはそう語る。その顔は本当に辛そうで、悲愴が滲み出ていた。


「何か苦しそうだな。昔何かあったのか?」


 その顔は見逃すことが出来ない。

 ただ、今のオレに教えてくれるだろうか。その悲しみを。


「……あなたには関係無い話であります」


 一応聴いてみたけど、予想通り教えてはくれなかった。当たり前か。嫌ってる相手に自分の過去話なんてする訳ない。


「話を戻すのでありますが、先程申し上げた通り、私はあなたの根性を叩きなおしに来たのであります。さ、一緒に来てください」


 コロロはピシッとしながら、まるでオレを連行するような雰囲気を出す。

 これ、オレに断る権利は無いな。コロロの中ではもう決まってる案件になってる。


 うーん……。正直オレはコロロの誘いを断って今すぐ二度寝して、それから金稼ぎの為に王国の冒険者ギルドに行きたい。とりあえず今は睡眠という人の三大欲求を謳歌したい。睡眠くんを甘やかしたい。


 でも、なんだかんだコロロはオレの仲間を褒めてくれたし、それに女性陣とは仲が良いしな。無碍には出来ない。


 しょうがない。ここはコロロの言う通りにして、ささっと用件を済ませてその後ギルドに行くか。こんなに朝早く来るってことは、日中は仕事で忙しいから隙間時間を利用して誘ってきたのだろう。だったら、そう時間は掛からないはずだ。


「分かったよ。四騎士様直々に根性を叩き直してもらえるとか光栄の極みだしな」


 オレはブーツを履きながらコロロに同行する意思を示す。


「あなたのような者がそんなこと思うわけないであります。お世辞はいいので早く行きましょう」


 コロロがすぐさま歩き出そうとする。……オレはその姿に違和感を覚えた。


「待ってくれ。具体的には何をするんだ?」


 さっきからコロロが少し急いでいるような雰囲気を出しているのが気になる。

 まるで何かの予定に追われているようじゃないか……。


「何をって、決まっているのであります。イキョウ殿には騎士団の訓練に参加してもらうのでありますよ」

「……だからかぁ、朝から完全装備をしていたのはぁ」

「そうでありますよ」

「……訓練ってどれくらい掛かるの?」

「今日は強化訓練日なので、一日中訓練漬けでありますね」


 訓練日の頭に強化が付いてるとか、めっちゃハードなやつじゃん。そしてそれを一日中。

 いや、この体なら多分十分付いていけるとは思う。でもそんなことよりも、一日を訓練で潰されるなんで嫌だ。想定外だぞそんなの。


「行きたくない」

「ほら早く行くでありますよ。もうすぐ開始時間になります」

「嫌だ」


 拒否をしているオレの言葉を無視するように、コロロはオレの方のベッドサイドへ回りこんでくる。

 

 そしてそのまま強引に連れて行こうと、オレの外套を引っ張った。


 くそ、捕まったんじゃ隠密使っても意味ねぇ!!


「行くでありますよ!!」

「いーやーだー!!」


 勘弁してくれよ。朝のまどろみの中で考えたオレのふわっふわな一日の計画はとっても穏やかなものだったんだぞ!! それがなんで汗苦しい環境でハードな一日に早変わりさせられなきゃなんないんだよ!!


「時間が!!無いで!!あります!!」

「ならコロロだけで行けばいいじゃん!!」


 コロロが力いっぱいオレの外套を引っ張るのでオレは必死に抵抗をする。

 しかし、今のオレの能力値は指輪のせいで五十レベル代まで下がっているから、力負けしてずるずると引っ張られ始めた。


「この騎士力強い!! やめて、いや、離して!!」

「抵抗せずに大人しく付いて来るのであります!!」


「うるさいぞ。なんだ朝っぱらから」


 オレ達がせめぎあっているせいで力いっぱい騒いでいると、薄暗い室内の中でベッドから黒い影が起き上がるのが見えた。いや、薄暗いといっても、カーテン越しに朝の薄い日差しが差し込んでくるおかげでそれなりに明るいから、普通なら相手が誰かくらいは見える。黒い影に見えたのは、ソーエンがいつもの格好でベッドから身を起こしたからそう錯覚させられただけだ。


「申し訳ないのであります。起さないようにと配慮はしたのでありますが、たった今イキョウ殿のせいで無駄になったのであります」

「なんでそんな問題児を見るような目でオレを見るの? オレが悪いの? ってか離せ!!」

「ソーエン殿のいついかなるときも警戒を怠らない姿、感服したであります。が、この王城に居る間は我々王国騎士がいるので寝るときくらいはリラックスして欲しいであります」

「……ああ、そういうことか。善処しておく」


 コロロはソーエンが装備を脱がずに寝ていたことを、夜間の不足の事態に備えていたと解釈したらしい。


 でも違うの。本当はこの部屋に誰かが急に入ってきたときのために装備を脱いでいないんだ。顔を見られないようにするために装備を脱いでいないんだぞ。実際それは正解だったようだ。なぁ、コロロ。今のお前みたいな奴のために備えてんだぞ。


 オレもいつもの装備で寝ているのはソーエンを見かねて、という思いは一切無く、このいつもの装備が寝やすいから浄化の杖を使って綺麗にして寝ているだけだ。


「もー、うるさいー」


 今度はソーキスが起きてしまった。

 ……あれ? ソーキスが寝ているはずのベッドを見ても誰も居ないな。


 何処に居るんだと思い、音源を頼りにオレはソーキスの方に目を向ける。


「……なんでお前オレのベッドで寝てんだよ」

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