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無計画なオレ達は!! ~碌な眼に会わないじゃんかよ異世界ィ~  作者: ノーサリゲ
第三章-オレが何をしたって言うんだ異世界-
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17.第四試合

 オレの視界。その中に居るキアルロッドの槍が、鋭く光る。

 いや、槍が光るというよりも槍の周りに何か直線的な発光体が走る。


「雷槍の騎士、参る!!」


 らいそう……雷槍か!! え? 刃引きしてない武器にさらにエンチャントかけるとか殺意高くない?


 そんなオレの心の疑問を他所に、キアルロッドが凄まじい速さで、まるで落雷のようにオレに突っ込んできた。


 狙われているのはオレの頭。だから、頭をずらして避ける。


 瞬間的直後、キアルロッドの鋭い突きの音が右耳の容赦なく鼓膜を揺らした。まるで鋭い雷鳴を聞いたようだ。


「紙一重で回避か。やるじゃん」

「どーも」


 キアルロッドの口ぶりからしてこれはまだほんの腕試しのようだ。

 腕試しのようだけど、普通の奴が当たったら死ぬだろこんなの。


 オレの目なら問題はない。加えて、オレは対ソーエン用に弾丸すら回避する訓練をしてた、というかせざるを得なかったからこんな攻撃は避けられる。

 ……ちょっと頬にかすった気がするけど、多分避けた。クリーンヒットしてないから避けた。


「避けたからオレの勝ちでいい?」

「うちの王が勝者言ってないからダメ。続行だよ!!」


 キアルロッドが何かを仕掛けようと、槍を引いた。エンチャントが出来るなら、次は魔法による攻撃か。はたまた武器を振るうのか。

 でも、そんな選択肢オレには不要だ。次の先手はオレが取らせて貰うぞ。


「<煙幕>」


 避けたままの体勢でオレはスキル<煙幕>を発動して周囲に煙を撒き散らす。

 屋外だと持って十数秒、幸いここは四方八方を壁に囲まれているから一分くらいは持つだろう。

 ただし、この煙幕に本来の効果は期待していないから、一秒でも、一瞬でもキアルロッドがオレを見失いさえすればいい。


「<隠密>」


 そう、本当の目的はこっち。

 <隠密>は相手の目の前で堂々と隠密を使ったところで簡単に補足されてしまう。だから一旦見失わせる必要があった。

 こんな白昼堂々正々堂々なリングの上で正面から戦えるような強さを、この叛徒が持っている分けないだろ。このリングはアウェー過ぎるんだよ。


「くそっ、どこだイキョウ!!」


 近くでキアルロッドが槍を振り回す音が聞こえる。


 無駄無駄。そこにオレは居ないよ。でも、キアルロッドがどこにいるかオレも分からないよ。そして気配を探る必要も無いよ。オレはもう勝利へのルートを歩き始めてるからな。


 前に、<生命感知>を使ったときにキアルロッドが反応したから迂闊に使えない。オレの位置がばれてしまう可能性がある。


 <煙幕>って使用者ごと視界を奪うから、<生命感知>が使えない状況で発動すると、ある程度マップや地形を理解しておくとか、周囲の事前把握が要求されるからゲームじゃ迂闊に使えないんだよなぁ。


 てなわけで、オレはこそこそ慎重に活動をさせてもらう。

 さっきの観戦で大体のリングの広さは確認させて貰った。だから慎重に、それでいて大胆にリングの縁に向かって駆ける。


「ここか? ……ここだな」


 ある程度リングの縁に移動したと思って、足でちょんちょんと確認すると爪先が空を切る部分があった。


「後は……スキルを使ってー <ローション>!!」


 <ローション>。このスキルはいつでもどこでも使える足止めスキルで、ヌルヌルしている液体を手から垂れ流して地面に撒く。液体自体に拘束力は無く、ただただ滑らせる効果しかない。何故このスキルを選んだか、それは、このリングは土判定じゃないから<スワンプ>は使えないし、<ロープバインド>はキアルロッドに避けられるか切られるだろうから拘束は狙い得ない。


 この戦いは相手をリングアウトさせるか戦闘不能にすることで勝ちとなる。今回オレはリングアウト狙いだ。

 それにこの戦い方は……。


「ま、いいや。それより今はー」


 オレはリングの縁から、自分の感覚を頼りにキアルロッドの方向へ歩き出して、その道中に<ローション>を撒き散らす。


「うらぁ!!」

「えっなに!?」


 感覚的にキアルロッドの近くまで来たオレは、キアルロッドの出した声に驚く。

 と共に強風が当たりに吹き荒れ始めた。


 違う。これは強風ってより竜巻だ。必死に抵抗するが、体が流され引き寄せられる感覚に襲われる。


 辺りの煙はその竜巻に引き寄せられるように渦を巻いて段々薄れていく。

 煙が薄らぐ。そのせいかおかげか、キアルロッドの姿を観測することが出来た。


「……マジかよ」


 視界に写ったキアルロッドの姿に、オレは驚愕した。


 だって、槍を頭上で高速回転させて人工的に竜巻を作ってるんだもん。しかも、体に電気をまとってる。特殊な身体強化でもしてるのか?

 こんな<煙幕>の突破方法聞いたことがないぞ。


「よいしょっと!!」


 キアルロッドが一際大きな声を上げると、ついに霧が晴れてしまった。


 別に霧が晴れたところで問題はないけど、だからと言ってあんな非常識な<煙幕>の晴らし方をした奴に近づきたくなんて無い。


「あの緑のバンダナはどこに行った!!」「いない? まさか逃げたのか?」


 <煙幕>が消え去り、クリアな視界でリングを見た観客達は、オレを捜すものと逃げたといって鼻で笑う者達で溢れた。


 キアルロッドはそんな声に流されず、鋭い眼で辺りを確認してオレを捜っている。

 多分眼だけじゃない。全身の感覚を使ってオレを捜している。


「気配が……無い?」


 キアルロッドはオレの気配を観測出来ないようで、辺りを捜るのをやめて構えを解く。そうだよな、気配ってのは、読めないと思わず油断しちゃうよな。


 今だ隙ありぃ!!

 オレはようやく、準備していた右手のビーカーをキアルの足元に投げつける。


「うぉ!!なんだこれ!? ってかリングに知らないうちに変な水が!! うわっ滑る!!」


 オレの投げはなったビーカーは、見事にキアルロッドの足元に命中して、中の液体が足甲にまとわり着いた。


 そう。このビーカーの中身も<ローション>だ。

 <ローション>は射出の性質上、生当てする事は不可能に等しい。発動後は手から垂れ流すから、地面に滴らせるか、直接触って全身に塗りこむかしないとプレイヤー相手には当てることが出来ない。


 でも、容器に入れた投擲なら何の問題も無く当てることが可能だ。そして当てたおかげで、リングの縁からキアルロッドの足まで<ローション>の導線を作ることが出来た。ってことは。


「ウケケケケケ!!」


 オレは<ローション>の導線とキアルロッドの反対側に回り込むと、思いっきりドロップキックをぶち当てる。<隠密>は攻撃をすると解けてしまうから、オレの姿はもう皆から観測できるけど勝ちを確信した今、姿を隠す必要なんてもう無い。


「なにっ、くっ!!」


 見事にオレのドロップキックを喰らったキアルロッドは<ローション>の導線通りに滑っていき、リングの外側へと高速で向かう。


 ドロップキックを喰らわせることには成功した。でもね、オレ見ちゃったよ。キアルロッドの奴、不可視状態のオレの攻撃の直後に反応していた。当てるタイミングと<隠密>が解けた瞬間はほぼ同時だったはず。それに反応できるってあいつ人間やめてるとしか思えんわ。

 そしてその一瞬の反応は勝敗の決着を先伸ばしにさせたらしい。


「……ふぅ、危なかったよ~」


 キアルロッドは立ったまま導線を滑っていたけど、寸でのところでリングに槍を突き立てることによって自分自身を停止させていた。


「『かった』じゃねぇんだよキアルロッドぉ!!危ないは継続中なんだよ!! <アースウォール>!!」


 そんなイレギュラーでオレの勝ちを覆せると思うなよ。


 このリング上はオレの<アースウォール>の射程距離内だ!!

 ってな訳でオレはキアルロッドの足元に、小さい斜めの<アースウォール>を発動する。


 <ローション>と斜面。これが導き出す結果は、誰もが想像できる。


「すべっ!?」

「計画は完璧に遂行されたっ!!」


 キアルロッドは斜面から綺麗に滑り、そのままリングの外へすとんと落ちる。


「っしゃおらぁ!!どうだ見たか!! これに懲りたらオレの仲間に手出すんじゃねぇぞ!!」


 コロロ、ザレイト、そして王国最強のキアルロッドを倒した。これで目的の力の証明が出来た。オレ達は王国騎士に勝るものを示した。

 これでもうシアスタ達に手出しはさせない。


 会場は静まり返ってオレのことを見つめている。どうだ、オレの美技に酔い知ったか?


「いいんだ、オレはお前らを――」

「っざけんなこらぁ!!」「何も見えなかったぞ!!」「こんな勝ち方があるか!!」

「なんだよお前ら、オレ勝ったろ!? 納得しろよ!!」


 試合終了直後、絶句していた奴等は口を開き、会場全体から言われ無きブーイングを受ける。


「有り得ない!! 非常識だ!!」「決闘で姿を眩ますなどあっては――」

「もうよい」


 会場からオレに怒号が飛び交う中、王の一声が静かに響き渡って辺りは静まり返る。


「王さ、オレの勝ちでいいんだよな!?」

「うぅむ……前代未聞だからな……」


 オレの問いに対して、王は難しい顔をしてヒゲを撫で始めた。


「何が前代未聞なんだよ!!」

「その説明は俺からするよ」


 ブーイングや王に反論しているう間に、キアルロッドはオレの横へ来ていた。


「あのねイキョウ、俺は負けたことに異論はない。だから、俺の負けは事実だ」

「だったら――」

「でもね、この御前試合って、王に戦いを見せる場であり、同時に武を示すもんなんだよ」

「っあぁー……」

「理解が早くて助かる。一応言っておくけど、イキョウみたいに煙を撒いて視界を妨げるのって大分まずい」


 ここまでの試合、シアスタ達は正面切って戦った。双子は姿を一時隠していたけど、周りの視界を奪っては居ない。続くラリルレとロロ、ソーエンは正当な武を持って四騎士と対峙していた。


「でもさぁ、そんなこと事前に説明されてないんだけど?」

「いやぁ……武を嗜む者からしたら御前試合での常識だよね……?」


 もしかして、試合中キアルロッドが混乱してたのって、<煙幕>で自分の視界が奪われたこともあるけど、なにより会場全体の視界を奪う技を使ったせいなのか?

 ――――でも、そんなこと言われたって。


「オレ嗜んでないし!!」


 オレはそんなご立派な武なんてもの嗜んでない!! それにオレのやり方ってこれがスタンダードなんだけど、一々文句割れる筋合い無いんだけど!!


「嗜んでないの!? そんな力持ってるのに!?」


 だってこの力自体は元々ゲームのものだし。流石に回避とか判断とか、策の練り方は自分で培ってきたものだけど。


「キアルロッドは随分オレを買ってるけどなんで?」


 今の発現と言い、試合開始前と言い、キアルロッドはオレのことを良く言ってくれるが、オレはキアルロッドに本当の力を見せたことなんてない。


「う~ん……勘?」

「曖昧なもので認めすぎじゃない?」

「ま、こればかりは説明できないからね。現に俺負けたし。それより……。王様!! 私が負けた事は事実です!! どうかこの者へ勝利の宣言を!!」


 わお、キアルロッドもこういう公式の場じゃ丁寧な言葉を使うのか。


「……王国一の騎士がそう言うのならば仕方があるまい、認めよう。勝者、イキョウ!!」

「「「「「「「パチ…パチパチ…パチ」」」」」」」


 この会場全員が不服そうな顔をする中、オレは疎らな拍手を受けてこの戦いの勝利者となった。

 

 * * *


「……皆、勝ったぞ」


 リングを降りて、オレは力無く仲間達に勝利の報告をする。


「おめでとう」「おにさんすごい」

「おめー」

「リリムー、リリスー、ソーキスー……」


 会場の冷たいやからと違って、素直に祝ってくれる仲間達をオレはしゃがんで抱きしめる。


「キョーちゃん……」


 ラリルレは泣きそうな目でオレを見てくる。不当に扱われたオレを見て、心底悲しかったのだろう。


「ラリルレっ!!」


 オレが片腕を広げるとそこにラリルレが収まってきたから抱き返す。ロロがオレの顔に当たってきてポヨポヨしてんなぁ。


「感動的になっているところ悪いんですけ……イキョウさんって御前試合のこと知らなかったんですか?」

「知ってるわけ無いじゃん。アウトロー舐めんなよ」


 アウトローとは、この世界からとオレ自身、二つの意味でのアウトローを指す。


「えぇ……知らないにしても、あんな戦法を御前試合で使うなんて……」


 御前試合の常識を知らない身としては、あんなって言われてもどれだけ非常識かなんて知ったこっちゃない。でも、周りの反応やらシアスタの言葉を聞くと、相当非常識なことらしい。


 例えるなら、逆立ちして眼から水を飲むようなもんか? ……いや、どんな非常識なことをしたのか分からないから、今の例えは全然例えられてないだろう。

 あとなぁ。


「まさかそんな常識あるって思ってなかったんだよ。それに、あの戦い方はお前らの戦いを見たときから考えてたんだ。オレなりに何かヒントを示してやれたらなと思ってさ」


 そう。さっきの戦い方は本来想定していたものとは違う。でもオレは、昨日の夜に一生懸命作戦を考えていた奴らを見てきた。

 ずっと頑張ってきた奴等を、前からずっと一生懸命クエストをこなしてきた奴らの話を、自宅で晩飯を食いながら聞いていた。


 だからオレなりに、叛徒なりに、似たような勝ち方を見せてやれればなって思って、急遽作戦を変更した。


「……イキョウさん……!!」


 シアスタは感激を受けたのか、泣きそうな目でオレを見てくる。


「シアスタっ!!」


 オレはラリルレを抱きしめて方とは片腕を開いて、この抱えている子達の中にシアスタも受け入れる。


「感動的になっているところに水を差すが――」

「ソーエンっ!!」


 オレは何も言わず、両腕を腕を開いてソーエンまでもを受け入れる準備をする。


「入る訳ないだろバカが。今から閉会式だそうだ、壇上に上がれ。ついでに言わせて貰うが、あのの戦い方では何も見えないからヒントも何もないだろ」

「無慈悲っ」


 オレは肩に双子を、腕にラリルレ、シアスタ、ソーキスを抱えたまま壇上に上がって、閉会式を迎えた。

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