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無計画なオレ達は!! ~碌な眼に会わないじゃんかよ異世界ィ~  作者: ノーサリゲ
第三章-オレが何をしたって言うんだ異世界-
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11.売り言葉に買い言葉

「今日の料理はいつにも増して美味しいですな」「まったくだ」

「おや、また会いましたな」「いやはや、今日はどうにも腹が減ってな」


 喧騒が会場から聞こえて来る。


 今現在、オレとソーエンは一服をするために、広いベランダに出ていた。


 別に中でも吸って良い様なんだけど、あんな貴族達からの視線を向けられながら吸っても煙草が不味くなるだけだ。


 そういえば食休みをしているとき、オレ達に料理はどうだったか聞いてきたシェフはなんだったんだろう。

 めっちゃ美味しかったことを伝えると満足そうに会場から出て行った。謎のシェフだ、オレ達庶民に味を聞いても何の参考にもならないだろうに。


「ねーねー、煙草って美味しいのー?」


 柵に体を預けてそんなことを考えていると、オレの肩に乗っているソーキスが、煙草の味について尋ねてくる。


「美味い」

「ソーキスも大人になったら吸ってみるか?」


 その頃にはオレ達はこの世界にいるか分からないけど。 ……っていうか、ソーキスって今何歳児並の成長なんだ?


「吸うより食べてみたーい」

「そんなこと初めて言われたわ。食べ物じゃないからダメだ」


 この煙草はフレーバーテキストによると体に害はないらしいけど、でもそれ以前に煙草は食べ物じゃない。


 ソーキスの発言を流しながら煙を吐くと、会場の方からこちらへ向かってくる人影が見えた。

 近づいて来る人影はこっちに一直線に向かって来てる。ゆっくりと、それでいて優雅にしっとりと近づいて来る。そして――。


「ごきげんよう」


 オレ達の前に立った金髪の女性は優雅に挨拶をして来きた。ごきげんようをリアルで聞く日が来るとは……。


「どーもこんばんは」

「ふへへー、こんばんはー」


 何で話しかけられたのかは分からんけど、挨拶されたから適当に返しておこう。



「あの。今、お時間よろしいでしょうか?」

「よろしいよ」

「よろよろー」


 この後の予定なんて、部屋に戻って寝るだけだから時間なんて有り余ってる。


「ありがとうございます。お初にお目にかかります、私はナターリアと申します」


 ご丁寧に紹介をされたから、オレ達も簡単に名前だけ返す。


 ナターリアか。パッと見年下、高校生くらいか? 柔和そうな、それでいて上品な顔をしている。……にしても今日はよく金髪に話しかけられるなぁ。


「オレ達になんか用か?」

「用事……という程では無いのですが、少々お話をしてみたくて声を掛けさえていただきました」

「話し? オレ達と?」

「はい。先程食事しているところを目にしたのですが、あまりに物凄い光景だったので気になってしまって。……もしかして大道芸人の方ですか?」

「大道芸人だって。オレ達そっちの方向で金稼いでみるか?」

「断る」

「違うのですか?」


 ナターリアはオレ達を本気で大道芸人だと思っていたらしく、素直にキョトンと驚いていた。


「違うよ。オレ達はただの冒険者であって大道芸人はやってない」

「そうだったのですか。冒険者の方々は沢山食べるのですね」

「それも違うかなぁ……。オレ達がちょっと特殊なだけ」


 この子天然なのかな? それとも世間を知らないだけなのかも知れない。見るからに貴族っぽいしなぁ。


「……おいお前。何が目的だ」


 オレがそう思っていると、ソーエンがナターリアに謎の質問を言い放った。

 何って、話すことが目的なんじゃないの? さっきそう言ってたじゃん。


「……はい?」


 けど、オレの考えとは裏腹に、さっきまで柔らかく柔和な表情を浮かべていたナターリアは、ソーエンの言葉でその上品な笑顔が少し引きつった。


「何故無知なふりをしてまで俺達と会話をしている」

「え゛っ!?」


 そんでもって、ソーエンの追撃でナターリアは上品とはかけ離れた声を出した。


 なるほどなぁ……。ソーエンは、経験から成る猫かぶりセンサーでナターリアの本心を見抜いていたようだ。

 って事はさっきの天然っぽい受け答えは計算されたものだったのか。全然分からなかった。


「な、何をおっしゃいますか」

「とぼけても無駄だ。さっさと本性を現せ」

「諦めたほうがいいぞ。ソーエンにそういう手合いの嘘は効かないからさ」

「そんな……どうして……」


 ナターリアは嘘が見抜かれたのがよほどショックだったのか、地面に蹲ってしまった。


「そんなショックを受けるなって」

「私の完璧な偽装が……こんなあっさり」

「そんな自分を偽ってまでなんでオレ達に近づいてきたの? もしかして暗殺? この体じゃなくてもそれは絶対に無理だから止めとけ」

「あんさっ!? ……違うんです、そのような物騒な理由ではなく……。ただ私は楽をしたくて……」


 うーん……? 楽?  ナターリアがどういう人物か全く知らないから、どういった理由で楽したかったのか分からない。


「どうした立て、俺の質問に答えろ。何故嘘をついてまで俺達に近づいてきた」

「お前は鬼か……」


 ソーエンが猫かぶりをする奴らを心底嫌っているのは分かるけど、見た感じナターリアが悪意を持って近づいてきたわけじゃないって分かるし、もうちょっと優しくしてもいいんじゃないかなぁ。


「言いたく無いなら別に言わなくて良いよ」

「言え。何が目的だ」

「ひっ!!」

「ナターリアびびってんじゃん!! 優しくしてやれって!!」


 うずくまったままのナターリアがさらに縮こまってる姿を見たオレは心が痛くなる。年下の、しかもまだ高校生くらいの子供を脅かすのは精神衛生上良くない。


「その、私、舞踏会で、声、めんどくさくて、それで……皆さんが、私に、いたので」

「そんな無理に言わなくていいから。一旦落ち着いて、な?」

「うぅ……」


 なんでオレが見知らぬ子のフォローをしなきゃなんないんだよ……。


「そうだ!! ソーキス、お前がこの子の話を聞いてやってくれ」

「うへー? いーよー」


 子供相手なら話もしやすいでしょ。

 リラックスして貰うためにも、ソーキスをナターリアの前に降ろして通訳して貰うことにした。


「ふんふーん……。ナターリアはねー、立場上どーしても舞踏会で声を掛けられるんだってー。でねー、それがめんどくさかったらしくてー、どー逃げ出そうか考えてるときに、明らかに雰囲気が違くて、貴族っぽくなくて、避けられてるボク達に話しかければ、ふんふん。社交辞令地獄から抜け出せるって思ったんだってー」

「社交辞令地獄ってナターリアが言ったのか?」

「ボクの意訳ー」

「そっかぁ」


 どうやらナターリアは、オレ達を利用して何かしようって気は無いらしい。


「ソーエン、こういう事情ってお前的にアウト?」

「……ふう。ぎりぎりセーフだ。今後は偽らずに本音で話せ。そうすれば俺は先ほどのような態度はとらん」

「ふんふん。本当ですか? だって」

「約束しよう」


 ソーエンの言葉を聞いて、ようやくナターリアが立ち上がる。でも、ソーキスは肩をナターリアにがっちり掴まれて足元に寄せられていたから、まだ完全に安心はしていないのだろう。


「ボクこのままー?」

「そのままで頼むな」

「この子ぷにぷにして気持ちいいですね。一緒に寝たいです、くださーい」

「急にはっちゃけんじゃん」


 さっきまで上品な笑顔一辺倒だったナターリアの顔が、一変して自由な表情に変わる。今はふにゃっとした笑いを浮かべていた。


「これがお前の自然体か」

「ひっ!! ……また怒りますか?」

「怒らん。寧ろさっきの態度になった方が怒る」

「ほっ……よかったです……」

「でさぁ、何でさっきまで本性隠してたの?」

「なんと言いますか……そっちの方が社交界では無難にことが運ぶと言いますか……」


 ナターリアは、あははと言いながら苦笑いを浮かべる。


「面倒ごとを避けていたのか」

「簡単に言ってしまえば……そう、ですね」

「はー、貴族ってのも大変なんだな」

「貴族? え、あ、そうですね。立場によっては貴族の皆さんも大変なようですよ?」


 今のナターリアの反応。一瞬話に齟齬が生じたような気がする。 ……もしかしてナターリアって貴族じゃない?


「……ナターリアの身分を聞いても良い?」

「えっ、てっきり知ってるものだと思ったんですけど……」


 ナターリアは周りが知ってて当然のご身分らしい。――嫌な予感がしてきた。


「私のフルネームはナターリア=クライエン。この国の第二皇女です」


 あぁ……やっぱり……。ってことはオレ達は第二皇女に向かって大変な粗相をしていたってことじゃん。


「数々の無礼、スミマセンでした!! 打ち首だけは勘弁してください!!」


 オレはこれ以上問題を起こさないためにもすぐさま謝罪をする。

 即座の謝罪はオレがこの世界に来て、生きていく上で一番最初に学んだことだ。受付さん、本当にありがとう。


「おい、ソーエン。お前も頭を下げろって!!」

「断る。先に俺達に無礼を働いたのはこの女だろ」

「後先の問題じゃないんだよ!!」

「あの、私は大丈夫ですから……どうか楽にしてください」

「楽。楽ってどのくらいですか?」


 王様のときもそうだったけど、偉い人のいう『楽』って差が激しいからどのくらい楽にして良いか分からない。


「先ほどのようなゆるーい態度で構いませんから」

「え?いいの? じゃあ遠慮なく」


 皇女様が言ったことだ。素直に従うしかないだろう。


「……結構豪胆な方……ですね」

「お褒めに預かり恐悦至極」

「はぁ……貴族の皆さんもこれくらいフランクなら楽ですのに……」

「苦労をしてるようだな」

「そうなんですよね。貴族の方達は口を開けばおべっかばっかり。私が何を言っても褒めて来るだけ、私も皇女として振舞わなければならない。ずっと窮屈で仕方がないんです」

「そうか」

「私はただまったりと日々を過ごして、自堕落な生活を送りたいだけなのに」

「そうか」

「周りは私を放っておいてくれないんですよ……はぅ!?」


 ナターリアはとっさに口を手で押さえる。

 それによって開放されたソーキスはオレによじ登ってきた。


「どしたの」

「あの……この話は内密に……」


 ナターリアは、こちらを伺うような表情でオレ達にお願いをして来る。

 皇女って立場は、自分の理想のグータラ生活を口にすることすら憚れるのかぁ。大変なんだなぁ。


「ああ」


 本音を見せたナターリアに対しては、ソーエンは普通に会話していたから皇女の相手はソーエンに任せるか。

 オレは一歩引いて、引き続き煙草を吸いながら、ソーキスのぷにぷにでも楽しんでよう。


「ありがとうございます!! ……ところで皆さんはどういう集まりなのですか?」

「俺達は冒険者仲間だ。他にもメンバーがこの会場に来ている」


 ソーエンがオレの意図を汲んでナターリアの相手をしてくれる。流石親友、以心伝心だな。


「そうだったのですか。是非お会いしてみたいです。きっと、皆さん自由な方達なのでしょうね」

「自慢の仲間達だ。今すぐにでも会いに行こう」

「え? 待って!? そんな急に――――」


 そう言ってソーエンはナターリアの手を取って舞踏会の会場へと強引に戻っていく。

 ……あいつ……完全にラリルレ達に皇女の相手を任せる気だ。


 行く末を見守ろうと、会場の方へ目を向けると――――なにやら人だかりが出来ている場所があった。


「なあソーキス。あれなんだと思う?」


 オレはその人の集まった場所を指差してソーキスに尋ねる。


「何かはわかんないけどー、喧嘩してるっぽいよねー」

「だよなぁ」


 何が起こっているかは分からないけど、明らかに邪険な雰囲気が伝わってくる。その一団は何かぴりぴりしていた。

 だけど、触らぬ神に祟りなし。無視してこのまま部屋に戻るか。


「おお、居た居た。お~い、イキョウ」


 部屋に戻ろうとしたときに、スーツ姿のキアルロッドから呼び止められる。


「なに? 何か用?」

「いや~。あれ見える?」


 キアルロッドは会場内の人が集まっているところを指差す。


「視力は良いからもちろん見えるぞ」


 多分、キアルロッドか言いたい事はそういうことじゃないと思う。でも、このタイミングでオレを捜していたことからどうせ碌なことじゃないってのは分かっているから精一杯意の皮肉を返してやった。


「なら話は早いね。あれ仲裁してきて」


 なんと、その皮肉を華麗にスルーされたぞ?


「なんでオレが? そういうのは騎士団の仕事だろ、お前が行ってこいや」


 騎士団の具体的な仕事内容知らんけど。


「イキョウが行ったほう良いでしょ。だってあそこの中心にいるの、イキョウの仲間だから」

「なんてこったい……」


 この王国に来てからというもの、珍しくオレは何も問題を起こしてはいなかった。なのに今度は周りが何か問題を起こし始める。どうしてだ? オレ、何か悪いことしたか?


「喧嘩ならキアルロッド達みたいな騎士が対応すれば良いだろ?」

「それがさ。貴族が関わってくると、どうにも俺等の独断じゃ動けないんだよね~」

「それで関係者のオレかよ……」


 貴族関わってんのかよ、絶対めんどくさいことじゃん。早く助けにいかないとな。


「そうそう。任せたよ~」


 仲間が困っているなら助けに行くのは当然だから、仲間が関わっているって聞いた段階で向かう気ではいた。だからこの歩みに迷いはない。

 ラリルレ達が何か問題を起こすとは思えないし、多分難癖つけられたんだろ。


 オレは会場の人ごみを掻き分けて輪の中心へと向かう。


「はーいちょっと通してー、ごめんねごめんね」


 オレは集まった貴族を書き分けて行き、ようやく景色が開かれる。


 その光景、オレの目に映る中。輪の中心では、ラリルレとふくよかで髪の薄い男が言い争っていた。


「どうしたラリルレ」

「なんだ貴」

「うるせぇ、お前には聞いて無いんだよ!!」


 言い争っていた男はオレに言いかかってくるが、煩いのでこっそり<サイレント>を掛ける。叛徒の<サイレント>は成功率が低いが、あんなやつなら問題無く掛けることが出来る。


 誰かの言葉なんて要らない。今は仲間の言葉があればそれだけで良い。どんな理由があろうとそれだけ聞ければ十分。


 オレが<サイレント>を使って男を黙らせたせいで周りはざわついているがどうでもいい。

 そんなことよりラリルレから話を聞かなければ。


「キョーちゃん!! あのね、この男の人が急にシアスタちゃんを寄越せって詰め寄ってきてね!!」

「んだと!?」


 オレは思わずシアスタの方を見ると――泣いていた。

 あの男はオレ達からシアスタを奪おうとした挙句、泣かしたのか……。ただじゃおかない。


「おいてめぇ!!家のシアスタに何しようとした!!」

「…!! …!!」


 男に詰め寄って胸倉を掴むが、口をパクパクさせるだけで何も言葉を発しない。


「金魚みたいに口動かしてバカにしてんのか? 黙ってないで、何でこんなことしたのかさっさと答えろ!!」

「!!…!!…!!、!!」

「は? 言いたいことがあるならはっきり言えや!!」

「キョーちゃん。多分<サイレント>が……」


 そうだった。完全に頭に血が上ってしまっていて<サイレント>を掛けていたのを忘れてた。

 男の言い分を聞くために解除しよう。


「貴様、この私が誰だか分かっているのか!?」

「知らん。分かって欲しいなら自分で名乗れや」

「私はデルループ=アブハトリア男爵だぞ!!」

「そう。自己紹介ご苦労さん。で、何で家のシアスタを狙った? ロリコンか?」

「違う!!私はただ、氷の精霊を有効活用してやろうとしてだな!!」


 何が活用してやるだ。お前は何様なんだ。


「ほえー……殺すわ」


 貴族だろうがなんだろうが、オレの仲間を泣かせる奴は容赦はしない。

 シアスタは。いや、シアスタだけじゃない。双子もソーキスもロロも、この世界に来てから出来た、そこそこ、ちょっと、少しは大事な仲間だ。それを害する者が居るならオレは迷わない。


 ――コイツは有害だ。


 だったら一々考えなくて良いんだ。オレ達の決めた規準に抵触したから良いんだ。だからオレは空いている左手にダガーを取りだりだそうとする――が。


「キョーちゃん待って!!」


 ラリルレが左手に抱きついてきたのでダガーは取り出せなかった。


「何の騒ぎだ」


 ダガーを取り出そうとしてオレが止められてのも束の間、ソーエンが皇女と手を繋いで貴族を掻き分けて中に入ってきた。


「ソーエン。こいつがシアスタを利用しようとしてきた」

「何? ……殺すか」


 ソーエンは皇女の手を離して瞬時にオレと一緒に男の胸倉を掴んみ、そして銃を取り出そうとする。


「ソーちゃんも待って!!」


 ラリルレはオレ達の動きに機敏だな。ソーエンが銃を取り出すのも手を組んで阻止してしまった。

 最低ヤロウ、オレ、ソーエン、ラリルレで輪を作っちゃたぞ。


「な、なんなんだ貴様らは!! この私に向かって殺すなど、死刑だ死刑!!」


 コイツ頭悪いのか? それとも冗談で言ってるのか? 誰かに操られてるって考えた方がまだマシなくらいバカな事を言ってる。


「ならオレ達が死刑になる前にお前を殺してやるよ」

「いかれてる……貴様、いかれてるぞ!!」

「少女に利用してやるとか言うほうがいかれてんだろ」

「遺言はあるか。遺書を書きたいのならば特別にペンとインクを用意してやる。お前の血と皮でな」


 ソーエンの声はからは静かな怒りを感じる。


「ヒィッ!! 悪かった、ほんの冗談だったんだ!! 許してくれ!!」

「家の子泣かせた時点で冗談も何も無い。あと謝るならオレ達じゃなくてもっとふさわしい相手が居るだろ」

「子供達に謝れ」

「分かった!!そこの氷の妖精!!許せ!!」

「許してくださいだろがァ!!」

「こ、氷の妖精さん、どうか私を許してください!!」


 シアスタはこの男に恐怖感を抱いているのか、話しかけられてまた泣いてしまう。

 こいつシアスタを二度も泣かせやがったな。


「おいてめぇ!! うちの子に話しかけるときは優しく話しかけろ!!」

「ひ、ひぃ~」


 今度は男が泣いてしまった。何だコイツ、マジで何なんだ、オレ達以下のバカか。掛かってくるなら掛かって来い。掛かって来たくないなら関わってくんな。


「ねぇ……キョーちゃん、ソーちゃん……」


 ラリルレが不安そうな顔でオレ達を見てくる。そんな顔を向けられ、オレ達は頭に上った血は急激に下がる。


「……ごめんなラリルレ。つい頭に血が上った」

「……すまん」


 オレ達の謝罪はあの男に向けてではない。オレ達の行動のせいでラリルレを不安にさせたことに対しての謝罪だ。そしてここはいつものオレ達に戻ろう。


 謝られたラリルレの顔はほっとした後、ムッとした。気がした。


 でも、オレ達には最後にやらなければならないことがある。ラリルレ、何か言いたい事があるならもうちょっとだけ待っててね。


 オレ達は胸倉を掴んでいた男を軽く投げ捨てて、最後に言うべきことを言う。


「おいてめぇ等!! こいつと同じ事をしようものならオレ達が許さないかんな!!」

「それでも向かってくるものが居るならば容赦はしない」

「たとえ四騎士相手でもオレ達は遠慮しないから、覚悟しとけ!!」


 会場中に響き渡るような大声で貴族達に宣言する。

 こいつ以外にも同じような考えを持った貴族がいないとは限らない。だから釘を刺しておく。


「ほぉ。面白いことを言うな」

「誰だ!! 今挑発したのは!!」


 まだ威勢の言い奴がいたようだな。仲間の安全のためにも、ここで潰して芽を摘み取っておいてやる。


「余だよ」


 いつの間にかサークルの中心にどえらい人が来ていた。


 ……挑発の主はまさかの王様でしたか。


「まったく。騒ぎが起こっていると聞いて戻ってきてみたら……面白いことになっておるな」


 挑発の主である王は、髭を触りながら薄ら笑いを浮かべた。


「待ってくれ、オレ達は悪くない。元はといえばそいつが吹っかけてきたんだ」

「はっはっはっ。案ずるな実は詳しい話は聞いておる。アブハトリア男爵の処分は後に回すとして」

「ま、待ってください!! 王よ!!」

「誰が発言を許すと言った」

「ッ……」


 王に睨まれた男爵は口を閉ざす。


 こっわ。王様の表情がもの凄く鋭いものへと変わっていた。

 この状況で伯爵よりもオレ達を優先するのは、カフスの手紙があってのことなんだろうか。


「先ほど、四騎士を相手に啖呵を切ったのが聞こえてきたが?」

「物の例えだ。言葉通りに受け取ってもらっても困るよ」

「そうはいかぬ、我が国の最高戦力に喧嘩を売ったのだ。余もそれ相応の措置をそなたらに取らなくてはな」

「例えって言ってんじゃん!?」


 さっきは言葉に重みをつけるために四騎士の名を出したけど、別に本気で戦いたい訳じゃない。

 オレ達の仲間に手を出すならどんな奴でも、たとえ四騎士ですら相手してやるって意味で言ったんだ。


「あ~ら。この男、今更泣き言を言ってますわよ」

「ダサいですのぉ」


 オレが反論した直後。王の後ろから、急に金髪の巻き髪ロリ二人が出てきてオレと王の問答に入ってくる。


「どちらさま?」

「私達を知らないとは、愚かにも程がありますわ」

「無知な愚民に教えてあげますの」

「私は第三皇女キルマ!!」

「私は第四皇女グルマ!!」

「「ですわ(の)」」


 急に王族増えるんですけど。頭追いつかんわ。


 二人は似ているけど、年が若干離れているようだから双子では無いのだろう。結構似てる気はするが、それは主に髪型のせいだ。


「あれほど大見得を切ったのに逃げるんですの?」

「本気で喧嘩を売ったわけじゃないんだよ」

「あーら そんな言い訳が通用するとでも思っているんですわ?」

「口は災いの元だなイキョウ」


 巻き髪二人は生意気そうな顔でオレ達を挑発して来る。


「でもそうですのよねー、子供ばっかりのパーティで弱っちそうですの」


 そんな安い挑発に乗るってたまるかよ。実際、家の子達は皆レベルが低いし。一般の子供と比べたら全然強いけどな。強いけどな!!


 家の子がバカにされてもオレは痛くもかゆくの無いもんねー。オレは強さを知ってるもんね。


「そっちのバンダナとフードも弱そうですの」

「ん?」


 おっと? 挑発の矛先が変わった気がする。

 もしかして、もしかしなくても今度はオレ達の誹謗中傷か?


「服もダサいですわ」

「は?」


 聞き捨てならん。


「よくそれであれだけイキれましたの」

「パーティの底も知れますわね」

「「おーほっほっほっ!!」」


 散々オレ達をコケにしてきた巻髪二人は口に手を当てて高笑いをする。


「おい、お前ら……」

「なんですの?」

「仲間の悪口を言うのはいい。ただ、オレの悪口を言うのは許さんからな!! 覚悟しろこの巻き髪共!!」

「……最低の怒りですの」

「……ちょっと引きますわ」


 巻き髪は呆れているけど、呆れたいのはこっちじゃい!!

 オレがどんだけこのパーティの運営に尽力しているか知らないくせに、勝手に外野がオレの評価を決めるんじゃない!!


「それならば明日、そなたらと四騎士で試合をするのはどうだ?」

「やってやろうじゃねぇかァ!! ……え?」


 売り言葉の買い言葉を反射的にやってしまったオレは硬直してしまう。


「そうかそうか。それは楽しみだ!! 勝ち負けは気にしなくて良いぞ、結果は分かっているようなものだからな。はっはっはっ!!」


 王様は心底楽しそうな顔をしていらっしゃる。


 そういえば、王様は褒賞の話のときも四騎士との手合わせを提案してきていた。

 もしかして、あれって褒賞っていうよりも王様が見たかっただけだったんじゃないのか?


「このバカが」

「待ってくれ、王!!」

「誰が発言を許すと言った?」

「さっきまでバリバリ発言許されてたんだけど!?」

「明日が楽しみだわい!!」

「「ですわ(の)!! おーっほっほっほ!!」」


 オレの意見を切り捨てるように、王様は男爵を引き摺りながら人垣の向こうへ消えていく。


 引き摺られていた男爵は、何故かぽかんとしたような顔で辺りを確認しているように見えた……気がしたけど、気のせいだろう。あんなことしでかしたから、責任逃れの為に記憶なくした演技でもしてたのか? コスイやつだ。腹立たしい。


 王様がいなくなったことで、周りの貴族達はヒソヒソとオレ達に対する非難の言葉を口にしている。

 でもその避難は全部オレとソーエンに対するもんだから無視して良い。


 そんなどうでも良いことよりも……オレ、明日四騎士と戦うの?


「……二人とも。私は怒ってるよ」

「ならば我も怒っている」


 ラリルレは、オレとソーエンに怒った顔を向けてくる。


「ごめんな、急に戦うことになっちまって」

「そっちじゃないよ。あのね、シアスタちゃんのために怒ったのは分かってるよ。でも、どんな人にだってあんな言葉を簡単に言っちゃダメだよ」


 ラリルレは口調こそ優しいものだけど、本気でオレ達に怒っている。いや、怒るというより叱るって表現の方が正しい。


 ラリルレに叱られたオレ達は自分達で立てた誓いを思い出す。


 オレ達はこの世界に来てから無益な殺生はしないと決めていた。でも、シアスタを泣かせたのなら有害であり、それを排除するなら有益だ。


 ただ……シアスタはそれを望んでいるのだろうか?


 いや、望んでないだろう。だったらやめだ、表立ってやるようなことじゃない。

 シアスタの涙のせいで頭に血が上ってたけど、一旦冷静になろう。


「……頭に血が上ってた。ごめん」

「……すまなかった」


 オレ達は自分がしたことに対して反省をする。 


「おにさーんと」「ソーエン」「「こわかった」」

「そっか、ごめんな」

「悪かった」


 双子に謝罪すると共に、怖がらせたことを反省する。

 オレ達が後先考えず動いたせいで双子を怖がらせてしまった。

 

「今度、あの男爵? さんに謝りに行こうね。でも、男爵さんにはもっと謝って貰うよ。シアスタちゃんを泣かせたことは許さないもん。ものすっごく謝って貰うよ、すっごく謝ってもらうんだからぁ!!」

「……ラリルレらしいな」

「ああ、頭が下がる」

「ラリルレ、もう怒っていないのか?」

「怒ってないよロロちゃん」

「そうか。ならば我も怒っていない」


 ロロ、お前……いや、何も言うまい。


「さ、このお話し一旦終わり!! 早く部屋で明日の作戦会議しよっ!!」

「「「「はーい」」」」


 ラリルレの一声でオレ達は部屋に戻って作戦会議をする事にした。これじゃ誰がリーダーか分からないな。

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