06.業・GO・拷
「よーく見とけよ。金貨を右手で握るからな……さぁどっちだ!!」
「こっちに決まってんじゃーん」
「こっち」「みぎて」
「ざんねーん、左手でしたー!!」
三日目の……多分昼。オレは暇すぎてスキルを使って子供達をからかっていた。
子供達からブーイングを受けるけど、オレはそれがたまらなく面白く感じるほど本当に暇だった。
「うけけけけ、お前らには残念賞の美味しい魔力をプレゼントだ!!」
「「「わーい」」」
「ヒャッハッハー沢山飲め!!」
特にすることが無いので食事にエンターテイメントを組み込んで楽しんでいる。
別にここから出ようと思えば出れるけど、無罪にしてもらえる裁判を受けない理由が無いので大人しくここで待つことにした。
「ここでの最後の昼餐だ、好きなだけかっ喰らいやがれ!!」
これでやっと固い床ともおさらばだ。ベッドは子供達に明け渡してオレだけが冷たい床で寝る生活ももうお仕舞。
ようやく出られると思いテンションを上げていると、急に扉を叩く音が聞こえてきた。
そして扉に取り付けられた小窓から騎士が覗いてくる。
双子とソーキスはすぐに姿を消したので見られることは無かった。
「……その……メンタルは大丈夫か?」
双子とソーキスが姿を消したせいで、オレは一人で騒いでたやべーやつって教会騎士は認識してしまったらしい。
「全然問題無いぜ」
「そ、そうか。今から裁判が始まるが……もしダメそうなら我々から頼んで延期して貰うか? なんなら神官呼ぶか?」
あれだけオレに厳しい態度だった教会騎士がめちゃくちゃ丁寧に接してくる。
「いや大丈夫だ。今すぐにでも向かおう」
これ以上ここに居たくは無い。さっさと裁判所に向かおう。
「……分かった。ただ、体調が悪くなったらすぐに言え」
教会騎士は必要以上に心配をしながら、扉をあけるために鍵を外していく。
手枷外してたんだった。今のうちに填めよう。
「よし、出ろ」
急いで手枷を填めたオレは、教会騎士の指示に従って外に出る。
双子とソーキスはここに連れてこられたときのようにオレにしがみついて透明化してるから、バレることはない。
「キアルロッド殿の指示だ、麻袋を被れ。無理はしなくていいからな」
「へーい、遠慮なく被せてくれ」
オレはまた視界を塞がれ、鎖の引っ張られるまま歩みを進める。
今度は階段を上るばっかりだったので、今は地上を歩いてるのだろう。
でも、足の感触が変わらないってことは、ここはまだ教会内だ。
歩けども歩けども歩いている床の質感が変わらない。
「止まれ。ここが裁判所だ」
そしてそのまま足を止められる。
てっきり裁判所って言うから別な建物だと思っていたけど、教会内で裁判を行うようだ。
「今から中に入る」
教会騎士の一人がそういうと、扉を開ける音が聞こえてきた。
開ける音は重い。そうとう大きい扉なんだろう。
「罪人を連れてまいりました」
……オレはもう罪人決定のようだ。なんだ? これから行われる裁判って罪の有無を問うものじゃなくて罪の重さを決めるものなのか?
裁判ってそういうもんだっけ。もしくは別世界だから元の世界とは違うのか?
っていうか弁護士用意した記憶無いな。これ大丈夫か? 後で無罪になるからって油断してたわ。
歩かされながら自問を繰り返していると、立ち止まらされ、被っていた麻袋が取られた。
周りを見ると一般人は誰一人いなく、オレは机とそこに座る聖職者十六人に囲まれていた。パッと年代はばらばらだが、若いと思えるような顔はいない。
騎士団はオレを所定の位置に連れ終えると全員が外へ出て行き、扉は閉められる。
「只今より教会裁判を始める。君の名前はイキョウで間違いないな?」
目の前に座っている聖職者が立ち上がってオレの名前を確認してくる。
とても短い白髪で初老の男は表情が無く、少し不気味な印象を受ける。
「間違いありません」
正式な場だし敬語で答えよう。
「では、罪人の罪を言い渡す。君は、少女を利用して教会が定めた法を犯した挙句、民衆から金を巻き上げた。無知な者から搾取をしようなど恥ずべき行為だ」
オレはラリルレを利用していないし、民主から金を巻き上げてもいないんですけど。
「そして、無知な子供達を騙して己の欲望を満たし、果ては誘拐や売春、監禁を行うという、人にあるまじき行為を働いていた」
一切事実無根なんですけど。
「さらに、かのカフス=スノーケア様の知人だと周囲に偽っていることも調べにより判明した」
それは偽ってないんですけど。今上げたものの中で唯一本当のことなんですけど。てかそれ罪になるの?
「以上のことに間違いは無いね?」
「間違いしかありません」
「罪人は皆そういう」
それだけ言うと、聖職者は座った。
「……おい、聞いた意味ないだろ!!」
「静粛に」
右の聖職者がオレに命令してくる。
「静粛する前にオレの言葉を静聴してくれよ!!」
「罪人、許可の無い発言は慎むように」
今度は左の聖職者だ。
「待ってくれ、審議師、審議師はいないのか!?」
弁護士よりもよっぽど当てになる存在がこの世界にいるじゃないか。裁判って言うんだし、嘘か誠かを見極める立場がいないわけが無い。
「本来ならいるのだがな、偶然、ほんと偶然今日は予定が付かなかった。だが、そんな者に頼らなくても我々には神のご意思が付いている。神のご意思が君の運命を決めるだろう」
弁護士も審議師もいない。こんなの一方的に振り過ぎんだろ。聖職者共の采配で全て決まるじゃないか。
もしかしてこれもあの王様ってやつの采配なのか?
「神の意思とかいってるけどそれってお前らの意思だろがよ!!」
「き、貴様!! 神を冒涜するというのか!!」
「話を摩り替えんなよ、オレが言ってるのは神じゃなくてお前らのことだ。寧ろお前らのやってることが神への冒涜なんじゃないか!?」
あ、やっちまった。つい感情に任せてもの言ったから、ここにいる全員がオレを睨んでくる。
「おにいさんやっちゃったねー」
ソーキスがオレにだけ聞こえる声で言ってくる。
分かってるよ、大分やらかした。
でもいいや、この後はどうせ何やっても無罪になるって分かっているし好きにやらせて貰おう。
「そもそもオレのやったことに対する証拠はあるのかよ。それに、情報の出所は? 捏造したとしか思えないもんばっかで笑えて来るんだけど」
オレは正しいことを言ってやった。ただ……そのせいでついに聖職者達の怒りが爆発しちゃった。
「貴様!!何だその態度は!!」
「反省するどころか反抗してくるとは、罪の意識が無いのか!!」
「存在しない罪の何を反省しろって言うんだよ!!」
「自分のやったことが悪だと認識していないのか? 腐れ外道め!!」
オレの売り言葉を聖職者が次々買っていって、この空間は大混乱になる。
目には目を、歯には歯を、言葉には言葉を。オレは向けられた言葉全てに反論をしまくる。
そして――。
「静粛に」
言い合いの果てに、ただの罵詈雑言が飛びそうになる寸前でオレの名前を確認してきた聖職者が止めに入る。
「ここは争いをする場ではない。双方発言は控えなさい」
その言葉で全員が黙る。でも、聖職者達の目はずっとオレを睨んでいた。
そういえばこの目の前の聖職者だけさっきの言い合いに参加しなかったな。もしかして、こいつがキアルロッドが言っていた教会の協力者の一人なのか?
「罪人に反省は見られない。罪の重さと罪人の態度を見て、私は死刑がふさわしいと思う」
目の前の男が淡々と話す。
うーん、重くない? ……これも策略のうちなのか? いくら後で無罪になるからって、死刑は重過ぎるとは思うけど。
「流石にそれはやりすぎでは?」
後ろの聖職者が異を唱えた。
だよな、オレもやり過ぎだと思うぞ。もしやこっちが協力者か?
「何を言うか。この罪人は神を冒涜したのだぞ!! 死刑がふさわしいに決まっているだろう!!」
右後ろのやつは絶対に違うな。
「そうだろうか。主を理由に我々が死を与えるのは傲慢すぎではないか?」
今度は左!? お前が協力者か?
「あなたの言うことは正しいかもしれません。しかし、この罪人を野放しにしておくのはいささか危険かと思います」
次は右前か…これはどっちだ?
「一旦多数決を取り、それを踏まえてもう一度議論しよう。このままでは埒が明かない」
左後ろは……これもどっちだ?
「そうだな。では、罪人を死刑にすることに賛成の者は挙手を」
目の前の聖職者が多数決の案を採用して、他のやつらに投票を呼びかける。
色々意見が出てたし、手を上げるのは半分くらいだろ。
周りを見ると、オレの予想通り半分くらい。具体的には七人が手を上げていた。
過半数を超えなかったし、これなら死刑は執行されないな。セーフ。
「皆、よく聞きたまえよ」
唐突に目の前の男が言い出す。
自分の意見が多数決で敗れたから、負け惜しみでも言う気か?
「罪の魂を捧げよ」
……聖典かなんかの引用だろうか。何を言ってるのかサッパリ分からない。
けど、理解不能なオレを他所にその言葉を聞いた聖職者達は一斉に手を上げた。
つまり、ここにいる全員がオレの死刑に賛成したことになる。
「決まりだな」
目の前の聖職者は勝利を確信したように一人つぶやく。
「うおい!! やりすぎとか傲慢とか、そういう自分の意見は大事にしろよ!! よく分かんない言葉に従ってんじゃねぇ!!」
オレの言葉を聞いても誰一人手を下げることは無かった。
突然どうしたんだよ。さっきの言葉は一体コイツラにとってどういう意味なんだ。
「判決を下す」
目の前の男がニィっと気色悪い笑いを浮かべる。
初めて表情を見せたのがその笑顔って、性格悪そう。コイツは絶対協力者じゃないな。
大丈夫だ、どうせこの結果は後で無効になるんだ。だから今死刑って言われたって、未来のオレには関係の無いこと。
でも、言われ無き罪で死刑宣告されるのはちょっと納得いかないな。
「罪人、イキョウを打ち首の刑に処す」
堪えろ、堪えろオレ。まだ耐えるんだ。
目の前の男は愉悦に浸っている顔で打ち首とか言ってるけど、後で無効になるんだ。無罪になった後で顔を拝みに言って悔しがらせてやろう。
それにしてもあの笑顔は腹立つな。あいつ以外もそうだ。オレの話も禄に聞かずに自分達で勝手に人の罪は決めるわ挙句の果てによく分からない言葉でそそのかされるわ。
ここが裁判所じゃなきゃ全員一発ずつビンタしていたところだ。
「死刑の日取りはいつにする?」
「早いほうがいいだろう」
「なら今から始めよう」
「「「「「賛成」」」」」
「いくらなんでもスピーディ過ぎない?」
なんで皆やる気満々なんだよ。血気盛ん過ぎない?
死刑なんて即断即決するようなものじゃないだろ。それに仮にも聖職者なんだからもっと慈悲深い配慮をしてくれよ。
「ねぇねぇ」「おにーさん」
「ちょっと待ってろ。今構ってやる暇無いから」
双子がヒュプノシスボイスを使ってオレに話しかけてくるが、構っている時間は無い。
今ここで死刑になんて、無罪にして貰う時間がなくなるじゃないか。別に死んでも生き返ることは出来るが、そのことはカフスとの約束があるから絶対内緒にしなければならない。
「はいはい!! 異議ありまーす!! ってかさっきから異議しか唱えてませーん!!」
「処刑道具を持ってきなさい」
必死に手を上げて訴えたオレの言葉はあっさりと無視される。
「話聞いて!! 異議!!異議!!」
オレの立場で死刑に異議を唱えていいのか分からないけど、それでもこの場での死刑を取り消すために必死で訴える。
でも、誰一人オレの言葉に反応してくれない。
仕方ない。あんまり言いたくは無いけど、注意を引くために言わせて貰おう。無視されるよりはマシだ。
「バカ神!!アホ神!! ええっと……神の足臭そう!!」
どうだ。流石に神に対しての悪口なら反応せざるを得ないだろう。
「「「「……」」」」
え、何で誰も喋らないの?
さっきまでオレに噛み付いてきたやつさえも黙っている。
それどころか、誰もオレに眼を向けずに目の前の男をじっと見ている。まるで何かを待つように。
何も音がせず、誰も喋らず、ただただ無音の中で全員が男を見つめている。
様子がおかしい。嫌な感じがする。
何が起きてもいいように、逃げる準備をしておくか。
オレは逃走経路の確保をしようと<生命感知>を使って周辺の反応を確認する。
ん? 扉の方に違和感が。それに下の方に何か――。
「抵抗するな罪人よ、大人しく私の指示に従え」
そこに変な反応があると思ったのもつかの間。眼の前の男がオレに命令をして来る。――――と同時に何か頭に変な感触を受けた。
「てめぇ、今何しようとした」
多分魔法を使われて、オレはそれをレジストしたんだと思う。つまり、コイツはオレの頭に何かしようとした。
「効いていない……? 貴様、何者だ」
「イキョウってさっき教えたでしょ」
もちろんあの男はそんなことを聞いていないのは分かってる。でも正直に答える義理は無いから適当にはぐらかす。
「で、こっちはよ、お前が何しようとしたか聞いてんだけど」
「貴様、何者だ。ただの罪人ではないな」
オレは問いに答えたってのに、この男は答えてくれない。それどころか同じ質問を繰り返す。
「話しになんねぇ……」
「おにーさん」「あのひと」「おにーさんを」「せんのうしようとしたよ」
「ほえー、そんなことしようとしてたのか」
せんのう……洗脳ね。あの聖職者はオレを洗脳しようとしてたのか。
なるほどなるほど…………。いくらオレが言うこと聞かないからって、それ聖職者がやっていいことか?
双子やソーキスに影響が無いってことは、範囲系ではなく対象指定系のスキルか魔法だな。
「みんなも」「せんのうされてる」
「どれだけオレを死刑にしたいんだよ。気合入りすぎだろ」
多分、目の前の男は協力者ではない。
そして周りを洗脳してまでオレを殺す気だ。
教会の具体的な怪しい行動や企みは分からない。でも、裁判で他のやつらを洗脳してまで死刑を執行するなんて普通じゃないだろ。
「なぜ洗脳が効ぬのだ……? これが生者の可能性か、面白い、面白いぞ」
男が一人で喚いているが、無視する。訳分かんない奴の相手なんてしてやんねーからな。
「コイツ敵だな?」
そして、こんだけ必死に死刑を執行しようとしてるってことは、何か企みに関係してるな?
人を殺してまでやりたいことなんてどうせ禄なことじゃない。
「てめぇのせいでオレがこんな目に合うハメになったんだな!!」
「ああ罪人よ……素晴らしいな」
「訳分からんこと言ってんじゃねぇ!!」
この理不尽な状況を作りだした連中の一人がオレの目の前に居る。
キアルロッドは連中を泳がせてる最中と言ってたけど、今オレがコイツを捕まえて全部はかせれば全て終わるだろ。さっさとアステルに帰らせてくれ。
「お前ら全員離れろ。ソーキス、双子の防御を頼む」
「えー、いいけどーおにいさんは?」
「オレは死なない程度にやつを懲らしめる」
さっさとあいつを止めないと双子やソーキスに危険が及ぶ可能性だってある。
十割の私怨をぶつけたい。でもキアルロッドはこいつを捕まえたいらしい。だから殺すわけには行かない。ここは一割の私怨くらいで許してやる。
「とうめいの」「まま?」
「どっちでもいい。ソーキスが居れば大丈夫だろ」
「信頼感ー」
ソーキスの防衛能力はとても高い。ステータスとかそういうもんじゃなく、特性みたいなもので物理と魔法の吸収力がもの凄く高いから並大抵の攻撃じゃソーキスを傷つけることは出来ない。傷ついたとしても再生力が凄いからすぐに回復する。
だからソーキスに任せておけば安心だ。
双子とソーキスは、オレの指示に従って下がった。これでもう大丈夫。
「立ち向かうというのか、この我に!!」
何故か聖職者は嬉しそうに両手を広げている。
何言ってんだこいつ。どう見ても、明らかに普通じゃない。
「お前の方こそ何者だよ。本当に聖職者か?」
「お前が欲しい。だから死ね」
ダメだ、会話にならねぇ。
「はいもう決定、お前敵確定!!」
今の言葉で決定だ。人を救うはずの聖職者が人を犠牲にするなんて、どう考えてもおかしい。
即断即決。いつもなら<ロープバインド>で拘束するけど、今回は殴って気絶させよう。それがでオレの一割の私怨はちゃらにしてやる。
オレは<解錠>で手枷を外して、目の前の男に殴りかかる。距離にして五メートルくらいだ。速攻で殴って速攻で終わらせて、さっさと帰ろう。
速過ぎて男は反応できなかったのか、何の抵抗も無くオレの拳を顔面で受け止めた。
普通ならこれで勝利を確信してもいいくらいにクリーンヒットした。現に鼻は潰れ、顔は凹んでいる。
が、オレは勝利を確信することは出来なかった。
オレは男を吹き飛ばすつもりで殴ったのに男は微動だにしなかったからだ。
「貴様は生贄だ。貴様は供物だ。罪人は我に従え。抗え、審判の日は近い」
男は顔がつぶれているのに、何も無かったように淡々と話す。
「逃げずに示せよ、罪人。その時を待って――」
「<パラライズ>からの<ロープバインド>、ついでに<ブライド>と<スリープ>。おまけにもっかい<ロープバインド>!! んで無防備胴体にボディブローだオラァ!!」
悠長に話している男に麻痺、睡眠、暗闇、拘束のオンパレードを喰らわす。コイツの話しに付き合う必要は無い。
オレに隙を見せたのが運の尽きだったな。叛徒のオレが律儀に待ってると思うなよ。
「えげつなー」
どこからかソーキスの批判する声が聞こえてくるけど、これがオレの戦い方だ。文句は受け付けてない。
ロープでぐるぐる巻きになった男は床に倒れて寝ている。勝ちだ、これでオレの勝ちだ。
「はっ!! 私達は一体何を……」
「こっ、これは!!」
この男が眠ったおかげで他のやつらの催眠も解けたようだ。
ふぃー、コレにて一件落着――。
「貴様ぁ!! 何をしている!!」
「枢機卿に何をした!!」
「――ん?」
あ、そうか。催眠されたときの記憶って無いのか。
ってことは、急に意識を取り戻した聖職者が見た光景は、オレがこの男、枢機卿とやらの顔面をへこませた上で拘束してるって光景だな。
……やばいじゃん。
「教会騎士!! 罪人が暴走したぞ!!」
「待て待て待て待て!! オレはお前らを助けたんだぞ!!」
「戯言を!! そのまま大人しくしていれば死刑は免れたのになぜそんなことをした!!」
「お前らそこから記憶無いのかよ!! 免れない状況にされてたんだよオレは!!」
「というかなぜ我々はここに居るんだ?」
「何を言い出すんですか!? 裁判をするためでしょう!?」
「そこからのやつもいるのかよ……」
どうやらこの場には、初めから洗脳されてたやつと、さっきの投票のときに洗脳されたやつが居るらしい。
この枢機卿とやらは何を企んでたんだ? ま、それはこの国の王様に任せればいいか。
オレはさっさと無罪にして貰って、ついでにこの町で仲間の情報でも集めよう。
そのために、どうやってこの場を切り抜けようか。
「騎士団!! どうした、早く入って来い!!」
そういえばさっきから呼ばれているのに騎士団が入ってこないな。
「ええい、入って来いと言ってるだろ!!」
聖職者の一人が痺れを切らして扉を開けに行く。
「どーすんのー、おにーさん」
急に胴体と足に重みを感じた。ソーキスと双子がオレの元に戻ってきたようだ。
「どうっすっかなぁ。最悪コイツを担いで王様のところにでも持ってくか」
黒幕っぽい枢機卿を手土産に持っていこう。
キアルロッドから話を通して貰って、事情を説明すればどうにかなるだろ。
「おい騎士団!!」
扉に向かった男が、扉を勢いよく開く。
「は~い、騎士団だよ~。って言っても王国のだけどね」
なぜか扉を開けると教会騎士団ではなくキアルロッドと、それに似た鎧を着た一団がいた。
え、どういうこと?
「な!! ここに勝手に入ってくるなど――」
「勝手じゃないんだよね~。はい皆さ~ん、そこを動かないで」
キアルロッドの言葉で、王国騎士団が一斉に聖職者を取り囲んだ。
一体何が起きてるんだ?
「あれ~枢機卿は? っと、そこに居たか」
キアルロッドがキョロキョロとしながらオレに近づいてくると、床に転がっている枢機卿を見つけてそういった。
なんかその動きがわざとらしい。
「うわ~酷っどいねコレ。これイキョウがやったの?」
枢機卿の顔面を見たキアルロッドがオレに尋ねてくる。
「不可抗力だったんだ。それよりなんでここに?」
「理由は二つあってね。一つは黒幕が分かったから。もう一つは……ちょっと並々ならぬ方から手紙が来てね」
「並々ならぬ?」
「話しは後で。お~い、お前ら後は頼んだ。とりあえず全員連行しといて。俺はこのバンダナを城に連れてくから」
「「「「「ハッ!!」」」」」
キアルロッドの言葉でこの場に居る全ての王国騎士が敬礼をしながら返事をする。
「んじゃ、行こっか」
キアルロッドはオレの肩に手を回して強引にこの裁判所から連れ出そうとする。
「王城に行くよりもオレは家に帰りたいんだけど」
「それは困るな。どうしても、うちの王様が連れて来いって言ってるし、付いて来てくれない?」
そんなコンビニ行くみたいに気軽に誘われても……。
「ちなみに来ないと無罪にしないって」
「脅しじゃんそれ。会えって言われても作法とか分からないぞ」
「いいっていいって、それくらい俺が話しとくから」
「なぁ、キアルロッドって――」
「後でその疑問は解決するから。さぁいこー」
「そういわれても、うわっ」
オレはキアルロッドに強引に教会から連れ出され、高そうな馬車に乗せられた。
キアルロッドは御者席に乗っていたので話を聞けなかったけど、後で分かるって言ってたし、何より久々にふかふかな椅子に座ったオレは、人の文明の素晴らしさをしみじみと感じていたから小さな疑問はどうでもよくなっていた。




