02.バーカ!滅びろアステル!
正面に立っているヘルムの騎士が声を上げる。
王国騎士様の次は教会騎士かよ。なんで違う組織同士の奴等が手を組んでんだ。
囲んでいるのに、腰に下げてる剣と持っている盾を構えないのは町中だからか。
「その者は教会の定めた法を犯した。よって裁判にかける」
「何の事だよ!!急にそんなこと言われても……ちょっと待って」
教会、法、ラリルレ。何か頭の片隅に引っかかる物があるな。
「なぁ、犯した法ってなんだ?」
「惚けても無駄だ。教会の調査によって、その少女が回復魔法で不当に金を稼いでいたことが判明した」
「あわわわわわ、どうしよ!!」
そういえば、ラリルレはオレ達と再会するまで回復魔法で生計を立てていた。でも、教会所属の聖職者以外が回復魔法で金銭を貰うことは禁止されているってシアスタが言ってたな。
今日までそのことで何か問題が起きたわけじゃないからすっかり忘れてた。
今の教会騎士団の言い方は、あくまで罪を犯したのはラリルレだけであって、オレ達は無関係と思っているようだ。
「ラリルレに害が及ぶなら教会を滅ぼす」
「ダメだよロロちゃんっ」
後ろでロロがオレ達だけに聞こえる声で恐ろしいことを言い、それを何とかラリルレが鎮めている。
教会は病院みたいなもので、人々の生活に無くてはならない組織だ。それを滅ぼすとなるとこの世界全てを敵に回すことになる。
「少女を引き渡せ。庇うようなら、貴様等全員同罪とみなす」
教会は国境を越えて世界各国に存在していて、もちろんアステルにもある。仮に今逃げたところでオレ達に安住の地は無い。ひたすら追われる生活を余儀なくされる。
そもそも敵対すること自体が間違いと言っても過言じゃないくらいに巨大な組織だ。
「どうするソーエン」
他の面々は怯えていてまともに話を聞けそうに無いので、ソーエンにだけ聞こえるようにボイスチャットを使い小声で話す。
「敵対をしなければいい」
「それが出来たら苦労しないんだよ。まさかラリルレを引き渡すとか言わないよな」
「当然だ。そんなことをするくらいなら敵対を選ぶ」
だよな、オレも同意見だ。
「どうした!!早く少女を渡せ!!」
声を荒げて教会騎士が脅して来るから、ギャラリーがどんどん集まってきた。
教会騎士団の圧が高まる。早く決断しないと強硬手段に出そうなほどだ。
「イキョウ、俺に任せろ」
さっきソーエンは、敵対しなければいいと言った。もしかして何か考えがあって言っていたのだろうか。
「分かった。お前を信じる」
オレは教会と敵対しないような手段が全然思いつかない。だからソーエンに託そう。信じてるぞ親友。
流石にこんな町中だ。お互いに武力行使をすることはないだろうし、ソーエンの案としては交渉か取引でもして落し所を探るって所だろうな。
頼みの綱のソーエンが一歩前に出る。そして…………なぜかオレを指差し――。
「こいつが首謀者だ」
と軽快に答えた。
「……は?」
何言ってんだこいつ。
「ラリルレは利用された被害者であって、全ての罪はこの男にある。よって、捕まるべき者はこの男一人だ」
「貴様ァ、少女を誑かすなど言語道断!! それに加えしらばっくれて自分だけ逃れようとしていたなんて悪逆非道極まれり!!」
全くの事実無根な事で酷い罵倒を受ける。
理解が追いつかないが、今文句を言うべき対象だけははっきりと理解している。
「おいソーエン、なんのつもりだ。ついに人生初、お前と殺し合いをする時が来たぞ」
「待て、考えがあってのことだ。それに――」
「少女は保護!!そのバンダナをひっ捕らえろ!!」
ソーエンの言葉を遮って、騎士団が突っ込んでこようとする。
「待って!!悪いのは私なんです!!私が悪いんです!!」
その突っ込んで来そうな騎士団を止める様に、ラリルレがオレ達の前に出て遮った。
ソーエンの狂言で騙されて、まさに今からオレを捕らえようと踏み込んだ騎士達も、流石にこんな小さな女の子相手に乱暴する気は無いようで全員が踏みとどまる。
「ラリル」
「キョーちゃんは何も悪くないよ!!」
ソーエンの引きとめよりも早くラリルレがオレの無罪を主張してくれる。だが、このままではラリルレが捕まってしまう。
「そうです!!」
ラリルレに引き続き、シアスタも前に出る。
皆がオレを庇ってくれる……。どこぞのフードとは違うなぁ。オレはなんて良い仲間を――
「イキョウさんは確かに意地悪なところはありますけど、私を大人にしてくれました!!」
「お?」
「な、貴様、こんな子に手を出したのか……!!」
「キョ、キョーちゃん?」
シアスタが言っているのは、夜の町に連れ出したあの日のことを言っているのだろう。だけどね、圧倒的に言葉が足りない。
シアスタを夜に連れ出したことをラリルレに知られたら怒られそうだったので内緒にしていたけど、そのせいでラリルレに曲解される。そして何も知らない騎士団にもな。
まーずい、これは非常にまずーい。
「わたしたちも」「おにーさんに」「「メロメロ」」
「さらに小さい子にまで!?」
オレが弁解を考えていると、双子もオレを庇おうとしてくれたのだろう。オレを擁護するような言葉を騎士達に言い放った。でも、この状況でその言葉は最悪以外の何物でもない。
「素晴らしい援護射撃だな。止める必要がなかった」
ソーエンは全てを知っているので曲解をすることは無いけど、元はと言えばコイツのせいでこの状況が出来上がった。
「待ってくれ、オレはロリコンじゃない!!」
オレは自分の名誉を守るため弁解をする。
「そ、そうだよ!! キョーちゃんはせいごう?だもんね!!」
この町でオレは、サキュバスの誘惑すらも撥ね退ける強い精神力を持つ剛健な者として、精剛と呼ばれている。
「せ、精豪……貴様、どれだけ…」
ただ、世間一般だとせいごうは絶倫のことを表す。絶影め、ろくでもない称号をつけやがって。恨むぞ。
「少女達は保護を、この男は拘束するぞ!!」
教会騎士団がオレに向かって突っ込んでくる。
戦闘になったら敵対は確実、逃走すれば指名手配。どうする、どうする。
とりあえず騎士団の捕縛を避けながら考えるか。少しでも思考の時間を稼ごう。
「ラリルレが捕まるかお前が捕まるか。どちらを選ぶ」
でも、オレが時間稼ぎの手段に出ることを、ソーエンには完全に予想されていた。
騎士団を避けようとしたオレにソーエンは残酷な選択肢を突きつけてくる。
「それはずるいだろ!!」
「今だ!!」
ソーエンの言葉で足が止まってしまったオレは、衛兵に群がられてしまう。
振りほどくだけだったら簡単だけど、騎士なだけあって中途半端に力が強い強い。下手に力を入れたらぶっ飛ばして戦闘の意思があると勘違いされそうだから抵抗できない。
「触んな、離せ!!セクハラだぞ!!」
「それはお前が言っていい言葉じゃないだろ!!」
「そうだ!!よくおめおめとそんなこと言えるな!!」
ひっどい。オレの罪はでっちあげと勘違いで産まれたものなのに、謂れも無い罵詈雑言を浴びせられる。
手加減しながら抵抗をしているせいで騎士団とオレがごちゃごちゃとした攻防を繰り広げるが、ついに手を押さえられてしまう
「確保!!」
ゴツい手枷にオレの抑えられた手が塡められ、オレの手は自由を失った。
「ふんっ、あっけない。威勢が良いだけの口だけ野郎だな」
「子供の扱いは得意でも大人の扱いは苦手か? 今我々がしていることをお前は子供にやっていたのだぞ」
コイツら、自分が手加減されたと知らずに得意になってやがる。
そのことも腹立つけど、もっと腹立つのはコイツらが本気で怒っているところだ。
罵倒の言い方が嘲りや蔑むものではなく、説教をするように言ってくる。お前らは今、偽りの罪に本気になってるんだぞ。
「そこのフードの君、協力感謝する」
「気にするな」
オレの後ろではソーエンと騎士が話をしている。
「ちょっと騎士さん!!そいつも共犯者でーす!!」
不当な逮捕ならあいつも巻き込んでやろうと思い、オレはオレであいつの罪をでっちあげる。
「と言ってるが……本当か?」
「バカを言うな。子供は宝だ。そして子供の笑顔は宝の輝きだ。その輝きを汚すようなことを俺はしたくない」
聞いたことがあるぞ途中のセリフ。それ、平和の旗印に初めて会った時に言われた言葉だろ。無断引用してんじゃねぇぞ。
「な、なんて立派な志なんだ……。我々は君のような清らかな心を持った者と出会えたことを光栄に思う。彼に神の導きあれ」
「「「「導きあれ」」」」
騎士達は皆感動しているけど、ソーエンは露ほどもそんな気持ち持ってないぞ。
「では君達は我々が責任を持って保護しよう。教会に着いたらちょっと話も聞かせてもらうからね。さあ、おいで」
四人の教会騎士がソーエン達を中央区にある教会の方へと連れて行こうとする。
「ラリルレヘルプ!! 助けて!!」
「キョーちゃ――?」
オレの声に反応をしたラリルレが名前を呼ぼうとするが、ソーエンが何か耳打ちをしている。
「えっ、ほんと? そういうことなんだ。なら大丈夫だね」
あいつ、何を言いやがった。さっきまで心配そうな顔をしていたラリルレが安心しきった顔に変わっている。
「キョーちゃんありがとぉ、ファイトだよ!!」
ラリルレがグーサインをオレに向けてくるが、オレは一体何を応援されたんだ?
他の面々は依然心配そうにしているけど、ソーエンとラリルレがオレを救出しようとしないからか誰一人動かない。
「あっちの彼はあんな立派だと言うのに、貴様ときたら」
「逃れるために嘘を付くなど見下げ果てる。さっさと連行するぞ」
嘘をついてるのと真実を語ってる人物が逆なんだけど。嘘が罪なら連行されるべきはソーエンなんだけど!!
オレは手枷に付いた鎖を引っ張られ、皆とは逆の方向に歩かされる。
「ん? どこに行くんだ? 教会は中央区の方だぞ」
「今回の件は王国で起きた事件だ。よって、貴様は王国にある教会で裁くことになっている」
何だって……てっきり捕まってもアステルで拘束されると思ったから大人しく捕まっていたけど、そうなってくると事情が変わるぞ。
アステルならオレの無罪を証明してくれる人や頼れる人が大勢いるから、いくらでもやりようはあった。
それに。
「それはまずいって!!オレがアステルを離れたらこの町滅ぶぞ!!」
双子にご飯上げないと町中に催眠ばら撒くって脅されてる。だからオレだけが町を離れるということは双子が町を滅ぼすと同義だった。
「そんな訳あるか。さっさと歩け」
また逃げるための嘘と思われているらしく、オレの言うことを無視して手枷の鎖が引っ張られる。
「嘘じゃないんだって、マズいんだって!!」
オレは引く力に逆らうようにその場に踏ん張って留まろうとする。
「ええい、往生際が悪いぞ!! えっ、力つよ!?」
騎士団の一人が力いっぱい鎖を引っ張るが、オレは全力で抵抗する。
今なら力を出しても、鎖が壊れるくらいで済むから心おきなく抵抗させてもらうぞ。
「皆の者、コイツを持ち上げろ!!担いで連れてくぞ」
「げ、肉壁はやめろって!! 来んな触るな持ち上げるな!!」
騎士団が集まってオレを担ぎ上げる。腹を下にして全員で担いでいるので逆胴上げをされている気分だ。
生身で近づかれると、抵抗したときに怪我させてしまって敵対行為とみなされてしまう可能性があるから何も出来なくなる。
「だれかー!!だれかヘルプー!!」
オレは運ばれながら周りに助けを請う。
このままだと前方に見える、ギルドの前に止まってる鉄の箱みたいな馬車にぶち込まれちまう。
なぜそれに入れられるのを確信しているかというと、見るからに罪人を運ぶのに適している重厚感があるからだ。一度入ったら何者も逃がさないって圧があの鉄箱から感じられる。
四角の黒い鉄の馬車は開かれた扉以外に光が入っていない。それに、分厚い鉄板からなる壁や床は、中のものを守ると言うよりも中に何かを閉じ込めておくように作られたようにしか見えない。
騎士団の歩みは迷い無くその馬車に進んでいる。
ああ、このままオレはあそこに閉じ込められるのだろうか。でも、ラリルレがあんなところに閉じ込められるよりはよっぽどマシだろう。
オレで良かったんだ。あんなところにラリルレが押し込まれるくらいならオレが身代わりに……
「待てーい、教会の騎士達よ!!」
諦めて下を見ていたオレは、その声で顔を上げる。
そこには――――大勢の男達が集まっていた。
「その男は俺達の救世主なんだ!!どうか離してやってくれないか!!」
「そいつがいなきゃ、今頃アステルは絶望の海に沈んでいただろう!!」
「今度は俺達がイキョウを助けるんだ!!」
集まった男達は次々にオレを離せと言い始め、段々と離せコールが巻き起こる。
今オレの眼前に広がる風景は男一色……ん?数人女が居るような。まぁいい。今ここに居る皆はサキュバス騒動以来、オレを精剛と呼んで慕ってくれている者達だ。冒険者だけじゃない。衛兵や市民を巻き込んだ大勢がオレのことを庇ってくれている。
「「「「「「離せ!!離せ!!離せ!!」」」」」」
皆……。オレが色町に行けない中、悠々と遊んでいた皆……。オレを……助けてくれるのか?
サキュバス騒動以来、オレは町中の男達からとてつもない信頼を受けている。その代わり女性からはあまり宜しくない評価をいただいていた。
「「「「「「離せ!!離せ!!離せ!!」」」」」」
ここまで皆がオレを助けようとしてるんだ。流石に騎士達もオレが犯罪者だとは思わないだろ。
「騒々しい!! この男を庇うなら貴様等全員同罪にするぞ!!」
「「「「「「……」」」」」」
騎士の一声でコールがぴたっと止む。
そして男達は……無言でオレ達から馬車までの道を開いた。
「それでいい」
男達が開いた一本の道を騎士達が歩き始める。
「お、お前ら……」
分かる、教会を敵に回すようなことなんてしたくないだろ。頭では分かってる。
でも今オレの頭には、色町に行ってきたことを自慢する輩や無料チケットを使ったことをいちいち報告してくる輩などなど、腹の立つやつらの顔が大勢フラッシュバックしてきている。
その男達は今、視線を逸らしたり口笛を吹いていたりと、オレと一切関わらないようにしていた。
結果はどうであれ、オレはこの町を救った……いや、今も救い続けてるんだぞ。誰かオレを助けてくれよ。
「行くぞ、せーのっ」
だが、その思いは誰にも届かず、オレは無慈悲に鉄の箱へと投げ入れられる。
「ぶへっ」
背中から落ちたオレはやわらかい感触と変な声を感じながら、扉は閉められ暗闇に閉じ込められた。
光が一切無い空間に一人きり。自ら望んでこの空間に居るなら落ち着くこともあるだろう。でも、無理やり押し込められたのなら話は別だ。
暗闇と裏切りはオレの心を蝕んでくる。
くそ、くそ、滅びちまえあんな町。バーカバーカ!!
「うへー……なにここ暗いー」
オレの背中から声がする。そして何かがもぞもぞと動く感触が背中に伝わってきた。
聞き覚えのある声、そしていつの間にか背中にへばりついていたやつ。あいつしかいない。
「もしかしてソーキスか?」
「そーだよ、ふぁ~」
気の抜けた返事とあくびが聞こえてきた。
暗闇なので表情は見えないが、大あくびをしながらへらへらしてんだろな。
「……お前さ、今まで何してた」
ソーキスは状況を理解してなく、その上あくびをしている。考えられる可能性は一つしかない。
「んー? 寝てたー」
だろうな。
「よくあんな喧騒の中、背中にへばりついて寝れるもんだなおい」
人が大変な思いをしていたのに、一番近くにいたやつが一番大変な思いをしていなかったのは頭に来る。
「でさー、ここどこー? もーよるー?」
いつもと変わらないソーキスの態度に、オレはなんだか怒るのがバカらしくなって肩の力が抜けてしまった。
まぁ、裏を返せば自暴自棄にならずに済んだということになるから、感謝の印として現状を教えてやろう。
事のあらましをソーキスに説明してやる。
「へー、大変だねー」
話を聞いたソーキスは、人事なのでくっそ適当な返事を返してきやがった。
「めっちゃ大変だぞ。このままじゃお前に魔力を食わせてやれなくなる」
投獄コースならオレは仲間と接触できなくなる。脱獄は容易く出来るけど、そんなことをしたらシアスタ達に迷惑が掛かることなんて分かりきってるから、そう易々とは出来ない。
「おにいさんの魔力が食べられなくなるのはヤダー」
吸われる側のオレとしては手間が減るから寧ろ歓迎だよ。
にしてもこう暗いと気が滅入るな。<暗視>を使ってこの暗闇を見通すのも良いけど、出来れば光が欲しい。
とりあえず<解錠>で手錠を外してっと。そんでもって右手で<ローヒート>を点けて明かりを点ければ。
「わたしたちも」「いやー」
「どわっ!!」
明かりを点けると眼前には、とろんとした顔の金髪と銀髪のツインテールが現れた。
「リリムとリリスだー」
ソーキスは背中からオレの前に回ってきて、あぐらをかいているオレの膝の上に座った。そして図々しくも全体重をオレの体に預けてくる。
「いつの間に!?」
オレ達がこの馬車にぶち込まれたときにリリムとリリスはいなかったぞ!? ってか今まで気配すらなかったぞ!?
「わたしたちはゆめのそんざい」「ゆめはうつつにうつらない」
そういうと、双子の姿が消える。
そしてまた再び現れる。
久しぶりに聞いたぞ、夢の存在。
「それスキル? 魔法?」
「ゆめの」「そんざい」
「あっ、そう……」
スキルや魔法じゃなく、第三の夢の存在らしい。職業専用スキルみたいなもんか?
謎の力を使って、いつの間にかこの馬車に忍び込んでいたようだ。
理由は聞かなくても分かる。美味しいご飯を手放したくないからだ。絶対に。
「ちからつかって」「おなかすいた」
夢の存在の力は魔力を使うのか……。それもうスキルか魔法だろ。しかも朝たっぷり上げたはずなのにもう腹減るとか燃費が悪すぎる。
でも、双子が自主的に動いたおかげでアステルは壊滅の危機を脱したな。運が良いぜ、街の奴等はよぉ。
「はいはい、召し上がれ」
右手は<ローヒート>を使っているので左手を双子に差し出して魔力を吸わせる。
「いいなー、ボクも食べたい」
「へいへい、分かったよ」
オレは左腕の袖を巻くって肘を曲げ、座ってるソーキスがかじり付きやすいようにする。
「いただきまー」
ソーキスの魔力吸収も双子と同じで触れれば吸えるけど、口で吸ったほうが美味しいらしく双子のようにオレの生身に口をつけてくる。
ソーキスは毎回かじりついてくるけど、あま噛み程度なので痛くは無い。
「これからどうすっかなー」
頭数が増えたとはいえ、オレの周りに居るのはオレを食料としか思ってないやつらだ。打開策を考えるための材料になるとは思えない。
「二人が催眠使ってー外の人達の記憶変えればいいじゃなーい?」
ソーキスがオレの腕に齧りついたままモゴモゴと言う。
そっか、ついつい今まで催眠を使わせないようにしようと考えていたから、利用することまで考えがいたらなかった。
「あのひとたちに」「さいみんはつかえない」
双子の催眠は強力で、レベルが七十もある絶・漆黒の影達にも効いていた。あの騎士達は弱くは無いけど、そこまでレベルが高いとは思えない。
となると、本人の力以外で双子の力をレジストしているな。
「もしかして装備のせいか?」
オレとソーエンは装備が無くてもレジスト出来るけど、それは催眠音声やASMRを聞き過ぎていたからで、この世界では出来ない鍛え方だ。なら装備しかない。
「あたりだよ」「おにーさん」
ゲームでは、聖職者系の装備は魔法や属性耐性が高いと相場は決まっている。それはこの世界でも同じなようだ。
催眠がダメならやっぱり逃げるしかないか。王国の到着まではまだまだ時間があるからじっくり頭を使って一番いい解決方法を考えよう。
オレは普段使わない頭を働かせて解決策を考え始める。




