35.<インフィニ・ティー>お茶会議~カフスを添えて~
「只今より <インフィニ・ティー>お茶会議~カフスを添えて~ を始めさせていただきマース」
オレと偽カフスがあれやこれやと謝罪の嵐を巻き起こして、大説教はひとまずどうにか終了した。
今は皆食堂の方に移動して、いつものテーブルに座っている。
「今回の議題はこれだ、じゃん!!」
オレの声と共に、横でソーエンがスクロールを広げた。そしてオレはそこに書かれている文字を読み上げる。
「偽カフスの命名!!」
「いえーい!!」
議題の発表と共に、ラリルレの声を始め、皆思い思いに盛り上げる声を出す。
「よろしくー」
とうの本人は、スライムで作ったダメになりそうなクッションの上に乗ってだらっとしている。分離可能なのか……。
因みに、裸のままはダメだということでラリルレが、スパッツとぶかぶかの淡い水色パーカーを渡して着させました。
「今回の議題は、初のパーティ外から持ち込まれたものだ。各々考えた名前を聞かせてもらう。くれぐれも粗相の無いように」
さっきの大説教が終わった後カフスから、オレ達と一緒にこのスライムの名前を考えたいと言われた。オレもいつまでも偽カフスとか呼ぶのはアレだと思ったし、家の女性陣がノリノリだったから断る理由もないしで了承し、今に至る。
「一番粗相しそうな人が言わないでください」
「なんだぁ? 議長権限で追い出すぞ?」
「いいんですか? 私はものすっごく素敵な名前を考えましたけど?」
「自信満々だな。どれ、聞かせてみろ」
「ふふん、いいでしょう」
シアスタが腰に手を当てて胸を張る。
どんだけいい名前考えたんだよ。ちょっと楽しみだな。
「元貪食王さんはカフスさん、イキョウさん、ソーエンさんによって生まれ変わりました。だから、三人の文字を貰おうと思います」
ほう。発想は単純だが、シンプルゆえに分かりやすくいい名前が出るかもしれない。
「カフスさんのカ、イキョウさんのキョ、ソーエンさんのエンを取って」
「ふむふむ」
「カキョーエンです!!」
シアスタが立ち上がり、ムフーっとした顔で発表する。
それを聞いた皆の間には……微妙な空気が流れてた。
考えの単純さゆえに微妙なものが出来上がっちゃったじゃん。
「どうですか議長!! いいと思いませんか?」
シアスタが議長のオレに同意を求めてくる。
「そうかなぁ……?」
オレはあまりネーミングセンスが無いらしいけど、これだけは分かる。みんなの反応を見ればすぐに分かる。
「却下で」
「あっけなさ過ぎます……」
無慈悲な却下でシアスタは崩れ落ちるように椅子に座った。
シンプルイズベストとは言うけど、ひねりが無いのも考えもんなんだな。
「はい次」
「私に任かせて!!」
ラリルレが元気よく手を上げる。
どうやらラリルレも自信があるようで、キラキラと目を輝かせてる。
「期待できそうだ。発表よろしく」
ラリルレは可愛いものが好きだし、センスもいいからシアスタのようなことにはならないだろう。
期待度マックスだ。
「私が考えた名前はね、マリムちゃんっていうの。んふふ~、可愛いでしょー」
「おお、名前っぽい名前だぁ。因みに理由は?」
「理由? うーん……直感?」
直感でそんなの浮かぶのか……オレが逆立ちしたって思いつかないぞ……。やっぱりすごいぜラリルレは!!
と り あ え ず。
「第一候補として保留にしておくか。とりあえず皆の意見を聴いてから決めよう」
「はーい」
これ以上に良い案が出ないとも限らないしな。出ない気がするけど、一応はね、オレ議長だから見んなの話聞かないとね。
「つぎは」「わたしたち」
「……まともなので頼むぞ」
普段碌なことを言わないやつらが碌な名前を思いつくとは思えない。ましてやサキュバスだ。そっち系の名前とか付ける気じゃないだろな。
「わたしたちが」「かんがえたのは」「「みにみに」」
クスクスと笑いながら双子は言う。
この双子、これを言いたかったからノリノリだったのか……。
「それはあまりに可愛そ過ぎる。情けで却下してやろう」
「んー? よくわかんないけどありがとー」
「大人になったらも一度感謝しに来い」
品評会した挙句にそのまま名前にするとかコイツら鬼畜か? ていうか恥じらいは無いのかサキュバスには? 無いわ、出会った頃の服を考えると恥じらいなんて無縁の長物だったわ。
「次は私が行く」
次はカフスか。発案者だし、アステルとか洒落た町の名前をつけてるし、変な名前は出てこないだろ。
「この子は私の姿をしたスライム。カフスでスライム。だから名前はカフスラ」
カステラみたい。
カフスとスライムを合わせて考えたのか。キャッチーだし覚えやすいからいいじゃん。
「いいじゃん。ものすごいいいじゃん」
「「「「「「……」」」」」」
なぜだろう、気に入ったオレとは反対に皆の反応は微妙だった。
「いいねー覚えやすーい」
唯一、オレと偽カフスだけがこの名前を評価している。
「オレは良いと思うぞ?」
「ありがとう」
カフスは周りの反応に気がついていないのか、平然としていた。
気づいて落ち込まれでもしたら厄介だからさっさと次に回そう。
「ロロ、よろしく」
「我か。マリムだ」
「あっ……はい」
考えることを放棄してるのか、ラリルレの名前が気に入ったのかは知らんけど、ロロの中ではマリムがいいらしい。
「だめだよロロちゃん、ちゃんと考えて」
「う、む。考えよう」
流石にラリルレからお叱りを受けてしまったから、ロロはきちんと考え始めた。
「……貪食王だ」
「そういやそれ、お前が名付けたんだったな」
「そうだ。ゆえに我はこれでいい」
「かわゆくないよぉ……」
ロロの考えた名前にダメだしをするラリルレだったけど、別にこの会議は可愛い名前を考える会では無い。
「それも一つの案だぞ。シアスタと双子のはあれだったから却下したけど、貪食王は候補に入れとこう」
「私の名前ってそんなに酷かったんですか……」
シアスタが机に突っ伏してうなだれる。構う気は無いので放置で。
「次、ソーエン」
今のところ、ラリルレのマリムくらいしかまともなのが無いの。ここいらでマシな名前を考えて欲しい。オレはカフスラいいと思うだけどなぁ。
「俺も考え方自体はシアスタと同じだ」
シアスタのとなると、オレ、ソーエン、カフスから文字を取って組み合わせたってことか。
「案としては二つ。カイエンか、ソーキスがいいと思う」
やっべ、超かっこいいんですけど。
今からキャラネーム変えれるならオレにその二つのどっちか使わせて欲しい。
「いいじゃん。これはソーエンとラリルレの一騎打ちになるぞ」
「カフスラ」
カフスはよほど自信があるのか、自分の案をねじ込んでくる。個人的にはいいと思っているけど、皆の反応的にはなぁ……。でも、そういえばオレ議長じゃん。ここは議長権限でねじ込ませるか。
「これはソーエンとラリルレとカフスの三つ巴になるぞ」
さらっとさっきの発言を訂正して三つ巴の戦いにする。いやぁ、どれもいいね。投票迷うなぁ。
「じゃ、投票に――」
「待ってください」
投票を行おうとしたオレを、シアスタが不満爆発の顔で止めて来た。
「イキョウさんが考えた名前を聞いてません。あれほど私の名前を否定したんですからよっぽど良い名前を考えてると思うので聞かせてください」
コイツ!? オレに名前を却下されたのが余程悔しかったのか?
「お前、前にオレのネーミングセンスを酷評したよな?」
「聞かせてください」
シアスタてめぇッ……!!
オレのネーミングセンスを知ってるシアスタは、何が何でも名前をオレに言わせて恥をかかせる気だ。
良いだろう、受けて立とう。あいつを泣いて謝らせるくらいの、最高の一品を今考えてやる。
「どうしたんですか? 自信ないんですか?」
「待ってろ。思考の邪魔をするな」
煽ってくるシアスタだが、この会議に時間制限は無い。じっくり考えさせて貰おう。
直感だ。インスピレーションだ。想像だ。ありとあらゆる側面から考えよう。
偽カフスの特徴は、カフスに似てる、男の娘、へらへら、だらだら、ハネ毛、覇気の無い顔、ぶかぶかパーカー、スパッツ、ダメにするクッション、スライム、ゼリー、貪食王、魂、大食い、腹減ったな、カレー食いたい。
ここから導き出される結果は――。
「カレーゼリー」
「嘘ですよね? 本気なんですか? 笑おうと思ってたのに、もはやドン引きなんですけど…」
「流石にそれは無いだろう」
「カレー?」「ゼリー?」
「ゼリーはスライムっぽいから分かるけど、カレーはどこから来たの?」
「美味しそう」
「カレーは美味いぞ。我は好みだ」
カフスとロロだけは嬉しいことを言ってくれるが、他の面々からバッシングを喰らう。
「……カフス、ロロ、後で一緒にカレー食べよ……」
「食べる。朝食べられなかったから」
「食らおう」
「ありがとゅ……」
カレーを期待する声は、オレの枯れた心に一雫の救いを与えて回復させてくれる。
「……では、投票に移ります。なお、本人からは勝手に決めてくれと言われていて、例えどんな名前になっても良いそうです」
しょぼくれたオレの声で、挙手制の投票が開始された。
発表順に名前を上げていき、マリム二票、カフスラ二票、ソーキス四票(ソーエン、シアスタ、リリム、リリス)、それ以外はゼロ票と言う結果になった。
カレーゼリーは、順番的にソーエンの名前の時点で全員手を上げ終わったから投票すら行われずに議題が終了した。
「はいお前は偽カフス改めソーキスに決定っ。今日の会議終わり解散っ」
「みんなーよろしくねー」
「じゃ、オレキッチンに行くからあと適当しといて」
約束のカレーを作るためにトボトボとキッチンに向かう。
後ろからはやんややんやと話し声が聞こえてくるけど、進むごとにその声は遠ざかって行く。
だけど、オレの今の心にはちょうどいい。最近色々ありすぎて疲れた。料理を作るときくらいはせめてゆったりと作りたい。
そう思いながらキッチンに入ると、そよ風がオレの頬を撫でる。とても風通しがいいキッチンだ。なんて風通しの良いキッチンだ。
ああ、壊れた裏口……直すまでどうすんだ……。
また新しい問題が増えたオレは思考停止をし、やけくそになりながら作った大量のカレーを皆に嗜わせることにした。
願わくば、穏やかで自由な日々をオレに。という思いを込めて。
ここまで読み進めてくれた皆様、本当にありがとうございます。
第二章についての雑感はこちらから
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/2029081/blogkey/2893976/
次章については、王国編になる予定です。
といっても堅苦しいものは無く、あくまでいつものペースで物語りは進む予定です。が、環境が変わったときに皆がどうなるのかは書きたいと思っています。
一章、二章と、イキョウ主観の描写だったので他視点からの描写を書いてキャラに深みを持たせようかとも考えています。
物語の都合上、描写できない場面や書ききれない設定などもございますが、気になる事は質問してもらえれば書ける範囲でお答えしようと思っております。
また、書き溜めのために二週間から三週間ほど時間をいただきますが、幕間やキャラデザの投稿は唐突にします。
最後に、次章ではイキョウとソーエンがついに本気を出します。




