30.倍カフス
「っっっあ゛あ゛っ!! ソーエンのクソ野郎はどこだァ!!」
オレは飛び起きて、ソーエンを万全に殺すために装備が無事なことを確認してから辺りを見渡す。装備は腹の部分が破けていたけど、リペアツールで速攻直した。
「どこ行ったァ!!ソーエンンンン!!」
何故か皆は、オレの周りに集まっていて驚いた顔をしていた。
ああ、そうか。まだ仮面をしてるからソーエンって名前が伝わらないのか。
怒りで仮面をぶん投げそうになるけど、カフスの約束は無視できないのでつけたままにしておく。
「おいカフス!!あのクソフードはどこだ!! お前の目で探してくれ!!」
カフスを呼ぶけど、どこに居るのかが分からない。
眼をひん剥いて探すと足元にカフスが見えた。
「カフス、居るなら返事しろ……なんで寝てんの? てかまたイメチェンした?」
オレの足元に寝ているカフスは髪がいつもより短く、首元までしかなくてハネ毛だった。おまけにもみ上げだけは長くて、顔つきも少しボーイッシュに感じる。あと何故か布を被せられてた。初めて見るタイプのカフスだな。
「おーい、起きれ。その眼でソーエンを探してくれや」
しゃがんで頬をぺちぺち叩くけど、まったく起きる気配が無い。
「わ、私はこっち……」
目の前の寝てるカフスからじゃなくて、何故か後ろからカフスの声がしたからしゃがんだままそっちを向く。すると――いつものカフスがいた。
カフスの驚くような顔をしていた……けど、涙が流れたような後が頬に残っている。
「お? ドッペルカフス?」
一瞬だけ、そう、一瞬だけ、その顔に怯みそうになる。でも、それよりも今はこの二人のカフスに対しての疑問が上回った。
「私が本物。そ、そっちは貪食王」
「ふーん……」
状況がよく分からない。よく分からないけど、嫌な予感がする。
「どうして……イキョウとソーエンは死んだはず……」
珍しくカフスが動揺している。
カフスの動揺、偽カフス、皆の唖然とした顔……。
「双子ー!!双子ちゃーん!!」
オレが呼ぶと、『?』を浮かべて思考を停止したような双子がふよふよと近づいて来た。
「おにーさん」「いきてる」「「?????」」
「疑問は分かる。分かるけど、オレのお願い聞いてくれる? 後で魔力沢山あげるから」
「えっと」「うん」「おねがい?」「きく?」
「よーし良い子だ。オレの言う通りにしてくれ」
双子が無言で頷く。あっけにとられていて、オレの言うことを素直に聞くことしか出来ないようだけど、今はそれが丁度良い。
「目撃者全員の記憶改竄お願い。一人残らず。なんならオレの魔力を貸すから」
双子は言っていた。双子が関わった真新しい記憶は改竄できると。今のこの騒動は双子も関わっていたから大丈夫なはず。
「できるよ?」「とりこにしてあげる?」「「ひゅぷのしすぼいす」」
「そうそう、いいよいいよー」
双子のヒュプノシスボイスはあの絶影にも効いた。ならここに居るやつらなら全員大丈夫だろう。現に全員虚ろな顔になっている。
「そのまま、ここに居る偽カフスとオレ達の復活を良い感じに書き換えてくれ」
「うん」「やる」
双子が何かを行使したのか、急に全員が眠りに落ち地面に突っ伏す。
よし、これでいい。
「ソーエン!!一時休戦!! 全員集合!!」
「はーい」
「休戦だからな」
どこからか抜け抜けとソーエンが出てきたけど、今は後回しだ。
「これ多分結構ヤバイ。オレ達の力よりバレちゃいけないことをやらかしたらしい。さっさとずらかるぞ」
「我は……何を見ているのだ?」
ロロはラリルレの頭の上で混乱していた。
「げっ、ロロに催眠かかってないぞ双子!!」
「ろろと」「かふすには」「「きかなかった」」
邪神とドラゴンだもんな。格が違うから、この際仕方ない。事情を色々知ってる二人だしな。
「しゃーない、正体が正体だ。とりあえず、シアスタとこの偽カフスを回収したら<隠密>で家に帰るぞ。時間が無い」
そのうち皆が起きてしまう。
記憶改竄はしたが、徹底的に証拠は無くそう。
「あの、私は歩けますけど……」
シアスタが呆然としながら立ち上がってこっちに来る。
「げっ、シアスタに催眠かかってないぞ双子!!」
「シアスタには」「かけなかった」
仲間だからかな? 有象無象とは扱いが違う。
「なら偽カフスという証拠を回収して撤収!!」
呆然としてるカフスとシアスタ、謎の偽カフスを抱えてオレ達は急いで撤収した。




