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27.本当の強さ(複数回答可)

「「「「「「おおおおおおおおおおおお!!」」」」」」


 何だろう。遠くから雄たけびが聞こえてくる。


「スノーケア様!! 冒険者、衛兵一同加勢いたします!!」


 聞き覚えのある声だ。

 後ろから聞こえてくる。スライムのせいで姿は見えないけど、この声はおっさんの声だ。


「これが、私が導き出した私だけの答えです!!」


 シアスタの大きな声も聞こえてきた。何言ってんだあいつ。


「え? うん、分かったよ」


 ラリルレが誰かと会話してる声がボイスチャットから聞こえてくる。


「キョーちゃん、今ねシアスタちゃんと一緒にグスタフさんに運んでもらって追いかけてるんだけどね。シアスタちゃんが、私が皆さんに協力してもらえるようにお願いしてきました。これが私の強さですね。って伝えて欲しいって」


 おっさん……二人を抱えて追っかけてるのか。


「まさかの予想外なんだけど。そうじゃない、オレが言ったのはそうじゃないんだ」

「ええっと、そのまま伝える?」

「いや、いいや。これが正解って事にしといて……」

「シアスタちゃん、正解だって。うん、うん。パーティのリーダーを任せてくれたのもこのためだったんですねって言ってるよ」


 どのためだよ。全然違うよ。どう解釈したらパーティのリーダーがそれに繋がるんだよ。

 でも、シアスタには感謝をしなきゃな。あいつ、オレの言葉を曲解した挙句に援軍を連れてきたんだもの。結果的には大助かりだ。


「それも正解にしといて。オレ達の正体はばれてないよな?」


 仮面の効果があるから大丈夫だとは思うけど……。


「大丈夫だよ。私達は正体不明のカフスちゃん直属の部下ってことになってるみたい。カフスちゃんがそうしてって言ってた。それにね、直接名前を呼ばれても聞こえてないみたいになるんだぁ、んふふ、ちょっと面白いかも」


 さすが正体は全て秘匿する仮面だ。効果が怖すぎる。


「え?号令?そんないきなり!? えっと、みんな、私が付いてるよ!! 頑張れ!頑張れ!!」

「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおお!!」」」」」」


 後ろからものすごい雄たけびが聞こえてくる。カフス直属の部下って信頼はとんでもないものらしい。


 でもこれでオレも戦いに参加できる。流石に貪食王も大勢居る方を狙うだろ。

 攻撃が止んだら体勢を立て直して本来の役割に戻ろう。


「叛徒の力を見せてやるよ!!」


 オレは来るべきタイミングを見極めるべく、貪食王の動向に注意を向ける。

 まだ触手の猛攻は収まらない。


「そろそろか?」


 まだ触手の猛攻は続く。


「もういいだろ」


 依然変わらず触手はオレを狙って来る。


「……なんで!?」


 この状況でも貪食王はオレを一心に狙ってくる。その触手に迷いはないってくらいに一心だ。

 っざけんな!! なんでだ!? オレはヘイトアップ効果のあるスキルや装備なんて持って無いぞ!?


「お気に入りだな」

「うるさいやい!!」


 ソーエンがいらんことを言って来る。


「カフスからだ。イキョウが引き付けているおかげで犠牲が出てない。感謝している。とのことだ」

「好きで引き付けてるんじゃ無いんだけど。勝手にこっち来るんだけど」

「いいからそのまま囮に徹していろ。こちらでなんとかする」


 ソーエンがそう言うと、背後から爆発音や何かが液体を潰す音が聞こえてくる。


「おい、魔法は使ってないよな?」

「使ってないよ。爆弾とかハンマーとか使って削ってるから大丈夫!! あ、スコップ持ってる人もいるよ!!」


 ラリルレが背後で起こっていることを報告してくれた。


 よかった、せっかくの囮が無駄にならずに済みそうだ。悲しいけどこのまま囮やるかぁ……。


 叛徒の名が泣くぞこんな戦い。本来の戦い方と全然違う。


「イキョウ、カフスも<竜鎧>とやらを使うらしい」

「なにそれ見たいんだけど」

「見たければ見ればいいだろ」

「見れねぇから言ってんだろうがい!!」


 竜になるのか? それとも竜鎧だし、竜の力を持った鎧を着るとか? めっちゃ気になる。オレの男子マインドが見たいって語りかけてくる。


「ソーエン、実況して」

「そんな暇があるなら銃を撃つ」

「薄情者!! ラリルレ、お願い!!」

「双子ちゃんのお世話があるから無理だよぉ……かわゆいよぉ」


 お世話って、ラリルレは一体何をしてるんだろう。ってか双子も一緒に居たのか。


「なんで誰も教えてくれないんだよ! !もういい、今度見せて貰うからな!!」


 ファングボアとガランドウルの貸しを使ってでも見てやる。


「良い調子だ。このまま行けば予想より早く終わるかもしれん」

「そうかい。オレからは何も見えないんだけど」


 後ろで何が起こっているかは全然分からない。でも、心なしかさっきよりも貪食王が小さくなっている気がする。


「そこの者」

「うお!!」


 状況の確認のために貪食王に向けていた顔を戻すと、いつの間にか絶・漆黒の影がオレの周りに集まっていた。


「名はなんと言う」


 カフスとの約束があるからイキョウだなんて言える訳が無い。どうしよう。

 ……いっそ、絶影に合わせて言ってみるか。


「……名前は無い。ただの仮面さ」


 これでいいかな?


「!! ……了解した。我々も助太刀いたす」


 絶影は何かを察したようだけど、オレは何も発して無いぞ。何を理解したんだ。


「参るッ!!」


 絶影はその声と共に散って、オレに向かってくる触手をいくつか切り落としていた。

 全員が小太刀位の武器を片手に持っている。その様はまるで創作に出てくる忍者のようだった。


 ……え? 絶影強くね?


 オレに向かってくる触手を問答無用で全部切り刻んでるんだけど。

 でも、絶影はその強さで触手を切り落としはくれるけど、一向に数は減らない。あのスライム、体積にものを言わせて無限に触手を生成してるっぽい。


 でも、サポートが居るおかげで負担は大分軽くなった。


「すまない。我々では引き付けられないようだ」

「仮面の者は身を犠牲にしてくれているというのに」

「情けない。修行のやり直しだな」

「せめて多くの触手を切り落として、同胞の補佐をする」


 それぞれ悔いているような声を出すけど、全然問題ないんですけど。めちゃめちゃ大助かりなんですけど。あといつの間にか同胞認定されてるんですけど。

 アレだけやられても尚オレにヘイトを向けるって、何か理由があんのか? なんだろう。全然心当たりが無い。もしかして……このバンダナが羨ましいのか? ありえるな。


「すまぬな、同胞よ」

「いやぁ……情けなくないし、オレは身を犠牲にして無いし、十分助かってるんだけど……」

「甘きは苦きを上回る」


 何を言ってるのか全然分からんのです。でもこの際甘えちゃお。流石にオレも疲れてきた。


「……我が命、影の中にあり」


 雰囲気に合わせて「助けて」って言ってみたけど、どうだ? 行けたか?


「「「「!!!!!!!」」」」


 でも、めっちゃこっち見てるし間違ったかな。


「影絶えるまで」


 この返答と共に、瞬時に絶影が散って、後ろの触手を刈り取っていく。その勢いは凄まじく、オレに向かってくる触手のほとんどはオレに到達する前に切り飛ばされてた。さっきまで無尽蔵で縦横無尽に襲い掛かってくる触手は、絶影のおかげでほとんど避ける必要はなく、たまに打ち漏らしを回避して後は走るだけでいい状況になっていた。


 ……ほんと何々だこいつら。でも、大助かりだ。どうやらさっきの言葉は正解だったらしい。


「イキョウ、良い話と悪い話がある。どっちから聞きたい」


 絶影の姿に感謝と驚きを感じていると、ソーエンからチャットが入った。


「次から次へと……なんだよ。どっちでもいいよ」

「なら良い知らせだ。貪食王が大分小さくなっていきた」


 確かに、後ろを見ると小さくなったのが分かる。


「悪い知らせは?」

「散った粘液が小さなスライムになって俺達を襲ってきた」

「後ろは後ろで大変だなぁ。他の冒険者達は大丈夫なのか?」


 絶影の切った触手はそのまま追いかけてくる貪食王が吸収しているから小さなスライムにはならないけど、後ろは大惨事のようだ。


「問題ない。負傷者はすぐにラリルレが回復している。加えて、分裂体に本体ほどの強さは無い。悪あがき程度の抵抗だ」

「なら言うほど悪くは無いな」

「ただ、分裂体の対処をしなければならないので先ほどよりも削る速度は落ちる」

「めっちゃ悪い知らせなんだけど」

「キョーちゃん、ソーちゃん。私聖女だって、なんだかうれしいねぇ」

「よかったねラリルレ。オレは同胞だって」

「???? 良かったね!!」


 よく分かってないラリルレがよく分からずに褒めてくれる。


「ふむ、お前の方にはやつらが居るのか」

「そうだよ。結構助かってる」

「よかったなイキョウ。いや、同胞」

「お前も同胞認定されてるだろうが」

「んふふ~、なら私も同胞だね!! 同胞聖女だ!!」

「おーい絶影、後ろの二人も同胞だってさ」


 この際だ、巻き込んでやろう。


「歓喜。我々の同胞が増えた」

「祝砲を上げる。散らすぞ!!」

「「「「<絶影>!!」」」」


 背後で瞬時に全ての触手が切り裂かれる。その速度はさっきの比じゃない。

 えぇ……マジで強いこの集団。


「なぁ、絶・漆黒の影ってレベル何ぼなの?」


 再生が終わるまでの間にオレの周りに集まった絶影のうちの一人に聞く。


「……」


 なるほど、言い直すか。


「影の黒は如何程に濃く、その黒に星は浮かんでいるのか?」


 一応、冒険者は何級で、レベル何ぼって聴いたんだけど、あってるか?


「我々は最果ての目前まで黒く、七つの星々を見た」


 なーんで伝わってるんでしょうね。最果ての目前だから……等級は二級か。七つは七レベルって分けないだろし……レベル七十!?

 んだこいつら……くそたけぇじゃん……。


「仮面の者はいかほどか」

「オレ? ……んー、仮面は全てを覆い隠す。故に存在は無い」


 正直に答えても信じないだろうし、そもそもカフスから内緒にしろと言われているので言えないから適当にはぐらかそう。


「フッ……」


 コイツら質問に対する正しい答えよりも、満足の行く答えの方が受け入れてくれる気がする。情報収集集団がそれでいいのかよ。


「おい、イキョウ。緊急事態だ」

「どした?」


 ソーエンの声が聞こえて来たので、反射的に応答する。


「どうしたのだ、同胞よ」

「いやなに、闇の導きがオレに囁いてくるんだ」

「闇に呑まれるなよ」


 これで納得する辺り、絶影って強いだけの厨二集団な気がしてきた。


「何を言ってるんだお前は」


 ソーエンが本気で意味不明なような声で聞いてくる。


「察してくれ」

「ああ、絶影か」


 理解が早くて助かる。


「ザッツライト。それよりどうした」

「スライムが無差別の攻撃を始めた」


「えっ!?」


 後ろを向くと、貪食王は脚を止めて……脚? ……体を止めて、全身から触手が生えていて所構わず攻撃をしていた。


 無数の触手を地面に叩きつける様子は、まるで地団駄を踏んでいる子供のように感情を表しているみたいで、本当に無差別で、誰も居ない地面にすらその触手を叩きつけていた。

 皆から削られたもんだから、オレを追うよりも敵の排除を優先してるのだろう。もっと早くにそうしとけや。


「カフスちゃんの指示で、衛兵さんと冒険者の皆は全員下がってもらったよ!!」

「ナイスカフス」


 貪食王は元の半分以下まで縮んでいた。せっかく小さくしたのに、そいつらが吸収されてまた大きくなられちゃ困るからいい判断だ。


「ここまで小さいなら位置によっては打ち抜ける。核さえ止まればの話だがな」


 ソーエンの言葉通り、核は未だに高速で不規則に動いていた。

 止まればって言われても……核を止める方法が分からんからどうすればいいのやら。

 とりあえず、オレを狙わなくなったしソーエンたちと合流するか。



 絶影にも後ろの状況を伝えて貪食王の反対側に回る。

 ソーエン達は触手の範囲外に退避していた。


 カフスは羽の生えた状態で空で待機している。<竜鎧>とやらは解いているのかいつも見ているカフスに翼が生えているだけだった。


「もう見境無いって感じだな」


 合流したソーエンに話しかける。

 誰も追わずただ無差別に周囲を攻撃してる姿はそうとしか表現できなかった。ただただ暴れているだけだ。そこには何の意味も無い。


「お前が囮をやっていたときよりも今の方が何倍も厄介だ」

「攻撃役は攻撃に集中できたもんな。囮のおかげでよ」


「同胞達よ、どうする」


 オレに付いてきた絶影から聞かれるが、そんなのオレも知らん。


「――唯一、方法がある」


 おや? どうやら、ソーエンは何か考えがあるようだ。

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