34.これでお相子だアーサー
一方その頃、アステル陣営はというと――推定レベル百~二百はあるモンスターや人、異形と乱戦を繰り広げていた。
そんな中、巨人を切り倒したティリスが大声を上げる。
「あーもう!! 変な紋章浮き出たと思ったら急に強くなってなんなのよコイツ等!!」
「ガルルゥ……ッ!! 段々とあちらの勢いが増して来てます!!」
「私達が大悪魔的に暴れすぎましたかね。他の勢力と比べてこちらに戦力が割かれている気がしてなりません」
アルフローレンは、強い者達には強き者を差し向ける。差し向けた者を越えたならば、より強きものを、それを超えればさらに――。最初は見物、次が様子見、時間が立てば立つほど、この天使の試練は苛烈さを増すのだ。
ただし、差し向けるのは、かつて英雄だったが結局は世界が生んだ者達。世界達が産み落とした者達に負けるような、そんな脆弱な世界は、はなから神になる資格など有りはしない。
この戦場で戦う者達は、神に成る資格など知らない。ただ、戦う皆が理解している事が一つある。この戦い、段々と苛烈さが増している、ということを。
「どうするシュエー、皆を下がらせるかい?」
「下げたところで勝ち目なぞありんせん。世界が壊れるというのにどこに逃れんしょう?」
「そう……だね」
この戦場から逃げたとして、その先に道はない。戦うしか道は切り開けない。だから皆は戦い、そして信じてる。カフスが、仮面部隊が、この戦いを終わらせてくれることを。
しかし、信じたからと言って自分達の戦う相手が弱くなるわけではない。
「やべッ、剣が!!」
一人の冒険者は、写し身達の攻撃を受けて、自分の持つエモノが破壊される。そうして生まれた隙は、メイスの重厚なる打撃を叩き込まれる隙ともなってしまった。
「ッぶねぇ!!」
「キンスさん!?」
間一髪のところで、キンスが身を挺して庇い、それと同時に金属同士がぶつかる音が乱戦の中で激しく響いた。それによって弾かれた写し身に、間髪入れずにモヒカとフローが波状攻撃を叩き込んでどうにか討伐する。
キンスは頑健に特化した力の持ち主だ。しかし、それでも、カフスの加護があろうとも、皆を庇って攻撃を受け続ける体にはダメージが蓄積していた。
他の者達だってそうだ。戦いの中で倒れた者だって居る、疲労に息を荒げている者も居る、血を流しながら戦っている者だっている。
装備が傷つき、体が傷つき、仲間が傷つく。しかし、それでも尚、皆が世界を救う為に戦い続ける。志だけならば、この場に居る者達は全て勇者とも呼べよう。
何十、何万の勇者達が、世界を救う為にこの場に居る。そして戦っている。
* * *
「いててててて……復活したから痛くないけどな。
これでお相子だアーサー。オレは死んだ、だからお前を殺すよ」
「――<願い集いの大光剣波>」
「あらまぁ、剣がびかびか光っちゃって。何するおつもりで――剣でビーム放つなボケぇ!!」




