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15.多数派には勝てない

 昨日は夜遅かったし、もう疲れたので明日説明すると言ってオレは玄関で不貞寝した。

 朝は、ギルドで寝たときよりも体がバキバキだったけど、どうしてか頭はすっきりしていた。やっぱり睡眠て大事だわ。


 カレー食べよ。


 食堂に行って、適当に切った具材を適当にフライパンで炒めて適当に皿に盛り付けて完璧なカレーを六つ作る。

 これが朝の癒しだと思いながらカレーと紅茶を用意して、他のテーブルから椅子を二つ持ってきてから席に座ると、ソーエンが起きてきてオレと一緒に朝食を取る。


「お前といると飽きないな」

「開口一番に言うことがそれかよ」

「おはよう」

「はいよ、おはよう」


 昨日と違い、オレはカレーを食べ始めたばかりだからソーエンの方が先に食べ終わってしまう。


「サキュバスの件について説明はするのか」

「当たり前だ、誤解を解かないとオレがロリコン扱いされたままだからな。何が何でも誤解を解く」


 オレが鋼の決意をソーエンに話して、カレーを掻き込んで優雅に嗜むと、キッズ達がぞろぞろと階段を降りてきた。

 双子は昨日と違い、金髪が黒いワンピース、銀髪が白いワンピースを着ていた。

 恐らくラリルレが着せたんだろう。


「おはようさん」

「おはよう」「おはよう」「「おはよう」」

「バイノーラル朝のご挨拶やめろ。シアスタとラリルレ、ロロもおはよう」


 ご丁寧にヒュプノシスボイスまで使ってきやがった。


「……おはよぅ」

「……おはようございます」


 挨拶に変な間があって返されたけど、確かに返事は貰った。ロロからは貰えなかったけどな。


「大事な話がある。皆座ってくれ」


 オレはいつに無く真剣な顔で言う。

 絶対に解くぞ、この誤解をな!!


「もしかして結婚するの!?」


 オレの言葉を聞いたラリルレはすごい方向に勘違いをして驚いてしまった。


「うーん、ラリルレは朝から想像力が豊かだね」

「ロリコン」

「誰がロリコンじゃ。その誤解を解く話をするの、いいから座ってくれ」

「その前に朝ごはんを――」

「大丈夫だシアスタ、作ってある」


 さっき作ったカレーをアイテムボックスから出してテーブルに並べる。

 サキュバス共用にも用意してて、お誕生日席に設置した椅子の前に置いた。これで全員問題無く座ってカレーを嗜める。


「カレーですか……いいですけど」

「カレーだぁ!! んふふ~、美味しそぉ」

「なんだこのヘドロは」

「最高においしいヘドロだから食ってみろ」


 ロロからカレーを貶されたことは怒りそうになるけど、それでは話が進まないからここは我慢しよう。


「わたしたちは」「いらない」


 そういうとサキュバス共はオレの両脇にふよふよと飛んでくる。


「なんだ? 腹減って無いのか?」

「ちがう」「わたしたちは」「「こっち」」


 そういうと金髪がオレの右手を銀髪は左手を取って指を吸ってくる。

 やめんかと突き飛ばしたいけど、少女に手を上げるようなことはしたくないのでやめておこう。

 ここからは真剣な話をするんだ。こんな状態になっても真剣な顔も崩せない。


「そういうのは部屋でやってください」

「シアスタ、座れ」

「その格好で真剣な顔もやめてください。おバカさんにしか見えません」


 イラッ……っとするけど我慢我慢。


「今からする話を落ち着いて聞いてくれ」

「わかりましたよ……。座りましょラリルレさん」

「う、うん」


 オレの姿を見てラリルレは困惑していたけど、シアスタの言葉で席についた。

 ようやく全員が席についた。これでようやく話が出来る。


「オレ達は昨日、確かにサキュバス捕獲作戦に参加した。これは真実だ」

「ええ、まあそうですよね」

「それで、昨日この町は割りと壊滅の危機に晒されたんだ。オレ達以外の参加した冒険者が全員サキュバスに操られた」

「えぇ……男の人達何やってんですか……」


 シアスタが呆れた顔をしてオレを見る。オレは操られていないのに。


「そのサキュバスはオレが倒した」

「それで終わりですか?」

「終わりじゃない。この騒動の犯人がコイツらなんだ」

「サキュバス飼いならしてるじゃないですか!!」

「ちっがーう!! 今から詳細を説明するからよく聞きやがってくださいませぇ!!」


 オレは昨日の夜、どんな作戦だったか、その途中で何が起きたか、どんなことをしたか、催眠のこと、皆の記憶が変わっていること、サキュバスの企んでいたことを話した。

 その間にロロが「このヘドロ美味だ」とかほざいていたから残りの2皿もあげた。


「大体の事は分かりました。でもどうしてお二人がここにいるんですか?」


 この反応を見ると、オレが寝た後、他のやつらも話をせずにみんなもすぐに寝たのか。そりゃそうだよな、夜遅かったもんな。


「わからん。どうしてだ、オレの指を吸い続けてる双子よ」

「おにーさんのまりょくは」「とってもおいしい」「どろどろこくて」「のどごしもいい」


 双子はオレの指を舐めながらモゴモゴ喋るからくすぐったい。


「だそうだ」

「いや分かりませんよ、魔力に味なんてあるんですか?」


 シアスタは魔力は見えても味は分からないらしい。


「ある」「いままでで」「おにーさんが」「いちばんおいしい」


 双子はようやく口を離して話し始めた。


「でも昨日偶然吸ったのがオレなだけでソーエンとかも上手いかもよ?」


 ずっとこうされるくらいなら誰かに押し付けてターゲットを逸らしてしまおう。


「やめろ。俺に矛先を向けるな」

「猫の集会所」

「……少しだけだ」


 オレの取引条件を聞いて、ソーエンは渋々右腕を伸ばして吸われる準備をした。


「ちょくせつのほうが」「おいしい」

「断る」

「猫の――」

「分かった」


 ソーエンは赤い手袋を外して素手を晒す。

 オレも直接吸われたんだ。お前にも同じ思いをしてもらう。


「「いただきまーす」」


 ソーエンの指を吸い始める双子だったけど、すぐに口を離してしまう。


「このおにーさん」「いたい」

「残念だったなイキョウ。お前の代わりにはなれないようだ」


 嬉しそうにしている憎たらしい目でソーエンがオレを見る。

 コイツ、オレの魂胆を分かってやがったな。

 双子は舌をちょびっと出して痛みを飛ばそうとしている。


「次はラリルレの番だ」

「私!? でも……ちょっと興味あるかも……」


 そういってラリルレは両手を上げて双子が吸いやすいようにする。


「「いただきまーす」」

「召し上がれー。んふふっ、くすぐったーい」


 双子がラリルレの手を吸って、少し経つとホゥと息を吐いた。


「こころがおちつくあじがする」「すごくあたたかい」


 人でいうお茶みたいなものだろうか。


「ラリルレらしいな」

「なんだか嬉しいねぇ」


 魔力を褒められたラリルレは双子の頭を撫でていた。


「私も試してもらっていいですか?」

「いいよ」「おもしろそう」


 了承を貰ったシアスタはカレーのせいでびしょびしょになった手を上げる。

 あとで床拭かなきゃ。

 シアスタの手に双子が口をつける。


「シアスタお前魔力吸われて大丈夫なのかよ。精霊なんだろ? 消えない?」

「大丈夫ですよ。他種族と同じで、魔力が無くなっても心と体がだるくなるくらいなので」


 精霊ってなんなんだろう。今のところ精霊っぽいところを見たことが無い。


「オレは魔力が切れてもだるくなったことなんて無いぞ。ソーエンは?」

「無い。ゲームの体だから作りが違うんだろ」


 なるほどな。あっちの世界のものでもこっちの世界ものでもない体だしありえるか。


「つめたい」「きれがいい」

「むふー、褒められました」


 やっぱこいつ自信家だわ。


「ロロちゃんのも飲んでみて」


 ラリルレに言われたロロはカレーを食べながら空いている触手を無関心そうに差し出す。

 そして双子はその触手に口を付ける。けど。


「にがくてあまい?」「でもしょっぱい?」「「よくわかんない」」

「お前どんな魔力してんだよ」

「我はじゃ……ただのロロ。それだけだ」


 邪神と言いそうになっていいとどまるロロ。ラリルレの方を一瞬見て言いなおしてたな。相変わらずラリルレの言うことだけはちゃんと聞くやつだ。


「となると、大体はシアスタが見た魔力の通りの味か」

「なーにそれ?」


 ラリルレには説明していなかったから、シアスタ本人から説明が入る。

 その間に双子は戻ってきてまたオレの魔力を吸い続けた。

 昨日みたいに一気にMPが減ってないから、今日はゆっくり味わっているんだろうか。


「―――――――ということです」


 シアスタの説明が終わる。


「ねね、私はどんな風に見えるの?」

「ラリルレさんはやさしくて暖かい感じです」

「他のみんなは?」

「ソーエンさんは澄んでいて棘棘しい感じ、イキョウさんは濁っててなんか四角いです」

「濁ってて四角……」

「よくわからんでしょラリルレ。ロロやこの双子は?」

「ロロさんは……こう渦巻いてて色んな感じが混ざっています」


 シアスタが両手で渦巻きのジェスチャーをしながら難しそうな顔で説明する。


「双子さんは――」

「リリムだよ」「リリスだよ」


 おっと、思いもよらないタイミングで初めて名前を知った。金髪がリリム、銀髪がリリスか。


「リリムさんとリリスさんはふわふわもこもこしていますね」


 オレ以外その人の印象に近いものが魔力に現れてるのに、濁ってて四角なオレは一体何なんだ。


「私はとても綺麗ですけどね!!」

「双子さ、魔力って精力なのか?」

「とっても綺麗ですよ!!」

「はいはいお前は十分綺麗だよ」


 シアスタは、一回スルーしたのに食い下がってきやがった。ご満悦顔で座ってるのすっごい腹立つ。 

 サキュバスは精力を吸うって聞いていたけど、今のところ魔力しか吸われていない。


「ちがう」「でもつながってる」

「魔力と精力が?」

「そう」「たましいとにくたい」「まりょくとせいしんりょく」「ぜんぶつながってる」

「うーん? 魂と肉体? 魔力と精神力?」


 精力って精神力のことなのか? 一文字違いだし似てるっちゃあ似てるとは思うけど……。


「私、前に師匠から聞いたことがあります。魂は肉体を作り、肉体は魂の器になってるって。精神も、意思あるものが魔力を生み出すって教わりました」


 確かに生きているものにしか魔力は生み出せないもんな。魔道具は魔力を補充しないと使えないから生み出しているわけじゃないし。

 それに、肉体と魂か。オレ達は復活のたびに体が元に戻る。もしかしたら、復活するときに魂が肉体を作り直して器を完璧な状態にしてもう一度宿っているのかもしれない。


「それで魔力が切れるとだるくなるのか。でも心は分かるけど何で体もだるくなるんだ?」

「肉体と魔力も繋がりはあって、魔力が切れると言うことは体から精神力が無くなるって事ですから、貧血の精神力版みたいな感じです」

「魂と精神力は?」

「魂が無いものに精神はありませんから、ここも繋がっています」

「なるほど。魂・肉体・魔力・精神は全部繋がってるのか」


 元の世界じゃオレ達に魔力なんてものはなかった。だからオレ達は魂・肉体・精神が繋がってて魔力が独立してるのかも。このことはゲーム組だけで今度話し合ってみるか。


「でもそしたら、何でサキュバスは男だけ襲うんだ? 男も女も変わんなくない?」

「おとこのひとのほうが」「かんたんにまりょくをすわせてくれる」「さきゅばすなら」「じょうしき」


 なるほど。サキュバスって合理的な選択と記憶改竄をして生存競争を生きてきた結果、男を襲うって言われるようになったのか。


「ありがとうシアスタ。お前のおかげでまた一つ賢くなったわ」


 シアスタに教えて貰った結果、サキュバスについて詳しくなったとは言えないから、適当に濁してお礼を言っておくか。


「分からないことがあったらまた聞いてください!!」


 オレが魂や肉体に付いてだけじゃなく、サキュバスに対して賢くなったことにもお礼を言ったなんて知らないシアスタは自信満々に言い放つ。


「はいはい、頼らせてもらいますよ。双子はこれからどうすんだ?」


 勘違いしているシアスタの鼻がこれ以上伸びないようにオレはさっさと話題を変える。


「わたしたちも」「ここにすむ」


 話題を変える方向を失敗したぞ。


「嘘だろ……いいのかよみんな」


 サキュバス騒動の犯人だし、オレの心の平穏を乱すようなやからを抱え込みたくは無い。


「私は問題ないです。ふわふわもこもこしていて可愛らしいので」

「私もかわいいから賛成!! んふふ~、かわゆいなぁ、もっと色んなお洋服着せたいなぁ」


 みんなオレの敵か?


「ソーエン!!」


 こいつならサキュバスなんて存在は嫌がって反対してくれるはずだ。


「飯代が掛からないならいいだろう。幸い部屋は余ってる」


 みんなオレの敵だ。


「おにーさんがことわったら」「まちのひとにまたさいみんする」

「オレの責任重大過ぎじゃない?」


 あんだけ苦労して捕まえたのにオレには不幸しかやってこない。


「なんで、なんでオレだけ……」

「多数決と町への被害を考えて決定だ、イキョウ。面倒はお前が見ろ」

「アステルの命運がオレに掛かってるのほんとつらい。分かったよ、住んでいいからせめて無差別にあの催眠をやるのだけは本当にやめてくれ。あと常識や記憶を改竄するのも禁止」

「だいじょうぶ」「きおくをあやつれるのは」「わたしたちにかんすることだけ」


 よかった。あの催眠はそこまで万能じゃないらしい。


「ところでお前ら何歳なの?」


 見るからにちっちゃいしシアスタよりも幼い感じがあるから多分年下だよな?


「わたしたちはゆめのそんざい」「ゆめにねんれいはない」

「じゃあ、親はどこにいるんだ?」

「わたしたちはゆめのそんざい」「ゆめにおやはいない」

「……産まれた場所は?」

「わたしたちはゆめのそんざい」「ゆめにうまれるばしょはない」


 なんなんだコイツら。氷の妖精、邪神ときて次は夢の存在かよ。そのうちこの家で百鬼夜行つくれちゃうかも。勘弁してくれや。


「リリムさんとリリスさんはこれからお仕事どうするんですか?」

「わたしたちに」「おかねはいらない」

「ふざけんな、オレの魔力もただじゃないんだぞ。それにお前ら滞在証もってないだろ。飯食ったら作りに行くぞ。金はオレが貸してやるから」

「おにーさんが」「そういうなら」「いく」「いーく♡」


 ロロがカレーを食い終わり、ビシャビシャのシアスタを魔法で乾かしてから皿を片付けて出発する。

 家を出た途端に、ソーエンが猫の集会場とうるさかったから、昨日見つけた場所を詳細に、道順までしっかり教えて勝手に向かわせた。あいつ見ただけじゃ分からないけどめっちゃルンルン気分だった。オレには分かる、絶対途中でエサ買って行く気だ。

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