06.会
「……キョー、私もぎゅってして」
「へい? へい」
「ぴゅふふ~」
「ふむ……ふむ」
サンカに何て言ったか聞こうとしたらピウからリクエストが入り、尚且つ横からは何か『ふむふむ』聞こえてきた。なんと言うか、満足そうな声だ。
んだソーエン? 何が『ふむふむ』なんだよ。
「なんだかなぁ……。もっと色々聞きてぇことあったんだけどよ、イキョウはイキョウって分かったし、ソーエンは相変わらずだ。なんにも変わりゃしねぇ。だったらそれで良いって思っちまうよ」
「分かるにゃぁ、二人共凄い存在なはずにゃんだけど、アレがどうしても先行して全然遠い存在に感じにゃいにゃ」
「我々の調査でも街の評判はアレの方が上回っている。が、それが二人の狙いで印象操作をしている線も捨て切れない」
「確かにナァ……。アレだけ問題を起こすのは普通は無理だナァ、姿もアレだし……。目的はともかく二人共前々から色々画策してたって考えた方が腑に落ちるナァ」
「だったら直接聞いてみるニャ。ニャーイキョウソーエン!!」
オレが隣のふむふむ野郎に気を取られていると、イムズスから呼ばれた。もうターン制質疑応答じゃなくなってるぞ。
「二人の行動や格好って、いんしょー操作を狙ってしてるものニャのか?」
「は? 何が?」
「言ってる意味が分からん」
「ニャハハー、だったら良いんだニャ!!」
「……ナァ? あの問題行動の数々は素でやってたの……? あの格好も……?」
「良くもまぁ意図せずにあんだけ問題起こせるよなぁ……」
「けけ。二人の行動、ファッションセンス、どこをとっても個性しか感じなくて良いね」
「イキョウはともかく、同胞のセンスはとても良い。我々もあのマフラーを真似しようか考えているほどにはな」
「絶影達とソーエンの琴線は似たところにあるんだにゃぁ……」
「おい今誰か俺の服を褒めたか。誰だ、手を上げろ」
「「「「我々だ」」」」
「ふむ、さすが絶影だ。また銃を魅せてやる」
「ねえ? もうコレ質問会の雰囲気じゃなくない?」
何かもう空気感ぶち壊しだよ。この部屋に入って来た時の厳かな雰囲気どっか行っちゃってるよ。
って思ってたら皆が『お前が言うな』って顔でオレを見て来た。
「んだお前等? このレベル三百越え様に逆らおうってのか?」
「早速偉ぶって来やがってよ……さっきの発言どっか行っちまってるじゃねぇか」
「あの……私達の番まだ回ってきてないんだけど……」
「逆らおうってのか?」
「しょんにゃことは……」
「さっきからティリスはどうしちまったんだよ……」
「にゃんかしおらしいにゃぁ……いつもの気高い雰囲気全然にゃいにゃぁ」
「あのぉ、私も聞きたい事があるのよぉ。まず貴方、五属性使えるでしょぉ?」
その言葉で、みんなが『えッ!?』とした顔でオレを見てくる。
「使えるぞ。ちょっとサンカ、ピウごめんな。デュアルエレメンタルフィンガー」
オレは両手でエレメンタルフィンガーをかっこよく見せる。と、皆は『えぇ……』ってした顔でオレを見て来た。
「わ、分かるんだその気持ち……あっさり過ぎて若干引くんだぁ……」
「…………カッコイイ」「ああ……」「良い……」「ふぅ……」
「それだけでも凄いのだけれどぉ――」
「別に凄くはないだろ。努力して二属性操れるお前のほうが凄い」
「でしょ!! 私ね、すっごくがんばってね!! ……あらぁ……また子供の私が……」
「あらぁ……」
「ひまわり組の面々はどうしちまったんだよ……」
「待って、聞きたい事は個人的に聞くわぁ~……」
「分かったわぁ~」
なんか皆が各々好き勝手に話し始め、自由な空気が流れ始める。これがもしかしていつもの空気感なんだろうか? わっかんねぇなぁ……いつものって奴が全然分からない。分からないってのに、キンスが『いつもみたいに飲み会でもするか』って言って、またオレはそのいつものが分からなくて適当に同意した。
多分、皆良い人なんだろうな。それは分かる。それは分かるんだけど……やっぱりなんとも思わない。こんな適当に接して記憶失ってんのバレないなら、このままでいいや。
そんなオレは、サンカとピウを抱き締めながら、呑み会の会場である家に帰って、適当にお話しました。何故かなにをしても何を言っても『まあ、イキョウだからなぁ』って目で見られるのはある意味便利だったから、今後とも活用していこう。




