03.Go to quest
オレ達はいつも、ギルドが混む時間を避けて行く。だから今日もクエストボードの前は空いていた。
<インフィニ・ティー>はオレとソーエンが四等級。シアスタも、まだプレートは受け取ってないけど、昨日四等級に上がった。そんなオレ達三人は全員で四等級のクエストボードの前で良い感じの依頼書を探している。
今までは、報酬が美味いファングボア討伐のおかげで金は稼げたし、ランクを楽に上げることが出来たけど、昨日ファングボアの討伐クエストが急に取り下げられた。
理由は伏せられてたけど、理由はなんとなく想像できる。
そのクエストの依頼主は、唯でさえの金が無いグルメドラゴンだ。多分、オレ達があまりに討伐してくるもんだからカフスの手持ちの金が無くなったのだろう。
そして、実入りの良いクエストが取り下げられたせいで今回の食費に関する問題が発生した。
本来なら金が無いんだから、朝早くに来て美味いクエストを探さなければいけない立場だ。
今の時間に来ても残っているクエストといえば、報酬が不味いものか、報酬は美味いけど達成条件が難しくて並大抵の冒険者ではクリアすることが出来ないような依頼の二種類しかない。
でも、オレ達なら難しい依頼でも難なくクリアできる。だから後者の方を絶賛選定中だった。
一人が見つけたクエストを二人が却下する作業がひたすら続き、ようやくシアスタが良いクエストを見つけた。
ってなわけで、早速それを受付に持っていく。
「これお願い」
「あっ、はい、見させていただきます」
受付さんはあの応接室の一件以来少し笑顔が固くなり、オレとソーエンは若干距離を感じるようになった。
それでも受付さんを選んだのは、何とかして前のような怖いけど優しく接してくれる受付さんに戻って欲しいから。といっても三週間経っても変わらないから別な方法を試した方が良いのかもしれない。
「こちらは……ワイバーンの卵を取ってくるクエストですね」
受付さんが言った通り、オレ達が選んだクエストの内容は、ワイバーンを殺さずに卵だけを取って来いというものだ。個数に応じて報酬は上がるって書いてある。
殺してはいけない理由までは書いていなかったから事情は知らんけど、ワイバーンは速くて強いから、殺さずに卵だけ奪うのは至難の業だ。普通の冒険者なら難しいだろう。
でも、オレ達ならそう苦労せずにやれる。
受付さんはクエスト内容に軽く目を通した後、依頼書にオレ達の名前を書いて、カウンターの下にしまった。
これにれ受付は完了だ。
「ローザさんローザさん!! あれできてますか、あれ!!」
シアスタはそわそわしながら受付さんにあるものを催促する。
「ふふ、出来てますよ、シアスタちゃん。今持って来ますね」
受付さんは微笑んだあと、椅子から立ち上がって奥の事務スペースにあるものを取りに行く。
受付さんはシアスタにだけは以前と変わらない接し方をするんだよなぁ。
審議師の指輪が効くからだろうか。でも、レイラの話じゃ日常生活では外してるって聞いたし、指輪は関係無しにやっぱりオレ達が単純に怖いんだろう。
「お待たせしました」
「イキョウさん」
受付さんが持って来たもの。それを受け取る為に、シアスタが両手を広げてオレを見てくる。
受付カウンターはシアスタには少し高いから、誰かが抱え上げないと手が届かない。
以前5等級に上がってプレートを貰うときに、『オレが貰ってからシアスタに渡した方がスムーズだろ』と言ったら『子供っぽいじゃないですか』と返されたんで、今の受け取り方のスタイルが確立した。
こっちの方が子供っぽい気がするんだけどなぁ。
「ついに私も四等級ですよ。むふー」
シアスタが受け取ったのは四等級のプレートだった。
オレに担ぎ上げられながらプレートを満足げに掲げている。それを見た受付さんはオレ達には向けない優しい笑顔をしていた。
受付さんは本当にシアスタを可愛がってくれている。ありがたいことだ。
「お前5等級のときもプレート見てニヤニヤしてたよな」
「嬉しいんだから別にじゃないですか。喜ばないお二人の方がおかしいんですよ」
ちなみにオレ達が4等級に上がったときに五等級のプレートはまたシアスタに回収された。今頃は、カフスに買ってもらったポーチ型の白いマジックバッグにしまわれていることだろう。
「今晩は全員が四等級に上がったお祝いをするとしよう」
「おいバカソーエン、さっきエンゲル係数について話し合いしたのもう忘れたのかよ」
シアスタが五等級に上がって、パーティ全員が晴れて五等級になった時もお祝いはしたからやらないわけではないけど……金のことを思うと頭が痛くなる。
「金は今日のクエストで稼ぐ」
「です!!」
「ファングボアの次はワイバーンの卵の乱獲かぁ」
「げ、限度はありますので、ほどほどに……」
受付さんは引きつった笑みを浮かべながらオレとソーエンを見てそう言ってくる。
オレ達をなんだと思ってるの? オレ達は無益な殺生はしない健全なパーティだよ。
どうにも苦手意識、というか恐怖感を持たれているな。
「そうだ!! 今日のお祝い受付さんも来る?」
受付さんに受付をして貰うだけじゃ現状は変わらない。なら新しいアプローチを試みよう。
「え゛!?」
受付さんはにこやかな笑みのまま凄い声を出しましたわ。
初めてこんな受付さんの声を聞いた。こんなん来たくない時に出す声じゃん。
「ローザさんも来るんですか!? 楽しみです!!」
「えっと……」
喜んでいるシアスタの言葉で、受付さんが迷いを見せる。
お? いいぞシアスタ。今のお前は最高の援護射撃機だ。
「来ないんですか……?」
少しシュンとしたシアスタが悲しそうに受付さんを見る。
この攻撃はシアスタを可愛がっている受付さんには相当効くだろう。
「……参加させていただきます」
シアスタの純粋な心で受付さんが折れた。
「よっしゃ!!」
シアスタのおかげで第一目標達成だ!! 上手く行ったもんで、ついつい成功の歓喜をあげちゃったよ。
「なら即効クエストを終わらせてパーティの準備だ!! 行くぞヤロー共!! 受付さん、仕事終わる頃に迎えに来るから!!」
「え、ええ。七時頃にお願いします……」
受付さんは不安そうにしてるけど、約束してしまえばこっちのもんだ。
今日でこの微妙な距離感を解消してやる。ずっと怖がられたままなんて嫌だからな。
「じゃあ行って来ます!!」
「ます!!」
オレとシアスタは言葉を、ソーエンはまた軽くお辞儀をして挨拶をする。
早速クエストに出発だ!!




