表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無計画なオレ達は!! ~碌な眼に会わないじゃんかよ異世界ィ~  作者: ノーサリゲ
第五章-そんなに疲れさせないでよ異世界-
394/582

47.カイセン

「ソーパイセン、カレー美味しいっスね」


「ああ。たまに食うカレーは悪くはない」


「ねぇ」


「久しぶりに白熱した議論が出来て嬉しかったっスよ。やっぱりオタクたるもの語るが華って奴っスね」


「そうだな。俺もスッキリした。素直に感謝をしておこう」


「ねぇってば」


「ところでソーパイセン、双子ちゃんにはどこまでプリティ――」


「無視してんじゃねぇぞこの大バカ共がぁ!!」


 オレはキャンプ用のチェアから立ち上がって、目の前で談笑している二人に向かって大声で言い放つ。


 現在オレ達は焚き火を囲んでいた。

 

 そう、焚き火を、囲んでいるんだ!!


 そう、オレ達は今、暗い中、晩飯を食いながら、焚き火の明かりを囲んでいるんだ。


 つまり今現在は夜なんだよ!! おかしいだろ!? コイツ等の議論が始まったのは昼前だぞ!? そっからずっと、ずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと議論が繰り広げられて、もう夜だよ!!


「ッッッッッッッざけんな!! オマエラのせいで二日目は碌に調査しないで終ったぞ、どうなってんだよ!!」


「文句言ってるっスけど、その割りに焚き火用意したのもカレー作ったのもパイセンじゃないっスか」


「なし崩しだよ!? お前等ずっと喋ってんだもん!! おやつにカレー食い終わって昼寝して起きてカニ君達と遊んでじゃんけんなんかしちゃったりして周りが暗くなってもずっと議論してたんだもん!! 誰かが準備しないといけねーじゃーん!! 周り見てみろよ、お前らが長々くっちゃべってたから霧も元通りになっちゃったよ!! 視界不良に逆戻りだ!!」


「……あたし達三人って、いっつも暴走と静止係で必ず二対一の構図になるっス。どっちかが二になるんスけど、大抵はパイセン二人が暴走の方にいくんスよねだから、あたしは止める役になる事が多いんス。

 …………あたしだってたまには暴走したって良いじゃないっスか!! いっつも面倒見てあげてるんだからたまには許して欲しいっスよ!!」


「冗談も大概にしろ。俺が一番静止係を多くやっている」


「は? オレなんですけど?」


「「「……は?」」」


「「ファ?」」


 オレ達三人と二匹は揃って顔を突き合わせる。オレ達三人は誰もが己の主張が正しいと信じて、カニ君達は何が起こってるのかが理解できていないけどとりあえず真似したって感じで。


 コイツ等、自分が一番苦労してると思ってやがる……ッ!!

 ……いや、コイツ等は子供なんだ。だから人の苦労が分からないんだ。だったら、ここで一番大人なオレが、大人の余裕を持ってコイツ等を生暖かく見守ってやるべきだろう。


 そうそう。良い大人は、子供の行いを笑いながら受け流せなきゃいけない。だから余裕ある大人な笑みで、このことは水に流してやろう。


「「「……フッ」」」


「「ファッ」」


 オレが大人な態度を見せ付けたからか、二人も真似して大人な態度を取ってくる。


 まったく、同時に真似するなんてお子ちゃまなんだからよ。ってことを口に出さずに内面で思うだけに留めておこう。それが大人ってやつだ。


 大人だから今日の調査が潰れたことも許してやる。まだ開始二日目だからな。調査はまだ始まったばかりなのに、急かしてしまっては大人の余裕というものが無いじゃないか。


「あたしちゃんと謝れる大人なんで謝るっス。二日目潰しちゃって誠に申し訳ないないっス」


「俺も大人だからな、謝罪しよう。済まなかったな」


「良いよ良いよ、許すよ。大人なオレはお前等の事をちゃんと許すよ」


 まったくお子ちゃま共め、オレの真似をして精一杯大人なフリをしてやがる。


 大人なオレは水に流してやる。そしてオレは大人だから過ぎた事は気にせず、思考を切り替えて明日のプランを考えようじゃないか。


「明日どうするっスか?」


「それな。どうすっかなぁ……。一応、思いついたプランが二つ有ってな」


「聞かせろ」


 もしオルセプスが今回の元凶だと仮定した場合と、もし違った場合、両方を考えた場合にこちらが取るべき行動は二つある。


「一つ目のプランは、オレの感知を最大限利用してモンスターの発生源を特定する。相手がオルセプスだった場合は、異常発生の原点は鏡の大盾一箇所になるわけだから、モンスターの動きと逆方向の動きをしてればいずれたどり着く。

 そして見つけ次第すぐにぶっ叩いて殺す」


「っスね」


「二つ目は途中までは似たようなもんで、探知使って複製されたモンスターがどこから来てるのかを追うのは一緒だ。ただし、元凶がオルセプスじゃなかった場合、そしてもし複数の場所でモンスターの発生が起こっていた場合は一旦撤退して作戦を練る。

 まあ、二つとも発生源の特定までは一緒で、そこからの行動が違うって感じだな」


「それで良いんじゃないっスか? 原因特定しないとなんにも始まらないっス」


「この土地ごと全て吹き飛ばしてしまえば良いだろう。その方が手っ取り早い」


「脳筋は黙ってろ。んなことしてもしこの霧が他の土地まで拡散したらどうすんだよ。そんな公害撒き散らしても責任取れねぇからな」


「ふぅ……面倒だ。全てお前に任せる」


 ソーエンはオレの反論を聞いて小さくため息を吐くと、全部オレに丸投げして来やがった。そして無遠慮に煙草を咥えやがったぞ。


「考えるの放棄しやがったなコイツ」


 オレも煙草吸おう。


「「ファックファック」」


「ん? 大丈夫だって、吹き飛ばさせないから」


 カニ君達の訴えを聞きながらオレは煙草に火を点けて煙を吸う。


 不安そうだったから、平べったい甲羅を撫でて安心させてやろう。……おお、相変わらず手触りスベスベだ。ツルツルスベスベしてて触り心地良い……。


「パイセンが海鮮と歓談してるっス……。っス? カイセンカイセン」


「パイセンな。ってかコイツ等陸ガニな。どしたのよ」


「この際なんでパイセンがカニと会話できるのかはおいておいて。そのカニ達も複製体っスよね、もしかしたら何か情報引き出せるんじゃないっスか?」


 ヤイナ……コイツ天才か? 確かにカニ君達から話を聞けば何か新しい情報が得られるかもしれない。


 試しに聞いてみよう。


「ねえカニ君達。お前らに聞きたいことあるんだけど良い?」


「「ック」」


「ありがと。

 カニ君達って複製体ってことは自覚してる?」


「聞き方ド直球っスね……」


「「ファ?」」


「あらら。えっとね、複製体ってのは、オリジナルの存在をコピーして作られた存在でね」


「「ファッ?」」


「うーん……これでもダメかぁ……。知能がカニ並みかぁ?」


「そりゃそうっスよ。だってカニっスもん」


「そうだなぁ……。お前等の覚えてること教えてよ。何で皆一斉に防壁に向かって行ってるの?」


「「ファックファック」」


「なーる。え?マジ? 嘘だろ?」


「「ファックファックファック」」


「あ、だからオレに付いて来てるのね。

 そっかぁ、カニ君達は複製体だけど、ちゃんとした個を獲得出来たんだな」


「あの、パイセン。会話するのは別にいいんスけど、あたし達にも少しくらいは何話してるか教えて欲しいっス」


「へいへい。もう聞きたい事聞き終わったから教えてやるよ」


「早ッ!?」


 カニ君達は知能はカニ並みだけど、話そうと思えばちゃんと会話できる良い子達だったよ。


 低い声で一生懸命鳴きながら説明する姿は、まるでカニを相手に会話しているかのようだった。


「端的にまとめると。

 カニ君達ってオレと出会うまでの記憶が無いらしいんだわ。ってか意識や個性も無かったらしい。

 人間を殲滅しろって命令に従って動いてることだけは覚えてて……。だから防壁の外を目指してるし、防壁内部では人を見つけ次第襲うらしいんだわ」


「えっ、めっちゃ物騒なんスケド……」


「でもオレの目を見たらその命令忘れるほど怖かったんだって。で、気付いたら自分達は知らない場所に居るし、そもそも自分がなんなのか良く分からなかったからとりあえずオレに着いて来てるらしい。始めて見た者に付いてく雛みたいな感じ的な?」


「いや……的な? って言われても良く分かんないっスよ」


「大丈夫、オレも良く分かってないから」


「細かい事はどうでも良い。結論は、元凶も命令を受けているモンスターも、全て殺せば全て終わるということで合ってるな」


「この人バカなんスかね? なんもかんもが噛み合ってないっス。絶対、どうでもいいから話半分に聞いてて良く理解してないけど、会話に混ざりたかったから適当に結論ポイこと言ってるだけっス」


「でもソーエンの言ってることは事実だからなぁ。

 カニ君達から得られた情報は、複製体は命令を受けて行動してるってことだけだったし。結局元凶の正体に繋がりそうな情報は何も無かったもん。結局明日からやること変わらないもん」


「「ファック……」」


 オレの言葉を受けたカニ君たちは、甲羅を地面に対して斜めにしてしまった。多分コレ項垂れてるんだ。


「あっ、違うよ? カニ君達責めてる訳じゃないから!! 何か知れれば良いな、ってくらいで話し聞いてたから気にしないで!?

 どうせ明日には調査再開するからその内真実分かるし、急いで知りたかった訳じゃないから!!」


「あたしは何を見せられてるんっスかね……」


「面白いから良いだろう」


 カニ君達を慰めるオレと、それを傍から見る二人。


 焚き火だけが闇を照らす霧の中、それでも夜は更けていくのだった…………。


 * * *


 一方その頃。


「ミュ……も、申し訳ありませんダグラスさん……。イキョウさん発見できませんでした……」


「いやぁ……帰還報告も来てねぇしなぁ……死んでんじゃねぇのか?」


 ミュイラスは目的が果たせないまま防壁に帰ったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ