45.外野は黙っとれ
ヤイナの仕切りで口喧嘩は強制終了となり、また元の円形で座ってる状態に戻った。もう良くない? 早く探索行こうよ。
後、燃え尽きて跡形も無くなったゴライタスよ、安らかに。
「えーこほんこほん。一波乱あったっスけど、とりあえず仕切りなおしっス。次、ピウピウちゃん!!」
引き続きヤイナが司会進行を務め、今度はピウを指名する。
対して呼ばれたピウはというと、顔を俯けたまま無言で立ち上がり……そして何故だかこっちに近づいてきた。
そして、ソーエンと一緒にあぐらを掻きながら煙草を吸ってるオレの前まで来ると……。何でかちょこんと乗ってきた。
「どしたのピウ」
「……別に?」
オレが問いかけると、ピウはそっぽ向いてちょっと剥れながら答えた。
……なんで?
「え? なんで?」
なーんで?
「……構って欲しい訳じゃないし」
「なんだよー。甘えんぼさんでちゅねー」
「……ぴゅふふ」
オレがピウの頭を撫でると、そっぽを向きながらも小さい声で微かに笑い声が聞こえた。
そうだよなぁ、どっちかっていうとこの場は金髪と魔女がメインで回ってたところあるから、疎外感覚えちゃったのかな?
「またロリか。おいロリコン」
「……はぁ!? 今お前なんつったボケ!!」
「はーいはい、議長の許可無しに発言するのは禁止っスよ。ピウピウちゃんは質問無いんスか?」
「無いかなー、聞きたかったら個人的にキョーに聞けば良いしー」
「ぐへへ、ピウピウちゃん可愛いことするっスねー。誇示バリバリっスよ」
「ハイ議長!! ピウの番が終わったんで異議申し立てします!! 横のクソ野郎に異議あり!!」
この場は一応はヤイナが取り仕切ってる。仲間がやってることだからルールには従おう。
だからピウが終わったんなら一旦ターンをオレに回せ。オレは絶対に異議申し立てをしなければならない事が出来たぞ。
「却下で。次、ココロロちゃん!!」
「え!? 私でありますか!?」
おっと、順番的に次はコロロの番か。だったら異議申し立てせずに大人しく話し聞いておこう。声聞きたいからな。
オレは煙草を咥えたまま大人しく口を閉じて眼も閉じ、耳にだけ意識を集中する。
「えっと……大体のことは知っているのでありますし……。……あ!! イキョウ殿、昨晩は何を食べたのでありますか?」
「カレーだよ」
「そうでありましたか!! では、私の番はこれにて――」
「まだ、質問する権利が一個残ってる、ぜ。ンンぅーッん」
「このパイセンマジでキモイっスね」
「外野は黙っとれ。コロロ、は、や、くぅ」
「えっと、えぇ……。今朝は何を食べたのでありますか?」
「カレーだよ」
「イキョウ殿は本当にカレーがお好きでありますね……」
「はいこれにてココロロちゃんの番終わりっス」
「やだ!! コロロ感謝祭ボーナスとしても一個増やして!! ふーやーせ!!」
オレは目を閉じ、口を開き、耳に集中させていた意識を拡散させて抗議する。両手を振り回して、推定ヤイナの居る方向に顔を向けながら。
「何スかこの駄々っ子、うるさいっスね」
「見てよコロロ、あの駄々の捏ね方見覚えしかないんだけど」
「でありますね、キアル殿。ヤイナ殿にそっくりであります……」
「パイセン、早く終わらせてリルリルちゃんと帝国観光したいんスよね?」
「はい」
オレはヤイナの一言でスンと落ち着く。
そうだった。今は最高の声に浸ってるときじゃない。オレは一刻も早くこの総魔の件を終わらせたかったんだった。
ここは大人の余裕で冷静になろう。
オレは自分を律して目を開く。声に集中する必要が無いから、もう閉じている必要も無い。
「……」
おやおや、お膝の小鳥さんが剥れてこっちを見てきてらっしゃる。
「よしよーし」
「……ぴゅふふ」
おやおや、お膝の小鳥さんが囀りを囁いてらっしゃる。
「ロリコ――」
「はいソーパイセンお口チャック!! パイセンと久々だからって嬉しがって茶々入れない!! 次、キアルロっさん゛!!」
「はいはい、ようやく聞きたかった事が聞けるよ。というかコロロが聞くと思ってたんだけどなぁ」
「おや? 何がでありますか?」
オレは再度スッと目を閉じて、コロロの声を聞き逃さないようにする。
「ねえイキョウ」
「外野は黙っとれ」
「俺が当事者の番なんだけど?」
「パイセン、話し進まないんで目開けてっス。
他の人は発言しちゃダメっス、特にココロロちゃん」
「えっと……申し訳無いのであります?」
「いいね~、ヤイナが居ると話がスイスイ進むよ」
議長から直々に苦言を呈されたぞ。しかもキアルのけらけら笑いが耳に入ってきてノイズだ。
しゃーねーな。ヤイナに言われたなら開けてやるよ。
オレが仕方なく眼を開くと、キアルがこっちを見ていた。そしてオレと眼が合うと、それを合図だったかのように口を開いて話し始める。
「ずっと気になってたんだけどさ。なんでここだけ霧晴れてるの?」
キアルは現状に関してずっと気になっていたらしい。しかもキアルの発言を聞いてひまわり組とコロロがハッとした顔をして、キアルに顔を向けていた。お前等完全に忘れてただろ。コロロは仕方ないよ、来たばっかりだもんね。
確かに今オレ達が座っている場所は、この場所だけはドーム状に霧がこそぎとられたようになくなってて、とっても視界が良好だった。
そりゃ気になるよな。だってオレも気になるもの。
原因は分からない。だからとりあえずで起こったことだけを話そう。
「こう、な? 霧邪魔だから吸えないかなって思ってたら……吸っちゃった」
「吸っちゃったって……こりゃまた訳の分からないことしてるねぇ……」
「お前は掃除機か」
「……!? ソーエンッ!!」
「ソーパイセン勝手に発言しない!! キョーパイセンも感動しない!! そして言うなら空気清浄機っス!!」
「へい……」
「むぅ……」
「体大丈夫なの? この霧って結構危ない代物のはずなんだけど……」
「大丈夫でしょ。ナトリがオレには効かないって言ってたし」
「まあ……当の本人があっけらかんとしてる訳だし……考えるだけ無駄だよね、うん。イキョウの事は深く考えないようにしよう」
「オレも原因聞かれても分かんないから深く考えないようにしよう。うざったい霧が無くなるならそれで良いしな」
「こいつホント……」
「っスね。キアルロっさん、まだ質問権残ってるっスけど使うっスか?」
「使うよ、だって一番気なることは終ったけど、二番目に気になること知れてないからね。
……イキョウの両脇でお行儀良く待機してるクライブ居るじゃん。それどうしちゃたの?」
キアルは眼でオレの両脇に待機しているカニ君達を指しながら質問してくる。
その質問を聞いたコロロはハッとしながらキアルのことを見ていた。コロロは仕方ないよ、オレのご飯が知りたかったんだもんね。
「これねぇ。なんだろ、懐かれちゃった」
「「ファック」」
カニ君達はオレの言葉に同意するようにハサミを上げる。
「喋るのか……」
オレの横で、ソーエンが訝しげな目をしながらカニ君達を見ていた。そしてボソッとつぶやいた。
やっぱそうなるよな、知らずに聞いたらその反応になるよな。オレも最初そう思ったよ。
「懐かれちゃったって……。また訳の分からないことを……。
そのクライブ達って、イキョウの報告にあった同一個体の件に関係してるんだよね? 本部に証拠として持って帰っても良い?」
「ダメだけど?」
「なんでよ……」
「だって別に報告する義務ないし、それにコイツ等を証拠として提出したらどんなことになるか分かったもんじゃない。解剖なんてされたらマジでブチ切れるぞ」
「「ファックファック」」
「だよなぁ?」
「パイセンがカニと会話してるっス……」
「でも教えた情報は好きに扱ってくれ。一応仮面部隊が発見したことにしてもらえると助かるわ」
「うーん……そうなると証拠が無いまま情報だけを挙げることになるけど……。ま、大丈夫か。そこら辺はこっちで何とかするよ」
「んじゃそれでよろしく。これで全員の質疑応答が終わったな」
「ああ。早速調査に取り掛かるぞ」
「あいよ」
オレの言葉に対してソーエンは即座に返事をする。周りは未だに困惑気味の顔してたけど知らん、さっさと今回の件を終わらせるんだ。
コレにて話し合い終了。ようやく調査が再開できる。




