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無計画なオレ達は!! ~碌な眼に会わないじゃんかよ異世界ィ~  作者: ノーサリゲ
第五章-そんなに疲れさせないでよ異世界-
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21.騒がしい喧嘩を好む者は、詰まらない言い合いで余計な事を言う気すら起きない

「あなた――」


「ちょっと待てやぁ!!」


 カフスが居なくなり、発言がある程度自由になったこの場。


 金髪女が口火を切りそうになったところを、オレが先手を打って潰す。


 お前等は喋りたいんだろう、でもお前等が話したい事なんてどうでもいいんだよ。


「キアルてめぇ。自分が何したのか分かってんだろうな」


「あのね、流石に総魔の領域の件は――」


「だからなんだってんだよ。手、放せ」


「もー……イキョウ……」


 オレはキアルの掴んでる手を払って、自分の足で立つ。


 現状、こいつらは仮面部隊の力を、喉から手が出るほど貸して欲しいはずだ。特にキアルとコロロは正体を知ってるから、オレを逃がすわけがない。


 オレは煙草を口に咥えながら、無言で歩く。席へと戻る為。


 今この場には物言わぬ緊張感というものが漂ってるのかもしれない。緊張なんてお前等が勝手にしとけや。


 椅子へと戻る歩みの背後。なんでか、オレの後ろにはキアルが付いて来ている。逃がさないためだろうか。舐められたもんだ、こんな部屋、オレが本気を出せばいつでも逃げられるってのに。


 テーブルに戻ったオレは、さっきカフスが座ってた席に座って、皇帝と向き合う。


「言っておくぞ。仮面部隊は力を貸す気は一切無い」


「どうして仲介役である君が――」


「あいつ等のこと、特に嘲笑の仮面についてはオレが良く知ってる。だから断言できる。これ以上でもこれ以下でも根拠が欲しいなら何でも言ってやるよ、どうだ? あるか?」


「いや……、いいよ。……もし君を説得できたなら、力を貸してもらえる可能性はあるのかい?」


 皇帝は弁論の主を切り替えた。オレの証拠提示に割く時間は無意味と理解して、協力してくれない理由を知るのではなく協力させるための手段を探ってくる。自分が未だに優位な立ち位置に居ると思っているからなんだろうな。現にオレはあくまで仲介役で、あっちは皇帝な訳なんだから、何もおかしい事は無い。


 オレだってカフスの『ありがと』を聞いたんだから、最低限の問答はしてやるよ。


「カフスに頼まれたからな。納得させられたら力貸してやる」


「ふむ……一先ずはその言葉を信じよう」


 皇帝はそう言うと、また笑顔をオレに向けてきた。


 冷静さを装ってる顔だ。でも、裏で何か考えてやがるな。なんなら、最終的には実力行使も辞さない構えだ。


 オレは皇帝とだけ話しをしようとしていた。でも、外野から声が飛んでくる。


「ふんっ。貴方、よくそんな態度が取れるわね。この場にはもうスノーケア様はいらっしゃらないのよ? それにね、ここに居る全員が仮面部隊に力を貸して欲しいと思ってるわ。分かる? 貴方の周りには敵しか居ないの。その事を理解できる? そのバカそうな頭じゃ無理かしら?」


「やだあのパツキン~、脅迫してくるんですケド~」


 オレは背後で立ってるキアルに訴えかける。すると、キアルが軽く耳打ちをしてきた。

 

「引きとめておいてアレだけど、気をつけなよイキョウ。この場の全員が君という存在を舐めて――」


「へいへい、分かってる分かってる」


 わざわざ言われなくても分かってることを言ってくる。


 分かってるよ、キアルとコロロ以外には舐められてるんだろ? それくらい言われなくても分かる。最近よく言われるから。


「内緒話かな?」


 オレとキアルがこそこそと話していると、この姿を見て皇帝はニッコリしながら、それでいて落ち着いて話しかけてきた。


「いやな、天才で最強のキアルロッドさまが、これ以上変なことするなら殺すよ? って言ってきてビビッたのなんのってもうさ」


「ははぁ……」


 後ろからキアルの乾いた笑い声が聞こえてきた。


 詰まんないなこの問答。早く終わらないかな。興味が薄れてきた。キアルが居てくれなかったら本当に退屈。


 なのに皇帝はまだ話しを続けてくる。


「そっか。それを聞いても君の考えは変わらないのかな?」


「いやぁ、小市民の一般人で、なんでこんなオレが仲介役やってるのかわかんないけどさ。でもこれくらいじゃあいつ等動かせねぇわ」


「ふーん……結構強情なんだね」


「ねーえ、そこのぉ……イキョウ? だったかしらぁ」


 離れたところに座ってる魔女が、オレへと声を掛けてきた。


「なに?」


「わたし達ねぇ……、これでもアステルの情報には詳しいの。スノーケア様からも信頼されてる身だし、ね?」


 魔女は、オレを値踏みするような目で、妖艶な声を出しながら話しかけてくる。


「最近はアステルから離れてたから仕方ないかもしれないけれどぉ。でもね、仮面部隊の話は風の噂でしか聞いたこと無いし、私達くらいスノーケア様に近い者でも直接見たこと無いのよぉ。それに、貴方を見るのも始めて。

 ねーえ、貴方は何時からスノーケア様のお側に控えるようになったの?」


 魔女に問いかけられる。


 んなこと言われてもなぁ……、こっちも始めましてなわけで、お前等のこと知らんし。ってか、まずお前等誰だよ。カフスの知り合いなのか?


「そんな側に居るのに話して貰えないって事は、信頼されてねぇんじゃねぇの? 自分が知らないからって疑ってくるなよ」


「まあ生意気さん。

 それにねぇ、仮面部隊ってのがどれ程の力を持ってるのかも具体的には知らないのよ~。

 もちろん、貴方の強さもね?」


 魔女は余裕そうな態度を取ってるけど、その内情は分からない。ただ、さっき金髪があれほど怒ったんだから、多分こいつも内心は怒ってるのかもしれない。


「仮面部隊はカフスからお墨付きが付くくらいには強いぞ」


「まぁ~、そうよねぇ。だから私達も協力を仰いでるわけだもの

 それで? 貴方の強さは? スノーケア様のお側に控えてるのよね、だったら相当強いんじゃないの? その成りで、ね?」


 クスクスと笑いながら魔女はこちらを見て来た。横では金髪のやつもウププと笑っている。


「それは私も気になるね。確か……君は冒険者だって聞いているよ」


 皇帝もオレの強さが気になる様で、話に乗ってきた。


「できればどれくらい凄腕なのかを教えて欲しいな。具体的に、ね」


 皇帝、お前は多分オレが三等級ってことを知ってんだろ。でも、もっと情報が欲しいから知らないフリをして探ろうとしてきやがる。


「へー!! 貴方も冒険者だったのね!!」


 今の話を聞いた金髪は、バカにした顔をしながらオレのことを見てくる。


 ……も? コイツ等も冒険者だったの? なんで冒険者だってのに重鎮の会談に参加してるんだ? やべぇ、どうでもいいと思って話聞いてなかったツケがここで回ってきたな。


「それでぇ、貴方、何等級なのかしら?」


 魔女も小ばかにしながらこっちを見てくるけど……。


「ちょっとキアル。あいつ等ってそもそも誰? なんで冒険者がこの場にいるの?」


「嘘だろイキョウ……。初っ端に挨拶したじゃないか……」


「なに? もしかしてちゃんと話聞いてなかったの?」


「見るからにおバカさんだものねぇ?」


「何あいつら。煽り全ブリじゃん」


「あんな姿始めて見たよ……。よっぽどイキョウの事が気に入らないみたいだ」


 逆に、横でちょこんと座って我関せずの顔をしてるマフラーロリの方が気になるわ。ここまで来るとお前も参加して来いよ。


 あと、ドアのほうではコロロが苦笑いを浮かべながら二人の事見てるのがなんか心苦しいわ。


「仕方ないから教えてあげるわ!! 私達の名前はひまわり組!! 全員がレベル80越えよ!!」


「自分達で言うのもアレだけれどぉ、アステルが誇る唯一の一等級冒険者よ~」


「「おーっほっほっほっほ!!」」


「嘘だろ? あんな人格者の集まりのトップがこれかよ」


 平和の旗印、絶・漆黒の影、にゃんにゃんにゃんの上に立ってる奴等がコレなの? 冗談も体外にしてくれよ。


「あのねイキョウ、彼女等は普段は本当に優秀なんだ。あんな姿を見せるのは本ッ当に始めてなんだよ……、どうしてイキョウは人の新しい一面をホイホイ見せてくれるんだい……」


「あ~ら、驚いて声も出ないのぉ?」


「そうよねー、ポッとでの仮面部隊よりよっぽどスノーケア様に信頼されてて、ずっと強いものねー」


「最悪だわ……。コイツ等解雇してキンス達をアステルの代表的冒険者にしたほうが良いだろ」


「もう……俺が何言っても説得力無いよ……、唯一言える事とすれば、キンス達に比べて、彼女等はまだ若いからとしか言えないよ……」


「そ・れ・で・え・? あんたは何等級なのよー」


「オレ? 三等級でパーティのリーダーやってるわ」


「っぷ、レベルは?」


「二十だぞ」


 関わるのメンドクセェから、煙草の煙を吐きながら適当にさらっと答える。


「「……あーっはっはっは!!」」


 すると、二人はそろって笑い始めた。


「いいのか皇帝? あいつ等の方がよっぽど場を荒らしてるぞ」


「問題ないさ。彼女達のおかげで、武に明るくない私でも君がどれ程の者なのかってのが良く分かるからね。彼女等が居て本当良かったよ」


 皇帝のその言葉に嘘偽りは無い。


 そりゃそうだろ、最終的に脅しという手段を取ろうとしてるやつが、お互いの意見を交換する話し合いという行為を重要視しているとは思えない。だから、話し合いの場を荒らされようがなんとも思ってない。


 やだねぇ……。この場に居る奴等は全員が力っていうものを物差しにして人を図っている。


 オレはそんなもの要らない。力なんてのは手段の内で相手を図るものじゃないし、なんならオレはそれほど力を重要視してない。誇りすらない。

 ここが、価値観の違いって奴なんだ。要は貶めようが何しようが、結果――――ん? 普通の価値観って何だっけ? ああ、じゃない……じゃない。仲間だ仲間だ。仲間に怒られるようなことはダメなんだった。


「よく三等級の分際であそこまでイキれたわね!! 貴方のパーティも高が知れるわ!!」


「すごいわよねぇ、そんな分際で三等級に上がれちゃうんですものぉ。並々ならぬ努力を皆でしてるんてちゅね、メンバー全員努力家でちゅね~」


「あ、お前等次無いから覚悟しとけよ」


「あはははは!! 次がなんですって!?」


「あらあら~、ほんと、弱いんだから調子にのっちゃだめよぉ。ちゃんと相手の力量を見てから喧嘩を売る相手を選ばなきゃ~。

 あそこまで不敬を働いて、その上私達を舐めてかかって……。ほんと貴方、殺すわよ」


 魔女は、ニッコリしながら、言葉の最後に音符がつきそうな声色で余裕をかましてその言葉を言ってくる。


 あの表情にあの言葉……前にソーエンから教えて貰った記憶がある。そんな、まさか、こんな場所であんな姿を見れるなんて。SNSでしか見たこと無い痛いイキリ野郎特有の笑いをリアルで見せてくる奴がいるなんて……。


 そっかそっか。リアルで本当にする奴が居るのか。あんな寒い殺しの宣言は、オレとソーエンじゃできねぇって。他人の命を奪うことをどうでも良いって思えるオレ達に、あんな笑顔は浮かべらんないんだよ。笑顔で『殺すよ?』なんて言って、自分の存在を誇示することに意味なんて無いんだから。


 ソーエン、お前が散々バカにしてた存在が居るぞ。一緒に見たかったよ、でもお前が居ないから、今はオレが笑わせてもらうよ。


「うけけけけけけけけけ!!」


 あいつがいたら絶対笑ってた。もしソーエンが居たら二人で爆笑してた。


「なにぃ!? なによ急にぃ!!」


「笑い方キモ……」


「人が出していい笑い方じゃない……ような」


 金髪は冷たい眼をしてきて、皇帝はちょっと引いてて。


「イキョウさん……ふふっ」


「チッ、あたまいてぇ……」


「わーっはっはっは!! あ、御前で申し訳、がーっはっは!!」


「気に入らん……」


 皇帝の後ろに居る奴らからは何か言われ。ミュイラスはちょっと楽しそう。


「煩い、周りの音が聞こえない」


 ついにはマフラーロリが口を開いた。


 けど。


「うけけけけけ、がーはっはっは。ふぅ、ソーエン、後で一緒に見ような」


 オレは今の魔女の笑顔が見れただけで大満足だ。何を言われようが気にしねぇ。


 ああ、咥えた煙草が美味い。


「イキョウは色々図太いねぇ」


 オレが一笑いを追え、煙草の煙を吐くとキアルが後ろから、分かってるよ、みたいな声色で話しかけてきやがった。


「別にぃ? あーおもしろ」


 ソーエンだったら、オレだったら、例え元の体であってもこの場に居る敵意のある奴等は全員敵じゃない。敵にすらなりえない。


 とにかく、あいつらは眼中に無いわ。仲のいいキアルとコロロがオレの残念さを知ってくれてるならそれだけでいいわ。


 敵にすら成り得ない、どうでもいいひまわり組から視線を外して、オレは皇帝の方へ向き直る。


「……うん。君の強さは何となく分かったよ。それでどうかな、力を貸してはもらえないだろうか」


「まだ交渉も説得もされてないのに貸すかよ」


「そっか、じゃあまずはちゃんと言葉で説得してみようかな」


 言い方がもう、ほかの手段もあるみたいじゃん。


「君はちゃんと理解できて無いようだからお話してあげるけど、総魔の問題は帝国だけの問題じゃ――」


「それくらい分かってるわ。その上で力をかさねぇって言ってんだよ、そんなことも分かんねぇのか」


 オレの言葉に、皇帝の眉がピクリと動く。


「君は――。そうだね、率直に言おう。バカ、なのかな?」


 どうやら、事の重大さを理解している上で断りを入れてきたオレに、皇帝はちょっとだけイラついているようだ。


 だろうな、お前等からしたら危機が迫ってんだもんな。


 因みに、皇帝と同じようにひまわり組の二人もイラついた目をオレに向けてきてるのが視界の端に移っている。理由は、まあ、皇帝と同じだろう。


「一応、そう、一応君の言い分を聞いておこうじゃないか。それが話し合いというものだからね」


「知らん奴等を助ける義理は無いわ」


 今のが第一の理由だ。それにな、ここじゃ言わないけど、お前らが探ってきたのも悪い。こっちとしちゃ心象良くないわ。


 アレがなければまだ、カフスのお願いだけで聞いていたかもしれない。でも、そのカフスすら利用しようとした事が許せない、オレの事はどうでもいい、カフスを利用しようとした事が絶対に許せない。


「君は理解できてないのかな? ワガママを言ってれば、それで事態が片付くと思ってるのかな? もちろん、私達の力だけで総魔の件を終わらせられる可能性はあるだろう、でも、もしそう行かなかったら。それは、アステルにも被害が及ぶことになるんだよ?」


「脅しか?」


「事実だよ」


「じゃあ説得の材料にならねぇよ。事実にならねぇもん」


「…………随分な妄言を吐いてきたね」


「妄言なんかじゃないさ。お前らが失敗してどうにも出来なくなったら、オレ達が代わりに総魔の領域の問題片付けてやるよ。そうすりゃアステルに被害はでねぇだろ」


「なんだそれ、出来る訳がない、訳が分からない……話し合いをする意味が見出せない。私の笑顔も効かない……。

 もう、やめようか。……だったら最初から力を貸せ」


 皇帝は、もはやバカなオレと議論をするのが疲れたのか、威圧的な態度で命令をしてくる。それは、皇帝を皇帝足らしめる風格なんだろう。


 分かる訳無いさ。こっちはお前らがただ気に入らないから手を貸さないだけだ。なんなら帝国が滅んでから動こうとも思ってるくらいにはお前らが気に入らない。


 でも、この国にはキシウが居るからな。キシウとその家族は救ってやるよ。


 全部感情なんだよこっちは。教えて貰った、この上辺の感情がオレの大事な判断基準なんだ。これだけは何があっても譲れない。


「弁で御せないなら今度は命令か? んで、それでも御せなかったら今度は実力行使か?」


「良く分かってるじゃないか。でもまだ我慢しといてあげるよ、何せ、こっちには君に言うことを聞かせるだけのカードがまだ残ってるからね」


 皇帝は、どうやらオレ達の間に上下関係があると思っているらしい。


 ないんだよ。この場にはそんなものない。そこを間違えてるから、お前は一生オレには届かない。この感情のオレに、叛徒のオレに、上下という関係を突きつけて御そうと思うやつほど、オレとの話し合いに向かないやつは居ない。


「君さ、昨日執務室に無断で入ったよね? 帝国の重要な情報がたっぷり眠ってる、他国の者は絶対に踏み入ってはいけない部屋に」


 皇帝はしたり顔でオレを見てくる。


 ひまわり組の奴等は、ギョッとした顔でオレを見て来た。


「んで? それが何か?」


「やっぱり君はバカだ。ことの重大さに気付いては居ない。あの場においては如何なる理由があろうと全ての非は君にあるんだよ? あーあ、カフス殿が知ったら悲しむだろうねぇ、自分の側に仕えてるものがそんな重罪を犯してるなんてしっちゃたらさあ!!」


「あんた何やってるの!! そんなの拷問や打ち首ものよ!!」


「極まったバカね~、ここまで来ると呆れて言葉も出ないわぁ」


「キアル、これってどのくらいヤバイことなの?」


「スノーケア様のお付きだろうと許されないことではあるかなぁ……」


「へー、そりゃやべぇな……。でもそれ知ってもカフスは驚かないと思うぞ?」


「内緒にしてほし……え?」


「多分オレがそんなこと平気でする奴って知ってる。そして、重罪だろうがなんだろうがお前らはオレを捌けない」


「……は?」


 皇帝は、オレが何を言ってるのかが分からないような顔をしてこちらを見てくる。


 そりゃそうだろ。普通ならわかんねぇことだもん。


「いやな、ちょっと前にクライエンの国王に頼み事したんだわ。オレがマジでやばいときはどんな理由があろうと全力で擁護しろって。何してでも協力しろって言ってある、最悪戦争に発展するかもしれないな」


「イキョウ……お前家の王にそんなお願いを……。ってかもうそれ命令じゃん……」


 もっと言えば、オレの周りの奴等が危なくなったら、だ。んで、もししなかったら王国の経済事情を裏からかき回すって言っておいた。


 滅びはさせないさ。ちょっと流れを変えて、貧富の差を埋めてあげるだけ。情勢を一時的にかき回すだけ。


 こんな事が出来るのは、金融を襲撃して情報を得た副次効果に過ぎないけどな。


「は、はは……。呆れた……一介の冒険者がそんなお願いを出来る訳無いだろう……」


 皇帝は疲れ果てたような声を出しながら、椅子にもたれかかって片手で顔を覆う。


「まあ、いいよ。元より君とは話し合いをしようとも、言葉で御そうとも思ってなかったから」


 そしてそのままため息を付くように話し出す。


「いやぁ、それは困る。こっちは荒事したくないから言葉の方が助かるわ」


「だろうね」


 皇帝の同意は、オレが力で来られると抵抗できなくて困ると言ってるんだろう。


 でもこっちは違う。こちとら面倒事になりそうだから戦いたくないだけだし、もし例えこの場でオレが我慢してボコボコにされたとしても、今度はソーエンとヤイナが全力でこの国を潰しに来る。んで、それを見てナトリが爆笑するだろう。


「ってかさ、なんで頑なに報酬とか対価を提示しないわけ? タダ働きさせようって魂胆があるようにしか思えないんだけど」


「金が望みか? だったら金額を言ってみろ」


「いや? 別に対価があるからって快諾する訳じゃねぇからな? なんで言ってこないのか気になっただけ」


「ほんっと……腹立つ……」


 皇帝はつぶやくように小さく吐き捨てる。


「あのね、君たちは他国からお金を貰って動いてたわけじゃないってのは、噂を聞けば分かってた事なんだよ。だから提示しなかった」


「あれはこっちが勝手にやったから貰ってないだけで、貰えるなら貰うさ。ってか、お願い事するんだから対価くらいは用意しておいて欲しかったよ」


「そんなの終わったら払うつもりだったよ。君に言われるまでも無い」


 んー、なるほど。あくまで皇帝は皇帝としての立ち位置からオレ達を使おうとしてたのか。だから、報酬はあっちが勝手に決めて、それで終わりだったんだ。あっちは使うもので、こっちは使われるもの。だから、一々報酬の確認や増減は行わず、それでいて一方的に渡そうとしてきた。


「色々一方的過ぎない?」


「あのさぁ……。総魔の問題は帝国だけの問題じゃないんだよ。帝国は日夜必死になってモンスターが防壁を突破しないよう頑張ってるし、頼まれた側は普通は二つ返事で了解するの。だって、ここを守らなきゃ自分達も危ないんだもの。報酬に関しては一々確認する必要のないくらいには見合ったものを渡してる。

 こんなの常識だよ? 分かれよ」


 皇帝は随分イライラしてるなぁ。まあ、イライラするように仕向けてるからそうなるのは当たり前だけど。


 これはちょっとした仕返しだ。ぶっちゃけ、このやりとりを経てオレが了承をする事は無いから、ひたすらに不毛な行為だ。


 オレは煙草を一本吸い終わったんで、次のを取り出して火をつける。


「余裕そうだね君」


「お前ほど余裕無くないからな」


「チッ……」


 もう皇帝は上辺で取り繕う事は辞めたらしい。全力で感情を見せてくる。


「あのねイキョウ。この問題は、放置するには重すぎる事なんだ。だからここは皇帝陛下のお言葉を――」


「えー、キアルがそう言うならちょっとは考えてやるけど……。ってかお前だけでどうにかなんないの?」


「地理不明、活動時間制限有り、視界不良なのに範囲は広大。そんな中で原因を特定するとなると、防壁の戦力も考えて突破される前に事態の解決を図るには俺が四人は必要かなぁ……。時間の制限無ければ多分一人でも出来るだろうけどね」


「お前レベルがお前しか居ないのが悔やまれるなぁ……」


「後世の育成には力入れてるんだけど、どうにも才能がねぇ……」


 オレ達二人は揃って腕を組み悩む。


 この世界の人種の中で、突出して強いキアルが四人必要となると、中々な難題だなぁ。そしてやっぱりキアルは良い。いつでもオレと身分の差を気にせずあけすけモノを言ってくれる。出会った頃からそうだったから、オレはお前に力を貸そうと思ったんだよ。


「どうだ、キアルロッド君の話を聞いても意見は変わらないか? 変わらないだろうね、現実が見えていない君じゃ」


「お得意の弁論でオレを従わせる方法さえ見えない皇帝よりは現実見えてると思うぞ。現実を変えられないのはお前のほうだろ」


「……キミみたいなもの関わっている仮面部隊なんて高が知れてるよ」


「そんな高が知れてる部隊に救援を求めたのは誰だよ。ムカついてるからって感情的な煽り合いしたいなら付き合ってやるけど、そんな無駄な時間過ごすくらいならお仕事してたほうが建設的なんじゃない?」


 オレの言葉で、皇帝は露骨に顔をゆがめ、頭を掻き出した。


「あーもー!! イライラする!! キミがカフス殿の知り合いじゃなかったら今すぐにでも処刑してやりたいくらいだ!!

 選ばせてやる。五体満足でこの部屋を出たいか? それとも人質になって仮面部隊を呼ぶか?」


 その言葉で、今まで黙って側に控えていたダグラスって騎士が、背中に背負った大剣に手を掛ける。


「実質処刑じゃん」


「煩い黙れ。お前は俺の言いなりになってさえいればいい」


「やだよ。真摯に謝ってからお願いしてきたら聞いてやったってのに、それすらしない奴の命令なんか聞くかよ」


「私は君の命なんてどうでも良いんだよ。なんなら死体にしてカフ――――おっと、これ以上はギャラリーが居る前で言う言葉じゃなかったね」


 すっとぼけたような声を出しながら、皇帝はオレを見下してバカにするように言ってくる。


 オレを死体にしてカフスに送りつけようってか? それが脅しになるってか? 皇帝、お前、やっぱ面白くないよ。詰まんなくて、底が浅い、話す価値も無い奴だった。面白くない話の最後に、一番面白くないことを言いやがった。


 じゃあ、今後ずっとコイツは面白く無いよ。ただ、邪魔だよ。


「じゃあ、今で良いだろう」


 カフスを平気で泣かせるやつが居るなら、まあ、きっと、居なくなってもらったほうが良い。


 こんな奴に一々手段を考えなくて良い。シンプルに、今ここで――。


「っと、はいはーい。そこまで」


 オレが椅子から立ち上がると同時に、キアルがスルリと間に入ってきた。あっち側に顔を向けて、背でオレを隠すように。


 オレの眼に映るキアルの背中は言っていた。そんなことしないでよ、と。

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