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無計画なオレ達は!! ~碌な眼に会わないじゃんかよ異世界ィ~  作者: ノーサリゲ
第五章-そんなに疲れさせないでよ異世界-
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16.ごはんはんははん

 ソーキス達とホテルで合流後、そのまま皆で夕食を取る事になった。


 どうやらカフスはこの宿屋を何度か利用したことがある様で、認識阻害の魔法は解除して堂々と正体を現している。でも、さすがは一流の宿屋。従業員も客も、カフスの姿を見たからって騒ぎ立てる奴は一人も居ない。


 そんな優雅な空気が流れるこの宿屋の、三階に広い食堂。高そうな装飾が施された木の扉を開けると、床にはこれまた高そうな渋い紫の落ち着いたカーペットが敷かれていた。やっぱり高い物は赤系統のものが多いな。


 食堂の白い壁と等間隔に並んだ白い円柱は、あえて薄暗くすることによって、暖色系の光が映える。薄暗いが、柔らかい光に満たされているこの空間は、落ち着いてた雰囲気が流れていて……やっぱり高そうとしか表現できない。


 そんでそんで、扉の側で待機してた、高そうな服を着た従業員がオレ達を席まで案内しやがんのよ。こちとら宿泊してきた宿屋は全部、好きな席にドカっと座って勝手に色々注文するといった経験しかしてこなかった人間だから、この宿屋の対応にはびっくりさ。


 もう宿屋という呼称はやめよう。ちゃんとホテルと呼ばなければ……。と、オレは案内されながら考えたりもした。


 従業員に通された席は、四角いテーブルに、一人用のえんじ色のソファーが四つ備え付けられてる席だった。


 テーブルには事前にナイフとフォーク、それとナプキンがあって、これまた高そうな匂いをほとばしらせていた。


 した。だった。いた。そう、これは全部過去のこと。ぶっちゃけこの空間が高かろうが安かろうが今のオレには関係ない。


 注文をしてないというのに、いくつかの質問をされただけで持ってこられたこの料理を見て、現在オレは困惑していた。


「やべぇ……やべぇよ……」


 目の前においてある四角い皿には、長方形状に薄く剥かれた何かの皮が敷いてあり、その上には一口大の、チーズと瓜系の野菜、赤身魚が乗っているクラッカーがポツンと置いてある。


 これ……どうやって食べんの? いや、いつもなら手で掴んでひょいっと食うだけで、一々悩むようなこともないんだ。けど、ここホテルだから。高級ホテルだから。マナーとか厳しいんじゃねぇの?


 今のオレにはこのたった一つにクラッカーの食べ方すら分からない。だから、この料理と同時に持ってこられたワインを口に少しだけ含みながら、『オレはなんとも思ってませんよ? むしろこの空気に馴染んでますよ?』って感じの顔をし、その態度とは裏腹に必死にとあることをする。


 とあることとは、カフスの観察だ。現在オレの視線は、焦った雰囲気は出さずに、余裕の態度を滲ませながら遠くを見ている風を装っている。でも、視界の端でしっかり目の前に座るカフスのことを見ているんだ。


 傍から見ればオレの視線は遠くを見ているようにしか見えない。でも、オレのこの目があれば視界の端にさえ対象を捉えていれば観察することが可能だ。だから、オレは誰にも悟られることなくカフスの動きを参考にすることが可能なんだ。


 そんな観察されてるとは思っても無いだろうカフスは、クラッカーを摘むと優雅に口に運んで、ちっちゃなお口をちっちゃく空けると、品のある一口で綺麗に食べ去った。


「うまうま」


 ふーん、なるほどね。これは手で行って良いのか。あとは、優雅風を装って食べればマナー違反にはならないだろう。


「どれ、では早速いただきますわの」


 食べ方を知ったオレは、手に持っていたワイングラスを置いてクラッカーに向き合う。


 ゆったりとした動作で手を運び、クラッカーをちょこんと摘むと、カフスの真似をしながら口まで運ぶ。そして、オレもちっちゃなお口をちっちゃく空けて、品をこれほどかというまでにかもし出しながら綺麗に嗜み去った。


「お上品なお味で。お誠にお美味ですわの」


「ふへへー、おにいさんがまた面白いことしてるー」


「お下品ですわのソーキス、恥を知りなさい恥を」


 右手に座っているソーキスは、へらへら笑いをしながらこっちを見てクッソ失礼なことを言って来た。そのソーキスの前には、もうクラッカーは置かれてない。運ばれてきたと同時にひょいっと食いやがったからな。


 左手に座るミュイラスはというと……畏まって座りながら、それでも優雅にクラッカーを食していた。


 それはそうと、ワイン少ないなぁ……。ボトル、出来ればジョッキで欲しいわ。


 そんな事を考えていると、従業員が皿を下げて次の料理を持ってきたので、『チビチビ飲むの面倒だからワイン十本くらい持ってきてわの。もちろんボトルでわの』と優雅に伝えておいた。でも、伝えた瞬間に「お戯れを……」とか言われて苦笑いされた。


「やべぇ……やべぇよ……」


 今度はなんかちょこちょこした料理だよ……。これも手で言っちゃって良いのか? ってか、元の世界のマナーとか知らんのに、異世界のマナーが分かる訳無いだろ。唯一知ってるのは、置かれている食器は外側から使っていくってことくらいだ。……あれ? 内側からだっけ? 分からん、何も分からん。


 ってことで、唯一持ってこられたワインボトル一本を優雅にラッパ飲みしながら再度カフスを観察することにした。


 なるほど……、これは、外側のナイフとフォークを使って食べれば良いのか。


「ではでは早速わの。いただきますわの」


 オレは食べる順番や、ナイフとフォークの使い方。その一切をカフスの動きをトレースして行う。


 そして最後にワインを口の中に流し込むと一言。


「かぁーっ、クソうめぇですわの」


 この美味な料理を提供してくれたシェフを労うかのような一言を呟いて、優雅にこの料理を称える。


「イ、イキョウさんは。わ、わ、私の緊張をほぐそうとして、わわわざとやっていのですか?」


 カフスが食べると同時に食事を始めたミュイラスは、まだ皿に料理が残っている状態で、意図の分からない質問してきた。


「え? 何が?」


「い、いえ……なんでも……」


「ふへへー、おもしろー」


 ソーキスはというと、皿の料理を問答無用でフォークで突き刺し、頬張りながらオレを見て笑ってくる。


「ふっへっへ」


 カフスはオレのことを見ながら薄っすらと笑ってきて……? いや、そんなはずは無い。オレにおかしい所は無いはずだ。


「ふへー、カフスもおもしろー」


「ソーキス、ふっへっへ」


「ふへへー」


「「ふへへー(ふっへっへ)」」


 二人はお互いを見ながらふにゃっとして笑いあう。それ前にも見たぞ、サンカとやってたろ。


 でも、オレは余計な口出しや、不用意な言葉を口にするようなことはしない。だって、なんかそれ優雅っぽくないもん。


「そーいやさぁ、聞いてくれわのカフス」


 オレは、次の料理が運ばれてくる間の時間に、カフスへと話しかける。


 もちろん、従業員には今度こそワイン十本を注文しておいた。また同じ反応されたけど。でも、注文した内の一本は、カフスとミュイラス用だ。だから、一本しか持ってこないと二人が永遠と呑めないじゃないか……。


「なに?」


「オレさ、ミュイラスのこともっと知りたいのに全然話してもらえないのよわの。どうすれば良いわの?」


「みゅ!?」


「ふへー、本人の前で聞くことじゃないじゃーん」


「ミュイラスは奥ゆかしい子。ぐいぐい来られると怖いのかも」


「マジわの? ミュイラス」


「早速やってるじゃーん。……あれー? もしかしてボクがシアスタの代わりするのー?」


 オレはカフスの言葉を聞いて、そのままミュイラスに問いかける。


「あ、あの、その……。わ、わ、私、人に近づけなくて……距離を置かないと……」


「ほえー、なるほどなぁ……。え? 何でわの?」


 これほどまでにオドオドしているのは、人が嫌いだとか、会話するのが苦手とか、自分が仲良くしたい人とだけ仲良くするとか、ぶっちゃけオレのこと嫌いとかってわけじゃなく、人に近づけないってのが理由らしい。


「そそ、それは……その……」


「ふへー、おにい……いいやー、ボクなにもしなーい。めんどくさーい」


「ミュイラスは特殊なスキルを持っていて、そのせいで、人との不用意な接触を避けてるってハインツから聞いた」


 ミュイラスの代わりにカフスが答えてくれた。


 人伝いに聞いたって言ってるって事は、カフスもそのスキルの効果や、詳細な理由までは知らないようだ。


「どんなスキルなの? あ、わの?」


 危ない危ない。優雅さを忘れてミュイラスに質問するところだった。


「それはその……。わ、私の力の事は、秘密にするようにと、皇帝陛下から言われておりまして……」


「それは残念わの」


 ミュイラスには断られてしまったが、考えてみれば当たり前か。カフスですら詳細を教えてもらってないってのに、オレに教えてくれる訳ないもんな。


「あ、あ、あ。イイ、イキョウさんが望むなら、二人きりになってくれれば……!!」


 ミュイラスは、何か良い事思いついたって感じの態度を示しながら言ってくる。


「えー……四人部屋取っちまったよ。ってか、オレまだ治療中だからダメなんだよなぁ……」


「私には教えてくれない……」


 ミュイラスの言葉を聞いたオレと、何でかカフスが同時にシュンとして落ち込んでしまう。


「え? え? 私、何か……? や、やってしまいましたか?」


 オレ達の姿を見たミュイラスは、あたふたしながらキョロキョロしてオレとカフスを交互に見てくる。


「カフス……なんだか良く分からんが、お互い元気だそうな」


「ん。今は美味しいご飯の時間。楽しむ。イキョウも頑張って」


 お互いがお互いを励ましあう中、オレ達の目の前には問答無用で料理が運ばれ来た。


「やべぇ……やべぇよわの……」


 元気出そうと思った矢先、またマナー分からんものが来たぞ。スープってどうやって飲めば良いの? がぶ飲みOK? ってか、スープの横に並べられてるこのチーズみたいな粘性のある半球体は何? お椀の中に入ってるけど、コース料理って一品ずつ運ばれてくるんじゃねぇの? これが異世界コースの常識なの?


 とまぁ、そんな事を思ってると、目の前のカフスがスープを掬って謎の半球体に掛け始めた。ミュイラスもおんなじことをしてる……。


「カフスー、なにこれー?」


「これはミリウ。スープをかけると美味しくなる」


「ミリ……ウ? わ…の?」


 ミリウってなんだろ。オレが知らないだけで、コース料理では当たり前に出てくるのか? 料理名なのか、コースの中に組み込まれている順番の名称なのかすらも分からない。


 そして、この白くて粘性のあるものにスープを掛ける意味も分からない。


 柔らかくしてどうすんでしょと思いながら、カフスのことを視界の端で観察してると……。


 嘘だろ、ミリウって奴が淡く発光し始めたぞおい。仕舞にゃ溶けて、プルプルうごめきながらお椀一杯に小さな粒を形成しやがった。


「えぇわのぉ……」


 分かる。確実に分かる。このミリウって奴はオレ達の世界に存在してなかったものだ。


「ふへー、すごーい。初めて見たー」


「一般では中々見ない。本格的な帝国式のコースだとよく見る。ソーキスに見せられて良かった」


「これどーやって食べるのー?」


「そのまま食べても良いし、スープに浸しても良い。好きに食べるのがこのミリウの作法。始まりは、先々々々代の皇帝が好きで、コースに無理矢理組み込んだ。それで、好きに食べてくださいって言ってた。だから好きにして良い。私も好きにしてる」


 カフスはちょっとドヤっとしながらソーキスへと教鞭する。


 コイツ……好きな事を好きな奴に教えられるのがとっても嬉しいようだ。


 好きに食って良いのか。だったらオレも好きに食わしてもらおう。


 作法を気にせず、手の持ったナイフとフォークで初期状態のミリウを少しだけ切り取り、そして口に運んでみた。


 まずはそのままの味を試しに味わってみる。

 

「んー……んー? 美味い……のかわのぉ?」


 食感は思った通り、粘性のあるチーズだ。でも、味が薄い。辛うじて塩味があるって程度で、香りも風味もなんも無い。


「そのままだと味の強いソースと合う。でも、水分を吸収すると味が変わる。特にこのホテルのスープはよく合う」


 カフスはオレにも少しドヤっとしながら教鞭を垂れてきやがった。


 んだよ、そんな事言われたら試すしかないじゃん。


 ってことで、オレもカフスミュイラスに習ってミリウにスープを掛けて、状態を変化させる。


 すると、お椀一杯に白い粒状のミリウが生まれたわけだけど……。なんだろう、例えるなら真珠が大量発生してるんじゃないかってくらいには、表面がテラテラしてる粒が大量に現れたぞ。


 なんだこの料理……。高い料理って手が込んでるな。もはや常人には理解不能の領域に達している。


 オレはミリウの粒をスプーンで掬いながらカフスに向けて言う。


「大体さ。高い料理ってのは料理人が素材や過程に厳選を重ねて、自分のプライドに見合うよう丹精込めて究極の一品を作ってるだけだろ。そんな金も時間も掛けただけの努力の結晶の料理なんてこのオレの庶民的な舌を満足させうまーーーーーい!!」


 苦言を呈しながらスプーンを口に運んだオレは、思わず声を上げてしまう。


 その声で、周りの客がオレの方を見て来たけど、そんなのは関係ないぞおい。


 食べれば口の中にはプチプチした食感が広がり、噛んだ真珠は破裂して中からはスープの風味が溢れてくる。いうなればこのミリウは、極上のスープを孕んだイクラだ。


 スープをただ飲むだけじゃ、この食感と風味は生まれない。むしろこのスープは、このミリウという物質を経由することによって、汁物という姿だけでは到底到達できない高みへ至ったとも言えよう。


 もちろん、このスープをスープとして楽しむのもありだ。それほどにはこのスープは美味い。


 このミリウという料理は言うなれば相乗効果のアクセントだ。スープが主でも、ミリウが主でもない。どちらのものも、両方を引き立たせる為のファクターに過ぎないんだ。


 この美味しさは、ちゃんと言葉にして現さなければシェフに失礼だ。最高の感想を、それがオレに唯一できることだ。


「今の気持ちを例えるなら、イクラ丼食いてーな。うめ、うめ」


 そう言いながら、オレはミリウを頬張り、椀一杯をすぐさま平らげる。


 平らげたところで一息つくと、周りからの視線と、カフスが満足しているような顔を向けられていることが分かった。


「あ、こりゃどーもすんません。あまりに美味いもんだから夢中になっちまったわの」


 椅子に座りながら、オレは軽く頭を下げる。


 変に注目を集めてしまったから、一応は謝っておこう。


 高そうな服に身を包んだ男達、高そうなドレスに身を包んだ女達。全員がオレのことを見て、クスクスと笑っている。馬鹿にした笑いじゃない、珍しい者を見たという、好奇の笑いだ。


 金持ってて余裕のある奴等は違うなぁ。余裕があるからオレの行動も笑って見過ごせるようだ。


 ……腹立つな。


「君のその格好、道化師や大道芸人なのかな?」


 優雅に笑う群集の中から、近くのテーブルに座ってたおじいさんとも言って良い年代の男に話しかけられる。対面にはおばあさんが座っていた。


「バカ言ってんじゃねぇぞ、れっきとした由緒正しき冒険者ですわの」


 オレは何気ない問いに対して、ワインをラッパ飲みしながら優雅に答える。


「そう。イキョウは私の友達で冒険者」


「これはこれは……スノーケア様から直接お言葉をいただけるとは。ご機嫌麗しゅうございます」


「ん、久しぶり」


 カフスの言葉を受けた老夫婦は、椅子から立って、丁寧にお辞儀をした。


 声を掛けられるまではカフスに一切反応しなかったってのに、声を掛けられた途端に反応したって事は、カフスからのアプローチがあるまでは見て見ぬ不利をするってのが、このホテルにおいての暗黙のルールなのかもしれない。


「カフスの知り合いですわの?」


「クダルー商会の会長夫婦。帝国に来た時はお店に絶対行く。いろんな美味しいものから日用品まで取り扱ってくれてる」


「へー……」


 説明で食い物が上限に来るところがカフスらしいわ。


「んで、何かようですわの? イチャモンですわの?」


「ミュイラス様やスノーケア様のお近くに居る人へ、そのような失礼な事はしないよ。君の姿が少し面白くてね。つい声を掛けてしまっただけだよ」


「ふへー、またおにいさん軽く見られてるー。カフスー、これってお代わりできるー? もっと食べたーい」


「ん。ソーキスが言うならお願いしてみる」


 老人は微笑みながら優雅にオレへ言葉を向けてくる。何か気になるワードがあったが、それを無視して良いくらいにもっと気になるワードが出たぞ。


 オレの姿が……面白い……? どこが? オレの装備は怪しくも、それがミステリアスな雰囲気をかもし出して、最高にかっこいいクールな姿へと昇華してるんだぞ?


 このじじい、耄碌してやがる。いや、若者のセンスは何時の世も上の世代には理解されないもんだ。ここはオレは譲歩してやろう。


「まあいいよ、許してやる。ってかなんで帝国に住んでる金持ちがわざわざこのホテルに泊まるわけ? 何? 本店は別にあって、帝都には出張でもしに来たの? わの」


「いやぁ、帝都に住んでいるけど……。たまには気分転換も必要じゃないか」


 老人は、何故そんなことを聞くんだい? って言わんばかりに、純粋な疑問の顔を浮かべてオレを見てくる。


 マジかよ。これが金持ちの常識って奴なのか? 帝都には自分の家があるってのに、わざわざ金払って同じ土地にある最高級のホテルに泊まることが気分転換って言い放てるくらいには価値観がかけ離れてるぞ。


「ミュイラス、帝都に住んでる金持ち嫌いになりそうだわわの」


「みゅ!? ど、ど、どうして急に……」


「なあお前、ってかお前等。さっきからずっとクスクス笑いやがってよぉ。なんだよ、オレが何か間違ったことしたか? いや、絶対してるんだよなぁ。場違いなのはオレなんだよなぁ……」


 常識を持って考えるなら、マイノリティとマジョリティの比率を考えればオレが異端だと言う事は頭で理解できる。


 うーん、この場の状況に合わせるのも段々めんどくさくなってきたぞ。


 オレは、大量のミリウを頬張るソーキスを横目に立ち上がる。


「文句があるなら直接言いに来いや。言いに来ないなら文句が無いと判断して好き勝手やらせてもらうからな」


「イキョウ、好き勝手はダメ。ダメな事したらちゃんと私が注意する」


「訂正します。カフスに怒られない範囲で好き勝手やらせてもらうからな」


「ほっほっほ、血気盛んなことこそ若者の証だ。……君は人種、人間であってるよね?」


「バリバリの人間だけど何か?」


「アステルには様々な種族が集うからね。見た目は人でも、もしかしたら別の種族かも知れない。見た目だけで若いと判断しては、君に対して失礼なことをしてしまったのではないかと思ってね」


 老人は、オレに言い聞かせるように話す。老人が優しく、若者へ言い聞かせるように。


「このホテルに君のような者が泊まるのは珍しいね」


 その言葉と共に、老人はオレに目配せをすると、ちょっとこっちへ来なさいって視線を向けてきた。


 さすがは商会の会長だ、物言わぬ顔をしながら目で相手に伝えるのが上手い。なんなら、ここにはカフスが居ると知って、自分から呼び寄せては失礼なことになると理解してるからタチが悪い。


 いいよ、その目に乗ってやろうじゃないか。


「カフス、ちょっとあのじいさんと話してくるわ」


「ん、行ってらっしゃい。ソーキス、うまうま?」


「うまうまー」


 オレは、ソーキスの食べっぷりを心底嬉しそうに見ているカフスに許可を貰う。


 テーブルから離れていくオレを、ミュイラスは困惑しながら見てくるが、悪い。ここはじじいの目を優先させてもらうぞ。


 オレはズンズン進んで行き、老夫婦の席にドカッと座る。


「なんだよ」


 老夫婦はメインの食事を終え、アイスの乗ったワッフルのようなスイーツが、手がつけられずにテーブルに乗っていた。


 アイスが溶けちまうぞと思いながらも、老夫婦は食事をすることもせずオレを見てくる。


「貴方、年齢はおいくつなの?」


 老夫婦の片方、老婆は上品な口調と笑顔でオレへと尋ねてきた。


「二十二歳だけど?」


「あら~、若いわね~。見たところお酒がお好きなようだけど、タバコは吸うのかしら?」


「吸うぞ、ガンガン吸うぞ。なんなら今吸うわ」


 んだこのババア。世間話をするの為にオレはこの席に招かれたって言うのかよ。


 反逆精神が働いて、オレは煙草を取り出し口に咥える。


 この世界の良いところは、大抵どの場所にも灰皿が置いてあるってところだ。もちろん、このホテルも例外じゃない。


 そしてオレが煙草を咥えると。


「はい」


 老婆が何処からかマッチを取り出して、オレに火を向けてきた。


 えぇ……オレはあんたをライターとしては見てないんだけど……。上流階級はこんなことしてんの? これくらい一人で出来るしうっとおしいわ。


「いや、別に一人で出来るんで。そういった尽くす行為は好きな人だけにやってろよ」

 

 オレはマッチの火を握りつぶして老婆の動きを止める。


「まあ!? ……熱くないの? 大丈夫?」


「へーきへーき」


 オレは握りつぶした手の平を老婆に見せながら、もう片方の手でローヒートを使って煙草に火をつけた。


 そして、煙を吸いながら老夫婦二人のことを見るが……。


「ねえあなた。冒険者さんって凄いのね、マッチの火を手で消しちゃったわ!!」


「そうだね。冒険者の方々はレベルが一般の人より高いからね。そう言うこともあるだろうさ」


「ねね、あなたもお煙草吸わない?」


「じゃあ、葉巻吸っちゃおうかな」


「はいあなた、火。うふふ、好きな人だけにやってろって言われちゃった」


「若者と居ると、僕達の心も若返っちゃうね」


 なんか、二人はちょっとだけはしゃぎながらオレの目の前でキャッキャしてる。


 ……は? 何だコイツ等。老いても中睦まじいとか、どうそお幸せにしてろや。


「フーっ、すまないね。年甲斐にもない所を見せてしまったよ」


 じじいは、葉巻の煙を吐き出しながらオレに言ってくる。


「何、なんなの? カフスに聞かれないところで文句を言う為にオレを呼んだんじゃないの?」


 対抗するように、オレは煙草の煙を吐き出しながら言う。


「ほっほっほ、違うさ。君のような者が――」


「はいそこ具体的にお願い。オレがどんな者なのか詳細に教えてくれや」


「そうだねぇ……。スノーケア様のお側に人が居るというだけでも珍しいのに、今日は君を含めて三人もいらっしゃる。あそこにあらせられる少女は、スノーケア様に縁の深いものだろう。もしかすると娘さんかな? ミュイラス様は、帝国軍最高幹部のお方であらせられるから違和感はないとして、君みたいな一般人が居るのがどうにも気になってしまってねぇ。声が掛けやすそうだからつい……ねぇ?」


 じじいはニッコリとしながらオレの方を見て言ってくる。これ、舐められてるな? 別に良いいや。年の功を重んじてオレの事は見逃してやるよ。


 でも、言うべき事は言わせて貰おう。


「あそこに居るカフスそっくりの見た目をしてる奴は娘じゃなくて弟だ」


「ほうほう。弟が居るなんて話は聞いた事が無い……けど、スノーケア様は多くを語らない方だ。弟様を秘密にしていたのも、その身を案じてのことだろう」


「弟……男の子だったの、へぇー。可愛いわねぇ。まるで本当の子共を見てるみたい、うふふ」


 じじいはなんか納得したような表情をして葉巻を蒸かすし、老婆はソーキスの姿を見て優しい笑顔を浮かべながら頬張っている姿を見ている。


 なんだこの状況。


「別にあいつの身を案じる必要なんて無いだろ。仮にもカフスの弟だぞ。手出しする輩なんて居ないだろ」


「そうとも限らないよ。アステルという土地は事実上、どの国も犯すことの出来ない不可侵領域ではあるし、その土地の長であらせられるスノーケア様は、王であろうが皇帝陛下であろうが一切の手が出せない不文律が国家間に暗黙の了解として流れている。しかしね、スノーケア様自身に手は出せなくても、肉親を丸め込んで意見を通せば良いと考える者も出てくるのもまた事実なんだよ」


「は?」


「他所からではなく、肉親を経た内部からの発言となると、それは暗黙の了解を犯したことにはならない。これ以上は言わなくても、君でも分かるだろう?」


 じじい……。いや、年老いても尚商会の会長を務めてるだけあって、にこやかに話してても、その思慮と発言には有無を言わさない力がある。


 でも、いよいよもって、オレはこの席に呼ばれた意味が分からなくなる。オレは何のために呼ばれたんだ? こんな重要そうな話を、オレを一般人と判断したじいさんが一々含みを持たせて語る必要ある?


 もしもオレが、カフスの警護を担当しているとしよう。もしもオレが、アステルの政治を担う役職に就いているとしよう。だったら、ソーキスを守ることがカフスの身を守ること、引いてはアステルの情勢を守ることに繋がるだろう。


 でも、このじいさんは、オレをカフスの周りに居る一般人として見た上で重要そうな話をしてくる。


 バカなオレに親切なことでもして、カフスに口利きしてもらおうとでも考えてるんじゃないだろうな。


「何が言いたいの? あんたが一般人って判断したオレにそんな事言われても、あんたの商会が有利になるような口利きはしないからな?」


「そんなつもりはないよ、ただ、ね?」


 そう言って、じいさんは向かいに座る老婆のほうを見る。老婆は未だ、キラキラした目をしながらソーキスの食べっぷりを見ていた。


「……私の妻は子供が大好きでね、特に小さい子が食べてる姿を見るのが好きなんだ。私もねぇ……小さい子が沢山食べてる姿を見るのがどうしてか好きなんだよ。この気持ちは、若い君には理解し難いことかもしれないけど、年老いると……どうにも可愛くて仕方なくなってしまうんだ」


「へー……分からんわ」


「若いときは皆そうさ。でも、ホント可愛くてね……。このホテルに小さい子が泊まること自体がほとんどないんだよ。大人向けのホテルだから……ね?」


 じいさんは、口に葉巻を咥えながら、『あとは分かるだろ?』見たいな顔してオレを見てくる。いや…もう分かったよ。家の子達の愛され具合知ってたら、これ以上言われなくてもおのずと察するわ。


「いや……えぇ……。乗ってやるけど……お前、仮にもカフス さ・ま の肉親呼びつけんのかよ」


 このじじいが言いたい事は分かったし、わざわざカフスの肉親としての役割の重要性を説いた理由も分かった。


 じじい、お前……。今からする事は、政治的な関わりは何もないということを、カフスの側に居たオレに理解して欲しかったんだな。無用な軋轢や邪推をされないために。もしものときは、オレを証人にするために。


「その為に君を呼んだんじゃないか。ああ、お金が欲しいのかい? だったら……」


 じいさんはごそごそと懐に手を当てる。が。


「その態度はクソほど腹立つから辞めろ。おーいソーキス!! ちょっとこっち来いや!! なんならカフスも来い!! 二人まとめて来い!!」


 金一封を上から目線で取り出そうとしたじじいの動きを静止させて、オレはカフスとソーキスを大声で呼びつける。


「スノーケア様もとは言ってないよ!?」


「あらまぁ、これは予想外ね」


 驚いてる老夫婦は無視だ。てめぇらが兄弟水入らずの食事に魔を差したんだぞ。だったらまとめて相手して、二人とも満足させろや。


 オレに呼ばれた二人は、テコテコ歩きながらこちらのテーブルに寄ってくる。


「どーしたのおにいさん?」


「この老夫婦がお前等に沢山食わせてやりたいんだって。食べっぷりを見たいらしい」


「いやぁ…!? スノーケア様までとは……」


 じじいは驚きながら、席を立って丁重な態度をしながらカフスに伺うように話しかける。その動きに合わせるように、老婆は立ち上がって静かに頭を下げる。


「私はダメ? ソーキスだけならいいの?」


 カフスは、少しシュンとしながらも、老夫婦の放つ雰囲気を感じ取って、空気を読もうとしてくる。


 それが、オレはいやだ。もとは老夫婦がオレを仲介してソーキスだけを角を立たせずに呼ぼうとしてきたんだ。オレを利用しようとしてきたんだ。


 だったらこっちだってお前等を利用してやるよ。具体的には、カフスの交友関係を広げてやる。利用しようとしてきた奴を、逆に利用してやる。


「んなこったぁない。コイツ等は、お前とソーキスと一緒に食事がしたかったんだってよ。小さな子達が美味しく食べてる姿が好きらしい」


「コラ!! スノーケア様に向かって小さな子などと――」


「うるせぇじじい黙らっしゃい。何が違うんだよ。ソーキスと見た目が一緒ならカフスだって小さな子だろが。大体、お前がこの状況で怒るならムカつくから商会潰すぞ。

 ちょっと悪いな」


 オレは、テーブルに乗っていたフォークにワッフルを突き刺して、老婆の手に持たせる。


「あら?」


「はいソーキス。あーん」


「ふへー、あーん」


 フォークを持ってる老婆の手に添えるようにして、オレがソーキスの口までワッフルを誘導すると、ソーキスは特別な反応を示さずに大口を開けてワッフルを頬張る。


「うまうまー」


「あら…うふふ、可愛いわぁ」


 ワッフルを頬張ってモムモムしているソーキスを見ながら、老婆はおっとりとした笑みを浮かべてその姿を見入っている。


「おい、お前!!」


「はーい、自分の妻のことをお前とか言って叱責するご時勢は当の昔に終わってるんですぅー。んで、次は」


 オレは、老婆の持ってるフォークにもう一つのワッフルを突き刺して、今度はカフスに向ける。


「はいカフス、あーん」


「ん……あーん」


 カフスは、恥ずかしそうにしながらも、珍しくおっきく口を空けて、ソーキスと同じようにワッフルを食べる体勢を作る。


「いいの? 冒険者さん。これは失礼にならない?」


 老婆は困惑しながらも、ちょっとウキウキワクワクさせながらオレに聞いて来る。


「あんた天然おっとりだね、若いころはさぞモテたでしょ。逆にこの状況でダメな事ってあると思う?」


「そうね、そうよね。……行くわ。スノーケア様、あーん」


「あー……ん。うまうま」


「あら~、こうしてみると……ねえ冒険者さん。言っても良いのかしら? 失礼になる?」


「ならないならない。あんたが今助言を求めてる、カフスの側に居る一般人が太鼓判押してやるから大丈夫」


「冒険者さんは逞しいのねぇ~。言うわ。かわいい~、こうしてみると双子の子供を見てるみたいだわぁ~。あ、寿命の違う方にこういうことを言うのは……」


「失礼じゃないから。あんた最高だよ、よくもまぁカフスに対してずけずけ言えるね」


「私、これでも貴族の箱入り令嬢だったのよ~。昔から世間知らずって言われてたけど、溺愛してくれる旦那様のおかげでもっと世間知らずになっちゃたわぁ、うふふ」


 老婆、いや、ご婦人は、キュートな笑い顔しながらオレを見てくる。


「おしどり夫婦だなぁ」


 焦ってるじじいを他所に、マイペースに語るこのご婦人は、カフスを目の前にしても動じないくらいにはマイペースを発揮している。


 恐るべし箱入り具合。カフスへの信仰心や敬い寄りも、ただ目の前にある事実だけを楽しんでやがる。常識をかなぐり捨てて、自分の主観だけで語ってやがるぞおい。このご婦人もある意味ではオレ達側の人間だな?


「シーライサ、うまうま」


「おばさん、シーライサって言うのー? これうまうまー」


 老婆基、ご婦人基、シーライサご婦人を見て、ソーキスとカフスは揃ってワッフルの感想をのほほんと述べている。


「まぁまぁ、可愛いわ~!! どうしましょ、あなた、あなたー!!」


 その姿を見て、シーライサご婦人は、年齢に違わずはしゃぎながらじじいに声を掛けた。


「どうしよおって……僕はどうしたら良いんだろう……」


 そんなじじいは、遠い目をしながら天井を見つめて立ち尽くしていた。どうやら、自分のおかれている状況が分からないようだ。


 今お前は、オレを利用しようとして、逆に利用されてることに気付け。なんなら、そこまで悲観するような状況じゃないことを理解しろ。


「はいお疲れさん、オレに渡そうとした金はコイツ等の食費に消しやがれ」


「粗暴な言い方なのに内容が……。まあ、ここは妻の姿を見て落ち着くとしようかな……。伊達に愛妻家を公言しちゃ居ないよ」


「おしどり夫婦~」


「スノーケア様。ここは私めがお支払いいたしますので、何卒妻のわがままにお付き合いをしていただければ――」


「私達の宿泊費はハインツが払ってくれてる。これ以上はダメ。私達が追加で頼んだものは私が全部払う」


「んだカフス!? お前オレ達に対する借りで金は絶対払わないのに、こういったところじゃ払うってのかよ!! 知ったこっちゃねぇ、こいつに全部払わせろ!! すんませーん!! さっきから注文してんだけど、ワインボトルで十本早く持って来いやですわの!! このテーブルにじゃねぇぞ、オレは元のテーブルに戻るからそっちに運んでくださいわの!!」


「えぇっ!?」


「えぇっ、じゃねぇんだわ。こちとら用事が終わったらこのテーブルに居る意味はねぇんだ。じゃ、オーバー分の全額負担よろしく」


「それくらいじゃあ懐は痛まないがねぇ……君は随分乱暴な若者のようだ。驚いてしまったよ」


「クッソ腹立つなクソジジイ。じゃあな、クソジジイとシーライサご婦人」


「あらあら、もう戻っちゃうの?」


「こちとら一緒に飯食う約束してるんでね。あんた等に呼ばれたせいで、その約束も半分反故にしてるところあんだからな。罪悪感覚えて飯代払え」


 オレは、軽く憤慨しそうになりながらも、これでカフスの交友関係に深みが生まれてくれればなって思って、この場はぐっと堪えて立ち去る。


「久々に威勢の良い若者が現れたね……。スノーケア様、やはりここは私が」


「……ん、ありがと」


「感謝など、滅相もございません!!」


「ソーキスちゃん、あーん」


「あーん、うまうまー」


「可愛いわぁ~!!」


 とか言うへんなやり取りを背後に、オレは席に戻る。


 と、同時に従業員が。


「あの……コースの方はどちらに持っていけば……」


 と、困惑しながらオレに聞いてきやがった。


「常識的に考えてあっちの分はあっちにだろ。あと、早くワイン持ってきてくださいわの。よろしく頼みますわの」


「その口調も注文も、お戯れではなかったのですね……」


 オレの言葉を受けた従業員は、肩を落としながらテーブルを去っていった。


 その姿を横目に、オレはテーブルへと身体を向けてミュイラスへ注目する。


 そして、一歩引いた姿勢で成り行きを見ていたミュイラスに、ちゃんと謝る。


「ごめん。一緒にご飯食べる約束してたのに、邪魔が入っちまった」


「凄く……移り変わりが……。……? や、約……束? あれって、やく、約束だったんですか?」


 オレの言葉を受けたミュイラスは、キョトンとしながら言ってきた。


「ミュイラスが一緒に飯食いたいって言った。オレが了承した。だったら立派な約束でしょ」


 オレは煙草を蒸かしながらミュイラスに確認を取る。


 ミュイラスは言葉こそ返さないが、あせあせしながら俯いて、ちょっと笑った。


 どうやらミュイラスは、人と関わらないようにしてるだけで、人と関わる事自体が嫌いなわけでは無いようだ。


 その理由は特殊な力が原因って訳だけど……それが何かは知らねぇんだよなぁ。思いきって聞いてみるか。丁度テーブルで二人きりになったし。


 二人になったら教えてくれるってミュイラス言ってたもんな。


「なあミュイラス。お前が秘密にしてること教えてもらっても良い?」


「……!! はは、はい、ぜひぜひ!!」


 オレの言葉にミュイラスは、食い気味に返事をしてきたぞ。……食いつき良過ぎねぇか? でもなぁ……もしかしたら、皇帝には止められてるだけで、実は周りに話したかったってことも考えられるし……。ダメだ、やっぱわかんねぇわ。ミュイラスが何考えてるのか全く分からん。


「あ、でで、でも、ここでは人目があるので……一旦お部屋の方にいど移動しませんか?」


 確かに、ミュイラスの言う事は一理ある。秘密ってのは、人前で見せびらかしたら秘密にならないもんな。


 オレは、カフスとソーキスに一旦部屋に戻ることを伝えてからこの場を離れる。ホテルの従業員にも、すぐ戻ってくるから席空けといてとだけ伝え、お盆一杯に載っているワインボトルを一本拝借して、オレとミュイラスはホテルレストランを後にした。


「みゅふふ……。やっと……二人きりになれますね」


 背後では、ミュイラスがなんか可愛い笑い方をしながら、含みのある言葉を呟いていた。

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