「しょーと」「しょーと」「かもしれません!!」
幕間の没を集めたお話です。
「オレと」
「あたしで」
「ソーエンの真似しまーす。――せーの」
「「ふぅ、やれやれだ。やれやれ、何故俺がやれやれやれ。やれやれ」」
「ふぅ……殺れ殺れ」
「「いったぁぁぁああああああああああああああ!!」」
二人して酒瓶でぶん殴られました。
* * *
今現在、オレとソーエンは、アステルにおいては珍しい事柄に巻き込まれている。
静かな昼下がりの午後、オレ達二人は散歩の途中にとある一件のカフェへと立ち寄った。休憩がてら、座ってタバコでも吸うかって軽い気持ちで立ち寄り、コーヒーとタバコを堪能してたわけだけど……。
「う、動くんじゃねぇぞ!! この女がどうなっても良いのか!!」
「きゃー!!」
……どうしてかこうしてか、強盗事件に巻き込まれました……。
現在、犯人の青年はカフェの店員を人質に取っており、オレ達を含めた客、店員、計十人は全員ホールの隅にまとめて座らせられていた。オレ達二人以外は、頭の後ろで手を組まされている。
「金を出せ!! 店も客も、全員寄越せ!!」
しかも店だけじゃなくてオレ達にまで金を要求してくる始末だ。
だってのに、なんでオレもソーエンも一切動いて居ないのかというと……まだコーヒー呑み終わってないんだもん。これが呑み終わったらこの場の空気に参加するよ。それまでは客達の影に隠れながら二人であぐらかいてコーヒー堪能します。
って、思ってたのに……一人の客、おじさんがコソコソとオレ達に話しかけてきた。
「君達、あのイキョウくんとソーエンくんだろ? 噂に聞いてるよ、確か三等級ぼうけ……なんでコーヒー飲んでるんだい?」
「折角金出して買ったってのに飲まないとかもったいねぇじゃん」
「おい、『あの』とはなんだ。何が『あの』なんだ」
「い、いや……。君達すごいね……緊張感皆無だ……」
「おいそこ何コソコソしゃべ……なんでコーヒー飲んでるの!?」
「ほらぁ、おっさんのせいで見つかっちゃったじゃん」
「私が悪いのかな……」
そして犯人が驚いてる間に、周りの客がもっとひそひそとオレ達に話しかけてきた。
「強盗してる男の人、見たこと無いわ。多分ここ最近外から来た人よ」
「だからあの君達を知らない可能性高い。頼む、二人でどうにかできないかい?」
「だから『あの』とはなんだ」
「勝手にしゃべってんじゃねぇぞ!! この女がどうなってもいいのか!!」
「きゃー!!」
強盗は店員の腕をグイっと寄せると、脅す為にこちらに向けていたナイフをその女性へと突きつけた。それを見た他の店員や客からは、小さな悲鳴が上がった。
ははーん、ありゃ強盗素人だな。放っておいても大丈夫ではある。でも、アステルはオレ達が世話になってる町だ。
ソーエンも同じ事を思っているから、やれやれと言わんばかりに口を開いた。
「面倒だ、が。カフスが統治する町だ、コーヒーを飲み終わったら何とかしてやる。やれやれ」
「そーね。でもこのコーヒーめっちゃアツアツなんだよなぁ……」
「クソッ……私が美味しいコーヒーを提供したばかりに……ッ!!」
あ、ごめん、口ひげダンディーな店長さん。別に悪口って訳じゃないんです。
「やれやれ、冷めるまで時間を稼ぐとするか。おい強盗、その女を離して代わりにこのバカを人質にしておけ」
「なんでお前の指図受けなきゃなんないんだよ!!」
「そこの女とこのバカ。どちらが弱そうに思える」
「……ちょっとそこのバンダナこっち来い。人質交代だ」
「嘘だろ……?」
ソーエンの説得が成功しちまったせいで、人質の店員とデイブレイクを楽しんでいたオレは晴れて交代となった。でも、これも時間稼ぎの内だ、甘んじて受け入れよう……。
オレは手にコーヒーを持ったまま、口にタバコを咥えたまま腕を掴まれ、首にナイフを突きつけられながら、場の流れが再開された。
「もう勝手な真似すんなよ!! 金だ金!!早く金を出せ!!」
「ど素人だなぁ……」
「何か言ったか!?」
「いんや何も……あちあち」
「何でイキョウくんふつーにコーヒー飲んでんだい……」
「お、おい、しゃべってんじゃねぇ!! 言ったよな、勝手なまねすんなって!! 言うこときかねぇとコイツ刺すぞ!!」
緊迫した空気の中、強盗が大声で脅し、その声に客と店員が萎縮し、そしてソーエンはコーヒーを飲みながらタップダンスを始めた。…………。
「「「……。えぇ……」」」
「おい待てやそこのクソフード。何親友が殺されそうになってんのに暢気に踊ってやがんだ」
「深い理由はないが? ただ先日、お前がマフラーにあのクソみたいなカレーを塗りたくったことを思い出しただけだ」
あのクソフード、あろうことかカレーをクソって言いやがったな。一番言ってはいけない事を言いやがった。
「なあ強盗野郎、あのクソフード今から人質にしてくれや。そしたらオレも協力してぶっ殺してやる」
「殺すの目的じゃねぇんだけど……。さっきからお前等ふざけてるよな!? なんだよ、も、もしかして時間稼ごうとしてんじゃねぇだろな!!」
「してるよ。だってこのコーヒー熱いんだもん」
「もんじゃねぇよあーもー訳わかんねぇ!! 衛兵のやつ等来ちまうだろ!!早く金出せって言ってんだろ!!」
「あのさぁ……金出せ金出せって喚くだけで素直に出すわけねぇだろ。折角皆萎縮させてんだから自分の意思で行動させんなよ」
「え? あ、あぁ……えっと……そ、そこのおっさん、財布出せ!!」
強盗はオレにナイフを突きつけながら脅してるけど……。ふぅ、ソーエン風に言うならやれやれって奴だ。そんなんじゃ、人は脅せない、ぜぇ。
「違う違う。ちょっとナイフ貸してみ?」
「いやなんで――」
「良いから良いから」
「――えッ」
オレは空いてる手で、困惑してる強盗の手からスルリとナイフを奪うと、ナイフの切っ先で対象を定め、刃先をちらつかせるようにして店長を指す。
「そこのあんた、カウンター行って金もってこい」
「え、えぇ……なんで」
「いーから早くしな」
口答えを許さず、刃先を遊ばせながらもずっと向け続ける。刃を向ける対象はコロコロ変えちゃいけない、一人を決めたらちゃんと指し続けなきゃいけないんだ。じゃないと刃物の恐怖が逃げちゃうだろ。
「これも何かの作戦なのかなぁ……。分かったよ、言う通りにするから」
「良し良し。あとさ、人質捕まえるときは腕だけ持つな。こう、体全体を絞める様に拘束すんだよ。じゃないと抵抗されんだろが」
そしてオレは一旦コーヒーを置いてから、強盗の体に手を回して体を拘束する。すると、強盗は体を捩りながら脱しようとする。
「……あれ? コイツ力強くね……?」
「んなことどうだって良いんだよ。それと、動かすターゲットは出来るだけ絞れ。それ以外のやつ等は指一本すらも動かさせるな。できることなら縄かなんかで拘束しとけ」
「それでは生ぬるい。おい、俺に貸せ」
おっと、ソーエンから異が唱えられた。
オレはナイフと人質をソーエンへと渡し、役割を交代する。
「人質はこう取れ」
「痛ッ!?」
そしてソーエンは、強盗の膝を後ろから蹴って強制的に跪かせ、背中に足を乗せて体重をかけると、後頭部にナイフを突きつけた。
「次にターゲットだが――」
「その拘束のしかただとダメじゃない?」
「なんだ、文句か。お前の方法だと足が自由になっていただろう。この方法ならば抵抗されん」
「でもお前のやり方だと自分が動けないじゃん。臨機な対応が一歩遅れるじゃん。ちょっと一旦ナイフ貸してよ」
「ひ、ひぃぃ……なんでこんな事に……」
「お金持ってき――え、何この状況……強盗制圧されたの?」
オレとソーエンが意見交換をしている中、店長が金の入った袋を持って来た。
そしてついでに――カフェの外から大きな声が聞こえてきて――。
「こちら衛兵です!!住民の通報により駆けつけました!!」「犯人よ、大人しく投降しなさい!!」
「あ!! 大丈夫ですよー!! 解決したので入ってきてくださーい!!」
――その声に店長が反応して、衛兵が落ち着いた様子で扉を開けてくる。
オレはしゃがんで強盗の頬をぺちぺちとナイフで叩きながら、ソーエンは強盗を踏みながら、そして店長は金の入った袋を持ちながら、衛兵達とグスタフが来店する光景を見ていた。
ふぃー、これで一安心。終わり終わり。やっとゆっくりコーヒーが呑めるよ。そう思っていたら、衛兵達がわなわな震えながらこちらを見て来た。
「……何一つ終わってないですけど!? 真っ只中じゃないですか!!」
「イキョウ、ソーエン……お前等……なんて事してるんだ……」
しかもグスタフは度肝を抜かれた顔をしながらオレ達を見てくる。
「見損なったぞ精剛、ソーエン!! ナイフを捨てろ!! 今すぐ人質を放せ!!」
大声を飛ばしてくる衛兵、そして後ろから見守る住人達。その視線は何故か、犯人ではなくオレ達に向けられていた。
「……あ。違うから!! オレとソーエンはコーヒーを飲みたかっただけなの!!」
「コーヒー一杯の為に強盗を……?」
「そーじゃないそーじゃない。完全に勘違い。店長、説明お願いしても良い?」
「ええ、まぁ……。こちらの二人は強盗を取り押さえてくれているだけで……見た目はアレですが、まあ、何事も無くこの事件を解決してくださいました」
「そちらの袋は一体? 犯人に金品を受け渡す寸前だったのですか?」
「犯人……と、言うよりは、イキョウくんに持って来いと指示されまして……私にも良く分かりません」
「ダメだ……一切状況が理解できん……。イキョウ、ソーエン。とりあえず来い。そっちの男の拘束は皆に任せる」
「「「ハッ!!」」」
衛兵達の返事と共に、オレとソーエンは襟首をグスタフに捕まれて引き摺られ始めた。
「え? 嘘でしょ……? ストップグスタフ!! コーヒー飲みたいんだってば!!」
「クッ、この筋肉達磨が……ッ!! 何故功労者の俺達が連行されなければならないんだ」
「アレが功労者の姿に見えてたまるか。何がどうなったら強盗よりも強盗らしい出で立ちになる。どうせ事件の関係者全員から調書はとるんだ、二人の分は私が直々に取ってやるから可能な限り事細かに話せ」
「これオレ達犯人だって思われてない?」
「何も犯人と思っちゃいない。が、強盗よりも強盗らしく出来る理由は聞かせてもらうぞ」
「っすぅ……。店長ー!! 長くなりそうだからコーヒーテイクアウトでー!! そこの机に乗ってるの持ってきてー!!」
「あ……うん……。かしこましましたー」
その後オレ達は、テイクアウトした丁度良い温度のコーヒーを呑みながら、グスタフへとひたすらに弁明を行いました。
* * *
「ソーちゃんのものまねー!! やれやれぇ、ふむぅ」
「そうか」「わるくない」
「なんてそっくりなんだ……そっくり過ぎて俺かと思った」
「「ふぅ、やれやれだ。やれやれ、何故俺が真似されやれやれやれ。ふむ、だがやれやれいたァい!!」」
二人して拳骨くらった。
* * *
オレが夜の自室にて、ベッドで仰向けに寝てボーッとしていると――。
「パーイセーンどーん」
ヤイナがノックもせずに入ってきて、オレの上にのしかかってきた。
こいつ体むちむちだから、上に乗ってくると肉感と体温が存分に伝わってくる。
「いひひ~、むにむにお乳気持ちいっスかパイセーン」
ヤイナはそれを承知でオレに体を預けてくるんだ。でっかくて柔っこい胸も、肉が丁度良く乗ってる腹も、もっちりした太股も、全部オレの体に押し付けてくる。そして顔を上げながら人懐っこい笑顔で見てきやがる。
「ぽよんでたぷんで良い感じ。エロい重みがまた良いわ」
「っスっスー、褒められて自尊心みたされちゃうっスー」
ヤイナは上機嫌になりながら、上半身を動かして胸をぽよぽよとさせてくる。柔っこーい、あったけぇー。
「お前って身体中どこも柔っこいよな。あんなクソみたいな不摂生しといて良く保てるもんだよ、凄いわ」
「あっ、また自尊心が……。あたし天性のえちえち肉体持ちっスからね、何をどうしてもえちえちな体になっちゃうっス。あ、でもでも、メアメアちゃんも凄いんスよ? あたしがスライムお乳なら、メアメアちゃんのはマシュマロお乳っス。あたしのはむちぷよで、メアメアちゃんのはもちぽよなんス。あっ……メアメアちゃんしゅき……」
「あ? お前セイメアのメアぱい触ったことあんの? 良くそれで手出さずに我慢できたな」
「前にお風呂で一回だけ触ったっス……それ以降絶対触らないようにしてるっス……。次触ったらあたしの我慢はもう持たないんで……はぁ……はぁ……」
オレの上に乗ってるメイドは、それはもう目をぎらつかせながら頬を紅潮させて、荒い息を吐きつつ欲求を押さえ込んでいた。
そんなになってもコイツが手を出さないっていうことは、ヤイナは本当にセイメアの事が大好きだから、大切にしてる証拠ではあるんだよなぁ。
「良かったなヤイナ、良い人とめぐり合えて」
「はぁ……はぁ……あッ♡ …………っスねー、こっちの世界来てメアメアたゃんに会えたのは本当に嬉しいっス、心の底から万歳っス。あたしの夢はー、パイセンとメアメアちゃんの三人でえちえちな事するかぁー、パイセンにメアメアちゃん寝取られてる光景見ながら一人寂しく慰めることっスねー。あ、あとあと、メアメアちゃんがあたしに染まってえちえちになっちゃったりー……ん♡」
夢みヤイナはその光景を思い浮かべながら楽しそうに語る……このド変態、度し難い……。しかも、変な声が聞こえたけど……コイツだしなぁ……。激情が漏れただけだろ。
「すっごいよねお前、夢の全部が性欲だ。しかもドエライもん入ってたぞ今」
「こんな夢を我慢せず話せるんスからパイセンサイコーっス。この前まで我慢してたっスし、リルリルちゃん達みたいなかわいー子達には話せないっスけど、キョーパイセンとソーパイセンにだけは、我慢せずウキウキで話しちゃってるっス」
……言うほどこいつ、日常で我慢してる……な、うん。我慢してる方ではある。
「でてこなかったナトリは……まあ、うん……なんかアイツ枯れてるしな……」
「おじちゃんどころかおじいちゃんレベルで枯れてるっス……探求オタクなんで、多分そっちに全部持ってかれてるっス。ナトナト、合掌っス……。でねでねパイセン、えちえちなお話なんすけどー」
ヤイナはまた、人懐っこい笑みと甘えた声を出しながら、自分が話したい事を話そうとしてくる。愛い奴め、しゃーないから付き合ってやろうじゃないか。
「こっちの世界のおもちゃも凄いんスよ!! うねうね動いたりぶるぶる震えたりするんス!! おもちゃがちゃんとおもちゃしてくれてるっス!! もーあたしそれが感動して感動して……凄くないっスか!? 魔道具凄いっスよね!! 元の世界は性的メカニズムをふんだんに使った科学的なおもちゃって感じで、こっちの世界は造形とかはまだまだ甘いんスけど魔法的な技術で新しく責めてくるものもあるんス!! どっちも長所も短所もあって、合わさってくれたらあたし感動で泣いちゃうっス!!」
テンションの上がったヤイナは、オレにぎゅぅっと抱きつきながら、心底楽しそうに言葉を発してくる。
「ねー、凄いよね」
今はヤイナが話したい事を話してるから、返答はそれほど重要じゃない。だから聞いてるよってだけ伝えればそれで良い。
「っスよねっスよね!! あとねっ、あとねっ、あたしシアシアちゃんとかリルリルちゃんとか双子ちゃん可愛くて仕方ないんスよ!!」
コロコロと話題変わったけど……ま、こんなもんだろ。
「でもでもノータッチの不可侵領域はちゃんと守ってるっス!! 偉いっスよね? 褒めてっほめてっ」
「よしよし、偉い偉い」
「きゃはー!!」
ぎゅーっと抱きついてくるヤイナを撫でると、嬉しそうな声を上げながらもっと抱きついてきて、おまけに頬に頬を擦り付けてくる。胸もむにゅっとしてくる。やっぱコイツはどこも柔っこいなぁ。でも、子供達の頬と違って、大人の頬の柔らかさだ。やっぱ子供のほっぺって面白いな……。
「ぱいせんしゅきぃ……しゅきしゅきちゅっちゅ……。…………はぁ、ぱいせんしゅき……。もっとぎゅって……して?」
ヤイナが甘えるように求めてくるから、腕に力を入れる。と、ヤイナは満足げな息を吐きながら――。
「っあ♡」
――なんかドエロい声を出して、体が一瞬震えた。
「ちょっとたんま。さっきからおかしいだろ、お前まさか――」
「なーいしょ♡ それよりぃ……あたし良し良ししてもらっちゃったんで、お返ししてあげるっス」
そう言ってヤイナは、オレの頭に回していた右腕を、互いの体の間にもぐりこませる……せる……。わざわざスカートを幕って、腰と手を股間に押し付けてくる……。
「おぉ……なんてご無体な……パイセンのパイセン、あっちの世界だったらすぐにお元気になってったっスのに……ああ、おいたわしや……」
「今はヤイナ以外じゃ元気にならないもんな。お前体もテクも一流過ぎて、元気にならない訳が無いんだよ」
「あっ……今の言葉ヤバイっス……独占欲がぁ……。あたしもパイセン以上の人知らないんで、しっかり元気になってもらうために今日もちゃーんとリハビリさせていただくっス。げんきになーれ、げんきになーれ。よしよーし」
ヤイナは覆いかぶさりながら腰を押し付けてきて、そして手も這わせてくる。少し、じめっとした感じで。
「は? なんかズボンに染みてんだけど。何今日のリハビリ。どういうコンセプトなの?」
「あたしこの時間で自尊心満たされたんで、お返しになでなでして自尊チンむくむくさせてあげるっス」
「あ、ヤバイ、今の言い回し好き。普通に笑いそう」
「にひひ~。パイセンパイセン、クイズ出しても良いっスか?」
「一本取られたからお好きにどーぞ」
「今あたしは、下着穿いてるでしょーか」
「そう聞くってことは穿いてねーじゃん」
「あったりー。じゃあじゃあ、パイセンのお股に染みてるこのぬるぬるしたお汁はなんでしょーか。にゅるにゅるくちょくちょになってるあたしの手に纏わり付いてるの、なんスかねー?」
「……お前さ、ちょっと一回体起こしてみ? そんでスカート捲れ」
「もー、パイセンのえっちぃ」
ヤイナはからかうような笑みを浮かべながら体を起こした。この時点で、何か硬いものがオレの体に当たってる。なんか入ってる。大体何となくは察した、そんなオレに、ヤイナはスカートを捲りながら――。
「あたし、準備万端なんで……体の色んなところでよしよししてあげるっス♡ だからぱーいせん、あたしのこともよしよしして?」
――誘うような笑みで、そう言ってきた。
うーん、この……ドスケベメイド。何時の間にかタオルまで用意してやがる。じゃあそこまでやれってことだ。
そしてオレはヤイナの誘いに乗るため、防音の魔道具を起動してから、ヤイナの事をよしよしする事にした。
* * *
ルナトリックの研究室にて。
「ル、ルナトリックさん……!! 本当に入れて大丈夫なんですよね……!?」
「案ずるな。溶かしつつ混ぜれば良い」
「リリムさん、リリスさん、ソーキスさん、試験管絶対に離さないで下さいね!! 絶対ですからね!!」
シアスタが他三人へ忠告を押しに押し、そして出来上がりたるは――。
「あわわ!! じゅわじゅわです!!」
「「あまーい」」
「あまあまうまうまー」
「くっくっく、調合の喜びを知りたまえ」
――特段に甘いシロップだった。出来上がったシロップは、皆でパンケーキにかけて仲良く食べた。
* * *
オレ達は現在、大人組で晩酌をしている。オレの横にはソーエンが、その横にはナトリが。そして対面にはヤイナとセイメアが、それぞれ自分が呑みたい酒を呑んで駄弁ってってる。セイメア……カルーアがよくお似合いで……。
そうして駄弁りながら酒を呑み、夜が更けて皆にほろほろと酔いが回ってきた頃――。
「淫語っぽい言葉勝負しましょうっス」
「やっぱコイツ我慢してねぇよな?」
酔いメイドが急にとんでもない事を言い出してきやがった。その横ではセイメアが顔を真っ赤にしてるけど……それは酔ってるからなのか恥ずかしいからなのか……。
「メアメアたゃんぬもやろうっス、お酒の勢いに任せてちょっぴり大人なことしようっス!!」
「え、え……えと……す、少しだけなら……はぃ……」
「内容は子供の遊びに近いであるがな」
「なんすかナトナト、負けるの怖いんスか?」
「ふはははははは!! 受けて立とうっ!!」
なんか急遽始まった淫語っぽい言葉勝負。それは、淫語ではないが淫語に聞こえてしまう言葉を言って行き、詰まる、もしくはそれは単純にエッチじゃんって言葉か、全然淫語に聞こえない言葉を言った奴が負けって勝負。今回は罰ゲーム有り。そしてオレ達の中で罰ゲームは絶対っていう遊びルールがあるから絶対に負けられない。
順番は、ヤイナ、オレ、ソーエン、ナトリ、セイメアの順で始めることとなった。
「まずあたしから~、最初なんでかるーく、搾乳」
「どこが軽いの?」
「待て、言葉自体に淫的な意味は含まれて居ない。これが淫語に聞こえる奴ほど生命の営みを冒涜している奴は居ないだろう」
確かにソーエンの言う通りだ。なんだったらセイメアはキョトンとした顔でヤイナを見てるもの。今回、アウトかセーフのラインを引く一つの指標としてはセイメアが反応するかどうかも含まれそうだ。
「次はオレか……濃厚」
オレは……というか、オレ達はちらりと横目でセイメアのことを見る。反応無し、セーフのようだ。とうの本人は見られていることに気付いて居ないようだ。よしよし、このまま続けよう。次はソーエンだ。
「一週目だ、そこまで攻める必要もないだろう。リップサービス」
「「――ッ!?」」
その言葉にオレとヤイナは鋭く反応し、冷や汗を流す。ソーエンコイツ……結構攻めてきたじゃないか。リップサービスという言葉の意味にはエロさは含まれて居ない。しかし、『リップ』と『サービス』という言葉が合わさることによって淫猥な意味合いがそこはかとなく醸し出される。しかも、この単語は実質的に二つの単語が組み合わさることによって出来ているテクニカル淫語っぽい単語だ。なかなかに得点が高いぜおい……。
ソーエンの言葉に対し、セイメアの反応はというと――あー!! 全くの無反応!! ここまで行くとセイメアが何を持って『淫語っぽい言葉』ってのに反応するのかが分からないくらいの無反応……ッ!! しかもソーエンは勝ち誇ったような顔でほくそ笑んでやがる!!
この勝負、ソーエンのせいで加速したぞ。まだ一週目だってのに淫の深みが増したぜ。
さて、次はナトリか……一体、どんな言葉を発するのやら……。
ずっとキョトンとしてるセイメア、しかしオレ達三人はナトリの出方を窺うように眼を向ける。そして――ナトリは言葉を発した。
「二又アダプター、だ」
静かに言い放った言葉――それを聞いた瞬間、オレ達三人はゾッとした。二又アダプターとは、ナトリが実験で蒸留をするときにとかに使ってた物品、実験道具のはずだ。『又』なんて言葉に『アダプター』なんてものを付随させたらそれはもう淫語だろッ……。しかも、実験で使うっていう、言葉以外での歪曲的な淫が符号付けされてるとんでもない単語が飛び出してきやがった――ッ!! どうやら研究者界隈ってのはエロい奴等の巣窟なのかもしれねぇ……。
対して、この場の一つの規準であるセイメアはというと……ナトリの部屋で見た物品を思い浮かべてるのかな? 『あれかぁ』って顔をしながらお酒を一口呑んでいた。
……ここまで来ると、セイメアがどんな言葉を発するのか気になるよ。逆にセイメアが思う淫語っぽい言葉ってなに?
「……あ、わ、わたしの……ばん……」
自分の順番が回ってきたセイメアは、はっとしてその事を自覚しわたわたしながら顔を赤らめてる。あらかじめ言葉は思いついていたのだろう、言おうとし、言えず、そして顔を俯かせながら小さく息を吸って、言葉を発しようと決心した。
セイメアの口が、今、開かれる――。
「えと、えっと……わたし、いままでの、淫らな言葉に、聞こえなくて……でも、ルール、なんとなく……理解できました……。えと、えと……お茄子?」
――――オレ達四人は絶句した。セイメアは、このゲームの概念をどうまかり間違って解釈したのかは分からないケド、そのせいで新たな概念ブレイクが発生した。何故か『茄子』に『お』が付いただけなのに、たったそれだけのことなのに、どうしてかメチャメチャに淫猥な言葉に聞こえてしまう。それは、静謐なセイメアだから成せる御技なのだろうか。それとも万人が平等に行える所業なのだろうか。
ただ、それでもオレは思う。このゲームが、敗者を決めるルールで行われていることに感謝しなければならないと。もし、勝者を決めるルールだったらセイメアがぶっちぎりで勝利していたことだろう。
オレ達は四人揃ってグッジョブをかますと、セイメアは少し嬉しそうな顔をしながら、しかし恥ずかしそうにもしながら、自分がセーフだったことを静かに喜んでいた。
「コレは熱くなってきたっスね……慣らしや様子見なんてしてられないっス。そんなひよりをしてはメアメアちゃんに失礼っス」
「え……わたしの……そんなに……?」
「さてさてどうしたもんスかね……。スー……ッス……決めたっス。これで行くっス」
このゲームが開始される原因になった者であり、この中で一番性に貪欲なメイドは、ルールで決められた十秒の思考時間をフルに使って、そして何かの単語を思いついたようだ。その顔は自信と真剣さに溢れ、それと同時にセイメアへの返礼も、眼には含まれていた。
オレは恐ろしい。次に順番が回ってきた場合、セイメアを超えられるか。そしてセイメアを超えようとしているヤイナを超えられるか。
オレが、そして皆が緊張に包まれる中、性欲魔人は思いついた単語を伝える為、その瑞々しく柔らかい唇を開く。
「おちんちん」
――瞬間――オレとソーエン、ナトリは言葉を失った。セイメアはこれ以上無いくらい顔を真っ赤にしてヤイナを見つめる――。
――対して当の本人はというと――何故か勝ち誇った顔をして――腕を組んでいた――。
「――はい――ヤイナの負け決定」
「――え――なんでっスか――?」
「――逆に何を思って――なんで――と――言える」
「だって――響き――可愛いっスもん――ちんちんだけならエッチ可愛いっスけど――おをつけたらただただ可愛いっス――お茄子と同じっス――」
「お前バカなんじゃねぇの? あと茄子に失礼すぎるだろ今の言い分。ド直球にアウトな言葉だろこのバカメイド!! ざーこざーこ!! 負け、お前負け!!」
「はぁー!?負けてないっスけど!? 可愛いじゃないっスかおちんちん!! どこがえちえちな単語なんスか!! ネコにちゃんを付けて可愛くするのと同じヒィ!?ソーパイセン無言で銃向けないで!!」
「良いさ、仮にお前が純粋に可愛いって思ってたとしようじゃん? でもセイメア見てみろ!! この反応だけで完全にアウトだよ!!」
オレが指を指してヤイナに見ろと言ったセイメアは……もう顔を真っ赤にして手で覆い、頭から湯気が出るんじゃないかってくらいに体を熱くさせていた。
「ありゃこれはぁ……メアメアちゃん、そのまま『茄子』って言って貰って良いっスか」
「ぁぅ……ぅぅ……な、なす……?」
「スヘヘへヘへヘいだァ!?」
ヤイナがセイメアへと謎のセクハラをした瞬間、ソーエンがテーブルを素早く回り込んで頭に鉄拳を落とした。だけど、それが罰ゲームって訳じゃない。あくまで今のはセクハラへの制裁だ。
「ヤイナへの罰ゲームはセイメアが決めろ。被害者としての恨みをそれで晴らせ」
「ぇ……? えと……あの……えっと……?」
「あたしメアメアちゃんにされることならどんなことでも受け入れるっス。寧ろ負けて役得っス」
「ダメだこりゃ。ナトリ、なんか罰ゲームに丁度良い薬品とか持ってない?」
「偶然持っているのである。飲んだ瞬間に足がこむら返りを起こす薬だ」
「んなニッチな薬をよくもまぁ……」
オレはそれをナトリから受け取ってヤイナへと手渡す。
「なんスかこの小瓶?」
「今回の罰ゲーム。とりあえず飲め」
「あいあいさーっス……いったぁ!? 足つったぁぁぁああああ!!」
――アステルは――今日も――平和です。
* * *
脱衣所にて。
「こ……これが……オトナのお胸……ですか……!!」
「やーん、そんなに見られたら恥ずかしいっスよぉ~。触るっスか? 触ってもいいっスよ?」
「シアスタちゃん……私達もおっきくなれるよね……?」
「な、なれますよ……大丈夫です、絶対なれます…………」
「「……」」
二人は自分の体とヤイナの体を見比べた。
「ぽよぽよぽよぽよ」「むちむちむちむち」
「スヘヘッへヘへヘッへ」
双子は遊んでた。
* * *
夕飯前のキッチン。そこでは、双子とシアスタ、ソーキスが――。
「つなつな、まよまよ、つなまよーですです」
「「「つなつなーまよまよーつまなよーですですー」」」
声を揃えながら、最近ハマっている一品を、一緒に作っていた。
ルナトリックの作り置きしてある調味料と、ソーエンが大量に貯蔵している魚を貰いうけ、ボウルで混ぜ混ぜしながら四人で作っている。
「んふふ~、かわゆいねぇ」
「ふふ……心が……温かくなります……」
その光景を、セイメアとラリルレは調理をしながら並んでみていて、ロロは何を思っているのか、目をそちらへ向けていて――。
「なあソーエン、キャベツの千切りってこんなんだったっけ?」
「千に切るのだから合ってるはずだ……が、ナトリに確認して貰おう」
「――ふははははは!! 終わってからでは遅いわ!!」
イキョウとソーエンは綿アメのような千切りを生み出し、ルナトリックはパンに香り付けを行いながら二人を笑っていた。
* * *
「うにょーん」「ぱちん」「みょーん」「ぱっちん」「「きゃっきゃ」」
食堂のテーブルで、双子がロロの触手を伸ばして遊んでる。ロロの触手はどうなってんだろう、あと何でジッと動かず受け入れてるんだろう。
そんな光景を横目に、オレとソーエンはふと思ったことを口に出す。
「タコのバター焼き食いてぇなぁ……」
「そうだな。……」
そして、どうやら二人とも同じ発想に至ったらしい。思い立ったら吉日で、ロロへと寄ってとあるお願い事をしてみる。
「なあロロ。触手一本貰っても良い?」
「良いぞ」
ロロはオレ達の言葉に二つ返事で返すと、双子に引っ張られては居ない触手を使って自らの足をちぎり、オレ達へと差し出してきた。
……良いんだ……。もうちょっと会話があって、理由を話すフェイズを経てから受け渡し可否の流れになると思ってたけど……。でももらえたなら良いか。
「おにーさんたち」「ロロのあしであそぶの?」「いっしょに」「あそぼ?」
「違う違う。ちょっと料理して食ってみるだけ」
「「……ひぇっ」」
嘘でしょ? オレの放った言葉で、双子が珍しく引いたような声出したぞ。いつものとろんとした表情や眼は変わらないけど、口から小さく『ひぇっ』って聞こえてきた。
「そう驚くなって。料理の中にはタコの足を焼いて食うモノもあるの。ゲテモノだからって印象だけで差別しちゃダメだぞ?」
「タコは美味いぞ。双子も食うか」
「……シアスター」「きてー」「「きんきゅーじたいー」」
オレ達の話を聞かずに、双子はいつものまったりとした声で、ヒュプノシスボイスを利用しシアスタを呼んだ。すると――。
「どーしたんですか!? 何事ですか!?」
二階から小さく忙しない足音が聞こえてくると、焦ったシアスタがすぐに階段から降りてきて、すぐに食堂に駆けつけた。
「おにーさんたちが」「ロロたべよーとしてる」
「……イキョウさん、ソーエンさん。どれだけお腹が空いたら仲間を食べようって発想に至れるんですか……」
「ノーノー。タコ食べたくなったからロロの足を頂戴して食べるだけ」
「確かにタコさんとロロさんは似てますけど……だからと言って普通食べようとしますか? お二人がやってることって、お腹が空いたから私の美しい腕を食べるようなものですよ?」
「ロロたべちゃだめ」「ひどいことしないで」「「むー」」
シアスタからは諭され、双子はロロを抱き締めながらむーっと睨んでくる。
言われて見れば、シアスタの言い分も一理ある。でも、オレだってちゃんとした反論があるぞ。
「牛や羊から乳貰うでしょ? 双子だってオレの魔力吸うでしょ? その延長線上にあるのがロロの足だよ。生命の営みを分け与えてもらって、それを感謝しながら食すの」
「ああ。何もロロを殺めて喰らおうとはしていない。ロロだって二つ返事で分けてくれた。何も問題はない」
「ロロさん……良いんですか? 触手食べられちゃいますよ? 謎々生態なのでロロさんは良いのかも知れませんけど、私からみたら若干猟奇的な気もしますよ?」
「問題ない。我の肉体を喰らおうが、こやつ等に何も影響はないだろう」
「おやおや、まるでオレ達以外には影響があるみたいな口ぶりじゃないか」
「邪神の肉体を喰らうのだ。影響無い訳無いだろう」
ロロは、まるでそれが当然だと言わんばかりにそう言ってくる。
「「…………」」
「あ、そういえばロロさんって邪神でしたね。食べたらロロさんみたいにうにょうにょになっちゃうんですか? 体柔らかくなったり……とか?」
「「うにょうにょー」」「びょーん」「ぱちん」
「そのようなものだ」
ロロはシアスタにツンツンされながら、双子に触手で遊ばれながら、ジッとしてそれ等の行為を受け入れてる。
もはや懐かしいよ、ロロが邪神だなんだって言ってこの三人をビビらせた日の光景が。今じゃ邪神じゃなくてロロとしてこの場に居るよ。
ただ……オレとソーエンは、少しばかり思うことがある。始めはただタコの足としてしかこの手に持ってる触手を見てなかったけど、今は邪神の体の一部としてしかこの触手を見れない。そうすると必然的に、思ってしまうことがある。
「なあロロ……この触手にもまさか……混沌含まれてる?」
「なんだ、気付いていなかったのか。我は混沌から生れ落ちた者、当然だ」
ロロはギョロリと眼を向けながらそう言ってきた。でも。
「「……返却で」」
「貴様等なら問題はない。存分に喰らうが良い」
「「返却で」」
「そうか」
オレとソーエンはタコが食いたかったんです。混沌を喰らいたいわけじゃありません。それに、混沌に冒された者達の結末を知ってるのに喰らおうだなんて思いません。たとえ、オレ達に耐性が有るとしても絶対にやだ。触手ゾンビだけは本当にヤダ。
だからオレは受け取った触手をロロに返すと、返された本人はその触手を推定口のあるところに突っ込み、そして――いつもは八本ある触手を十本に増やした。……イカになっちゃった……。
「むっ」
触手引っ込めて八本に戻った……どうなってんだコイツの体……。
「ロロ……カレー食べる?」
オレはあんまし頭を使いたくないもんで、こっちも小腹は空いてたから、思考停止でロロにそう提案した。
「ほう、良いぞ良いぞ。我はカレーを所望する」
「あ……ぅん。一緒に食べよーね。うん……ッ!!」
でも、だから、やっぱりロロは良い奴だぁ。オレと一緒にカレー食べてくれるもん!! カレーの美味しさ分かってくれるからロロはロロなんだもん!!
「ふむ、ならば。双子、シアスタ、○ロメを食うぞ。おやつには丁度良い時間だろう」
「クッキーとお紅茶!! ソーエンさん、私ジャム作ったので優雅なティータイムにしましょう!! ソーエンさんのクッキー切って、お皿に並べて――」
「シアスタのじゃむ?」「おいしい?」「おやつ」「みんなといっしょ?」
「美味しいをお約束しましょう!! ベリージャムですよ、あまあまな濃厚ジャムです!! むっふっふ、これでは私達だけ優雅になってしまいますね。イキョウさん、ロロさん、カレーのトッピングに何か作ってあげましょう。お料理上手スタがなんでもしてあげちゃいます」
「シアスタは覚えれば上達が早い天才肌だもんなぁ……ロロ、ゆで卵とかどうよ」
「良いぞ。我もシアスタを手伝おう」
そういやロロも、お料理班の一員なんだった。なんなら料理長ラリルレを一番近くで手伝ってる、副料理長的な立ち位置だった。もしかして実は、ロロはオレ達よりも料理上手いんじゃないか……?
「むっふっふ、ロロさん。卵のコロコロ一緒にしましょう」
「黄身を中心にするとしよう」
シアスタは目を細めてキランとしながら、ロロはテーブルからシアスタの頭の上に移動しながら、二人は調理の為の体勢を整えていた。
そんな二人と共に、オレ達はキッチンに移動して調理をし、午後のティータイムを楽しむことにした。
ゆで卵は――沢山作って、皆で殻を剥き剥きして、午後のティータイムを楽しみました。
なんでこんなにゆで卵あるんだろうなぁっては思ったけど……。
「ツナマヨ美味しいです……」
「あむあむー」「もにゅもにゅー」「「んーっ」」
三人がとっても美味しそうに食べてる姿を見て理解しました。ジャム付けカロメとツナマヨゆで卵で、甘いとしょっぱいを交互に楽しんでる。
オレとロロはゆで卵カレーを、ソーエンはシアスタが作ってくれたジャムを、シアスタと双子は甘いとしょっぱいを、紅茶と共に楽しみながら、穏やかな午後を過ごしました。
今日も、この家は平和です。