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28.朽ちた騎士

 アステルに撤退後、門の近くの壁際に固まってさっきのように円を作ってしゃがみ込む。ひそひそ作戦会議の開始だ。


「これからどうするよ」

「俺達で邪神の眷属を殺しに行くしか無いだろう」

「でしたら私も付いて行きます」

「危ないぞ? 敵がどんなのかも分かってないし、強さも分からないんだぞ?」

「パーティですので責任も皆で分け合いましょう」

「お前……最悪危なくなったらオレのスキルで逃げるからな」

「分かりました。でも……どうやって森に向かいますか?」


 スケルトンの大群が迫っている今、町の出入りが制限されているから勝手に出ることは出来ない。それに加えて城壁の周りには衛兵や冒険者が集まりだしているから人目が多く、こっそり抜け出すのも難しい。


「任せろ、隠密を使って抜け出す。シアスタは手を繋げ。ソーエンは肩を掴んで絶対放すなよ」


 <隠密>は自分に触れている者にも効果を及ぼす。その効果を使って誰にも知覚されずに門を抜けるとしよう。


「こっそりと抜け出すぞいいな」

「はい!!」


 シアスタが大きな声で返事をした。


「気合入れるのはいいけど、こっそりって言ったよね?」

「はい」


 シアスタが小さな声で返事してくれる。


「よし、行くぞ」


 こそこそと作戦開始を開始する。


 一旦隠れて<隠密>を使い、そろりそろりと門の前まで移動をする。横目で衛兵をちらりをと見てみたけど、ばれてた様子は見られなかった。


 そのまま門を抜けて急ぎ足で森へ向かう。途中で見かけたスケルトン達は、沼と氷を迂回するか、倒れた仲間を踏みつけて進軍を続けていた。じきに町へ到着することだろう。放置することになって申し訳ないけど、このスケルトンのことは町に任せよう。

 そしてようやく、<隠密>のおかげで何者にも気づかれず森へ到着することができた。


 移動中に邪神の眷属らしき者の姿を捜したけど、どれも同じ見た目の骨、骨、骨で変わった見た目のした奴は確認できなかった。だから、まだ森にいることだろう。封印のせいで動けないのかそれともアステルへの進軍以外の目的があるのだろうか。


「さっそく邪神の眷属を捜すかぁ」

「責任を取りに行きましょう」


 ようやく森に戻ってこれたので、ここからは邪神の眷属探し開始だ。

 捜すといっても、<生命感知>を使ってしまうと相手にオレ達の存在がばれてしまう可能性がある。だからここは目視で捜すことにした。

 邪神の眷属というからには相当強い存在のはずだ。情報が無い状態で正面切ってやり合う気はさらさらない。先に発見して一方的にやらせてもらおう。


「<隠密>はこのままかけ続けるから絶対に手を放すなよ」


 二人が頷いたのを確認して森に足を踏み入れる。


 全員が無言で歩みを進める。心臓は穏やかで頭も冴えてはいるが、この神経がピリピリする感じは覚悟を決めている時の感覚だ。この世界に来てから初めてこの感覚を味わっている。

 森の中は調査で訪れた時よりも静かになっているように感じられた。隠密をかけていても自分の呼吸が辺りに響いてしまいそうと思うくらいに何も音がしない。


 オレ達は闇雲に森を歩いているわけではなく、例の邪神の眷属が封印されていた場所といわれている場所へと向かっている。

 森に音が響かないよう細心の注意を払っていたおかげか、何者にも遭遇することなく封印の近くまで来ることが出来た。


 近くの木に隠れて一瞬だけ顔を出し、広場の様子をうかがう。

 <隠密>はまだ解除していないけど、用心するに越した事は無い。


「誰かいる」


 限りなく小さくした声で二人に見たものを報告する。


 封印場所を見るとオレ達が作った小山が無くなっていて、元の広場へと戻っていた。その広場に人型の何者かが立っている。

 その何者かを探るべくもう一度、今度は観察する為に少しだけ顔を出す。


 あれは……騎士か、大きさは三メートルくらいあるな。でかい剣を地面に突き立てて立っている。所々土で汚れているぼろぼろの白い鎧、その純白を汚すように所々走る黒い紋章……。

 ――――なんであいつがここにいるんだ。


「大丈夫かイキョウ」


 オレの動揺がソーエンにも伝わったのだろう。ソーエンがオレの心配をしてくれる。

 オレは見たものをソーエンに伝えるべく、顔を引っ込めて見たものを教える。


「……ガランドウルだ。アイツが居る」

「なん……だと……?」


 ソーエンは声を落としながら驚き、それを見たシアスタがうろたえてオレとソーエンを交互に見る。シアスタにはガランドウルが分からないだろうが、説明している時間は無い。


 朽ちた騎士ガランドウル。

 ステージ<捨てられた古城>のボスエネミーで物理攻撃の耐性が高く、魔法の耐性は無い。攻撃力はバカみたいに高く、オレやソーエンみたいな回避特化で紙装甲なビルドをしているプレイヤーならまず当たってはいけない。

 だが、あいつにスケルトンを使役するような能力はなかったはずだ。元の世界の奴と同じなのか?それともたまたま似ているだけなのか?

 どちらにしろ二人で相手できるような生易しい敵ではないだろう。

 それほどの威圧感が辺りに漂ってる。


「やばいな。今は壁役がいない」


 あいつがいれば問題無く倒せただろうけど、今この場にはいない。


「ならば撤退するか」


 できれば戦力が欲しい。カフスに現状を説明して手を貸してもらおう。

 幸い奴は動いていないから、バレる前に引いてしまおう。


「そうしよう。気づかれないように逃げるぞ」


 ――それはオレ達が歩き出そうとした瞬間だった。


「ォォォォオオオオオオオオ!!」


 ガランドウルが雄たけびを上げた。

 何事かと思い木から顔を出すと、ガランドウルがこちらに片手で巨大な剣を向けている。

 まるで、その剣でオレ達を指名しているようだ。


「どうやら見つかっていたようだな」

「みたいだな」

「ひえっ、ひぐっ」


 雄たけびで驚いたシアスタはへたり込んで泣き始めていた。連れてきたのは失敗だった。そもそも心のどこかで油断していた。オレ達なら大丈夫、と。でも、今更後悔してももう遅い。


「逃げることは可能か」

「多分……いや、絶対無理だな」


 ガランドウルのフレーバーテキストには、決闘から逃げるものには制裁を加えると書いてあった記憶がある。そもそもソウルコンバーションテールはボスエリアからは死ぬ以外に離脱が不可能なのであくまでそういう設定がありますよ程度だった。でも、この世界ではフレーバーが現実になる。その制裁が何かまではフレーバーテキストに書いていなかった。書いておけよな運営。


「ならば戦うか」

「そうするしかないな。シアスタはここでじっとしていてくれ」

「い、行きます。私も……」


 シアスタは口では行くと言っているけど、腰が抜けてしまい動けそうにない。


「絶対に逃げるような行動はするなよ。何が起こるか分からないから」


 さっきは逃げようとしただけで反応された。あそこで一歩でも踏み出していたらどうなっていたのだろうか。


 このままじっとしていても何が起こるか分からないので、シアスタに被害が及ばないようにオレ達はガランドウルの前へと姿を現した。

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