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無計画なオレ達は!! ~碌な眼に会わないじゃんかよ異世界ィ~  作者: ノーサリゲ
第四章-どうしてこうなるんだ異世界-
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101.旅路一日目~九日目

 旅路一日目。

 ご飯当番の順番はラリルレ&ロロ、オレ、ナトリの順番で回すことになったので、この日のご飯当番はラリルレとロロだ。

 もう文句なんてものが一切出ないくらいの最高の一日だった。

 のどかな風景を横目に流しながらだらだら歩いてそして駄弁って。本当に穏やかな一日だった。

 この日のハイライトは、夜間の見張りだろう。

 オレ、ラリルレとロロ、ナトリの順で回すはずだった。でも、ラリルレは初めてのキャンプではしゃぎ疲れてしまったのか交代の時間に起きれなくて、オレがラリルレの時間までロロと一緒に見張りを担当していた。

 焚き火に木をくべながら夜を一緒に過ごしていたけど、ロロは話しかければ言葉を交わすが自分から話すことはほとんど無い。そんなこと前から知ってから無言でも別に気にならなかった。

 それほど騒がしくない見張り中、お互いにカレーが好きってことで、見張り中に二人してこっそりカレー作って食べた。ラリルレとナトリには申し訳無いけど、オレ達は二人でカレーをフライングで楽しんだ。だから、このことは二人だけの秘密に使用って事で内緒にしてある。もし知られてしまったら、暴動が起こりかねないからな。




 旅路二日目。

 旅路自体に変わりはない。

 前日と同じように、たまにすれ違う人に挨拶しながらのどかな風景を楽しみながら駄弁ってただけだ。

 朝と昼はカレーを堪能した。ただ、夜飯という、一日の終わりだから一番時間が取れる料理場面では、オレとラリルレは緊張の面持ちで料理に挑んだ。

 ナトリの助言が正しければ、オレでも普通の料理が出来るはず。そう思って、試しにプロフィールを非公開に設定したところ……なんと、本当に普通の料理が可能となった。

 初の試みで成功するとは限らなかったから、この日はキャンプに相応しくそれでいてシンプルな料理、BBQを選択したけど――モノの見事に成功した。

 BBQが始まってからは早かった。各々焼きたいものを焼いて、調味料が欲しければナトリに作ってもらって全員好き勝手に食った。




 旅路三日目。

 例に漏れず、穏やかな日常が続いている。

 変わったことがあるとすれば、昼頃に丁度村を見つけたから立ち寄ってみたことだ。

 その村では丁度収穫祭が開かれていて、ちょいとお邪魔させてもらった。

 美味い料理を食わせてもらったし、宿も手配してもらったってことで、ラリルレは恩返しに臨時診療所を開いてロロと一緒に村人の治療を行った。

 オレはというと、その村の若者達やオヤジ達に捕まって酒の呑み比べや外の話をしたりしていた。

 ナトリはお年寄り達に捕まってなんか昔話をしてたっぽい。なんでこの世界に来たばかりのあいつがお年寄り達の昔話に混ざれるの? ってか、そもそもあいつって何歳なの? って疑問もあったけど、別に酒が美味ければどうでも良かったからその件についてはなーんも聞いてない。




 旅路四日目。

 村に別れを告げることから始まった四日目。

 オレは関わった奴等から元気に手を振られながら、ナトリは老人達に見送りの目線を送られながら、ラリルレとロロは拝まれながら、村人達から送り出された。

 そこからはまた、のどかな旅路が続いた。

 この日のハイライトは、本来ならラリルレが料理当番だったはずなのに、昨日はナトリが録に料理を披露できなかったということで、晩飯はラリルレとナトリが二人でそれぞれ料理を作るってなったことだ。

 まあ、別にガチガチな取り決めをしてるわけじゃないから、こういう日があってもいいだろう。現に、オレが担当の日なんて皆で一緒にBBQしたしな。

 ラリルレはかまどを使って料理をしてみたいってことで、この日は即席のかまどを作った。

 ラリルレの料理が美味い事は確定だから全面的に任せたけど、オレにはちょいとした不安があってナトリのほうについていた。

 こいつ、度々の食を見て知ったけど、調味料や薬味をぶっ掛けるのが大好きなんだ。今までは自分に配給された分にしかぶっ掛けてなかったからオレ達に被害が出る事はなかったけど、コイツがメインで料理をした場合どうなるか分かったもんじゃない。

 と、思ったけど、鮮やかな手つきと焚き火を利用したフランベを見せ付けられては感動せざるを得なかった。

 どうしてそんなに手際良いのか聞いたら、『素材をレシピ通り正確に扱うのは魔術の基礎である。そのことに順する話だが、錬金術の祖は魔術なのである。貴様も知っているであろう? 錬金術はキッチンが発祥などと言った戯言を。我輩としてはそれが甚だしくてならん』と言われた。でも、オレはそんなこと知らなかったから正直に知らないって伝えたらめっちゃ笑われた。

 でもなんとなく言ってる事が分かったから、オレが『何が気に食わないの?』って聞いたら、ナトリが、『時代によってはキッチンが研究所としての機能を兼任していたこともザラではなかったが、学を求めるものにとっては意味合い的に研究所としての役割の方が大きいのである。ならば、錬金術は研究の末に生まれたものと表現することこそ探求者への手向けとなるというのに、どこぞの愚か者が話題性をとり陳腐な表現を――』

 とアホほど長い愚痴を聞かされた。

 ナトリはナトリなりの苦悩があるんだなぁって思いながら黙って聞いてたら、『阿呆の貴様に話すと自分が愚かしく思えるのである!!』って言われた挙句爆笑された。

 因みに、この日の料理はなんと、ラリルレお手製のグラタンとかまど焼き。そして、ナトリ自慢のステーキだった。

 ラリルレは凄いなぁ、色んなものが作れて全部美味い。ナトリのガーリックが聞いたステーキと和風ソースもめちゃめちゃ美味かった。




 旅路五日目。

 この日は、前日に負けないように気合を入れてカレーを作った。やっぱり、オレの代表的で得意な料理はカレーだったから、例え何でも作れるようになろうともカレーで勝負をするべきだとオレは考えた。二人に負けないよう、全身全霊を込めて摩訶不思議錬金術をおみまいした。

 その結果。ナトリの行いを見て張っ倒してやろうかってくらいに腸が煮えくり返った。

 朝と昼は皆で美味しくカレーを食べてたっていうのに、晩飯でカレーを出すなり、ナトリは渡したカレーへ唐突にワサビをこれでもかってくらいにぶち込みやがった。パッと見はグリーンカレーになってたぞ。

 オレはカレーを食べながらその光景を見て、スプーンを咥えながら『お前何してんの?』って軽く青筋を立てながら問いただした。

 ことと次第によっちゃ、実力行使も辞さない構えだったが、ナトリから『そも、カレーとは様々なスパイスの調合によって生み出された料理だ。ならば、貴様等の国が代表するスパイスを入れることもまた、カレーとしての役割を果たしているといえよう』って返された。

 オレは丸め込まれたようにその言い分に納得しながらナトリのグリーンカレーを一口貰ったら、絶句した。あれは人が食べて良い物じゃない。

 想像では、ワサビ風カレーなんだろなって思ってくったら、実態はカレー風ワサビだった。

 カレーの辛味じゃない。食った瞬間に鼻に激痛が走ったのち微かにカレーの香りが感じられるくらいに味が変化していた。これにはオレも泣きそうになったぞ。

 因みにラリルレとロロもちょっとだけ食べたけど、ラリルレは舌を出しながら泣くほどの大不評。その姿を見てオレは思わず堕ちそうになった。

 ロロは、「これはこれであり」みたいな雰囲気を出しながらナトリにワサビを分けてもらって喰らってた。

 でも、ナトリの言い分だとこれもカレーの一つだろうし、カレーを堪能していることには変わりが無いからオレはぐっと堪えてこの場は我慢した。

 その後に見張り中、オレとロロでプレーンのカレーを堪能して心を落ち着かせたのは、例に漏れず内緒だ。暴動が起こりかねないから。




 旅路六日目。

 レイヴ法国の領土内にある町に到着した。

 適当に町を散策して飯食って、宿に泊まってこの日は終わり。

 ナトリと同室だったんだけど、酒飲んで寝る前に『何故我輩が料理担当の日はキャンプが出来ないのであるか』とボソっとつぶやいていたのを、オレは忘れない。




 旅路七日目。

 町で食料を買い込み出立すること一日。

 まーた順番が狂ってナトリとラリルレが料理することになって、それはずるいってことでオレも参戦した。

 今回はカレーじゃなくて、わざわざ町で買った鉄板を使って焼きそば風パスタをお見舞いしたらゲーム組からは微妙に不評だった。

 こればかりは……作ったオレも擁護できない。折角ナトリにソースを作ってもらったし、キャンプ飯だってことで張り切って作ったけど、パスタの麺の質と焼きそばの料理工程は絶望的に合わない。

 従来の焼きそばを知ってるからこそ、頭に描いていた味とのギャップが生まれてしまった故にゲーム組からは不評だったわけで、従来の味を知らないロロからは『まあまあ美味』というなんとも答えづらい評価がもらえたから、惜しまず全部上げた。

 ゲーム組としては、こういう料理もありそうだっていう最終評価であって、焼きそばを期待しているところに提供される料理ではなかったってのが結論だった。


 旅路八日目。

 この日は馬車で干草の運搬をしているおっちゃんに出会って、話の流れでその馬車に乗せてもらえた。

 オレとラリルレ、ロロは荷台の干草に寝せてもらっちゃったりして、ナトリは御者席に並び座りながら全員でおっちゃんの馬車に揺られた。

 何でも、おっちゃんは農場を経営しているらしくて、乳とチーズを町に降ろしてるんだとか。

 チーズを降ろしてるとのことだから、ついでに土産として買えないかなってことでおっちゃんに尋ねてみたら、あっさり快諾されてそのまま農場に付いて行くことになった。

 おっちゃんの農場は結構広くて、羊と牛が分けられた広大な柵の中で飼われていた。住み込みの従業員とかも結構いて、おっちゃん曰く近くにある町の商会を介してそこから別の町や村に売り出されているほどにはそこそこ稼げるとか。そんな事を自慢げに笑いながら語られた。

 それほど売れてるってことは、味が良いってことだし、土産に選んで正解だったなってことでチーズを買う話をしていたところ、おっちゃんの顔に少しの陰が指した。

 うわ、めんどくさいやつじゃん……聞かないで置こう。って思ってたけど、その顔をラリルレが見逃すわけはなく、訳を聞くことになった次第であり。

 内容は『最近家畜達が怯えているんだ……そのせいで乳の出が悪くてねぇ。一応夜間にも警備はしてるんだけど原因が全く分からないんだ』って話を聞いてしまった。


「だからってさぁ……なんでオレが見張りするの?」


 オレは農場に立てられている牛舎の上で疑問の声を上げる。

 三角屋根で明るい茶色で統一された牛舎。オレはその、木製の屋根の頂点に佇みながら煙草を吸って愚痴を零す。

 目の前の闇夜を照らすのは月明かりだけ。

 <暗視>を使って見えるのは、なだらかな岡と草原。そして遠く見えるのは草原と森を区切る木々だけだ。

 昼間は広大な柵の中で穏やかに過ごしていた羊と牛は、夜ということもあり舎の中に戻ったから、現在は一匹として外には出ていない。

 オレは畜生に詳しいわけじゃないけど、夜が近づくに連れて畜生共は焦るようにそれぞれの舎に入って行った様子をみると、何かが起こってるってのは分かる。

 でもさぁ。別にオレ達が関わる必要なくない? オレ達はチーズ買って帰るだけで良かったのに。ってのはラリルレがオレに向かって『羊さんと牛さんを助けよう!!』って訴えてくるまでの考えだ。今オレが思っているのは、なんでオレだけが見張りをしているかっていう純粋な疑問だ。


「我輩達の中では貴様が一番夜目が聞く。適任であろう」

「ごめんねキョーちゃん。私のわがままでキョーちゃんたちを巻き込んで……」


 オレが見張りをしてる牛舎から若干離れたところにあるおっちゃんの家の中から、チャットを介してナトリとラリルレの声が聞こえてくる。

 ラリルレの言葉を受けて、オレの三等級冒険者のプレートを見せたところ、おっちゃんが『力を貸していただけるなら是非!!』と、オレの手をガッチリ掴んできた後、『宜しければ我が家に泊まって言って下さい!!』との言葉を受けてオレ達はおっちゃんの家に泊まることになった。

 あと、その家は結構でかくて、住み込みの従業員も一緒に住んでいた。だから、晩飯のときは二十人くらいで大テーブルを囲んで飯食ったし、なんならオレ達も料理を提供して全員で騒ぎながら飯食った。

 ただ、いざオレが見張りに出ようとしたら、おっちゃん達から無言で期待のまなざしを向けられたときは物言わぬ重圧感をぶつけられて、これは失敗しできねぇななんて思わされたよ。

 でもそんなことはどうでも良くて、オレはラリルレの言葉に答えなければならない。


「違うの。別にラリルレの思いがワガママだなんて思ってないし、借りにワガママだとしてもオレは全身全霊を持ってラリルレのワガママには答えたいの」

「キョーちゃんはいっつも優しいね。ありがとキョーちゃん」

「その言葉だけで……オレは死ぬまで頑張れる……」

「阿呆よ、貴様が言った『何で』という言葉の意味は、何故貴様が自由に動かずその場にて待機しているのかということであるな?」

「そうだよ、参謀のナトリさんよぉ」


 今回の陣形……というか、見張り役と待機役の分担をしたのはナトリだ。

 別にこの陣形が間違ってるとは言わない。感知系が得意のオレは見張り役に最適だし、逆に感知が出来ないナトリ達は闇夜の見張りをする意味は限りなく無いわけだし。

 月明かりだけの夜を見渡せるのは叛徒の職業を選択したオレだけだから、見張りをするだけならこの配置に問題は無いわけだ。

 でも。


「こちとら<生命感知>で原因になってる反応を掴んでるんだよ。だったらこっちから攻め込んだ方が早いだろ」


 オレは<暗視>の他に、<生命感知>を同時発動しているからこの農場周辺に存在している奴等の位置が全て特定できる。

 虫や微生物達といった本当に小さい反応が大量にあるから、意識的にカットをして反応に引っかからないようにしてある。だから、引っかかるのは精精小動物からだ。

 そんな限定的な反応の中でも、群れというのは存在している。<生命感知>で相手の強さが分かる訳じゃないけど、大きさなら分かる。群れの反応は、小動物や草食動物が集まって出来たものだろう。仮に肉食動物がいたとしても、動いていないから今すぐ襲いに来る様な反応ではない。

 だからこそ、農場周辺に生えている木々の近くにあるこちらを伺うような反応が気になるわけで。

 恐らくその反応が畜生共を怖がらせてる原因だろうから、今すぐ排除に向かえば良いだけの話しなんだけど。


「攻める必要は無い。貴様はその場にて待機していろ」


 ナトリから動くなとの指示が飛んできてるからオレは動けない。

 七名奈那にブレーンや指示系統を担当する奴は誰一人としていない。大抵はオレとソーエン、、ナトリ、ナナさんが自由に動いて、それにラリルレとチクマ、ヤイナが合わせるって感じで基本には動いている。それでも大まかなまとめ役ってのは存在していて、それがリーダーのナナさんと頭脳派のナトリだ。

 頭脳派ならお前がブレーン担当しろって、オレとソーエンとヤイナでナトリに訴えた事はあるけど、それじゃあ面白くないってことで笑いながら一蹴された思い出は今でも鮮明に覚えている。

 ナナさんも色々とアレな人だから、ピンチの時にはナトリと二人して笑いながらオレに丸投げしてくるような人だけど、こういったピンチでもなんでもないときのナトリの指示は普通に頼れるから、オレは現状において好き勝手動くという選択肢は取れないに等しかった。

 それでも、暫定原因であろう相手の位置を特定できてるってのに攻め込むことを良しとしないナトリの考えには納得が出来なかった。


「結構距離はあるけど、接近して魔法かナイフ使えば絶対に外さないぞ」


 オレが今居る屋根の上から左三十度の直線上にある反応。距離にして約一キロはあるけど、<隠密>を使えば簡単に接近できるし、接近出来るなら攻撃は外さない。


「なんならこの位置からでも、やろうと思えば」

「そうではない。我輩は討伐――。ふむ、そろそろだろう。阿呆よ、屋根から降りてその場にて待機していろ」

「はぁ? ……へいへい、分かったよ」


 ナトリが何を考えてるのかは分からないけど、指示されたんなら従ってやるよ。

 オレは屋根から飛び降りて、牛舎の扉の前にただ立ちぼうける。

 これで何が起きるんだっては思ってたけど、オレの考えに反してあのこちらを伺っていた反応は、すぅっとこちらに接近を始めていた。その速度は結構速い。まるでオレを目掛けて迫って来ているようだ。反応の動きからして、明らかに人じゃない。


「お? やっぱりナトリの指示は正しいな」

「ふはははははは!! 鮮やかに掌を返したのであるな!! 阿呆よ、その反応を引き付けながら我輩達のいる宿舎まで来い」

「なーる。オレはおびき出す為の囮をするために屋根の上で見せ付けるように待機させられてたってわけか」

「くっくっく、そのようなことろだ」

「ルナちゃんすごーい!! 羊さん達が怖がってた理由分かってたの?」

「このようなこと、考えるまでも無く理解できるのである。実に退――、いや、ギャラリーがいる前ではこの言葉は避けようではないか。だが、阿呆やラリルレが関わるのならば話は別だ。さあ、結末がどうなることやら」

「おっと? なんか不穏な言葉が聞こえたぞおい。ってか、よくよく考えたら何でオレが囮に選抜されたの?」

「ふむ」


 オレが地面をゆっくり歩きながら疑問を呈すると、ナトリがチャットを退出しやがった。それに続いてラリルレも退出したけど、それはラリルレの意思じゃないな。絶対ナトリに何か吹き込まれたぞおい。

 何か嫌な予感がする。大抵、こう言った予感がどんな結果を齎すのかは分からないけど、経験則から言うと、予感を無視したら碌な事にならないことだけは分かっている。

 だったら敵の正体を確かめてからオレ個人が対処しても問題ないだろう。

 そう考えたオレは、敵の正体を確かめることにした。


「ぉぉぉ」


 反応は順調にオレの方へと接近してきている。

 心無しか、低い唸り声のようなものさえ感じ取れる。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおオ!!」


 <暗視>で暗闇でもある程度は見通せる視界の中では、白く、それでいて乱れた髪の人型が、黒い目と口を避ける寸前まで開いて手を突き出しながらこちらへと――。

 だから首掴んで馬乗りになりながらぶん殴った。




 旅路九日目。

 オレ達は事件を解決したおかげで、農場の人達から感謝をされながら見送られた。

 手土産に色んなチーズと新鮮な牛乳を貰えたしラッキーだ。

 おっちゃんがオレ達への感謝を込めて、『是非君達の為に馬車を出させてくれ!! 行き先がどこであろうと絶対に送り届けるよ!!』って言葉を言ってきたけど、この日はナトリの魔法で王国に入る予定だったから必要ないし断った。そしたらチーズと牛乳を上乗せしてお礼をしてくれた。

 堂々と魔法を使うわけには行かず、オレ達は農場から一旦離れて街道沿いに歩いて人目の着かない場所を探した。

 昨夜、何が起こったのかを唯一見ていたナトリはというと。その間にあの光景を思い出しては爆笑することを繰り返していた。

 その姿を見るたびにラリルレが。


「ねールナちゃん!! 何があったのか教えてよ!!」


 ってナトリにせがんでいたけど。


「あれは……くっくっく、ダメである、思い出すだけで我輩の腹が……ふははははははははははははは!!」


 話そうとするたびにナトリが大爆笑を起こすから、ラリルレは何が起こったのかを聞けないで居た。

 状況を説明する為にオレがラリルレに話そうとしたんだけど……。オレが話そうとするたびにナトリが大爆笑して邪魔されるから話そうにも話せないで居た。

 それに、ナトリがこれほどまでに笑うと、ラリルレも何か面白いことがあったんじゃないかって期待が膨らみに膨らんでる。だから、もしもオレが話した場合にその期待に沿えずにガッカリされる可能性があると思うと、怖くてオレは段々話し辛くなって居た。

 この件に関してはナトリがハードルを爆上げしてるだけであって、期待されるほどの面白い話でもなんでもないから、笑い話を期待されて話すようなことでもない。

 一応、あの後に何があったのかを簡潔にまとめると、一連の事件の原因をアレしたあとに、文句を言う為にナトリだけを呼び付けたところ、情景を見たナトリは腹を抱えて大爆笑。その後におっちゃん達が待機してる家に戻って、事態が解決したしたことを爆笑しているナトリを横目で見ながら伝えてオレは寝た。

 何の説明も無く、ただ解決したって言われたおっちゃん達は半信半疑だったけど、オレの三等級の冒険者って実績を買ってくれてその日は寝て、今朝の元気に農場を走り回る畜生共の姿を見て脅威は消え去ったと確信したようだった。

 これにて一件落着。そうなるはずだったのに……。


「ねーねー!! 私にも教えてー!! 何があったの?」


 ナトリがずっと笑ってるからラリルレが話を聞きたくてオレ達の袖を引っ張ってくる。

 それに加えて、ロロも真似してオレ達の袖を引っ張ってくれるしよぉ。

 ラリルレは両手を使ってオレ達の袖を引っ張り放題だ。もうぶら下がるんじゃないかってくらいに期待の眼差しを向けながら引っ張ってくる。

 もういっそのこと、つまらなくても話したほうがラリルレの為になるんじゃないか? って思ってオレは思い切って話そうとはした。

 でもそれは叶わなかった。前置きの段階で断念せざるを得なかった。

 叶わないままオレ達はナトリの魔法で王国領土の町に移動し、そこで宿を取った。尚、その日はラリルレたっての希望で全員が相部屋になりました。

 因みに、オレはラリルレと同じベッドで寝て、抱きかかえながらすやすやしました。その際に怖がっていたラリルレはオレから離れないよう一生懸命引っ付いてきたので、これはこれで……と思ったのは内緒です。

Tips

料理の腕前について

 イキョウとソーエンは簡単なものしか作れない程度。割と下手な部類。誰からも教えてもらう事は無く、自分で自分の分を作る際は食べられれば良いと思ってるため。

 ヤイナは普通にド下手です。生活感を捨ててます。

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