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無計画なオレ達は!! ~碌な眼に会わないじゃんかよ異世界ィ~  作者: ノーサリゲ
第四章-どうしてこうなるんだ異世界-
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79.緊急お茶会議

 オレはゴーレムに追われながら思う。

 あの輝きはラリルレだ!! 女神が降臨なされた!!

 そして女神がなんかよく分からん化け物に絡め取られてる!!


「ソーエン!! やべー!! ラリルレが化け物に捕まってる!!」

「本当か、今すぐ助けに行くぞ」

「いっそのことあの化け物にこのゴーレムトレインしてやる!!」


 * * *


「キョーちゃんたちがあわわって雰囲気になってる!!」

「やばいっス!! これパイセン達絶対にあたしたちに気付いてるっス!! 文句言いに来るんじゃないっスか!! ってかもう来てる!!ゴーレムめっちゃ引き連れてるっス!!」

「この距離で我輩達に気付くか。ならばここが切り時であろう <死者への冒涜>」


 * * *


 ラリルレwith謎の化け物にゴーレムをトレインしようとしたオレ達。

 オレは<ハイトーチ>で辺りを照らしながら先導を、そしてそれに続くように水中を泳ぎ進めるソーエン。

 その眼前に、急に謎の……いや、見たことあるけどここに居ないはずの奴が使う魔法が生み出す存在が顕現する。


「はあ!? 何で!?」

「これは……<死者への冒涜>で生み出したモンスターか」


 <死者への冒涜>

 超級の闇魔法の一つ。この魔法は、モンスターの素材を依り代にして、元となったモンスターを再現した闇を召喚する。

 召喚された闇は元となったモンスター分のHPを削りきられる、もしくは三十分が経過すると消失する。


 消失の際に、使用した依り代は闇に呑まれて消える……ってゲームでは説明されてたな。


 そして眼前に現れたのは巨大なイカの形をしている闇だ。


 この闇の形をオレ達は知っている。だってこの前同じ種族を見たもん。この闇の依り代はロッククラーケンだ。でもなんでそれがここに現れたのかが分からない。


 サンカは言っていた。超級魔法が使えるのはほんの一握りの魔法使いだと。そんな一握りが平和なシャーユに居るはずが無い。

 ……いや、居るんだよ。一人該当する奴が。あの薄情者二人の片方であり家の天才筆頭ナトリだ。でも通話に出ないあいつがここに居るはずが無い。


 でも今はそんな事はどうでもいい。絶対にラリルレを助ける。


「ソーエン、予定変更だ。アレにゴーレムをトレイン」


 あの巨大な闇の出現で視界は遮られ、ラリルレは目視できない。でも、オレには<生命感知>がある。だから目で見失っても真に見失う事は無い。

 ラリルレはこのロッククラーケンの闇の裏に居る。だったら裏に回ればいい。


「任せた、イキョウ」

「任された、ソーエン」


 オレはゴーレムをトレインとしか指示を出していない。それでもソーエンはオレの取る行動が分かっている。だからこれ以上は言葉を交わす必要が無い。

 やる事が決まれば即断即決だ。


 オレは<ハイトーチ>をロッククラーケンに飛ばし、その後すぐに<黒墨>を発動させる。

 これでデコイの設置を設置し、感知を阻害させた。


 ゴーレムが主としてる感知は目ではなく魔力だ。だから視界を阻害した所でオレの<隠密>は効果が無いだろう。でも、この<黒墨>は魔力を消費して発動するからオレの魔力が含まれているはず。なら、一時的にオレを見失うのは必然だ。


 根拠なんて無い。でもオレの逃げ感が絶対って言ってるから絶対だ。囮を止めて逃げに徹したオレを、お前等ごときが捕らえられると思うなよ。


 そして黒い視界の中、肩に触れる手がある。これはソーエンの手だ。オレが何を言わなくてもコイツはオレの行動を理解している。

 だからオレはそのまま行動を続ける。


 <隠密>。この不可知のスキルによってオレ達はこの世界から存在を希釈する。

 そしてオレ達を見失ったゴーレム達が取る行動。それは、オレが設置した単独のデコイに向かって行くことだけ。この場に居る全てはオレ達を見失った。もう誰もオレ達を捕らえる事は出来ない。


 オレの目論見通り、ゴーレム達はハイトーチに向かって直進していく。


 今の内にラリルレを救出だ。


 オレとソーエンは阿吽の呼吸でロッククラーケンの裏に回りこみ。そして――。


「は? なんでアイツ等も居んの?」


 予想外の光景に声を上げる。

 そこには何故か、ナトリとヤイナ、そしてロロが居た。


「……なるほどな。化け物の件については合点がいった」

「化け物の正体はロロだったのかぁ」


 もはやロロの生態にとやかく言うつもりは無い。化け物の正体だとしてもおかしくないし、もはやここに居てもおかしくは無いと思えるほど謎の生態だからな。

 ただ、何でナトリとヤイナがここに居るのかについての疑問は残っていた。


「キョーちゃーん!!ソーちゃーん!! 大丈夫ー? 近くにいたら返事してー!!」


 ラリルレが口に両手を当てて大声を出しながら必死にオレ達を捜している。

 あんな些細な疑問よりもラリルレの言葉が優先だ。


 だからオレ達は姿を現す。


「大丈夫」

「心配する必要は無い」

「よかったぁ!!」


 目の前に現れたオレ達を見て、ラリルレの顔がぱぁっとした。

 ……ああ、心の底からオレ達を心配してくれていたのか……。ありがてぇ、可愛い…尊い…。


「で……なんで集合してんの?」

「偶然にしては出来すぎているな。女神の導きという奴か」


 なーる、ソーエンの言葉で納得できるわ。ラリルレが導いたならこの状況も必然って奴だな。


「っス?」

「ふむ?」


 オレとソーエンの言葉に二人は疑問の顔を浮かべていた。


「は?何?」

「……ふはははははは!! また我輩は見誤ったのであるか!! 貴様等だけだ、不確定要素は!!」

「っス? あたし達に気づいてたんじゃないっスか?」

「いや……何が?」

「えっ……っス……何でも無いっス……。パイセン達怒ってないっスか? 罵詈雑言吐かないっスか?」

「罵詈雑言……? あ!!」


 ヤイナの言葉を聞いてオレは思い出す。

 ラリルレの『ぱぁっ』によって忘れてたけど、ヤイナとナトリはオレ達のコールを無視してたんだったよな!!


「お前等なんでコールに出なかったんだよ!! こちとら死線潜りまくって寧ろ飛び越えてたんだぞ!! 事と次第によっちゃお前等二人共覚悟しとけよ!!」

「さっさと出ろ。そしてあの木偶の棒を殺すぞ」


 ソーエンはマジな眼光をヤイナに向ける。


「げ……踏まなくて良い尻尾踏んだっス、ソーパイセンの雰囲気がイライラっス……」

「キョーちゃん、ソーちゃん、ごめんね。私、コールに全然気付かなくて寝ちゃてた……」


 ラリルレが……ッ!! 申し訳なさそうな顔をしながらオレ達の手を取ってきている!?


「この件に関しては不問!!誰一人悪い奴なんでいない!! それよりギルガゴーレを倒す算段を考えるぞ!! ナトリ!!」

「クックック……。我輩の<死者への冒涜>ならばそれくらいの時間は稼げよう」

「っしゃ!! ラリルレ、皆で力を合わせよう。大丈夫。ラリルレは何にも悪くない」

「むしろ、薄情者共をここまで導いてくれて感謝している」

「ううん。私約束したのに、絶対に悲しい事にならないように頑張るって言ったのに、肝心なときにいないなんて……」


 ヤバイ!! ラリルレがめっちゃしょんぼりした顔になってる!? ロロもなんかラリルレの雰囲気真似してる!?

 何とかしないと!!


「ソーエン!!」

「ラリルレがしょんぼりしているな。だったら俺が代わりにしょんぼりしよう」

「なんで名前呼んだだけで意思疎通完璧に出来るんスかね」

「……うん、そうだった。ソーちゃん、ありがと!!」


 ラリルレはソーエンの意図を汲んで元気な顔になる。ついでにロロもその真似をしている。

 ソーエン!! ナイス!! お前マジでナイス!!


「ナイス親友!!」

「そう褒めるな親友」


 オレ達二人はハイタッチをしてお互いに成功を喜び合う。

 さーて、やる事も終わったし、さっさと帰って風呂に――。


「じゃねーわ」

「当たり前だバカ。ギルガゴーレをどうにかするぞ」

「あのっスね……イチャイチャすんのやめてもらえないっスか?」

「フハハハハハハ!!愉快愉快!!」

「超緊急的措置、臨時<インフィニ・ティー>お茶会議を開催する!! 今回の議題はじゃん!!」

「臨時なのに用意している訳が無いだろバカが。今書くから少し待ってろ」

「じゃあ一回海面上がる? 海の中じゃ書けないでしょ」

「一理あるな。どれ、早速――」

「パイセン達って凄いっスよね、なんで次々おバカなことできるんスか?」

「何なのであるかそのふざけた名前は!! 馬鹿も『どれ』ではないのである フハハハハハハハハハハハ!!」

「ヤイヤイちゃん、ルナちゃん、お茶会議って言うのはね―――」


 ラリルレが超簡潔に、それで居て分かりやすい天才的な説明を二人にする。


 それによって二人は納得をした。

 これもまた必然よ。だからあっさりよ。


「と言う訳で、今回の議題は」

「ギルガゴーレをどうやって倒すか、だ」


 オレ達は水面に漂いながら顔を突き合わせて話し合いを始める。


「よもやこのような悠長な話し合いの場が設けられるとは予想外なのである。全てや貴様に委ねるのである、阿呆よ。時間はどれ程稼げば良いのであるか?」

「稼げるならありったけ稼げ。何か良い策ある?」

「偶然、そう偶然、貴様等はロッククラーケンの足を所持しているな。それを我輩に寄越せ」

「言い方よ。え? なに? まさか天才ナトリはこの危機的状況をぉ予想しててぇロッククラーケンの足を持ち帰ったんじゃないだろうな?」

「二本目はそうだ」

「ん……? 二本目は……? まるで、本来なら一本で済んでいたのに保険で持っていたような言い方じゃないかぁ?」

「ねね、ルナちゃん凄いんだよ!! 色んな事調べてて、それでね、キョーちゃんとソーちゃんの動きを予想して二人が戦ってるって分かったの!!」


 なるほどな。まあ、ナトリならありえる話ではあるな。コイツは頭良すぎてオレ達じゃ想像も付かないようなことすら予測してる可能性はある。


 でも何より、ラリルレが凄いって言ってんならそれは凄いことだ。


「「凄いな」」

「フハハハハハ!! 阿呆共はもう少し脳を使うことを覚えるのである!!全てを鵜呑みにするな!!」

「鵜呑みとは鵜が魚を丸呑みすることが語源だろう」

「オレ達はラリルレの言葉を噛み締めてっから。バカにしないでくれる?」

「クックック、フハハハハハ!!」

「いや……そういう問答はマジで良いんで、さっさと本筋に戻るっスよ。ナトナトにあのイカの足を渡せば良いんスよね?」

「クックック、ああ。だが、あれは記念品だ。出来れば我輩も使用したくは無い。だからこそ我輩は強制はしない」

「ナトリぃ、お前って奴は……。ん? 違う違う。お前の予定じゃイカ足一本で済んでたんだろ? その予定を教えやがれ」


 一瞬ナトリの言葉に感銘を受けそうになったけど、よくよく考えるとコイツの予定通りに事を進めればいいだけじゃん。一々記念品使う必要ないじゃん。


「この悠長な会議に入った瞬間、我輩の予定は完璧に崩れ去った。くっくっく、やはり貴様等は愉快で愉快で仕方が無い」

「は? お前マジでざけんなよ!! だったら最初に言えやこのオカルトマニアが!!この会議開いたのが間違いだってことじゃん!!」

「あたしたまに……いや、度々思うんスけど、ナトナトって本当に何考えてんスかね。パイセン達とは違う方向で狂ってるとしか思えないっスよ」

「さて、記念品を消費してまでこの愉快な会議を悠長に続けるのであるか?」

「最悪の言い方しやがるなこのド腐れが!! 分かったよ、お前の口車に乗ってやるよ!!会議終了!! ケースバイケースでの総力戦すっぞ!!」

「勘違いするでない阿呆よ。我輩はこの話し合いを是としている。なにしろ愉快であるからな!! フハハハハハ!!」

「やだぁ……コイツここまで来るとただただ怖いよ……」

「でもナトナトが言うことって一理無くはないんスよね……。あのプレイヤーが総出で倒すボスをあたし達だけで倒すってなると、何かむっちゃすごい作戦が無いと実現できそうにないっス」

「まあ、有効な手立てが無いわけじゃないんだけど……そこ、何やってんの?」


 オレとヤイナでナトリに対して苦言を呈しまくってる中、ラリルレとロロ、ソーエンは何か別な話をしていた。


 ナトリの暴論が無ければオレもそっち側に回りたかったんだけど?


「イキョウ」


 ソーエンはオレを見ながら名前を呼ぶ。

 ああ、そゆこと……。


「まーたロロは何か知ってんだな? ラリルレとソーエンはその話を聞いてたんだな?」

「そうだ。そして例によって――」

「ロロの処理が雑だったってオチだろ?」

「ああ」

「……いや、何も言うまいよ」


 アーサーは言っていた。このオレが行きつく先はハッピーエンドだと。だったら別に苦言を呈する必要は無い。


 過去は振り返らずに未来を見るんだ。随分前にも言ったけど、オレは過去を振り返らない男なんでね。


「必要な情報プリーズ」

「奴の核は胸部正中線やや右寄り。だが、本体に対して核は小さい」


 ソーエンはオレに対して情報提供を始める。


 核なぁ……。さっき神殿でオレも見たけど、確かに小さい。例に漏れず貪食王の水晶くらいの大きさではあるけど、あの巨体に埋まってる水晶をピンポイントで攻撃するとなるとまたユーステラテス戦のように露出させる必要がある。


 でもそれはソーエンが撃ち抜く場合の話だ。


「ヤイナは?」

「んー……無理っスね。あの装甲を一撃って訳には行かないっスし、そもそも水中であたしが全力の雷魔法を放ったらパイセン達にも伝播しちゃうっス。ってか、ここら一体の生物が死滅するっスよ」

「ナトリ」

「奴は雷以外の魔法に体制を持っているのである。そも、簡単に決着を付けられるほど容易い存在でもなかろう」


 二人の返答を聞いて、オレは勝ちへの算段のために思考を巡らす。


「ってなると……」

「俺が撃ち抜く」

「脳筋発想止めて? 一応聞いておくけど理由は?」

「あの木偶の棒には因縁がある。未知のダンジョンに備えられていたクソギミックを解いた挙句、出現したのは既知のボスだ。俺が抱いているのは怒りや恨みなどという生易しい者ではない。言うなれば憤怒の義務だ。奴を滅ぼす義務が俺にはある」

「ああ、そう……」


 目の前のバカは静かにブチ切れて決意めいた目をオレに向けてくる。


 コイツ、この期に及んで二次元の価値観を持ち出してきやがってる……。


 でも、コイツの奥義は弱点である核に当てさえすれば一撃で葬り去れる。あのギルガゴーレの装甲さえ剥がせば、たとえ核にどんな耐性があろうと破壊は可能だ。

 ただし、ソーエンの奥義は外すと後が怖いからなぁ。こいつただの置物と化すし。


「外すなよ?」

「その為の道はお前が考えろ」

「分かったよ……。とりあえず方針は決まった。ソーエン止めで全員バックアップ」

「ソーパイセンの<ラストリゾート>っスね」

「そゆこと」

「ならばそれを当てるために我輩達は何をすればいい」

「それなぁ……。とりあえず核の正確な位置の確認と装甲剥がしだな。……あのさぁ。ちょくちょく思うんだけど、オレが考えるよりもナトリが考えろよ。そっちの方が絶対に良いだろ。なんで毎回ピンチの時はオレに押し付けんだよ」

「我輩は語らん。だが、周りの目をよく見てみるのである」

「その周りのやつらもオレ任せだけどな?」

「っスっスー、パイセンってバカっスけど、マジでピンチの時には絶対に信頼できるっス」

「そうだよキョーちゃん。いっつも危ないときはキョーちゃんが皆を助けてくれるもん」

「我輩は確定要素ならば見通すことが出来る。だが、不確定要素から勝ちを見出すことの出来るのは貴様だけだ。くっくっく」


 ナトリお前、今言った事の半分は嘘だろ。だってお前絶対にこの状況を楽しんでるじゃん。絶対にお前には正解が見えてるじゃん。

 それでもやっぱり皆はあの目を向けて来た。


 でもなぁ、そういうのはリーダーであるナナさんに向けてくれ。そういうのはオレの柄じゃない。


「で、どうする」


 そしてソーエンがダメ押しをしてくる。


「……なぁロロ、この状況を見てどう思うよ」

「知るか。早急に終わらせろ」


 何で早急に? って聞かなくても分かってるよ。ラリルレの睡眠の為だろ。


 でもまぁ、そういう返答が来るって事はオレのことを無条件に信頼してるって訳で……。それをロロが自覚しているのかはしらんけど。


「へいへい……ちょっと待ってろ。すぐに考えるから」


 その言葉で皆が信頼の目を向けてくる。

 何でオレが……。ソーエン風に言うなら『やれやれ』と思いながらオレは頭を働かせることにした。

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