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無計画なオレ達は!! ~碌な眼に会わないじゃんかよ異世界ィ~  作者: ノーサリゲ
第四章-どうしてこうなるんだ異世界-
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78.ぱぁ!!

「クソクソクソクソ!! これ逃げ切ったらあのクソ仮面とエロメイド二人に絶対文句言ってやっからな!! マジふざけんな!!」


 何回も何回も掛けてるのに出やしねぇ!!


 こちとら高速で向かってくるゴーレム共から逃げながら掛けてるってのによ!! んだよあいつら寝てんじゃねぇだろな!! 町からここまで距離あんだから早く出て!! 出ないとそれだけ到着が遅れるから!! ラリルレはすやすや出来て偉い!!


「ゴゴゴ、ゴーレムブタイカラハノガレラレナイ」

「あっっぶねぇなぁ!! 寄って集ってレーザー飛ばして来んなやぁ!! ってかお前等も喋んのかよ!?」 


 一人で逃げてるオレに向かって集中砲火かよ!!


 ただ、追いかけっこをして分かったことがある。


 水中機動型ゴーレムもタンク型、物理攻撃型、魔法攻撃型に分かれてる。割合は三対三対三くらい。

 タンクと物攻型は距離を取れば攻撃されないから大丈夫。でも、今ネックになってるのは魔攻型だ。こいつは目から無属性のレーザーを同時に三発飛ばしてくる。それがさっきからオレに襲いかかってきやがる。


「ゴゴゴ、ブタイヘンセイ。ダイニカラダイヨンヲゼンセンニ」


 所詮はレベル七十の攻撃だから一発一発はそこまで脅威じゃないけど、流石に三十三体×三発の一斉集中砲火はヤバイ。全部当たったらオレのHP溶ける。


 だから一切足を止められない。<マーメイドブーツ>で泳ぎの速度を上げて、その上全力で泳いでようやく速度が同じくらいだぞ。ここまでやってようやく五分五分。


 でもゴーレムに疲労は無い。その内疲れが来たら確実に追いつかれる。


「逃走と囮は違うんだよ!! 喰らえ!!<ストライクハープーン>!!」


 オレは、もう何度目か分からない投擲をする。


 ストライクハープーンは柄の頭に銃の撃鉄が付いた銛だ。槍カテゴリの武器でありながら刀身は無く、先が平らになっていて、ヒットすると撃鉄が鳴り切っ先に衝撃波を発生させる。

 柄から伸びる紐さえ持ってれば自動的に手元に戻ってくるから回収の必要が無く、この追いかけっこをしながらの攻撃ではその機能が大助かりだ。


 これで確実に一体は倒せる。でも、その一体はオレが狙った型じゃない。


「ブタイサイサイヘンセイ。ホジュウマデダイゴブタイガカバー」


 オレはさっきから魔攻型を減らそうとしてんのに、銛を使う度にタンク型が間に入ってきて身代わりになりやがる。そのせいでタンク型は減っても魔攻型が一切減らない。


 百回繰り返せば全部倒せるかもーなんても思ってたけど。


「明らかに増えてんだよなぁ……」


 さっきからギルガゴーレが配下のゴーレムをポコポコ産み出してる。その度に攻撃してオレに引き付けてるから、今やオレを追ってくるゴーレムの総数は最初の倍以上だ。これじゃあ一体一体をちまちまやっても切りが無い。


 つってもなぁ。今のオレのステータスと魔法じゃこの数を一掃するのは無理だ。数は多いしバラけてるから範囲は広いし敵もそこそこ強い。範囲拡張と威力増大させてもMPが足りない。せめて<ハイトーチ>使ってなかったらなぁ。でも使わなかったらソーエンの視界確保できなかったし。ってか多分MP全快状態のオレでもこの数を一気に倒すのは無理だわ。


 そして、ゴーレムは相手の魔力に反応してるっぽくて、たまにオレと間違ってトーチの方に攻撃してたから良い囮にはなっている。

 ただし、それがコイツ等を倒す手段に繋がってる訳じゃねぇしなぁ。


 ……アーサー。これって本当に勝てんの? お前が疑わしくなってきたぞ。


 陸上なら色々やりようはあった。罠にはめたり穴に落としたり、わざわざこんな変な銛なんて使わなくてもハンマーでごり押しできる。でも水中はマズい。縦横無尽に動けるから相手の動きや配置は三次元だ。しかもその上高機動。


 陸上でこんな機敏に動くゴーレム見たことねぇよ!! もっとノソノソ歩いてたじゃんお前ら!! 今のお前ら陸上の何倍もつえーよ!!


「ちょっとソーエンそっちどんな感じ!?」

「遠慮なく銃をぶっ放せているおかげでストレスはいい感じだ。巨大なデクの棒へ永遠と撃ち込めるのが特に良い」

「そーじゃねぇんだよなぁ……早く倒して!! ヘルプ!!こっちヤバイから!! 水を得たゴーレムの強さハンパないから!!」

「もう少し撃たせろ」

「おいイカれ野郎。お前がストレス発散してる時間でオレがストレス溜めてんだけど。はよ核撃って!!」

「ふむ……そういえば核の位置はどこだ。それさえ分かれば奥義でも何でも使ってやる」


 核の位置か。言われてみればまだ特定してなかったな。

 それが分からないことには、この二人という少人数でギルガゴーレに勝つ事は出来ない。


「<生命感知>」


 状況を打開するべく、オレは核の位置を探る。


「ギギギ、イジョウカンチ、ブンセキ。フメイ、フメイ。スイテイキョウイタイショウホソク」


 なんかギルガゴーレが言ってんなぁ。


 ギルガゴーレは、ユーステラテスのように魂の防壁を使ってるわけじゃないようだな。ああ、でもやっぱり全身に魂が渦巻いてるから核の位置が特定しづらい。せめて落ち着いてじっくり探る事ができれば分かりそうなんだけどなぁ。


「ソーエン、一旦で良いからオレとスイッチしない?」

「断る。それに、俺はお前のように範囲攻撃を持ってはいないからそもそも引き付けられん」

「だよなぁ……ダメだ、現状じゃ核の位置を特定できないわ。とにかく後ろのやつ等が邪魔すぎてなんも出来ない」

「生み出された雑魚ゴーレムの内何体かはリスキルしている。感謝しろ」

「藪蛇なんだよなぁ」

「藪…蛇…? ああ、焼け石に水のことか」

「多分それ。もう何体増えようが関係ねぇんだわ。結局オレの後ろには大量のゴーレム居るもん。これどうにかしねぇと何も変わらないんだわ」


 もういっそのことここで<反逆の意思>使うか? 今のHPは百パーセントだから、ステが1.5倍上昇で、使用後のステダウンデメリットは無い。

 ステ上昇すれば魔法の威力も上がるから、後ろの奴等は一掃できるし、すぐに復活すればMPは満タンだ。新しく沸いてくるゴーレムはオレとソーエンでリスキルすれば対処できるか。


 もうこれしかないしやろう。


「よし、使うか。<反逆の――」


 チャットが繋ぎっぱなしだったのでソーエンから軽い溜め息を吐かれながら、オレが唯一の打開策の為に動こうとした――――そのとき。


 <暗視>を使っているおかげで良好なオレの視界に小さな影が写る。

 なんだ? 新手か? 高速で動くタコみたいな奴の足に、三人が絡み取られて捕まってるたいなシルエットだな。新種の化け物か?


 * * *


「うっわ……ギルガゴーレじゃないっスか。それになんスかあれ、パイセン見たことも無いゴーレムに追いかけられてるんスけど。ってかめっちゃパイセンこっち見てるっス!!」


 暗闇の海を照らす炎の光。その源を泳ぐは、緑色で目立つイキョウとそれを追いかける大量のゴーレム。そしてその背後に控えている巨大なギルガゴーレを見ながらヤイナは言う。


「ロロちゃん!! もっと速くできる?」

「ラリルレが望むならば。多少締め付けが強くなるが痛くは無いか?」

「大丈夫だよ!! ありがとうロロちゃん!!」


 ロロは触手のうねりを早めて更に加速する。


「ロロロちゃんはどうやって泳いでんスか、これ」

「海蛇のようであるな」


「やばいっスー、このままだとパイセンに文句言われるっス。常識的に考えて、<暗視>使ってこっちガン見とか絶対パイセンあたし達だって気付いてるっス。パイセン眼がおかしいから絶対見えてるっス!! ってかこっちガン見しながら逃げ回ってるパイセンキモい!!」


「ふむ……こちらに気付きおったか。奴は眼が良い。見切りの眼であり、焦点が焦点として機能していないからこそ、あの逃走劇の中こちらに気付くのも当然であるな」


「なんであの眼を観察に活かせないんスかね。視界全部見えてるのに視野がアホほど狭いんスよあのパイセン。まだソーパイセンの方が周り見えてるっス。でもソーパイセンは見えてるくせに無視するんスよねぇ。……マジでなんなんスかあの人たち」


 ヤイナは元の世界のことを思い出して辟易する。一に眼を向けるとその他を見れなくなるイキョウ、周りが見えていても尚興味と身内に関係の無いことには無関心なソーエン。そのせいでどれだけヤイナが苦労させられてきた事か。


「ううん、違うよ。キョーちゃんはまだ気付いてないよ。だって皆をみたら、雰囲気が『ぱあ!!』ってなるもん!! でもなってないからまだだよ!!」


 ロロの触手に絡まれながら、ラリルレは両手を広げてその『ぱあ!!』を表現する。


「……パイセンってそんな雰囲気出した事あるっスか? 少なくともあたしの前ではないんスけど」

「我輩の前でもないな。ラリルレの前だけであろう」

「そんなことないよ!! ソーちゃんもなるもん、『ぱあ!!』って!!」


 またラリルレはまた両手を広げて表現をする。


「あのスカしてるパイセンがそうなるって、キョーパイセン以上にありえないんスけど。仮になるとしても、多分猫の前以外でそれ出さないっスよ」

「ヤイヤイちゃんもなるもん、『ぱあ!!』って」

「ぐっへっへーあたしはリルリルちゃん大好きっスからね、リルリルちゃんとあたしをぱあした後にぱあしたいっス……あ痛!! いだだだだ!! なんかロロロちゃんの締め付けが!!」

「不遜にも邪な気を向けた報いを受けるが良い」

「そなたが居てくれて我輩は心強いのである。そう言う役割は我輩ではなく、本来ならばシアスタの役目であるからな」


 ヤイナに対する締め付けを強くするロロ。


「ヤイヤイちゃん!? どーしたの!?」

「ひぃーロロロちゃん!! 半分冗談っス!! それほどリルリルちゃんが可愛いから言いたくなっちゃったんス!! 人の性って奴っスよ!!」

「……我には分からんが……そういうものなのか」

「スス? 案外チョロいっスね。ふぃー、どうにかなったっス……」


 他が同じ事を言ってもこうはならないが、ラリルレが全幅の信頼を寄せているヤイナだからからこそ、その言葉はロロへの説得となった。


 ロロには人の心というものが分からない。それでも理解をしようとはしている。人の心を理解する事がラリルレのためになるならと思い。


 ――過去を思い出す。ロロはラリルレから『悪い事をしたなら反省しなきゃダメ』と言われた。ただ、ロロ自信は自分の行いを悪だと感じた事は微塵も無い。正体を現しシアスタや双子を泣かした際にも悪い事をしたとは思っていない。だが、そのときに絶対善性のラリルレに怒られた。だからあの行為は悪なのだと理解はしている。だから反省はしている。


 そんなロロはラリルレの反応を見ることで、真似することで、心というものを理解しようと試みていた。その思いは、ラリルレが落ち込んでしまった一件を期により強くなった。イキョウとソーエン、そして<インフィニ・ティー>の面々を見て更に理解を深めようと考るほどだ。全ては、ラリルレの為に。


 そして、今のヤイナの言動に対してラリルレが嫌がっているそぶりを見せないことから、自分が手を下すことの程でも無いのかと結論を出す。


 その実、ラリルレはヤイナの言っていることの意味を理解してないだけだったりする。


 ただ、ロロの内情を知らないヤイナからは内心『チョッロ』と思われていた。


「ヤイヤイちゃん、どっか痛いの? 大丈夫?」

「あっ、やばいっス。あんなこと言ったあたしの心に光が突き刺さってくるっス。いうなれば心が痛いっス。リルリルちゃん、あたしは健在なんでパイセン達見てて欲しいッス。その目向けられると心が黒ヒゲ危機一パツっス」

「阿呆や馬鹿も大概であるが、貴様も大概であるな」

「分かったよ!! 絶対に二人を見逃さないよ!! じーっ!!」

「くはっ…きゃわわ…」

「あっ!! 『ぱあ』ってなった!!」

「ふむ……我輩にはその『ぱあ』が分からないのであるな」

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