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無計画なオレ達は!! ~碌な眼に会わないじゃんかよ異世界ィ~  作者: ノーサリゲ
第四章-どうしてこうなるんだ異世界-
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78.浜辺の者達

 イキョウが悲痛な叫びを上げている一方――。


「ナトナトー、めっちゃパイセンから着信来るんスけど、本当に出なくていいんスか?」

「ふぁ~、こんな夜遅くにキョーちゃん達なにしてるんだろう? 夜遊びは身体に悪いよぉ」


 海岸に立つヤイナはルナトリックを見ながら尋ねる。


 深夜に起されたラリルレは半目になりながら欠伸をし、海を見ながらイキョウ達のことを心配していた。その様子を見たロロも一緒に半目の真似をし、海を見ている。


 この四人だけではない。海岸にはニーアとコロロ、そして<太陽の恵み>と<インフィニ・ティー>の面々も招集されていた。


 全員、ルナトリックに理由も説明されずに叩き起こされて、そして何故か海岸に立たされている。


「あのあの、ルナトリックさん。そろそろ理由を教えていただいても……?」

「ふむ……。まあ良いだろう。ここよりニキロほど先の海底に核持ちがあらわれたのである。我輩とヤイナ、ラリルレ、ロロで打って出る。ある程度はこちらへ雑魚を流すので、貴様等はそれらの処理をしろ」


 核持ち。その言葉の意味を知っている者は事の重大さを理解し、ギョッとした顔でルナトリックを見ていた。


「核持ち……キョーさんの…お話の中で出てきました……」


「いや!! ちょちょちょ!! ナトナト何言ってんすか!! めちゃめちゃヤババな状況じゃないっスか!!」

「そうでありますよ!! 悠長に構えている暇なんて無いであります!! ユーステラテスと同等の力を持つ輩が現れてのでありますよね!? 今すぐにでも向かわなければ!!」

「なんでイキョウさん達そんなことになってるんですか!! またあの二人何かやったんですか!?」


「なあソーキス、核持ちってなんだ?」

「なんかすっごく強いやつー、めちゃめちゃやばーい」

「どうしてそんな奴をあの二人が相手しているんだい……」


 慌てふためく面々。それと対照的に現状を良く理解できていない<太陽の恵み>はソーキスに核持ちとは何かを尋ねる。

 その強さがどれ程なのかは理解できないが、コロロの慌てふためきようを見てただ事じゃないことだけは理解していた。


「本来ならば<太陽の恵み>を参戦させる予定は無かったが、貴様等はセイメアのサポートに当たれ。それで戦力は保てるのである。騎士共は単独、他は組め」


 本来。ルナトリックの言う本来とは何処までを指すのかは誰も知らない。


 ただし、ルナトリックだけはその本来が何かを知っている。


 本来ならば、ギルガゴーレが復活した時点でゲーム組の全員が揃っていたはずだった。それをルナトリックが捻じ曲げた。


 何故そうしたのか。それはルナトリックしか知らない。が、現状の目的、その一つがシアスタ達とコロロ、ニーアのレベリングだ。戦力を強化する為にここへ呼び出している。


「私達も――」

「行くなどとは言うまいな」


 シアスタの言葉をルナトリックは遮る。


「今のままでは足手まといだ、ここで力を付けるのである。それが貴様のするべきことだ」

「……もしかしてそのために私達を呼んだんですか? 私達を強くするために」


 シアスタは考える。核持ちを倒したいだけなら態々自分達を呼ぶ必要は無い。だった何故ここに呼んだのか。その理由はこれしか考えられない。

 でも何の為に? ただ単にパーティのメンバーに強くなって欲しいからなのか。それとももっと別の目的があるのか。


「聡いな」


 シアスタがその疑問を持っていることを理解している。だが、その疑問には答えずに一言返す。


 この一言はシアスタへの賛辞だ。自分のするべきことをすぐに理解し、その理由を追及しようとするその姿への賛辞。しかし、褒めはするが答えはしない。今後も答える事は無いだろう。


「ルナおじちゃん」「わたしたち」「つよくなれる?」

「今宵は我輩が用意した舞台である。終幕を迎えるそのときは、貴様等の輝きが強くなることを約束しよう」

「じゃあ」「がんばる」「もっと」「つよくなる」

「がんばー」

「ソーキスさんも頑張るんですよ!!」

「なんだか良く分からないけれど、君達をサポートすれば良い訳だね。本当に良く分からないけれど……」

「あの……よろしくお願いします…」

「任せてくれセイメア!! この夜もキミの一ページに刻まれるなら私はなんだってしよう!! キメ台詞とか考えておいた方がいいかな? もしくは優雅な戦いを見せるとか!?」

「頼むシーカ、普通にやってくれ」

「ですです。何時も通りが一番です!!」


 賑やかな面々を背に、ルナトリックは海へと歩き出す。密かな企みを一人持ちながら。


「リルリルちゃん、いくっスよ!!」

「うん!!」


 ルナトリックが歩き出したと同時に二人は走って海へと飛び込んだ。

 己を抜かしていったその姿を追う様に歩くルナトリックの足を――。


「お待ちください。ルナトリック様、一つ疑問が」


 これまで口を開かなかったニーアが止める。

 ルナトリックが足を止めた姿を見て、ニーアは問いを投げかける。


「この際あなた様がどういった手段を用いて核持ちの出現を知ったのかは置いておきます。が、その事を知っていたのなら何故すぐにイキョウ様を助けに行かなかったのでしょうか」


 ニーアの目には憎悪と怒りが満ち溢れている。


 あの人が危険に晒されていることを知って何故動かなかったのか。それが怒りの原因だ。


「力無き者が、力を持っている者に対して何故怒れる。我輩は阿呆に貸せる力がある、貴様には無い。ならば貴様がするべき事は我輩に『阿呆を助けろ』と懇願であって、怒りをぶつけることは見当違いの行いである」


 その目をルナトリックは意に介さず反論をする。

 だが、それでも『何故』という問いには答えない。


 そしてその『何故』を追求させない為にニーアの痛い所を突いて口を黙らせる。


 ルナトリックらしくない行い。それでも、やらなければいけない事の為だったら何だってやるつもりだ。


 ニーアはその言葉を受け、奥歯を噛み締めただ睨む。


 また自分は誰かに頼るしかない。最愛の人を助けることすら出来ない。その悔しさが胸に溢れていく。その悔しさが怒りと交じり合ってその瞳に宿る。


「尤も、貴様に懇願されるまでも無く我輩は阿呆を救済するつもりであるがな。ふははははは!!」


 黙ったニーアはもう眼中に無く、自分の世界に入り込んで笑い声を上げながらルナトリックは影を纏って姿を消した。

 浜辺に残ったのは、ただ一人静かに海を睨むニーアと。そして――。


「あ!! ルナトリックさんに敵の特徴聞くの忘れてました!!」

「「「「「あっ」」」」」


 それ以外の素っ頓狂な声だった。


 * * *


「待たせたであるな」

「うわーっス!! 急に現れないで欲しいっス!!」


 暗闇の海。それをラリルレの魔法が輝いて照らしている。その外側の闇からルナトリックはヌゥっと姿を現した。

 影の中を移動する、闇の超級魔法を使用して三人の下まで移動をしたのだった。


「ねえルナちゃん、どーしてキョーちゃん達が戦ってるって分かったの?」

「我輩は元々この地の伝承を調べていたのである。後は阿呆と馬鹿の行いと、ヤイナから今宵の経緯を聞けばおのずとその結果に辿りつくのである」

「そっかぁ、ルナちゃんは頭がいいねぇ。私じゃ分かんないや」

「あたしもっスよ。ってかパイセン達が絡んだ時点で事の経緯なんてメチャクチャになるのに普通そこまで考えられるっスか? ってかてか、ナトナトの勘違いで実はパイセン達宿に戻って寝てたりしないっスか?」

「阿呆からあれだけ着信が来ている時点で……また来たのである」


 三人は同時に、UIにイキョウからの着信が表示される。


 夜間に掛けられると煩いので、ゲーム組は全員、夜になるとマナーモードにしているから音は出ない。


「出ちゃダメ? 出たいよぉ、キョーちゃんきっと大変なんだよぉぉぉ」

「出たところで、到着するまでしてやれる事は無いのである」

「いや……せめて向かってることくらいは教えてあげた方がいいと思うっスよ?」

「やめておけ。今出たら確実に我輩とヤイナに罵詈雑言が跳んでくる。それよりはインパクトのある登場で有耶無耶にし、それをもって阿呆と馬鹿の怒りを忘れさせることとしよう」

「うっわ…それはいやっスね。その意見賛成っス」

「私もキョーちゃん達に怒られちゃうのかなぁ……。やだなぁ、いっつも優しい二人に怒られたら泣いちゃう……」

「「それは無いっス(のである)」」

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