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無計画なオレ達は!! ~碌な眼に会わないじゃんかよ異世界ィ~  作者: ノーサリゲ
第四章-どうしてこうなるんだ異世界-
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77.顕現 ギルガゴーレ

 崩壊するダンジョンを死に物狂いで泳ぎ抜け、命からがら今は神殿跡地から距離を取った海中に漂い、目の前の光景を観察する。


 もう神殿なんて跡形も無い。崩れ去って海の藻屑になってる。それもまだ発光してるから、ばらばらになったおかげでむしろ視界は良好だ。


 そしてその神殿の代わりにそびえるは――。


「ギルガゴーレじゃん……」


 ――神殿跡地に聳え立つ巨大なゴーレム。


 オレが知ってる正式名称は<攻城壊滅兵器・ギルガゴーレ>


 薄灰色で、無骨に削った岩の集合体のような見た目。手と足、胴体が強固な岩に覆われていて、それを表すように手と足は太く大きく、胴体は厚い。


 コイツの弱点は打撃属性と雷属性だけだ。それ以外は通りが悪い。特に土属性の魔法と刺突は攻撃する意味が無いって言っていいほど軽減される。


 ギルガゴーレはソウルコンバションテールのシーズン3。『破壊戦線攻防戦』のメインボスだった。

 コイツのクエストはゲリラで発生して、内容は都市を決められたウェーブ数守りきること。その拠点に居るプレイヤー総出で対処しないとまず勝てない。個の強さよりは集団の強さを求められるクエストだ。

 経験値や金の稼ぎがいいから、プレイヤーには割りと好かれてたボスだ。でも、ゲームの頃は初っ端からボスが登場するなんてことは無かったぞ。段階的に攻めてくる雑魚ゴーレムを倒して、ようやく最終ウェーブに出てきてたじゃん。


 しかも大人数のプレイヤーで相手しないといけないほど体力がバカ高いから、現状じゃどうにも出来ない……いや、こっちの世界の奴等には弱点がある。核さえ狙えれば倒せるってことだ。ならオレ達だけでやれるか?


「なぜ奴がここにいる」


 そんなことを思っていると、やっとソーエンが合流してきた。


 ギリギリ間に合ったな。もうチョイ遅かったら、神殿が崩壊したせいで目印の光の筋が消えてたどり着けなくなるところだった。


「神殿の最奥に核持ちが封印されてた。それをオレが解いちゃった」

「ふぅ……またか」


 アーサーの話を聞いて、なんとしてでも倒さなきゃいけないってことを知ってるオレ。そのことを知らなくてため息をつくソーエン。


「やれやれぇ、真実を知ってるって辛いなぁ~。あとでお前にも教えてやるよ」


 オレの知ってることをなぁ?

 なーんて、こいつにマウントを取ったところ。


「得意げなお前に腹が立つ」


 ブチ切れソーエンはまだ続いていたらしく、マジで不機嫌な声で返された。


「……丁度いい。あそこにストレスを発散させるサンドバッグがあるな」


 しかもそのテンションで、コイツはギルガゴーレをロックオンしやがった。

 しかもしかも、そのまま雷属性の銃を取り出しやがった。水中銃じゃなくて、陸上用の。


「おい、イカにやったようにあいつを海上に引き摺り上げろ」

「バカ言うな。あれやったところより深いからオレじゃ無理だ。ヤイナならできるかもしんないけどオレはムーリー」

「チィ!!」


 オレ達は、水中のせいで進行が鈍いギルガゴーレを見ながら問答をする。


 動き出したあいつはシャーユの方向を目指して海底を歩いている。ただし鈍足で。


 ここから町までは距離がある。動きが遅いことも相まって、作戦を練る時間は十分にあるだろう。

 ソーエンはというと、UIを操作してチャットを繋いでいるようだ。一回目は個人へ、二回目は全体へ。ヤイナが出なかったから全体で呼び出ししようと考えたな。でも……。


「それね、オレもやったの。でも誰も出なかったの。すやすやラリルレはおいておいて、薄情者二人は出なかったの。絶対起きてるはずなのに」

「ラリルレは仕方の無いことだ、夜にはきちんと寝れて偉い。だが、他二人は何をしている。何故出ない」

「そんなイライラしながら言われても知らんわ!! それよりあれどうすんだよ!!何かちっちゃいゴーレム出してんぞ!!」


 ギルガゴーレは足元に見たことも無いゴーレムを産み出している。


 いや、素体は見たことあんだけど、一つ知らないパーツがある。

 素体事態はゲームで良く見た、デカくて先の尖った縦長岩のボディと、そこから短い手足が生えてるってフォルムだ。でも、背中にプロペラが生えてる。あんなタイプは見たこと無いぞ。


「あれってさぁ……」

「小ざかしいマネを。お前は雑魚を、俺は本体だ」

「絶対討ち漏らす自信あるよ。だってあれどう見ても水中早く動けんじゃん」


 数にして五十はいる小型のプロベラを背負ったゴーレム、そを見て、オレはそう考える。

 あれプロペラ部分回転させて、推進力生み出す気満々のフォルムじゃん。


「つべこべ言わずにやれ」

「へい……」


 こっちには殺意満々のオーラ放ってるバカが居やがったよ。流石脳筋だ、後先考えずに火力でごり押ししようとしてやがる。


 今回はオレがバックアップだなぁ。ソーエンが本体をやってる間に出来るだけ雑魚散らしをしておこう。

 幸い、ギルガゴーレ以外のゴーレムはそんなに強くないから一人で相手することは可能だ。


 こいつのクエストで難しいところは、コイツら質量で押し込んでくるタイプだから、高い火力を一体にぶち込むよりも広い範囲で一掃することを求められるってところだ。だったらここは数対見逃してもいいから、討伐数を優先して戦うかぁ。


 ……待てよ? 雑魚ゴーレムが雑魚ってのはゲームでの時の価値観だ。雑魚ゴーレムは一体一体がレベル七十のプレイヤーに相当するステータスを持つ。そしてタンク型、魔法攻撃型、物理攻撃型の三つが存在する。見分け方は、白い点みたいな目が一つがタンク、二つが物攻、三つが魔攻だ。


「……やベーじゃん」


 この世界は、ゲームの頃よりも平均レベルが低い。雑魚ゴーレムは四騎士一歩手前ってくらいの強さだ。そんな強さのやつ等を大量に相手出来る訳が無い。しかもシャーユは平和な町だ。戦力が揃ってる訳が無い。だからここで殲滅する必要がある。


 ……おいアーサー!! これ本当に勝てるんだろうな!! 負ける未来しか見えなくなって来たぞ!!


「ソーエンこれマジでやべーって!! シャーユ壊滅の危機だぞ!!」

「知らん。勝手に滅んでいろ」


 クッソ薄情な事言ってソーエンはギルガゴーレに突っ込んで行った。


 マジかよ……あの百体くらい居る雑魚ゴーレム……仮称、水中機動型ゴーレム倒さなきゃいけないの? しかもまだまだ生み出すんだろ?

 オレだけじゃ手が足りない……。でもやるしか無いのか……。ソーエンはもう攻撃始めてるし……。


 アイツは雷属性の水中銃に武器を変更し、加えて雷属性のバフと衝撃属性、爆発属性のバフスキルも使ってる。これなら放置しててもある程度は持つだろう。


 対してギルガゴーレは、腕のぶん回しでソーエンに反撃してるけど、そもそもソーエンはアイツの射程外から射撃してるから当たらない。

 ただ…ソーエンの攻撃はギルガゴーレの外装は傷つけてるけど、ほんの少し削り取ってるくらいだ。そして例に漏れず、それも再生する。今のままじゃ決定打にはならないな。


「うへー……やる事やるかぁ……」


 オレはオレの役割を全うする為行動を始める。


「<ハイトーチ>」


 <ハイトーチ>

 辺りを照らす炎属性の魔法。通常の<トーチ>と違って水の中でも消えない特性を持つ。普通だったら<トーチ>を使うくらいなら<ローヒート>の方が使い勝手いいから<トーチ>なんて使わない。水中に来てやっと<ハイトーチ>を使うくらいだ。


 その出番が少ない魔法を辺りに拡散させて視界を確保する。


 オレの為じゃない。オレは<暗視>があるから明かりは必要ない。


「ソーエン!! 視界確保したから、危なくなったら闇に逃げろ!!」

「ああ」


 チャットにて無愛想な返事が返ってくる。


 設置した明かりは不規則に、わざと間を空けて展開させてある。緊急退避用の暗闇だ。


 ソーエンの攻撃によってギルガゴーレの進行は止まっている。じゃあオレは雑魚ゴーレムをやらせてもらうよ。


 大きく潜り、プロペラを回転させ始めている水中機動型ゴーレムの前に躍り出る。

 コイツ等の行動アルゴリズムは単純だ。町までは進行を続ける。その最中に邪魔をされれば標的を町からプレイヤーに変える。だから、全員に攻撃をブチ当てればオレにヘイトが向くってわけだ。


「また囮役だよ!! <チェインライトニング>!!」


 <チェインライトニング>

 中級の雷属性魔法で、ヒットした相手から周囲に連鎖する魔法だ。チェインする度に威力は弱まっていくから、この数に当てても末端にはほとんどダメージが通っていないだろう。


 でも、当てさえすればいい。それだけで。


「ゴゴゴ、ヒョウテキ、カクニン。タイショウハイジョ」


 全員のヘイトがオレに向く。


 そう、全員だ。百体のゴーレムが全てオレの方を見ている。


 オレ、今からコイツ等相手に逃げなきゃいけないのかよ。水中機動型からな……。

 ゴーレム達はプロペラを回転させて、そして動き出す。一斉に、オレ目掛けて突っ込んでくる。


「チクショー!!」


 だから逃げる為にオレは泳ぎだす。制限解除は忘れずにする。そんで足の装備も変更して全力だ。

 こうして、追いかけっこの時間が開始された……。ヤイナー!!ナトリー!!早くチャットに出てくれー!!

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