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24.強さがバレた、そのときは

「あの……私からよろしいでしょうか」


 おずおずとしながら受付さんが言葉を発した。

 何やら聞きたいことがあるらしい、けど。大体予想はつく。

 今までもずっと質問したそうな顔をしていたけど、オレ達とカフスの話し合いだからと必要なとき以外は黙っていたのだろう。


「いいよ」


 カフスが許可を出したので、これで受付さんは遠慮なくオレ達に質問が出来る状況になった。


「ありがとうございます。……その、先ほど指輪が反応しなかったのは一体……」


 やっぱりそうなるよな。なんとなくは察してたよ。


 指輪は反応しなかったのに、オレ達は嘘をついていた。

 受付さんは、偉大なカフスの言葉と自分の指輪の反応、どちらも信じたいけど信じられないような口調でカフスに問いかける。


「シアスタ以外の二人は指輪の魔法を弾いてる。私の目が証拠」


 さっきまでは受付さんも勘違いと思って自分を納得させていたようだけど、カフスの、ドラゴンでありアステル代表の言葉で、ついに決定的なものとなってしまう。

 カフスの言った『私の目が証拠』なんて、最上級の証拠だろう。


「うそ、そんな……今すぐ審議師協会に報告を!!」

「だめ」


 焦って走り出しそうになる受付さんを、カフスが一言で止めた。


「ですが……このことは――」

「だめ。二人のことは全て私が預かる。この会議室で聞いたことは口外禁止。今度はお願いじゃなく命令」

「……はい。畏まりました」


 それ以上受付さんは何も言えないのか、反論はしなかった。


 受付さんはまだまだ聞きたいことがありそうな雰囲気を出しているけど、指輪の事と違い個人的なことだからか口を閉ざしている。

 受付さんは仕事人だな。


「この際だから何でも質問していいよ受付さん、嘘はつかないからさ。いいよなソーエン」

「ああ」


 森にはなるべく早く行きたいけど、受付さんは気になることが聞けず気持ち悪でしょ。色々恩があるから、少しくらいはその気持ち悪さを解消するのに付き合ってあげたい。


「私に遠慮しないで聞いていいよ、ローザ」


 カフスも許可を出した事だし、これで受付さんも話せる。


「皆さん……ありがとうございます」


 ここからの話しはシアスタが暇になるだろうから、ケツポケットのアメをあげよう。


「マザーファングボアを討伐したのはお二人との事でしたが……お二人のレベルで、どうやって討伐をしたのでしょうか……?」


 シアスタが渡したアメの包み紙を剥がしてコロコロと舐め始める。

 受付さんの質問に答えようとシアスタに向けていた目を戻すと、カフスもアメをコロコロと舐めていた。……あれ?……いつの間に取られてたんだ?


「勘違いするな、そもそも俺はレベル三百二十一だ。あんな雑魚を屠るなど造作もない」

「え、あ、因みにオレは三百二十だよ」


 アメの件で戸惑っているオレを他所に、ソーエンがきっぱりと答える。

 ソーエンはレベルが低く見られていることが許せなかったらしく、少し怒った口調で答えていた。皆で頑張って上げたもんな、分かるぞその気持ち。


「そんな……ありえませんっ!!」

「ほんと。それくらい魂が強い」


 アメを咥えながらモゴモゴとカフスは答える。

 受付さんは驚いて固まってるし、シアスタはギョッとしながらオレとソーエンを交互に見てくる。


 カフスはオレ達の魂を見て強いと判断していた。

 ソウルコンバーションテールでもレベルの強さは魂の強さとフレーバーテキストには書いてあった。それはこの世界でも同じらしい。


「魂って誰にでも見れんのか?」


 オレの<生命感知>はスキャンをしてそこに魂があるってことまでは分かるけど、それがどれくらいの強さとかなんては分からない。魂の強さは大きさとか関係ないもんなぁ。反応がちっちゃくても強い奴は強いし、大きくても弱いは弱い。密度的な面やそれ以外の要素で強さが分かるんだろう。


 誰でも見て貰えるなら、オレ達のレベルを他の人にも見てもらって大々的に宣伝してもらおう。そうすれば仲間たちの耳にも届くかもしれない。


「私くらいしか無理。誰にでも見られるなら水晶はいらない」

「それもそっか」


 物事はうまく回らないもんなんだな。


「あなた達は力を出すことを控えて」

「なんで?」


 レベルは無理でも力のほうを証明できれば、オレ達の宣伝が出来るのに。そうすれば仲間の耳にも届きやすくなる。


「周りが危険に晒される。それにその力を知った人達が悪いことを企む可能性もある」


 カフスは真面目な話をしているが、アメを舐めながら話すからずっとモゴモゴしてて一切の緊迫感が無い。


「オレ達は悪いことなんてしねーよ」

「知らないで利用されることもある」


 カフスの言うことは確かにそうだ。オレ達はこの世界をよく知らない。無知なオレ達はこの世界の善悪の判断が全て出来るとは限らない。それにオレ達はバカだから頭のいいやつにいいように利用されても、気づかない自信がある。


「悪いことなんてしたら仲間に顔向け出来ん。控えよう」


 ソーエンの言う事も尤もなので、オレもカフスの言葉に従おう。


「分かった、オレも控えるよ。でも安心してくれ。今はこの指輪で能力を抑えてるからレベル五十まで力が下がってる」

「ん、命の危険があるとき以外でその指輪を外さないで」

「お前に言われるまでもない。俺達は元々そのつもりだ」


 ソーエンの言葉にカフスは良かったと言って安心している様子だった。コイツ……表情ほとんど動かないぞ。微細レベルでしか動いてない。


「ちなみにだけどさ、緊急時以外に外したらどうなる?」

「アステルから出て行ってもらう。あなた達は危険。私が全力を持って追い出す」


 せっかく家や金が手に入って、ようやく腰を据えて仲間を捜せそうなのにそうなっては困る。だからここはおとなしく従おう。それに全力のドラゴンとかこえーよ。戦いたくねーよ。


「ごめんねローザ、もういいよ」


 あなたの質問なのに私がしゃべってごめんなさいということだろう。カフスは言葉が本当に少ないなぁ。


「いえ!? そのような、謝る必要なんて一切ございません!!」


 カフスに謝られた受付さんは慌てて答えていた。


 その後受付さんは他にも質問があるようで、オレ達に許可を求めてきたので了承する。


「もしかして、シアスタちゃんもお二人と同じくらいのレベルなのでしょうか……?」


 思いもよらないことを聞かれたシアスタは、そんなわけが無いと驚いた顔で首をぶんぶん振っている。

 それをみて受付さんはホッとしていた。


「でしたら、どのような経緯でパーティを?」


 受付さんから見ればレベル三百超えのオレ達とレベル十五のシアスタが組んでいるのが奇妙に見えるんだろう。


「私も知りませんでしたよ!!お二人がそんなに強いって!!」

「シアスタには言ったろ。信じてくれなかったけどさぁ」

「いいんですかお二人とも……。こんな私と組んでて……」


 シアスタが舐めていたアメを手に持ちながら、涙目で不安そうに聞いてくる。やめてくれその目は本当にオレに効く。


「別にオレ達の中じゃ何も変わってないんだ、変わったのはお前の中だけ。お前が嫌なら解散するけど」

「嫌です!!解散しません!! このままがいいです!!」


 シアスタは強い拒否を示した。そんなにオレ達と組んでいたいのか。


「ならいいじゃん」

「そうだな」

「イキョウさん、ソーエンさん……っ!!」


 またシアスタがえぐえぐと泣き出してしまった。


 多分、いつもの受付さんなら「仲がよろしいんですね」とか言いそうだけど、今の受付さんは緊張の面持ちをして、何かを考えているようだった。


「……本当はもっと聞きたいことが山ほどありますが、<インフィニ・ティー>の皆さんには森の調査をしていただかないといけないので、また別の機会にお願いします」


 受付さんもティーのアクセントが強くなるのか……。

 もっと聞いてくれてもいいんだけど、受付さんがそう言うのなら話を切り上げて調査に向かおう。もっと心の整理ができてからの方が話しやすそうだし。


「んじゃ、森に行くか」


 シアスタとソーエンを見ながら言うと、オレの言葉に頷いてくれたので行動に移ろう。


「二人は約束、ローザは命令を守って。シアスタも」


 オレ達の同行の指輪のことと、受付さんとシアスタはこの部屋のことは口外禁止のことか。

 カフスの言葉にそれぞれ返事をして同意する。


「あとこれ、報酬。調査のは後日」

「おおっと、忘れるとこだった」


 カフスが机に金貨を三枚置いてくる。金払いがずいぶんいいな。


「話しただけで金貨三枚は流石に多くない?」

「ほんとは一枚の予定だった」

「それでも多いわ。まぁいいけどさぁ……なんで増えたの?」

「ん、アメ美味しかったから」


 ……それだけ?アステルの為に約束をした事とかの御礼とかじゃなくて?


「金を貰えるならば事情などどうだって良い」

「うーん……まぁそうね。ありがたく頂戴するよ」


 机の上に置かれた金貨を受け取って、オレ達は森へ向かうために挨拶をしてから応接室を出た。

 カフスは良く分からない人物、いや……ドラゴン物だったな……。

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