50.海の中だぁ!!
桟橋から海中を泳いで海を進む。
海の中は海面近くと違って、暗い闇がひたすらに広がっているから、視界確保のためにラリルレの魔法<ライト>で辺りを照らしていた。それに加えてオレは<暗視>を使っているから、闇に包まれている海の中を悠々と見通せる。
そして視界良好のオレは<生命感知>を使ってシーサーペントがいる位置まで皆を誘導していた。
<人魚のブレスレット>をしていれば水中でも会話が可能になるから、意思相通は可能だ。
それに加えて、オレ達五人はパーティチャットを使用しながら移動してるから、この広い海のなか何処にいようとも会話ができる。
ただ、意思疎通が可能なせいで。
「バーカ!!パイセンのバーカ!!鬼!!悪魔!!卑怯者!!っスっスー!!」
「戦いの最中、背後には気をつけておくんだな。うっかりお前を撃つかも知れん」
ソーエンとヤイナからずっと罵倒を浴びせられている。
オレが先導してるから後ろの四人の様子は分からないけど、あの二人は確実に怒っている。
「ルナちゃんは怒ってないの?」
「こういう展開を期待して四日も待っていたのだ。むしろ堪らなく悦に浸っているのである」
「んふふ~、ルナちゃんはいっつも楽しそうだね」
ナトリはポジティブだなぁ。
ラリルレも文句一つ言わずに付いて来てるってのに……あいつ等ときたら。
「煩いぞー後ろの二人ー。少しはラリルレとナトリを見習えー」
「答えはノーっス!!このイキョウ者!!っス!!」
「お前ッ!! ……一線越えたこと自覚しとけよぉ?」
「その前にお前が一線超えた事を自覚しろ」
「その前の前にお前等が一線越えた事を――」
「皆で夜の海をお散歩するの楽しいなぁ。暗くてお化け屋敷泳いでるみたいでちょっとワクワクしちゃう」
「「ねー」」
「そうだな」
ラリルレが楽しいならオレ達が喧嘩をする意味は無くなる。むしろ、海中散歩大歓迎に早変わりだ。
「クックック、やはり揃ってから討伐に向かうのは正解だったのである」
オレ達を見ていたナトリは、静かに歓喜しながらそう言う。
「ところでさ、この海っていつもこんなに静かなの?」
感知範囲を広げても動いている反応はほとんど無い。まるで身を潜めているように静かだ。
「シーサーペントのせいで魚逃げてんじゃないっスか?」
「そっか。不漁って言ってたしな」
「お前の目でもまだ捉えられないのか」
「反応的に隠れてるっぽいからまだ見えない。多分岩場かどっかに隠れてるんじゃない?」
<生命感知>的にはまだまだ距離があるから、遮蔽物が多い海底の地形もあいまってここからじゃ見えない。
シーサーペントらしき反応は町から結構離れた沖の海底を示してるからな。まだ目で直接捉える事は出来なかった。
「にしてもこの海面白い岩があるんだな」
遠く離れた所にある超巨大な岩。
その岩から巨大な魂の反応がある。まるであの岩が生きてるみたいだ。
あの岩の中にシーサーペントが隠れてるんだろう。巨体のアイツが隠れるには絶好の場所だ。中にすっぽり納まってるのかな?
あの特徴的な一本岩が目印になるから、迷わず進めて便利だ。
「っス? なんスか急に」
「イカにそっくりな巨大な岩があるんだよ。おかげで良い目印になる」
「……? そんな岩聞いたことないっスけど……」
「なんだよ、住んでる町のことくらいちゃんとリサーチしとけよ」
「それはイカではないのか」
「バカ言うんじゃないよこのバカ、あんな岩みたいなイカ居る訳ないじゃん。マジで岩だよ? 表面ゴツゴツしてるし」
「ならば岩か」
「だからそう言ってんじゃん。なに?オレのこと疑ってんの?」
「いやなに。こういうときは碌な事が起きないと、俺達の中では相場が決まってるからな。少し疑心暗鬼になっていただけだ」
「阿呆共は起伏が激しい異世界生活を送ってきていたからそうなるのも仕方の無いことである。だが、そのようなイベント事は早々起こらないから安心するのである」
「おや?なんだかいやな予感がしてきたぞ?」
今ナトリの一言が何かの決定打になった気がする。
これ絶対ろくな事になんないときの前振りじゃん。ふざけんなよ?この町に来てようやく真の平和な生活送れてたんだぞ? 今頃変なこと起きるのはマジで勘弁だぞ。
「よーしソーエン。オレが方向調整するから、飛びっきりの攻撃してくれ」
「分かった」
思い立ったが吉日。即断即決で行動開始だ。予感に従うのが最優先。
オレはイカ見たいな岩がある方向を指差して、速攻でソーエンに指示を出した。ここからなら岩の中に居るシーサーペントごと撃ち抜けるだろう。
ソーエンはと言うと、同じく思う所があったのかオレの指示に従って銃を構える。
通常の銃ではない、水中戦特化型の拳銃。そのおかげでソーエンは水中でも陸と変わらず銃撃が可能だ。
「何するつもりっスか?」
「よもやここから撃ち抜いて終わらせる気ではなかろうな? そのようなつまらない終わり方を、我輩は良しとしないぞ」
「ナトリの良し悪しなんて知るか。今のオレは嫌な予感で頭の中が満たされている」
「同じく。奥義はどうする」
「今後のことを考えて温存で。とりあえず攻撃開始!!」
危険の芽は早々に摘んでおくに限る。他がなんと言おうとオレ達は絶対に止まらんぞ。
「分かった。<セツナドライブ><ハヤブサストラ――」
「待って!!ダメ!!攻撃しないで!!」
ソーエンがスキルを発動しようとしていると急に、邪魔をするような、焦って止めようとしているような声が聞こえてきた。
誰だと思い辺りを見渡すと、なんでかギャラと、ギャラに巻きついているアルが海底の岩場からひょっこりと顔を出して、こっちを見て焦った顔をしている。
「誰?どこにいるの? なんかかわゆい波動を感じるよ!!」
海底の岩場から顔を出している二人のことは、仲間達には見えていないようで声の主を捜すように辺りを見渡している。
この静かな夜の海であの焦った声。ギャラとアルは何か事情を知ってそうだな。
さっきからしている嫌な予感に加えて、焦った声でオレを止めたギャラ。絶対何かあるじゃん。もうほぼ確定だよ、予感が真実に近づいてる気しかしないよ。
でもまだ確定じゃない。一応事情を聞いてみよう、判断を下すのはまだ早いはずだ。
ってなわけで、オレは何事も無いことを祈りながら仲間を引き連れて二人の下まで泳ぎを進める。
そして岩場の窪みに到着すると同時に。
「なに攻撃しようとしてんの!! イキョウはバカなの!?」
ギャラが開口一番、オレを即座に罵倒してきた。
「オレじゃないオレじゃない」
「あれ? 水の振動的にイキョウだと思ったんだけど……」
口ぶり的に、ギャラはオレ達を目で見てた訳じゃなくて振動で認識していたらしい。だから多分だけど、オレとソーエンって体格似てるから勘違いしたんだろう。
「オレじゃなくてこっち」
オレは背後に居るソーエンを後ろ手に指差す。
「……わっ!! また怖い人だ!!」
「イキョーの周りには怖い人が多いの」
ギャラとアルは二人で抱き合って、ソーエンとナトリを怖いものを見るような目で見ていた。
「キョーちゃん……もう我慢できない」
そしてそんな状況を前に、ラリルレはさっきからずっとわなわな震えてる。
うん、分かってるよ。分かってたよ。
「かわゆいよー!!」
ラリルレは二人にぶわっと抱きついて抱き締めた。
ラリルレの可愛いの規準は分かんないけど、多分こうなると思ってたよ。
「なんだろう……すっごい落ち着く……」
「イキョウの周りには優しい人も多いの」
ラリルレに抱き締められた二人はへにゃっとした顔で安らぎを得ていた。分かるよ、その気持ち。
でも今は少し邪魔させてもらうぞ――。
「おい、知っている事を全て話せ」
――って思ってたらオレより先にソーエンが動いた。
言い方がぶっきらぼうなんだよなぁ。それもう脅しなんだよ……。
「怖い!! やっぱり怖い!!」
「はいはい落ち着いて、そして待てやバカ。仮面とフードの怪人はちょっとそっちで遊んでろ。お前等が居ると話が進まない」
「やれやれ……。仕方が無い。子供の相手はお前が一番手馴れているからな、任せる」
「期待しているのである。精精足掻け」
あの二人は人を煽らないと死ぬ病気にでも罹ってるのか? 捨て台詞吐きやがったぞ。
下がった二人を後ろに、オレとヤイナが二人から話を聞く事にした。
「さっき慌ててオレ達の攻撃止めてたけど、なんかあったの?」
「ゆっくりで良いっスからね、落ち付いて教えて欲しいっス」
「ヤイナちゃん……あのね……。シーサーペント食べられちゃった」
「ハマグリ」
「ふははははははは!!」
「うっせぇぞ怪人共!!」
ラリルレに抱かれたまま、ギャラが深刻そうな顔して話し始めようとしたら、後ろのバカ達が空気ぶっ壊しやがった。
「ごめんな家のバカがバカで」
「黙らせておくからそのまま話し続けて良いっスよ。<アクアバインド>」
「「…」」
ヤイナが水の輪っか、<アクアバインド>で二人をふんじばってくれたおかげで、後ろの怪人共は大人しく海を漂うだけの存在に成り下がった。これで話が進められる。
「……あのね。シーサーペントを追ってロッククラーケンがこの海に来ちゃったの」
本当に深刻な事態が起きてるのか、ギャラは早々と話を再開した。
「「…?」」
そのことを聞いて、オレとヤイナは首を傾げる。が、まだだ。まだ話を聞こう。
「シーサーペントの怪我は、ロッククラケーンと戦って出来た傷だったの。ロッククラーケンは逃げた獲物を追ってここに来ちゃったの」
アルは新しい情報を追加してくれる。そのおかげで経緯は大体理解できた。
ようは、食い損ねた食料を追ってここまで来たやつが居るんだよな?
けど。
「ロッククラーケンって何?」
そもそもそいつがなんなのかが全く理解できない。
まるで岩みたいなクラーケンのような名前をしてるじゃないか……。
「そっか、海に馴染みが無い人は知らないよね。ロッククラーケンはクラーケンの亜種で、全身が岩みたいに硬くてゴツゴツしてるのが特徴のおっきなイカだよ」
「とっても強くて太刀打ちできないの。このままじゃ皆食べられちゃうの」
「……ほら、嫌な予感当たったよ。勝手に危機が転がり込んできたよ」
名前を聞いた瞬間に薄々は感じてた。そして理解した。さっきオレが見てたのって岩じゃなくてそのロッククラーケンだったのかよ……。
だったら相当でかいぞ。遠くから見た感じだと、あの岩は胴体部分だけでシーサーペントよりも一回り大きいくらいだ。それに足を合わせると全長どんくらいあんだよ、めっちゃでかいじゃん。
「今はシーサーペントを食べてお腹一杯だから動かないはず。その隙に町にこのとこを知らせなきゃ!!」
「クラーケンは獰猛なの、逃げるなら今のうちなの。皆隠れながら町を目指してるの。イキョー達も一緒に逃げよう?」
「賛成だわ。暗いしオレが先導しようか?」
「必要ないよ。私達の海だもん、目を瞑ってても泳げるよ!!」
「海の民すげー」
「何で町に逃げるんスか? ギャララちゃん達は陸より海の方が安全じゃないっスか」
「ロッククラーケンは体が重いから水の中じゃないと動けないんだ。陸に逃げれさえすれば安全なんだよ!!」
「っスねーなるほどー。ロックラは水の中だと動き早いんスか?」
「重すぎて泳げないから遅いの。でも、おっきいし硬いから動くだけでも脅威なの。歩くだけで皆潰されちゃうの」
「海の生物なのに重くて泳げないとか、とんだ欠陥生物っスね…。進化の過程どうなってるんスか…」
「悲しきモンスターだなぁ。陸に上がって動けないんだったらさっさと逃げようぜ、無視してればそのうち居なくなるだろ」
シーサーペントほどの巨体をわざわざここまで捕食しにきたって事は、アイツほどの巨大な奴を捕食しないと生きて行けないってことの証拠だ。
だったらこの平和な海にはもう餌になるような巨大生物は居ないだろうから、放っておけばそのうちまたエサを捜してどっかに行くだろ。
「確かにそうだけど……でも、シーサーペントを捕食したってなると、一ヶ月はここから動かないかも……」
「マジ? 消化おっそ」
「思ったより低燃費なんスね」
「このままだとシャーユの海の生態系がめちゃくちゃになちゃうの」
「お前等海の住民はどうなんの?」
「アイツが居なくなるまで別の海に避難するしかないかな……」
「ここを離れるのは寂しいけど、我慢するの……」
ギャラとアルはラリルレに抱かれながら悲しそうな顔をしながら言う。
「よしよし、キョーちゃんがいるから大丈夫だよ」
そんな二人を、ラリルレは撫でて慰めた。
「イキョウが?」
「イキョー強いの?」
二人はオレを不思議そうな目をしてみてくる。
自慢じゃないが、オレはこの中で一番弱いぞ。そんな頼りにされても何も出来ない。
でも。寂しい、悲しいと来たもんなぁ……。
「……アイツが居なくなればお前等は避難しなくて済むんだよな?」
「そうれはそうだけど……」
「危ないの。ロッククラーケンはシーサーペントよりもずっと強いの」
あのシーサーペントが怪我をさせれた挙句尻尾巻いて逃げて、その上食われるくらいだもんな。
ゲームのクラーケンですらレベル二百がパーティを組んで倒す敵だ。その亜種ってなると同等の強さかそれ以上はあるだろう。普通ならオレ達が全員制限開放をしないと正面から太刀打ちできない敵だ。迂闊に手を出すのは危険以外の何者でもない。
でも、オレは正面から戦いもしなければ、迂闊に手を出したりもしないぞ。
「危ないんならさっさと逃げるか。二人は先に逃げてな」
オレは二人の頭を軽く撫でて落ち着かせる。
「っスっスー。そうっすねー逃げるっスねー」
そんなオレをヤイナはニヤニヤしながら見てくる。
「んふふ~」
ラリルレもにこーっとしながら見てくる……。かわわ~。
「イキョウ達を置いてなんていけないよ!! 私達は隠れられそうな岩場沢山知ってるから一緒に逃げよーよ!! その方が安全だよ!!」
「お前逃走においては最強のオレを心配すんのか? なめんなよ、本気出したら世界中の奴等と追いかけっこしても逃げる自信がある」
「なんて情けない自慢なの……」
「パイセンならマジでやりかねないんスよねー。まあ、そういうことっスからあたし達のことは気にせす逃げて欲しいっス」
「ヤイナちゃんがそう言うなら……。絶対に町で会おうね、約束だよ」
「もちろん。オレはできるだけ約束を守る男だ」
「さっきから情けない事しか言ってないの……」
「本当に大丈夫? 信じて良-い?」
「大丈夫だよ。キョーちゃんがこう言ったんだもん。絶対に大丈夫」
「ヤイナちゃんとおねーちゃんがそう言うなら……分かった、信じる」
ギャラは二人からの言葉を聞いて、腹を括ったような表情をした。オレの言葉だけじゃ信じられなかったの?
「おねーちゃん!? んふふ~!!かわわ~!!」
ラリルレが頬ずりまで始めちゃった。
そのまま堪能させておいてあげたい。でも申し訳無いけど、二人を解放して貰おう。
「ラリルレ、そのままじゃ二人が逃げられないから離してやってくれ」
「あ!! ごめんね、嬉しくなっちゃって」
「ううん、全然大丈夫だよ」
「怖くて泣きそうだったけど、おねーさんのおかげで元気でたの。ありがとうなの」
「ぁあ~かわゆいよぉ私もありがとおだよぉ」
二人を解放した後も、ラリルレはずっと頭を撫で続けていた。
「ほれ、さっさと逃げれ。振り返らずに全力でな」
「そんなことしたら見つ――」
「大丈夫大丈夫。この暗闇に紛れれば安全に逃げられるさ」
「イカは目が良いの。特に暗闇は得意なの。迂闊に動けばすぐに見つかるの」
「……マジ? じゃあオレ達さっきの時点でもうアウトじゃん。絶対見つかってるじゃん」
「食事中だったから動かなかったの。食べ終わったらもうお仕舞なの。だから今しか動くチャンスは無いの」
ロッククラーケンは捕食の真っ最中だったのか。ってことは、今が一番油断しているな。
さっきアルがクラーケンは獰猛って言ってたし、捕食が終われば、あとは消化が終わるまで迎撃態勢を取るだろう。だったらやるなら今だ。
でも周りに潜んでるであろう海の住民が邪魔だな。万が一何かあった場合はこの二人が悲しみそうだ。
全員の避難が済んだ瞬間を、勝負の始まりとしよう。
「なあギャラ、ここでオレ達が変なアクション起したら皆どうする?」
「え……? 良く分かんないけど、危険を感じたロッククラーケンが動き出すって思って全力で町に逃げるんじゃない? さっき私がイキョウ達を止めたのもそーゆー理由だったし…………まさか」
ギャラは何かを察したらしい。信じられないものを見るような目でオレを見てくる。
「ヤイナァ!! ナトリ開放しろ、あれやるぞ!!」
「っスっスー、了解っス!!」
「ダメなの!! 変なこと禁止なの!!」
「ほう……あれだな。分かったのである」
アレのためにナトリは動き出す。
開放されたナトリは、ボックスから杖を取り出し構える。ラリルレやシアスタの長い杖と違って、歩行補助具のように短い杖。漆黒の柄に真紅の宝石が据えられている持ち手、見るからに悪そうなやつが使いそうな武器だ。
「全員固まれ!!」
オレの合図で仲間達全員がオレの周囲に集まる。
そして。
「合わせろ。<ダークミスト>」
「誰に言ってんだよ、<黒墨>!!」
ナトリや闇の霧を、オレは墨の煙を当たり一面に拡散させる。
<ダークミスト>は闇属性の視界阻害魔法。暗闇を辺りに撒くから<暗視>だったら見通せる。
<黒煙>は<煙幕>の水中版みたいなスキル。こっちは物理的な墨を辺りに撒くから<暗視>では見通せない。
これがコンビネーションで巻き起こす、水中戦特化型の視界阻害方法だ。
ナトリは闇を更に闇へと落とし、オレはその闇すら黒く染める。この二重の暗闇はどれだけ目が良くても見通すことが出来ないだろう。
でもギャラ達なら動ける。だって目を瞑ってても泳げるって言ったから。それに、目以外にも振動とか他の感覚器官使ってるっぽいから大丈夫だろう。
「もー!!最悪!! 何やってんのイキョウ!!」
「ギャラ!! そんなことより早く逃げるの!!」
「後で絶対に文句言ってやるんだからー!!」
闇の中、ギャラとアルの言い争う声が聞こえ、遠ざかっていく。
<生命感知>で周りを確認してみると、周囲にあった海の民らしき反応が全部町に向かって逃げていくのが確認できた。直に皆の避難も終わるだろう。よし、これで不安材料は消えたな。
「この後の事は考えているんだろうな」
ソーエンの拘束も解かれていて、オレに背中を合わせた状態で尋ねてくる。
「モチ」
オレは、オレだけは<暗視>を使っているからこの闇でもある程度は視界が確保できる。
遥か遠くでは、岩と思い込んでいたロッククラーケンが、こちらにデカイ目を向けて警戒している姿が見えた。
さっきは胴体部分が丁度こっちを向いていたから両脇にある目が見えなかったのか……。巨体に似合うとってもおっきな目をしてますね。岩に目玉がついてるみたい。
つぶらな瞳ってよりは、全てを吸い込んでしまいそうな不気味な目だ。
でもな、その目じゃオレ達は見つけらんないよ。
皆はオレの体をどこかしら掴んでいる。この後の行動を理解しているようだ。指示出ししなくて済むのは長年の付き合いだからこそ出来ることだな。
じゃあ、遠慮なく作戦を開始できる。
「<隠密>」
オレ達は闇の中の闇、その中で存在を希釈させてあらゆる者から補足されない透明な存在へと成り代わる。
さて、ここからが勝負の始まりだ。




