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無計画なオレ達は!! ~碌な眼に会わないじゃんかよ異世界ィ~  作者: ノーサリゲ
第四章-どうしてこうなるんだ異世界-
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43.スキルと魔法について

 * * *


 翌日。


 結局昨日も討伐は失敗に終わった。


 そのあとカフェで飯を食って深夜に宿を帰ると、またニーアが部屋で待機していて、オレの服の匂いを嗅ぐなり『海を凝縮したような香りがする…?』と困惑して部屋を出て行った。あとは体拭いて噛まれて寝て終わり。


 そして今日もまた早朝から煙草を吸っているってわけ。


 やっぱこの時間の煙草はまた違った味がする。


 心が落ち着くような、何かが始まるような…いや、もっとクールでオシャレな言い回しがあるはず…。

 心が…朝の心が落ち着いて…。


「おはようございます、イキョウ殿」

「朝の心がおはよ」


 考え事をしている最中に声を掛けられちゃったから、全部混ざっちゃった。


「おや? 私はココロではなくコロロでありますよ? まだねぼすけでありますか?」

「その声でねぼすけ言うのずるくない? 最っ高に可愛いんだけどぉ~」

「照れるでありますぅ。キュンキュンであります」

「あーーーーーーオレもキュンキュン~」


 コロロとの会話は至福の時間の一つだぁ。


 こういう朝が、あっても良いじゃないか……。最高の朝じゃないか。


 ――――そしてその後は、煙草と声の至福二つを堪能してから、昨日と同じように立会い向き合う。


「昨日と同じ?」

「いえ、本日は身体強化を使うのであります。だから昨日のようにはいかないでありますよ」


 コロロはまた楽しそうな顔をしながら剣を構える。


「オッケ。いつでも来い」

「では!!」


 オレの返事を待っていたかのように、コロロが飛び込んできた。

 でもオレは避けるだけ。昨日となんら変わりは無い。


 オレは同じことをただ繰り返す。


 * * *


「ストップ、ここまで」

「今日もダメでありましたかー!!」


 裏庭には朝ごはんの香りが漂い始めた。

 これが練習終わりの合図。だからここまで。


 コロロは構えを解いて一息ついた。

 オレも一息つきたいから宿屋の壁に移動して寄りかかる。


「イキョウ殿に一撃入れるのは、やはり難しいでありますね」


 オレ達二人は壁に寄りかかり、そのまま会話をする。

 コロロは火照った体を冷ましたくて、オレは煙草を吸いたくて。


「まだ目で追える速度だから避けられるところはある。あっ、でもお前の<神速>位まで速度上げられると、目で追えても回避が追いつかないかもしれない」


 前回は始めて見た。でも、二度目があるなら多分当たらないだろう。もう見たから、目も体もあの速度を知ってるから。


 オレの目の弱点は幾つかある。


 最たる例を出すなら――――。

 逃げ切れない広範囲の攻撃は回避のしようがないから目が意味を成さない。目で追えても回避が追いつかない攻撃は避けようが無い。この二つはどうしようもない。そして、そんな攻撃が出来るのがナトリとナナさんの二人だ。あの二人にはオレもソーエンもそれぞれ、全力を出しても五分五分の確率でしか勝てない。人力チーターなあの二人に、一対一の状況で五分五分で勝てるってのはゲームでは異常なことだったから、最弱ジョブのオレと弱ビルドのソーエンが周りに話しても信じてもらえる事は無かったんだよなぁ……。懐かしいなぁ……。


 なんて、昔のことを懐かしんでいるオレの前では、コロロがオレに向けて賞賛と不思議が混じったような顔を向けていた。


 コロロは昨日ほどの疲れを見せていない。これも身体強化の効果なのか。その魔法ってオレも使えんのかな? 後でナトリに聞いてみよう。


「<神速>すらも目で追えるとは……。イキョウ殿の目ってどうなっているのでありますか? 魔法で強化しているのでありますか?」

「いんや。焦点ってあるだろ?」

「はい」

「あれを視界全部に広げてるだけ」

「はい……はい? どういった鍛錬をすればそのようなことが出来るのでありますか?」

「鍛錬っていうか……見逃さないようにしてたらそうなった」

「何をでありますか?」

「色んなの」

「……なるほどでありますね。深くは聞かないのであります」

「まー……そうね?」


 何かを察せられた…ってよりはこれ以上は聞くことは憚れるって思われたのだろうか。そんな大それた理由じゃないから、別に話しても良いんだけどな。


「いいのでありますよ。あれほどの力を持つ者、ならば何か事情がおありなのでしょうから」

「うーん、そうねぇ」


 この目とゲームの力は全く関係ないからコメントに困るわ。


「力といえば以前、私と戦った際に様々な武器を入れ替えて戦っていたのでありますが、イキョウ殿はダガーと投げナイフ使いではなかったのでありますか?」

「ダガーとスローイングナイフは何でもありで全力出すとき。純粋な打ち合いだったら、使える物は何だって使うってかんじ」


 ダガーと投げナイフは現実でも使ってから使いこなせるけど、他の武器はゲームの経験だけの付け焼刃だ。使いこなしてるってよりは、ある程度使えるってだけ。


 手甲は殴れば良いだけだし、ハンマーは振れば良いだけ。槍なんて投げ捨てるくらいにしか使ってない。だから、オレが真に使いこなしてるのはダガーと投げナイフだけ。


「ダガーと投げナイフがメインとは渋いでありますね」


 だって……リアルだと長物持ち歩いてたら一発アウトだったんだもん。隠せて、尚且つとり回しが良いのがその二つだったってだけ。そのことが転じてゲームでも使っている。


 まあ、でも……。


「この服装にバッチし合うから気に入ってんだよなぁ」


 最高にクールな服装に最高にクールな武器。

 オレの戦う姿は最高にカッコイイんだぁ。


「……イキョウ殿センスって独特でありますよね」

「芸術家肌ってやつ?」

「この下り、以前にシアスタ殿がやっていたような……」


 そういや、王城の廊下でもやったな。そういやあのとき皆のバンダナ考えてたんだった。


 シャーユのお土産に、仲間達の分のバンダナ買ってあげようかな。


 うーん、バンダナ集団<インフィニ・ティー>。その姿を想像すると最高にカッコイイ。

 最高の光景に浸っていると……オレのセンサーにある反応があった。


 ……!! この気配はァ!!


 気配のする方を見ると案の定、裏庭の柵の外にニーアが居た。

 衣服が入った籠を持ってる。洗濯をしに来たのだろうか。


「おはよう」


 わあ、ニーアが一瞬で距離を詰めてきた。


「お、おはよう」

「話は聞いてるわ。コロロの鍛錬に付き合っているそうね」

「へ、へい」


 まだニーアの目は普通だ。いつだ、いつくるんだあの目は。いや、来ない可能性もある。どっちだ、どっちなんだ。


「申し訳ないであります、ニーア。旅の間洗濯を任せてしまって」

「いいのよ。私が好きでやっていることだから」


 ……ニーアはまだ穏やかだな。今日はあの目が来ない日なのかも。

 だったら普通に接せるな。


「ごめんな、何か手伝えることある? 井戸の水汲みとかさ。なんなら洗濯の仕方教えて貰えれば、皆の分はオレが洗うよ」


 裏庭には井戸がある。そこで洗うだろうから、水汲みくらいはやらせてもらおう。この際だから洗濯の方法も教えてもらって手伝おうかな。


「イキョウ殿……」


 コロロから信じられないような目を向けられた。

 なんで?


「さっきも言ったけど、私は好きでやってるから問題ないわ。それに……」

「この中には私達の下着も入ってるのでありますよ?」

「あっ、へい…デリカシー無くてすんません…」


 この失敗は、以前にソーエンがやらかしてラリルレに怒られたやつじゃん……。

 同じ失敗したぞ……。あのとき呆れてごめんソーエン。お前も善意でやったことだったんだな……。


「大人しく部屋に篭ってます…」


 オレは心の中でソーエンに同情しながら部屋へと戻った。


 * * *


 部屋に戻ると、サンカが着替えてる真最中だった。


「おはよう、同士」

「おはよ。オレってデリカシーないのかな…」

「そんなことないと思うぞ」

「そっかぁ。ありがとサンカ」

「気にするな、私と同士の仲じゃないか」

「あ、そうそう。ソーエン達は明日到着するって」

「本当か!! やった、マールとシーカに会える!!」

「一昨日に言われてたのに、伝えるの忘れてたわ」

「…………そう言うところだぞ同士」

「どゆとこ?」


 * * *


「ってことが朝にあってさぁ」

「ふはははははははは!!もはや可笑しさしかないわ!! そも、阿呆にデリカシーなどある訳が無かろう!!」


 昨日と変わらずの砂浜。


 そこで朝の出来事をナトリに話したらめっちゃ笑われた。


 ヤイナはセイメアとギャラ、アルを連れて海岸を散歩していてここには居ない。連れ歩く際に下品な笑みを浮かべてたから、アイツ今頃『スヘヘへへへへへ、ハーレムっス……スヘヘへへへへ』とか思ってんだろなぁ。


 ってか……よくよく思うと、オレって宿屋とカフェと砂浜くらいしか巡ってねーぞ。


 でもいいか。久々に仲間に会えたんだから、今は観光よりもこっち優先だ。勇者のことをまったく知らんオレからしたらシャーユ観光しても面白くないだろうしなぁ。


 今はナトリと話している方がよっぽど楽しい。


「あ、そうそう。ナトリに聞きたい事あんだけど」

「話してみよ」

「<スキル>と<魔法>違いって何?」

「ほう? まさか阿呆からそのような疑問が飛び出してくるとは予想外である」

「シャーユに来る間にさ、魔法に詳しい奴から話を聞いたんだけど……そん時に話が噛みあわなくなっちゃったんよ」

「魔法については何処まで理解している」

「……タコ」

「何故だ?今は魔法の話をしていたのであるぞ? あまりの突拍子の無さに、笑いが裏返って冷静になってしまったのである。そして笑おう、ふはははははははは!!」

「待って、思い出すから」


 オレは記憶の墓場を掘り起こして一生懸命思い出す。

 確か、サンカが言ってた説明は……。


「無属性は誰でも使えて、五属性は適正有るやつが使える。闇と光は心の力。ここまで合ってる?」

「補足だ。心の力とはいわば感情のエネルギーである。恨めば闇を、慈愛は光をもたらすのである。闇魔法は負の感情、光魔法は正の感情の強さで発揮する力が増大するのだ」

「へー……ん?ナトリやばくね? お前闇属性の使い手じゃん」

「その事項はあとでまとめて話すのである。続けろ」

「へい。そんで、魔法の習得の話になんだけど。魔方陣は使うたびに魂に刻まれて行くから、錬度が上がれば魔方陣は不要になる。合ってる?」

「阿呆の考えで合っているのである」


「で、こっからがムズいんだけど……魔方陣は魂に接続することで発動をするから、適正属性以外が使えない理由はその属性に対応した、接続するための機能が魂に搭載されてないから発動できない。だから、適正以外の属性は使えない。だったっけかな」

「ふむ……よもや阿呆がそこまで正しく理解しているとはな。教える側がよかったのであろう」

「それはマジであるわ。オレの訳わかんない言い分に真摯に答えてくれたからな。あ、そうそう。得意属性が多いと伸びが悪いってのも言ってたな。逆に一点特化のほうがいいとか」

「そこまで事前知識を理解しているのならば問題は無いのであるな。では、ここからは我輩が問おう。なぜ貴様やヤイナは五属性を高水準で発動できるかを考えた事はあるか?」


 ヤイナは五属性の魔法を最高段階まで、オレは上級まで使える。

 言われてみれば……適正が多岐に渡ると伸びが悪いんだったよな。なのにそこまで使えるのは矛盾して無いか?


「っていわれても……ゲームでそう設定されていたからとしか答えようが無い」

「それが答えなのだよ」

「うーん?」

「結論から言おう。我輩達は、設定された魔法以外を習得することが出来ない」

「はぁ……? どゆこと?」


「この世界には多くの魔法が存在し、そして新しく魔法が生まれている。だが、魂の容量は決まっておるのだ。であれば、覚えられるものを限定してしまえば容量を無駄に使う事は無くなるのである。

 多系統の属性を使える者は、陣による干渉を考えずに魔法を習得する者や、適正の多さ故に早期に等級の低い魔法を多く覚えようとし、限りある魂の容量を無駄に消費していることが多いのだよ」


「な、る……ほど。オレ達の魂は、そう言った無駄を無くして最適化された形になってるのか…」

「加えて、この世界とは比較にならないくらいに、我輩達は魂の容量を増やす事が可能だったのである」

「……レベルアップか。魂の強さを現すのがレベルだもんな。あっ、大容量でしかも最適化されてるから魔法を高水準で使えるってわけね」

「そうだ。魂が強まれば、おのずと肉体と精神抵抗力が強まり魔力が増え、精神が強まるからこそ魔法の効果も上がるのだ」

「四つは共鳴し合ってるんだっけか」

「ほう! !魂とその他の関係まで理解していたか!!」


 前にシアスタやカフスから聞いてたからな。


「素晴らしい!! ……が、共鳴は<スキル>と<魔法>の違いに関係は無いから省略だ」

「へいへい、助かるわ。でさ、結局その二つの違いってなんなの?」

「阿呆でも分かるように答えよう。<スキル>とは魔方陣を持たぬ魔法のようなものだ」

「なるほどね…なるほどね? それ魔法じゃないじゃん」

「だから言っているであろう。『魔法のようなものだと』。魔力を対価に魂に記憶させた機能を使用するのが<スキル>だ。当然、こちらも容量を使い、且つ我輩達は覚えられるものが決まっているのである」

「よくよく思うと、オレ達の魂ってとんでも改造されてんなぁ」

「我輩達の魂は、云わばゲームの世界の魂の形だ」

「魂の変質により最適化された魂……か。元の世界の形でも、この世界の形でも無い、例外的な魂の形だなぁ」

「然り。そしてその結果が我輩達の職業と呼ばれる魂の形だ。役割ごとに最適化された魂、得られるものを限定することによりこの力を持つ事が可能となったのである。我輩の闇魔法も、ラリルレの光魔法も感情は関係ない。なぜなら使える事を必然とされた役割の力であるからな」


 適正や感情なんて関係ない。出来る事が限定された事によって、使用可能となる力。

 しかも今の会話で分かった事がある。新しい魔法が覚えられないって事は、身体強化は覚えられないんだな。


「ホント、ナトリは頼りになるわ。知りたい事何でも教えてくれるもん」

「叡智という物は繊細なのである。渡す者と受ける者、どちらかに歪があれば叡智も歪む。貴様は阿呆だがひねくれてはいないからこそ、素直に渡せるのだ」

「……さっきまで、魔法ってタコでスキルかイカって思ってた男だぞ?」

「ふははははははは!!心底理解不能な理論だ!! 歪みなど関係が無くなる程の突き抜けだ!! 傑作なのである!!」

「待て待て、これには深い理由があってな」


 丁度背後に気配があるから、事情の説明をしよう。


「サンカー!! おいでー!!」


 オレは振り向かずに、椅子から手だけを出してちょいちょいと振る。

 背後からこっちに近づいて来る気配がある。これはオレが最大限に警戒レベルを上げているニーアの気配。


 ってことは、サンカとコロロも居るはずだ。

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