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無計画なオレ達は!! ~碌な眼に会わないじゃんかよ異世界ィ~  作者: ノーサリゲ
第四章-どうしてこうなるんだ異世界-
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36.対策の対策の対策会議

「に、似合ってるかな…同士」


「めっちゃいいじゃん。その服はもうサンカに着られるために作られたとしか思えないわ」


「そ、そうか? ふへへ」


 黒ゴシック町娘風の服を着たサンカを見ながらそんな会話を自室でしたり、軽い朝食を取ったりして朝の時間は過ぎた。


 その後の行動は決まっている。


 シャーユ滞在二日目、相も変わらずオレとその他で分かれて町を散策となった。


 と言っても、オレは町の散策なんてしないで仲間がいるカフェに直行だけど。


「ういーっす」


 昨日と同じ屋台で買ったシャーユロールを食べながら、ハイナーズカフェの扉を開ける。


 三つ買ったけど、一つは道中で平らげて、今は二つ目。三つ目はボックスの中だ。


「むにゃむにゃーっスー」


「あっ…冒険者さん」


「やはり来たのであるな」


 カフェの中には、カウンターでコーヒーを入れている店員さんと、昨日と同じソファーに座っているナトリと……ソファーから顔を垂らして爆睡しているヤイナが居た。


「コイツが寝てるのって、開店前だからだよな?」


 オレは爆睡しているヤイナを横目に二人へ訪ねた。


 店の扉にはCloseの札が駆けてあったし、何より今のだらしなく寝ているヤイナの姿を見るとその感想しか浮かんでこない。


「いえ……今日は店長の気まぐれでまたお休みです…」


「気まぐれが過ぎんじゃない?」


「良いから早く座るのである。シーサーペントの対策会議を始めるぞ」


「いやぁ……うん。そうね」


 オレはこの店の経営状況に疑問を抱きながら、昨日と同じ席へと座……ヤイナが邪魔だ。


 カウンターに座るか。


「冒険者さん……よかったらコーヒーを…」


 オレがカウンターへ座ると、向かいに立っていた店員さんが素敵な提案をしてくれた。


 店員さんのコーヒー美味しかったし、お言葉に甘えて淹れてもらおう。


「お願いして良い?」


「かしこまりました」


 そう言って店員さんは奥の調理スペースへと向かっていく。


 そうだ!! もう一つのシャーユロールは店員さんのコーヒーが出来たら食べよう。


「して、シーサーペントの――」


「待て待てナトリ、展開が速い。こっちはブレックファースト第二弾を取ってる最中なの」


 オレはナトリの言葉を遮って止める。


 宿屋で朝食を取ったはいいけど、何分量が少ない。だから、今足りない分を補充している真っ最中だ。


 そしてなにより。


「ここに朝一でヤイナと店員さんが居るのはまだ分かるよ? だってカフェだもん。でもお前も居るのはおかしくない? 来るの早過ぎない?」


「我輩達は三人でここに住んでいるのである。自宅に居るのは当然であろう」


「オレと似たような境遇じゃん……」


 オレがパーティメンバーと一緒に住んでいるように、ナトリ達もここで一緒に生活していたのか。


 確かに、バラバラに住むよりも経済的だもんな……。


「そういえば、お前等ってどうすんの? ここに住み続けるの?それともアステルに移住するの?」


「昨晩話し合ったが、満場一致で貴様等の住居へと移住する事となった」


「なんともスピーディな判断。この町や家に愛着無いのかよ」


「寝て起きる場所があれば、それで良いであろう」


「ドライな思考回路だなぁ……」


 ナトリの素っ気無い考えを聞いていると、店員さんがオレの分のカップを持ってカウンターに戻ってきた。


「店員さんは良いの?」


 オレは身体をくるっと回転させて店員さんの方を向きながら尋ねる。


「えっ…?」


「昨晩話した移住の件についてである」


「あっ……ダメ…でしたか?」


「全然オッケーだけど、家めちゃくちゃ騒がしいよ?」


 店員さんは静かなのが好きって聞いてたから、家のやつ等が迷惑掛けないのかが心配だ。


 ……もはや家ってシェアハウスみたいなもんになってるから簡単に入居者増やしてるけど……まあ、元宿屋だしいっか。部屋も空きまくってるし。


「えっと…店長もルナトリックさんも……冒険者さんのお仲間なら大丈夫だっておっしゃってましたし……人見知りを克服するのに良い機会かなとも…」


「そっか。じゃあよろしくね」


「こちらこそ…」


 オレと店員さんはお互いに握手をしてよろしくをする。


「貴様は身の回りの者を増やしておけ」


「は? なんで? 何言ってんの?」


 一瞬ドキりとする。


 オレの事情はヤイナとソーエンしか知らないはずなのに、少し確信めいた事を言われたような気がして。


 例え知らないであろう奴から今の事を言われてもなんとも思わないけど、聡いナトリから言われると心を見透かされた気がしてならない。


「無論、その方が面白いからである」


「あっ…そう…」


 的外れな回答が帰ってきてずっこけそうになる。


 なんとも利己的な言い分だったけど、ナトリらいしいっちゃあらしいから納得してしまう。


「冒険者さん……」


 肩の力が抜けたオレに、店員さんはコーヒーを差し出してくれた。


 お礼を言いながらカウンター越しにカップを受け取ると、その瞬間芳醇な香りがオレの鼻に問答無用に侵入してきた。


 うーん、グッドスメル。


「して、シーサーぺ――」


「待てこら塩にんにく。こちとら店員さんが淹れてくれたコーヒーを堪能しようとしてんだ、邪魔すんな。ってかお前ヤル気ありすぎだろ。昨日『何故我輩が』とか言ってたじゃん、ヤル気なさげだったじゃん!!」


「阿呆が来たなら話は別だ」


「何が別なんだよ。何と何が違うんだよ!!」


「惹かれるものの有無の違いだ。阿呆がいるのならば必ず面白いことになる。だったらやるしか無いであろう」


「なるほどね……なるほどか?」


「なんスかーうっさいっスー朝からうざうざっスよー」


 オレがナトリの理論にはてなを浮かべていると、ようやくヤイナが目を覚ました。


「……ありゃ? パイセン来てたんスねー」


 ヤイナがソファに寝そべったまま、目をクシクシしながらオレを見てくる。


「ついさっきにな」


「そっスかー…お化粧してくるっスー」


「あいよー」


 寝起きでマイペースなヤイアを見送って、オレはようやくコーヒーとシャーユロールを堪能し始める。


「うん、美味い。どっちも美味い。最高!!」


「…ありがとう…ございます」


 心から漏れ出た『美味い』を口に出したら店員さんからお礼を言われた。


「オレの方がありがとうなんだよなぁ」


「…ふふっ」


 今度は笑われた。


 店員さんの笑い方は上品だな。


 口に手を当てて、小さな声で、綺麗な声で笑う。


 なんだ? この人は静謐の固まりか?


「昨晩、フと思ったのであるが」


 オレがそんな事を考えながら朝食を取っていると、背後から断ち切るようにナトリの声がした。


 もー分かったよー。


 マイペースオブマイペースに話を進めようとしているナトリにオレは屈するよ。


 体を半回転させ、ナトリのほうに上半身を向けて話を聞くことにする。


 もちろん、手にはコーヒーとシャーユロールを持ちながらな。


「ラリルレと馬鹿が来てから事に当たったほうが愉快ではないか?」


「嘘だろ? 面白いってだけで討伐を後回しにすんの? 町の一大事かもしんないのに? お前に人の心は無いのかよ」


「有象無象の事など関係ない。そも、本来ならば件は町の者だけで解決すべき問題であろう。我輩達は偶然この場に居合わせただけで、解決する義務などは全く無いのである」


「いやまぁ…そうかもしんないけどさぁ。でもあいつ等が到着すんの二、三週間掛かるんだぞ?」


「件の結末だけを述べるならば、あやつ等と合流を果たした後我輩達が討伐をするのか、町の者が討伐するのか。その違いだけである」


 いや…それはお前の中だけでの違いだろ…。


 コイツ、町への被害一切考慮してない自己中心的思考回路で論を展開してやがる。


 ってか、その結論を伝えたくて話をさっさと進めようとしてたな。オレが先走ってシーサーペントに手を出したらお前の楽しみ無くなるもんな。


「ナトリの考えも分かんなくないよ? 実際オレも、自分に関係なかったら首突っ込もう何て思わないもん」


「『自分』か…くっくっく」


 ナトリが何かをボソッと言って、勝手に一人で笑った。


 ホントよく笑う奴だよ。何でかは知らんけど。


「でもおっさんにさ、シャーユロール一個サービスしてもらっちゃたんだ。だったらせめて一個分のお返しくらいはするさ」


「お返しで…シーサーペントの退治……対価が…」


「オレはシーサーペントの討伐は出来る。でも、シャーユロールは作れない。やれる事とやれない事のギブ&テイクだから等価よ」


「冒険者さんは……お優しい方ですね…」


「止めて、それほんっと背中がむず痒くなるの」


「えっと…ごめんなさい」


「ああ……こっちこそごめんなさい…」


「まーたメアメアちゃんと同じになってるっスよー」


 オレが無性に申し訳なくなって店員さんに謝罪をしていると、ヤイナが戻って来た。


「早くない?」


「この体めっちゃお肌の調子いいんスよー。ほとんどお化粧要らずっス、いやーナチュラル美少女万歳っスよー」


 お前言うほど元の顔と変わってないじゃん……。耳くらいじゃん、パッと見で変わってんの。


 男のオレからしたら、耳以外はパッと見何が変わったかわかんないけど……まあ、本人が言うんだったら変わってんのか。主にお肌の調子って奴が。


「でー、なんスか? ナトナトは皆を待つんスよね?」


 ヤイナの口ぶりからして、先にナトリの考えを聞いていたようだ。


 同じところに住んでるんなら当然か。


「オレとしてはさっさと討伐したいんだけど」


「あたしはナトナトの考えに従うギリは無いっスからね、手伝いくらいはするっスよ。パイセン来たんで怖いもの無しっス」


「じゃあオレとヤイナの二人でやるか」


「ならば我輩はシーサーペント側に付くとしよう。あやつらがこの町に到着するまで全力で討伐の邪魔をするのである」


「「は?」」


「当然であろう。我輩は討伐結果自体に興味は無いが、過程に興味がある。ならばその過程を失うことを阻止するのも過程の内だ」


「ちょっと待ってろ」


 オレは一旦話を止めて、残り少ないシャーユロールとコーヒーを平らげて反論のための準備をする。


 バグっと食べて……グイっと飲み干すのは勿体無いけどしょうがない。この頭良いバカに言い返すには仕方ない。


「よし、ごちそうさま」


 アイテムボックスから取り出したお絞りで手を拭いて、カップはカウンターに居る店員さんにお返しする。


 これで準備オッ――――。


「お代わりは……いかがですか?」


「そうね、いただきます」


「メアメアちゃん、あたしにもお願いっス」


「かしこまりました」


 予想外のありがたい申し出を受け入れて。


 よし、今度こそ準備オッケー。反論の時間だ。


「は? 何でオレがシーサーペント倒そうとしたらお前敵に回るわけ? 思考回路がもはや理解出来ないんだけど? 天才過ぎてバカになったか?」


「よしんば、あたし達しか居なかったときは分かるっスよ!! だってあたし達二人じゃ周りに被害を出さずにシーサーペントだけを倒すのは至難の技だったっスから!! でも今は違うっスよ!! パイセンいれば何とかなるっス!!出来るっス!!」


「訂正しろ。我輩一人でも被害を出すことなく屠る事は可能だ。

 だが我輩としては、態々周りを気にしながらシーサーペントという雑魚だけを討伐するといった煩わしい事をするのは面倒だからやらないだけである」


「んなことどっちでも良いんだよ!! オレが言いたいのは何でお前が邪魔するのかって事!! お前のやるやらないは問題じゃないの!!」


「何故先に愉快な事が待っているものを、先んじて潰す必要がある。最高の条件で最高の行く末を見ることが出来るのならそれを選ぶのなら道理であろう」


「ナトナトの言い分だと、リルリルちゃんとソーパイセンと一緒に戦うのが最高で、町の人達が討伐するのが最低って事っスか?」


「然り」


「だったら、リルリルちゃん達が到着する前に、町の人達にシーサーペント討伐されちゃったらナトナト最低な気分で終わるっスよ?」


「じゃあ折衷案でこの三人で討伐した方いいじゃん。最高一歩手前の条件で今すぐ結果得られるぞこのバカ」


「貴様等に説かれるまでもない。だからこそ、我輩は言ったのであるぞ? 『討伐の邪魔をする』と」


 ナトリが言った言葉。その意味を理解し、オレとヤイナはお互いに顔を見合わせ、全てを察した。


「お前オレ達だけじゃなくて討伐に関わるやつ等全部の邪魔をする気だな!!」


「初めからそう言っているであろう」


「鬼っス!!悪魔っス!! 腐れ外道っスよこの仮面!!」


「ヤイナァ!!シーサーペントの前にコイツ討伐すっぞ!!ワンチャンシーサーペントより厄介だ!!」


「了解っスよ!!」


「ほう? ようやくこの世界に来て本気の戦闘をするときが来たか。元の世界よりは劣るが、これもまた一興」


「ダメだコイツ何でも楽しみやがる。無敵か?」


「ススス!? 指輪外す気っス!! ヤル気マンマンっスよこのド腐れ外道!!」


「おう待てや、お前が外すってなるとオレも外さなきゃならなくなるじゃん。命の危機でもないのに指輪外したのがばれたらアステルに住めなくなっちまう。追い出されちまう」


「ナトナトストップっス!! パイセンが孤独に町を追い出されるハメになるっス!!」


「お前アステルに残る気マンマンじゃん、そん時は連帯責任でお前等引き摺ってでもつれていくからな。覚悟しとけよ。三人旅だぞコラ」


「ふむ……それは困るのであるな。ラリルレと馬鹿が居なくては面白くない」


「だろ?」


「ならば残り二人は我輩が引き摺るとしよう。我輩とヤイナで阿呆の両手が塞がるのなら我輩の手を貸すのである」


「こんのクソバカ塩ニンニクがぁ!! そういう問題じゃねぇ!!」


「元から変人っスけど、パイセン達が絡むと輪をかけて変人……問題児になるっスよね!!」


「心強いときと邪魔なときで触れ幅がデカすぎる!!」


「さあどうする。来る時を待つか、我輩を排除するか。どちらでも良いぞ、我輩はそのどちらも抗って見せよう」


「セリフだけはかっこいいけどやってる事は心底邪悪なんだよ!!」


「思考回路が悪役なんスよ!!」


「しかたねぇ!! こうなりゃ家のクラン特攻を使うぞ!!」


「やるんすね!! あれやるんすね!!」


「……!? 止めろ!! それだけは!!」


「もう遅いわ!!」


「スススー!! ナトナト動くなっスー!!」


 オレはオレ達特攻である、とある手段を強行する事にした。


 じゃないとこの場はどうやっても平和に治まらない。


 ヤイナはナトリを力ずくで押さえている。魔法職同士なら筋力に差は無いから、ナトリは動けないはずだ。


 ってな訳で、もうコールは済んでる。後は応答を待つだけ。


 大丈夫。待たずして絶対に出てくれる。


「どーしたのキョーちゃん?」


 間をおかずにチャットは繋がった。


 っしゃおら!! 勝ち確じゃ!!


「朝早くにごめんね、ラリルレ」


 そう、オレがチャットを飛ばしたのはラリルレだ。


 声は何時も通り。寝起きってわけではないようだから、寝ているところにかけて迷惑を掛けた訳じゃない。


 あぁ、いつものラリルレの声……めっちゃ安心する…。この声を聞く為にオレはチャットを繋いだんだっけ? そんな気がしてきた…………。あ、そうじゃない。


「ちょっと聞きたい事があってさ、もし仲間が敵対するって言ったらどう思う?」


「……悲しくて寂しいかな。でも、例えば、もしキョーちゃんがそうなったら何か理由があるんだと思うの。多分そのキョーちゃんも寂しくて悲しいと思うの。だからぎゅっとしてあげるの、ぎゅっとして貰うの。皆寂しくならないように」


 ラリルレの優しさと寂しさが混ざり合った声が、チャットのせいでダイレクトに脳に響いて来る。


「うっ!!」


「どうしたのキョーちゃん!!」


 オレはラリルレに酷い事を聞いてしまったという罪悪感のせいで、地面に倒れこむ。


 心が……痛い……。


「ラリルレは太陽だ…ラリルレ…変なことを聞いて悪かった……最後に『にこー』って言ってくれ」


「分かったよ!!にこーっ!!」


 オレには分かる。このチャットの向こう側、あっちでラリルレは満面の笑みを浮かべて最高の笑顔を浮かべてくれている。瞼を閉じればそれが見える。それだけでオレは救われる。


 オレはようやく立ち上がれるよ。


「ラリルレ、好きだ…」


「んふふ~、私も大好きだよ!!」


「ありがとう。シャーユで会うときを本当に楽しみに待ってる」


「あ、そうだ!! 予定より早く着くかもしれないの!!」


「どして?」


「カフスちゃんに偶然会えてね、ワイバーン便のチケットもらえたの。だからちゅーけー地点を使えば四日で到着出来るんだって!!」


「ナイスカフス。早く会おうな」


 ありがとうカフス。お礼に御土産沢山買って帰るから。でもワイバーン便ってなんだろ。でもでも、ラリルレと早く会えるなら細かいことは良いや。


「キョーちゃん、寂しくなったらいつでも通話掛けて着てね。私もキョーちゃんの声聞きたいから」


「ありがとぅ…オレ、頑張るから」


「私も頑張るね!!」


「ぅん。バィバィ」


「うん、ばいばい、キョーちゃん」


 太陽に別れを告げて、チャットは終わる。


 太陽って、見るだけじゃなくて聞くことも出来るんだな。そうしみじみと感じられる時間だった。


 やっぱ一日一ラリルレ、最低でも一週間に一ラリルレしとけば心が回復するわ。


 これは異世界に来てからの経験則だ。色々やらかしても、ラリルレの笑顔さえあればなんだってへっちゃらだ。恐らく、前に捕まって監禁されていたときもラリルレの声を聞いていたなら、あの暗闇の鉄籠も花畑に早変わりしていただろう。


 奥義の反動とシアスタの涙のせいで心が弱っていたときも、あの笑顔に救われたし……ラリルレは安定剤か? いや、女神か。ラリルレは女神だったわ。


 ラリルレの声を聞けてよかった…。


「リルリルちゃんは何て言ってたんスか?」


 ヤイナの言葉で、オレは現状に引き戻された。


 ナトリを羽交い絞めにしているヤイナ。多分、この後に言われる言葉が分かっていて大人しくなっているナトリ。その前に立っているオレ。


 三人が見つめあう。


「ラリルレは」


「言わなくて良いのである」


「ラリルレは、仲間が敵になったら寂しくて悲しくて、でも敵対した仲間も寂しくて悲しいだろうから」


「分かった、もう良いのである」


「うっわぁ……リルリルちゃんにそんな事言われたら死んでも敵になれないっスよ…」


「だよなぁ……」


「魔術でも魔法でも、代償魔法ですら再現不可能であろうあの小娘の眩しさ……」


「もうあれは奇跡だろ」


「そうっスね」


「然り」


 そうしてオレ達は大人しく元の席に戻って、友好的な関係に戻ったのであった。

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