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無計画なオレ達は!! ~碌な眼に会わないじゃんかよ異世界ィ~  作者: ノーサリゲ
第三・五章-オレの親友がポンコツなんだよ異世界-
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11.軽い力試し

「そのようなことは頼みません。ただ、喧嘩をするくらい戦いたいのなら、中庭にて模擬戦を披露していただければと思いまして」


 模擬……戦……?


「オレ達対受付さんで……?」


 勝てる気がしない……。


 ソーエンに目配せをしてみるが、『勝機が見えない』と帰ってきた。


「いえ……えぇ……」


 受付さんがドン引いてらっしゃる。そうか、オレ達が受付さんと戦うだなんておこがましいことだよな。ってことは代役とか……。


「テモフォーバ。受付さんのお願いだから容赦はしないぞ」


「殺す寸前でとめるつもりだ。全力で掛かって来い」


「なんだか面白くなってきたよ。本当に凄い二人だね」


 テモフォーバは唸るように笑ってやがる。舐めるなよ、オレ達がお前に負ける事は絶対に無い。


「でもね、落ち着いて。ちゃんとローザ君の話を最後まで聞いた方が良いと思うよ」


 確かに。テモフォーバの言う通りだ。


 あれ……? 今言いくるめられてあっさり負けた気がするぞ?


「えっと……お二人はその……三等級の冒険者としては多大な功績を挙げています。だから、講習を受けている皆さんと近い等級ですし、参考になればと思いまして……」


 受付さんは『察してください』って目でオレ達を見てくる。


 なるほどな。全て受け取りましたよ。


 つまりは、ここで公にオレ達の実力を明かす事は出来ないけど、その力の一旦でもいいからいま講習を受けてる冒険者達に教えてあげて欲しいって事だな。


 話に聞いただけだけど、受付さんも冒険者のことを考えて一生懸命事を進めていたらしいし、打てる手は全部打っておきたいんだろう。


「……で合ってると思う?」


「ああ。一番しっくり来る理由だ」


「また話し合わずに結論出してやがる……」


「にゃー、二人は凄いにゃあ」


 ソーエンも同意はした。でもなぁ。


「受付さん。オレ達の戦い方って人が真似れるようなもんじゃないの」


「少し特殊でな。参考にはならん」


「えっ……凄いです。ちゃんと伝わりました……」


 受付さんは手で口を覆って驚愕の表情を浮かべてる。……なんで?


「そういやお前等が戦うところって見たことねぇな。クエスト先でも会った事ねぇし」


「前にキンスとは模擬戦やったじゃん。それにスケルトンの群れから逃げるときにも見せたでしょ」


「模擬戦のときは一瞬だったし、逃げるときもお前等の戦い方を見た訳じゃない」


「同胞は銃を使うが、イキョウは何を使っている」


「オレのメインはダガーとスローイングナイフだな」


 この二つは現実でも金稼ぎのときにも使ってたから手に馴染むんだ。投擲技術に関しては何か昔から良かった。大体は狙った場所に投げられる。


「ショートソードや小太刀ではなくダガーか。命知らずとしか思えぬな」


「お前……よくそれで生き残ってこれたな……」


「冒険者なら、ダガーはせめてサブで持っておく物だにゃ。間合いが短すぎるからメインにするには心もとにゃさ過ぎる」


「好き勝手言ってくれんじゃねぇかよ!! 間合いなんて関係ねぇ!!見切れば良いだけだろうが!!」


「それが出来たら苦労はしねぇよ……」


「あとスローイングダガーを無視するな!! めっちゃ頼りになる優秀武器だぞ!!」


「モンスター相手にニャイフ投げるよりは、弓使ったほうが距離も威力も稼げるにゃ。スローイングナイフ使うのにゃんて暗殺者か大道芸人くらいだにゃ」


「だったらオレが暗殺者の可能性だってあるだろ!?」


「その騒がしさで暗殺者やれるとは思えないにゃあ。大道芸人なら納得するにゃ」


「もーやだぁ!! コイツ等自分の常識押し付けてきやがる!! 大体オレは直接戦闘向きじゃないんだって!!」


 オレは戦場かき回したり嫌がらせしたりして叛徒のペースに巻き込むように戦うのが本分であって、真正面から戦うような職業じゃないんだって!!


「でもよ」


「にゃ、そうだにゃ」


 オレがどう論破してやろうか考えていたら、キンスとニルドが何かを確信した目で見てきた。


 その目は二等級冒険者の目だ。


「イキョウよ、お前は先程見切ればいいと言ったな」


 そんな目を向ける二人の間から絶影が一歩出てきた。


 その姿は何時も通り。でも、どこか殺気のようなものを身にまとっている。


「言ったけど?」


「悪く思うな、ッ」


 オレが質問に答えるやいなや。


 絶影は瞬時に腰の後ろから小太刀を抜いてオレめがけて突きを繰り出してくる。急に見極めようとしてきやがるな。


 右手逆手で抜いた小太刀の頭を左手で押し出す一連の動作は、片手による小太刀の居合いを強制的に突きに変える攻撃方法だろう。それでも動きに無駄が無いのは、その動作は絶影が良く使うもので身体に染み付いているものだと分かる。


 狙いは左肩外側。最小限の動きと踏み込みで音も無くオレを攻撃してくる。


 だったら上体を軽く半時計回りに軽く捻るだけでいい。それだけで。


「……治療費は出すつもりでやったのだがな」


「相場は知らんけど、お前等の報酬それでパアになんじゃねぇの?」


 オレが避けた瞬間に動作を停止した絶影は、すぐに構えを解いて小太刀を腰に戻した。そしてそのままオレの前に立っている。


 一瞬の出来事、そして絶影が音も無く攻撃を繰り出したから奥の事務スペースに居た数人のギルド職員達は今この場で起きたことに気付いていない。全員が机に向かって何かの作業をしている。


 でも、オレの目の前に居る奴等は何が起こったのかを理解しているようだ。


「まさかにゃ……当たるでも防ぐでもにゃく避けるなんて」


「これは少し……いや、大分予想外だ」


 キンスとニルドは薄っすらと笑みと浮かべ、冷や汗を一滴垂らしながらオレを見てくる。


 テモフォーバの目は歪んでいた。でも、アレは悪意ある笑じゃない。喜んでいる笑いだ。


 そして受付さんは。オレ達のレベルを知っているからか、特に反応を示さずいつもの笑みを浮かべている。いや、もしかしたら受付さんも見切っていたのかもしれない。


 * * *


(何が起こったか分からなかった……なんて口にして良い雰囲気じゃありません……)


 * * *


「……反撃の体勢すら取らないとはな。同胞よ、今の攻撃は見えていたか」


「お前等の攻撃如き見えないはずが無い」


 ソーエンも今の動きくらいなら見える。だから、オレを信頼して武器を抜かず戦闘体勢すら取らなかった。


 コイツもオレの目の真似が出来るけど、それは猿真似止まりだからオレの方が上。


「なるほど……フッ。さすがは銃の所有者だ」


 ソーエンの返事を聞くと、絶影は何故か満足そうに元の位置へ戻っていった。


「やばいぞニルド……」


「ああ、キンス。今日という大事な日が終わったらこの二人と手合わせしたい…。いや、是非手合わせを願いたい」


 二人は冷や汗を流しながらも、ニヤケ笑いをかけべている。許可さえあれば今にも武器を構えそうだ。


 手合わせ……ね。


「絶対にやだ」


「面倒だ」


「……いいさ、無理強いはしねぇよ。気が向いたら手合わせしてくれ」


「そうだにゃ。戦いというものは嫌々やっても楽しくはないにゃ」


 キンスとニルドは元の雰囲気に戻って、快い笑みを浮かべていた。


 ……聞き分け良いのは助かるけど、ここまで来ると怖いよ。


 多分だけど、キンスは清いから、人が嫌という事を無理強いしたくなくて、ニルドは戦いは楽しくやるものだから無理強いするものではないって考えてんだろうけど……。人格者過ぎないか? クライエン王国の王が小さい奴に思えてきたぞ。


 でも、アレはアレで最後はオレ達の闘争心に火を付ける理由を作ってたしなぁ……。


 そんな事はどうでも良いや。戦わなくて済むならそれでいい。一々戦うことこそ誉だの戦いから逃げるのは弱虫だの、高潔な理由を持ち出されるよりはよっぽど良い。


「まあ、お前等は色々謎なことが多いけどよ、優しい奴等だってのはこの俺が誰よりも知ってる。お前等がこのギルドに来てくれて本当に嬉しいぜ」


「にゃんてったってこの講習のきっかけを作ってくれた二人だものにゃ」


 二人はオレ達に笑顔を向けながら言ってくる。その間で絶影も、似たような雰囲気を出しながらオレ達を見てきた。


「あの……それでですね、イキョウさんとソーエンさんに模擬戦をしていただきたく……」


 受付さんの言葉で笑っていた三人がハッとする。


「すみません副ギルマス!!」


「盛り上がってしまったにゃあ!!」


「つい……」


 三人は揃って受付さんの方を向いて謝罪をしている。


 二等級冒険者が謝罪をするのも当たり前だ。なにせ――。


「二人とも。本当にすごいね」


 オレが受付さん最強論を展開しようとしたところにテモフォーバが乱入してきた。


 そして、その目でオレ達を見極めようとしてきた。懲りない奴だな。


「どうだ? 満足か?」


「これで最後にしろ。その目は不愉快だ」


「……ダメだね、何も分からないね。これでもギルドマスターだから」


「これでもは要らないと思うぞ?」


「……ありがとう。私はギルドマスターだからキミ達に関しての報告書を色々読ませてもらったけど、ここまで訳が分からないのは初めてだよ。絶えず問題は起すのにクエストはきっちりこなす。なのにレベルは全然上がらなくて三等級の平均を大きく下回るのに聞いたことも無い魔道具を所持している。……率直に聞こうか、キミ達は何者なのかな?」


 何者。そんな漠然とした質問のその答えをオレ達は持っていない。何せ、オレ達を表す言葉なんて無くて、オレ達はオレ達だからオレ達なんだ。


 でも、テモフォーバが聞きたいのはそんな哲学的な話じゃない。そして、混じりけ無く純粋にテモフォーバの質問だけに答えるなら、オレ達はこう答えれば全てを解決できる。『異世界から来た』ってのが、全てを表す答えだ。


 ただし、それで理解できるのはオレ達と同じ価値観や知識を持ってる奴だけ。そんな事を急に言われても、同じものを持たない奴はポカンとするだけだろう。そして、この世界じゃ異世界から来たという言葉は信じてもらえない。


 だからオレ達はこう答えるしかない。


「オレはイキョウ」


「ソーエンだ」


「驚いたね、急に自己紹介が始まるとは思って無かったよ。でも……そうだね、よろしく、イキョウ君、ソーエン君。私はテモフォーバだ」


「よろしく、テモフォーバ」


「ローザの上司だ。それなりに敬意は払ってやろう」


「ま、そういうことだから。これ以上必要か?」


「…………いや、もう大丈夫だよ」


 テモフォーバの蕩けた瞳は笑っていて、そしてオレ達を見てくる。

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