表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/582

13.ゴスロリと朝食とフランシング

 なにやら騒がしい声が聞こえてくる。


「昨日の緊急クエストの報酬だしてくれ!!」

「クエスト貼り出しまで暇だな」

「あっちで暇つぶしの賭けやってるってよ!! 俺達も賭けようぜ!!」

「起きてください」


 朝っぱらからうるさいなぁ。お願いだ、こっちは疲れてんだよもう少し寝せてくれ。


「てめぇーら今日は稼いで美味い酒を飲むぞ!!」

「あの……起きてください」


 ダメだ、もう一度寝ようとしても、うるさくて段々意識が覚醒に向かってしまう。まだ疲れが全然抜け切ってないってのに強制的に起こされる。


「おい!!バンダナが起きそうだぞ!! ボボカルチョもってこい!!」

「起こすのはいいのか?」

「ルールなんてねぇよ!! 当てたもん勝ちだ!!」

「あの……」


「へいへい……起きます起きます」


 何か近くからする声に答えるように、オレは体を上半身だけ起こす。

 伸びをすると、全身からパキパキと音が鳴り響いた。床で寝ていたから体の所々が痛い。

 オレは大きなあくびが我慢できず、大口を開いて思いっきりあくびかますけど、これは生理現象だから仕方が無いんだ。


 まだ少し眠い目をこすりながら辺りを見渡すと、なにやら冒険者たちが盛り上がっていた。どうやらクエスト貼り出しまでの暇な時間にオレとソーエンのどっちが先に起きるかで賭けが行われていたらしい。


 ボボカルチョってなんだよ。でも、そんなことオレ達には関係ないから、視線はオレにずっと声をかけて来てたであろうヤツに向ける。

 どうやら声の主はしゃがみこんでオレに声をかけていたようだ。目線がバッチリ合ったぜ。


「あー、シアシア?」


 確かこの子は昨日名前を聞かせてくれた気がするけど、その後の血を被った事件の印象が強すぎて正確な名前が思い出せない。


 そして、寝起きに全身真っ白い少女は目に悪すぎる。目が痛い、光眩い。


「シアスタです。私とあなたはそこまで仲良くありません」


 どうやら親しみを込めて呼んだと思われたらしく、拒絶の言葉を投げられてしまった。


「ですが、感謝をしているので御礼を言いに来ました。あと、私が気絶していたときの話も聞きたいです。お時間大丈夫ですか?」


 お時間も何も、オレ達はこの世界に来て具体的な予定を立てたことが無い。昨日はその場その場の行き当たりばったりで一日過ごしていた。そんな日の次の日に予定なんてある訳が無い。


「多分大丈夫だと思うけど、ちょっと待ってて。ソーエン起きれ、お客さんだ」


 一応無いとは思うけど、勝手に決めるのはアレだから、横で寝てる黒フードの頭を叩いて目を覚まさせる。


「今は留守だ」


「居留守使ってんじゃねぇよバカ、バレバレだよ」


 ここ家じゃないし、そもそも姿バッチリ見られてっから。


 ソーエンはまだ寝たりないのか、絶対起きたはずなのにまた寝に入ろうとしている。


「さっさと起きないと顔晒すぞ」


「それだけはやめろ」


 オレの言葉に反応して、ソーエンは即座に体を起こした。


 あまり使いたくは無かったけど、このままでは話が進まないため無理やりにでも起きてもらったよ。


「お前は……昨日のか。寝起きには辛い見た目をしているな」


 ソーエンもオレと同じように、上半身だけ起こしてシアスタに声をかける。


「寝起き一番に言うことがそれですか」


 オレが言わなかったことをソーエンは口にし、シアスタは少しむすっとした顔でソーエンに文句を言っていた。


「でさ、お前予定は?」


「ある訳無いだろ」


「りょ。で、話を聞きたいんだっけ?」


「会話が早すぎです……。えっと、そうです。何やらおかしなことになっているようなので」


 おかしなことか……心当たりしかない。


「それで、確認する意味も込めて、お二人から直接話を聞こうかと」


「その前に。オレ達のことって周りに話した?」


 話されていたら困る。


 昨日、暗闇で姿は見えていなかったとはいえ、町の奴等はシアスタが何者かに攫われそうになってたと思いこんでいる。そのシアスタがオレ達のことを誰かに話したら、白も黒になってしまう。

 こんなどこから来たか分からない大人より、いたいけな少女のほうが世論は傾くのが世の常だ。

 仮にシアスタが本当のことを話してもどうせ歪んだ解釈をして、ショックで記憶が曖昧になってるとか、記憶を操られたのか。ってな感じな事態になるに決まってる。


「いえ、犯人について聞かれましたが、気絶していて覚えていないと答えておきました」


 この子、賢そうな見た目に違わず頭がいいのか? めちゃくちゃ有能なんだけど。

 とりあえず必要な事は聞けたから、後はシアスタが知りたがってることを教えてやろう。

 気絶した間にどんなに悲惨なことが起きたかを聞いて欲しい。


「腹が減った」


 オレが昨日の惨劇に思いを馳せそうになっていると、唐突にソーエンが腹を鳴らしながら自己主張を始めてきた。でも、言われて見ればオレ達は昨日の昼から何も食べていなかったな。オレも腹減ったわ。


「悪いけど、話はメシ食いながらでも良い? オレ達お腹ぺこぺこなんだよ」


「大丈夫です、でしたら私も一緒します。どこで食べますか? お二人の宿泊している宿屋ですか? それとも町に出てお店を探しますか?」


 どうしてだろう。この子を誘ったら結構食いついてきた。冷静そうに、でも矢継ぎ早に選択肢を提示してくる。


 オレ達はこの町に詳しくは無い。どこの店が美味いかなんて全く知らない。だから試しに、昨日受付けさんから聞いた、ギルドの二階にある食堂へ行くことをシアスタに提案した。


「食堂あったんですね」


「らしいぞ。」


 シアスタはギルドに食堂があったことを知らなかったらしい。オレ達も受付けさんから聞くまで知らなかったから、もし聞いていなかったらここまでスマートに行き先を決められなかった。

 あの人はここまで見越して教えてくれていたのかもしれない。


 オレ達三人はカウンター横の階段を上って、ギルドの二階へと向かう。

 のらのらと階段を上るにつれて、美味そうなにおいが鼻をくすぐり、空腹の身体はより空腹を感じてしまう。


 階段を上りきると食堂の全貌が確認できた。食堂は一階と似た配置で、受付の会った場所が調理場、それ以外が飲食スペースになっていた。例えるならフードコートみたいな感じだ。

 オレ達以外は人がちらほらとしか居らず、席は十分に空いていた。

 こんな人が疎らな状態で一々席を確保する必要は無いから、階段を上がった足でそのままカウンターに向かう。


「おばちゃん、注文いい?」


「いいよ、じゃんじゃん頼みなさいな」


 オレの声に、恰幅のいいオバちゃんが対応してくれる。気前の良さそうな、それでいて人の良さそうなオバちゃんだ。田舎に居る、若者に優しいけど豪快なオバちゃんって感じ。奥に眼をやると、仕込みや皿を洗っている料理人のような人達の姿が見えた。


 オレとソーエンは金に糸目を付けずに、注文表に書いてあるパンとスープ、それに肉や魚、パイを適当に注文した。どんなジャンルの食べ物かは分かるけど、そのまえに付いている固有名詞の部分が分からんので一か八かで注文をしている。あとせっかくだから新しく挑戦してみたい。食堂で提供してるんだから食べられないものは出てこないだろう。


「朝からよく食べるね。よく食べる子はよく育つ、感心感心。二人で金貨一枚ね」


「もう随分育ってるよ。思ったより安いんだね」


 おばちゃんの言葉へ返しながら、オレとソーエンはそれぞれ銀貨で分割して代金を支払う。


 屋台で食べたときに比べて、今の方が沢山メニューを頼んでる。だってのに合計した値段はこっちの方が安い。昨日と比べるとずいぶん安上がりだ。


「この食堂はほとんどの食材をギルドから直接卸してるからね、材料費は安く済ませてある分、提供の値段もそれに合わせてるって訳さ」


 ほぇー、ギルド産ギルド消だから安いのか。ならオレ達の狩ったファングボアもここに並ぶのかもな。

 注文表にはファングボアの文字が無かったけど、討伐してきたのは昨日の今日だ。解体がまだ終わってないんだろ。ちょっと食べてみたかったから残念だ。


「あの、私も育ちますか?」


 オレ達の会話を聞いていたシアスタは、オバちゃんに対して質問をした。

 シアスタはカウンターが高いのか、背伸びをしてようやく顎がカウンターに載るくらいだった。オレの身長と比べてみると百三十~百四十くらいか。

 ちっちゃい事を気にしているのだろうか。


「育ちたかったらまずはお腹いっぱい食べな。何にするんだい?」


 オバちゃんは子供を見る笑顔でシアスタにそう言って返した。

 オバちゃんがシアスタに注文を聞いたは良いけど、シアスタは顔を覗かせるのに精一杯でカウンターに置かれた注文表が見えていないようだ。

 仕方なくシアスタの脇を抱えて持ち上げ、注文表が見えやすいようにする。


「わわっ!! あ……ありがとうございます」


 お礼を言ったあと、そのままシアスタは注文表を食い入るように見つめる。


「どれもおいしそうで悩みます。もう少し持っててください」


 まだ決まらなさそうなので、オレは注文表に見えたあるものに関してソーエンに尋ねてみることにした。


「なぁソーエン、オレさ、注文表にフランスパンて見えるんだけど」


「ああ、俺も気になっていた。この世界にフランスはないだろ」


 翻訳機能がバグっているのか正常なのかは知らんけど、明らかにおかしいものがそこにはあった。

 物は試しだ、ここはオバちゃんに直接聞いてみよう。


「ねえオバちゃん、このフランスパンってさぁ、フランスのパン?」


「なに言ってんだい、そりゃ当たり前だよ。小麦粉を使ってフランスをしてオーブンで焼いたパンさ」


 …………フランスをするってなに? 英語にしたらフランシングか?

 別に言葉が通じてるならそれで良いし、文字も読めるならそれで良いや。もうこの謎翻訳機能のことは深く考えないようにしよう。ソーエンも追求するのを諦めているようで、黙ってシアスタが注文するのを待っていた。


「決めました。ロールパンとお肉のシチュー、森の果物の盛り合わせでお願いします」


「あいよ、銅貨四枚ね」


 アレだけ迷った割りに普通の量と内容だったなぁ。ちっちゃい体相応の量だ。

 そんな事を考えているうちに、シアスタはオレに抱えられながら器用にポーチから銅貨を取り出してオバちゃんに渡していた。


「……量が量だね。今は人が少ないし、出来上がったらテーブルに持っていってあげるよ」


「マジ? ありがとオバちゃん。空いててラッキーだわ、いつもこんなに人少ないの?」


「何言ってんのさ。朝は皆宿屋や自宅で食べるのが普通だからに決まってるじゃないかい。朝から来るのは貼り出しに寝坊して食べ忘れたり、宿の朝食が少ない人くらいさ。夕方から夜はいっつも満員、昼は町の人や職員が食べに来るし、こんなに人が少ないのは朝くらいなもんだよ。それ以外は大忙しで休む暇も無いよ」


「なるほどなぁ……。宿屋……ね……」


「じゃ、席で待ってなさいね。あんた、さっきからお腹空いてそうな顔してるからね、大急ぎで作ってあげる」


 そう言ってオバちゃんは厨房にいる人たちにオレ達の注文を伝えにいった。


 ありがとオバちゃん……。オレ達は言われたとおり後ろを振り向いて、どこの席に座るかを選ぶ為にテーブルの方を見る――。


「あの……もう降ろしてもらって大丈夫なんですけど……」


「あ、ごめんごめん」


 ――食堂のテーブルは、長方形のものが規則正しく並んでいて、どこに座っても同じテーブルだ。選ぶべきは場所だけで、テーブル自体はどれも一緒。

 だからって、奥に座っては料理を持ってくる際に手間をかけてしまって申し訳ないので、オレ達はカウンターに一番近い手前の席を選んだ。そこで、オレとソーエンが並んで座り、対面にはシアスタが座った。


「んで、なんだっけ。話が聞きたいんだっけ?」


「はい、私が気絶した後何があったんですか? 気づいたら衛兵さん達の建物にいましたし、あの大きなファングボアは町の皆さんで倒したことになっていますし、何よりこれです」


 矢継ぎ早に質問された後、テーブルに二枚の紙が置かれた。


「何これ?」


 オレとソーエンはその紙を覗き込んで確認する。


 一枚は赤黒く染まった人型の絵の下に血濡れの悪魔と書いてある。もう一枚は、顔全体が口になっていて長い舌を垂らしている真っ黒な人型の絵が描かれていて、その下に大口の悪魔と書かれていた。

 どちらも手配書のようで、上にWANTEDと書かれている。英語が気になったからこっそり翻訳機能を切ってみたところ、ミミズと記号の羅列にしか見えず、何も読めなかったので元に戻した。


「これもしかしてオレ達か? マジ?こんな風に見えてたの? そりゃあそこまで警戒するわ」


「何故この姿がこうなる」


 血濡れの悪魔はもちろんオレだ。

 大口は、暗かったせいでソーエンのフードとマフラーがそう見えたんだろう。


 確かにこう見ると衛兵達がオレ達に敵意を向けている理由が分かる気がする。こんなやつらが巨大生物を引き連れて気絶した子供抱えながら現れたんならそりゃ敵意むき出しで警戒するわ。


「この紙が町中に配られていましたよ」


 えぇ……とんでもなく大事になっちゃってんじゃん…。


「今から全て燃やしに行くか」


「また牢屋にぶち込まれそうだから絶対するなよ」


 コイツなら冗談じゃなく本当にやりかねないから、言葉で釘を刺しておく。


「まだオレ達だってバレてないっぽいから、このまま風化するのを待とう」


 作戦に参加したであろう冒険者達が、ギルドで寝ていたオレ達に何もしなかったのがバレてないという何よりの証拠だ。賭けはされていたけどな。

 もしばれていたら、目覚めたのはギルドではなく牢屋の中だったろう。


「こそこそ隠れる必要が無いのは良いんだけど……」


「あのバカでかいファングボアを失ったのは痛い。今後の活動資金を失ったようなものだろう」


 ソーエンが怒っている様な、残念がっている様な、負の感情の声を出して腕を組む。


「ほんとだよ。でもここまで大事になると、盗んでも町で売れないしなぁ」


 オレもマネをして腕を組もう。


「ゴスロリが事情を話せば取り返せるのではないか」


 ソーエンが真っ当な意見を出してくる。


「無理です。外はお祭りムードで、町の皆は悪魔とファングボアを撃退したことを信じています。私の言葉はどうせ、悪魔に騙されているか混乱している子供の戯言で終わりますよ」


「オレ達3人の真実より、この町全員が見ている夢の方が強いわけか」


 そうなります。とシアスタが答えると、全員考え込んでしまう。


「諦めるしかないかぁ……」


 ひっじょーに悔しいけど……平和的にやり過ごせる手段が思いつかないからそうするしか無い。この世界の情報が不足してるから、迂闊に動くよりは現状維持のほうがまだ良いだろう。

 ひっじょーに悔しいけどな!! 悔しいけど、平和的に終わらせないと一部クラメンと合流したときに絶対どやされる。


 あいつらから怒られるのだけはやだからなぁ。


「不服だが仕方がない。報復するチャンスがあったらやるがな」


「オレも手をかしてやろう」


「私の目の前で物騒な話をしないでください」


 寝不足と疲れと昨日の事で心が荒んでいたのか、ついついソーエンの意見に乗ってしまった。


 ダメだダメ。薄っぺらい博愛主義と絶対に怒られたくないってのがオレ達の今の規準なんだから。そこは遵守しておこう。


「それで、どうしてこんなことになっているんですか?」


 シアスタはようやく本題に入れるというような口ぶりでオレ達に質問を投げかける。


「あー……うん。それはね――」


 オレとソーエンで、シアスタが気絶した後のことを話す。

 シアスタはオレ達の話を聞いていくうちに段々呆れた顔になっていった。


「そういう事だったんですね。目覚めて衛兵さんから聞いた話と、私の知っていることが全然違っていたのでおかしいと思ったんです。急いでお二人を捜して正解でした」


「よくオレ達がギルドに居るって分かったな」


 昨日ギルドで寝ることになったのは唐突だったから、誰もオレ達がここに居ることを知らなかったはず。もしかしてギルドで寝ている奴がいるとかで噂にでもなっていたのかもしれない。


「いえ、お二人も冒険者だったので、まずはギルドで情報を聞こうとしたんです。まさか本人が床で寝ているとは思っていませんでしたけど……」


 どうやらオレ達を見つけたのはただの偶然だったらしい。


「もしかして、ギルドに住んでるんですか?」


 シアスタは首を傾げて尋ねてくる。


「んなわけあるか。宿を取るのを忘れただけだ」


「えぇ……。宿は冒険者が重要視するものの一つですよ……というか、冒険者では無くても普通新しい町に着いたら真っ先に宿をとりますよ……」


 めちゃくちゃ非常識なやつを見る目でオレを見てきた。

 オレが言ったからオレを見ているわけで、ソーエンが言ったらソーエンもその目で見たのだろうか。


「忘れたのはオレ達二人だ。オレだけをそんな目で見るんじゃない、ソーエンにも目を向けろ」


「そちらのフードの方もですか……」


「やめろゴスロリ、その目を俺に向けるな。おいやめろと言ってるだろ」


 この大人たち信じられない、みたいな顔をしてオレ達を見てくる。


「さっきからゴスロリゴスロリ言ってきますけど、私の名前はシアスタです。ゴスロリじゃないです」


 そういや、オレはファングボアの時や今朝にシアスタの名前を聞いていたけど、ソーエンはまだ聞いていなかったな。ソーエンが起きてからここまでシアスタの名前を呼んでいなかった気もする。知らないのも当然だろう。


「お互い自己紹介でもするかぁ」


 オレ達一応同期みたいなもんだし、お互いの事を知っておいて損は無いだろ。


「話してるとこ悪いね、料理の第一弾ができたよ」


 オバちゃんが両腕に沢山の料理を乗せてテーブルまで持ってきていた。

 オレ達は話を一時中断してオバちゃんから料理を受け取ろうと手を伸ばす。けど、オバちゃんは「いいから座ってな」と言ってオレ達の手を拒否してきた。

 オバちゃんの両手は料理で塞がっているのにどうやって配膳するつもりなんだろう。


「そー、れっ!!」


 オバちゃんが身体を波のように動かしながら料理を載せた腕をテーブルの上に乗せると、身体の勢いで料理が腕からテーブルの上を滑り、一つも零さずに全てほどよい位置に配置される。しかも、ちゃんとそれぞれ注文した品が目の前に並べられていた。


「うおっ!? 魔法か!?」


「私に魔法なんて大層なものは使えないよ、これはただのテクニックさ。残りは今作ってるからそれ食べて待ってなさい」


 配膳が終わるとオバちゃんはまた厨房の方へ戻っていく。

 シアスタの前には注文していたものが全て揃っていたから、残りとはオレ達のまだまだある注文分のことだろう。


「なんですか今の……」


 シアスタも驚いているから、今の出来事はこの世界でも普通ではないことが分かる。


「何者だ、あのババア」


 ソーエンも驚いてて、このテーブルの話題はオバちゃんに持っていかれそうになっていた。


 気持ちを切り替えて自己紹介を続けよう。


「腹減ったし食べながら自己紹介でもいいか?」


「私は構いません」


「俺も同じく」


「うっし、早速食べようぜ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ