07.魔力の扱いにはご注意を
受付さんから、ファングボアを討伐するなら近郊の森を探すと良いと教えてもらった。その森へ向かう為に、オレ達二人は東西南北の四つある門のうち、ギルドから一番近い東門から歩いて町を出ようとする。森も東にあるらしいからちょうど良かった。
「そこの二人、滞在証を見せて」
門から出ようとしたところを、町の衛兵に止められる。
「ほいよろしく」
オレとソーエンは指示に従って、滞在証を衛兵に見せた。
「……ん? お前ら噴水のか。ずぶ濡れには気をつけろよ」
笑いながら衛兵は通って良しという意思を見せるように手を門の外へ向ける。
どうやら衛兵達の間でオレ達は噂になっているようだ。
「へーへー肝に銘じておきますよ」
「俺は膝下だけだ」
ソーエンは違うと訴えるように捨て台詞を吐きながら、オレ達二人は門を出た。
門を潜り、初めて町の外の空気を感じる。
アステルの外は穏やかな草原に囲まれていて、心地良い風が土地に流れていた。その草原を別つように街道が町から伸びている。
のどかな風景だ。豊かな自然だ。町の喧騒を背に、この土地の雰囲気を感じ取りながらそう思う。
そしてオレは土地に流れる風を感じながら、街道を歩く。森を目指しながら、でものんびりと、ゆっくりと、目的地を目指して歩いて行く。
「ふむ。想像以上に遠いな」
「急ぐもんでもないし、のんびり向かえば良いでしょ」
近郊の森とは言っても、流石に距離はあるらしい。だから辿り着くには時間が掛かりそうだ。
移動の間は、さっき食った物の中で何が美味かったとか、受付さん怖かったとか、そんな適当な話をして時間を潰しながら歩く。
街道をゆっくりあるき、時には煙草を吸いながら、穏やかな風に流されるようにゆっくりと歩みを進める。
森と街道を最短で繋ぐ線の間は草原になっていて、道を逸れて草原を歩くのも、それはそれで良いかなってことで、オレとソーエンは陽気に包まれながらその緑広がる草原を歩く。
陽気のせいかソーエンとのバカ話に花を咲かせていると、いつしか森の目の前まで来ていた。
クソ、会話が楽しかったわけじゃねーし。バカ話に夢中になってたわけじゃねーし。
「……もう着いたのか」
ソーエン、お前も楽しかったのか……。じゃあやっぱオレも楽しかったわ。
「なあ、森に入ったらスキルチェックしようぜ」
「賛成だ。武器の確認もしたい」
「あいあい。あと、方角の確認を忘れないようになー」
この世界に来てから、UIのMAPは機能していない。でも、方位磁石機能はなぜか正確に働いている。だから、それさえ読み間違えしなければ町には問題無く戻れそうだ。
「うっし、行くぞソーエン。この世界で初探索の開始だ」
森の木々を前に、オレ達は軽く気合を入れて歩き出す。
目の前に広がる森の木々は、背が高く生い茂っている。空や風を木々に遮られているせいで森の中はまた違った自然の様相をオレ達に感じさせきた。
少し涼しい森の中。そこには道など無く足元が悪い。町や草原を歩くよりも体力を消耗するはすだ……そう思っていた。
でこぼこした地面を歩き、茂みを掻き分け、たまに木に登って辺りを確認しながら進む事二十分くらい。
……全然身体に疲れというものを感じる気配が無い。
「この体って一応人でいいんだよな?」
おかしくないか? 普通だったら足腰に疲れが来ても良い頃合だろ。どうなってんだこの身体?
「俺はヴァンパイアだから違う」
「そういうことじゃねーんだよなぁ……。そういやお前、日光大丈夫なの?」
「確かにな、どれ」
丁度開けた場所に出たオレ達。この場所は、くり貫いた様に木が生えてなくて、日光が直に降り注いでいる。
そんな日当たりの良い場所で、ソーエンは躊躇いも無く手袋を外し、透き通るような美しさを持つ白い手を日光に晒した。
そして、そのまま五秒くらい様子を見てみたけど……ソーエンは何のリアクションもしてない。
パーティUIを見ても全くHP減ってないしなぁ。
「問題無いようだ」
「お前本当にヴァンパイアかよ……」
確かにゲームの頃でも日光によるダメージやステータス低下はなかったけどさぁ……。
ゲームの設定まんま引き継いじゃってんじゃん。
「確か、お前から貸してもらったマンガで見たわ。日光を克服したヴァンパイアってデイウォーカーって言うんだっけ?」
「そうだ。……ふむ。決まりだ、今から俺の種族はデイウォーカーヴァンパイアに変更だ」
「ヴァンパイアから変更どころか、そもそもヴァンパイアなのかも怪しいけどな……」
さっき飯を食べながら町を歩いているときに、血を飲みたくはならないのか聞いてみたんだよ。そしたらコイツ、「不味そうだ」って答えやがった。血を欲しない、日光は大丈夫、コイツは肩書き上はヴァンパイアってだけの似非ヴァンパイアだ。
「ふむ。ならば俺の種族はデイウォーカーだ」
オレにヴァンパイアを否定されたからって、デイウォーカーヴァンパイアからヴァンパイアを抜くな。それじゃただの太陽の下を歩くものになっちまうだろが。
「大抵の生物はデイウォーカーだから。そんなことよりスキルや魔法のチェック始めるぞー」
これ以上このバカには付き合ってられない。予定していた本来やるべきことをやろう。
「了解した。まずはそれぞれ確認するとしよう」
「それな。こんなところで事前情報無しに模擬戦やったら、町の四方を平地にしちまうかもしれないし」
ゲームの頃の模擬戦は用意されたマップから選択して行うというものだった。そのマップではオブジェクトの破壊は無く、模擬戦に参加したプレイヤー以外に敵や生物は居なかったから存分に力を振るえた。
でも今はもうゲームじゃなくて現実なんだ。物は壊れるし、専用のステージなんて無い。だからオレ達は慎重にスキルの確認を行わなければならない。
お互いに攻撃が当たらないよう距離を取り、オレ達は確認作業へと入った。
* * *
慎重に事を進めた分時間は掛かった。でも、作業は順調に進み、行使するだけで危ないスキル以外は全て確認を済ませる。その上で、オレ達の持つ力は全て問題無く発動できることが分かった。
確認作業自体は終わったけど、お互い確認したことを踏まえてやってみたいことがあったから、まだ距離を取っている。
「おぉーすげー」
離れて何かやってるソーエンを他所に、オレは木陰に座り込みながら煙草を咥え、右手の指を見て感動していた。
オレの職業、叛徒には魔法の属性に縛りが無い。五大魔法の火・水・雷・風・土全てを使える。でも、どれだけ鍛えても威力は弱いし、超級以上は覚えられない。だから、実質死に要素に近い。
因みに、煙草の火を点けるときに使った<ローヒート>は魔法の中でも最下級魔法に位置づけられている。
一般に<ローヒート>はアイテムの着火くらいにしか使えず、<ローウォーター>は水鉄砲くらいしか飛ばない。<ローサンダー>はスタンガンのように使用して相手をスタンさせることくらいは出来るけど完全には止められず動きを鈍くするくらいだ。<ローウィンド>はまさにそよ風。<ローストーン>は小石を飛ばせるけど、そこら辺の石を投げたり、スローイングナイフを使ったほうが比べ物にならないくらい強い。
だからこの最下級魔法は、巷ではお遊び魔法なんて呼ばれている。
そのお遊び魔法が……まさか全部同時に使えちまうとは……。
オレの右手では、その五本の指にはそれぞれの属性の魔法を発動し、その状態を維持するという、ゲームではありえない現象が起きていた。
「やろうと思えば出来ちまうもんなんだなぁ」
これは遊んでいるわけではなく、可能性の研究をしているんだ。
ゲームでは出来なかった魔法の同時発動。これは面白い事を発見したぞ。
今すぐソーエンに自慢してやろう。アイツは魔法使えないから羨ましがるだろう。
オレはこんな研究をしてる、でもソーエンの方はというと、ガンナーは魔法を覚えずスキルも少ないため確認自体はすぐ終わっていた。だた、今後メインで使っていく魔法銃に関する調整が必要との事で、さっきから試行錯誤を繰り返している。
「おーい見てくれソーエン、これかっこよくね? 名付けてエレメンタルフィン……」
オレは実験の成果をソーエンに見せ付けるために顔を上げて立ち上がった……けど。その行いをとめてしまうほどの不可思議な光景を目にしてしまった。その光景を具体的に言うと、この開けた場所の中心でソーエンが発光していた。
あいつ……あんなスキル持ってたっけ? 全身で<ライト>使ってんの? 人間フィラメントじゃん。
……いや、そうじゃない。ソーエンが発光してるんじゃない。あいつの魔法銃が光ってんだ。
どうみたって普通じゃないだろこれ!! 絶対やベーじゃん!!
「何やってんだあのバカ!!」
驚いたオレは急いで煙草を消してアイテムボックスにしまいこみ――。
「おーい!!どうしたんだそれ!!」
――遠巻きから、わざわざ必要以上の大声を出して尋ねる。
悲しいかな、見るからに危なそうだから絶対に近づきたくは無かった。
「魔法銃は自分で魔力を込めれば撃てることが分かった」
逸れに対して、ソーエンは淡々と言葉を話し始める。
「なるほどー!!」
どうやら魔法銃を扱うには相応の技術が必要らしい。システムがやっていたことを自分でやる必要がある訳か。
「だが、少なすぎるとモデルガンみたいな威力しか出ない」
どうやらソーエンは撃ち出す魔力を調節して威力を調べていたようだ。
「それでー??」
「ありったけ詰め込んでみた」
どうやらアイツはバカらしい。
「ふざけんなァ!!」
幸い銃に上限があったらしく、パーティUIを見るとソーエンのMPを全部つぎ込んでいないことが分かった。でも1/3くらいは減ってる。
普通の魔法でも、このレベル帯の魔力を1/3も使う魔法なんて聞いたことが無いぞ!!
「今すぐ魔力を抜け!! 良く分からんけど絶対ヤバいってそれ!!」
「抜き方なんか分からん」
「だったら試すんじゃねぇよこのクソバカフード!!」
オレの視界では、銃身が発光に加えて電気みたいなものを発し始める。今すぐにでも暴発しそうな勢いだ。
どれくらいの威力があるかは分からないけど、あんだけ魔力吸ってんだから絶対に碌なことにはならないって嫌でも分かる。
「空に向けて撃て!! 一番被害でないから!!」
「重くて水平まで上げるのが精一杯だった」
「この貧弱筋力野郎がよォ!!」
魔力って重さがあるのか? いや今はどうでもいい。それよりもこの事態を解決させるのが先だ。
「オレも手伝うから待ってろ!!」
あいつが水平まで上げられたのなら、オレと協力すれば上に向けられるはずだ。
急いで駆け寄ってソーエンの腕の下に入り、身体全体を使って持ち上げようとする。
そして、オレとソーエンが力を込めていざ銃を空に向けようとしたとき……。
「「あ」」
一際大きな光が放たれた。閃光がオレ達へと降り注ぐ。
しゃーない、仕方ない一か八かだ。
生存本能なのかゾーンに入ったのか、オレは瞬間で思いついた方法を必死に実行する。
即座に銃から手を離し、代わりに地面に手を付けてありったけの魔力を消費する。後はなるようになれ!!
オレが運任せの場当たり的な手段を行使し、少し遅れて爆発が起こった。
せめて銃なら発射してくれよ……爆発って……。
オレは光に包まれながら、目論見が成功することをただただ祈って――――。
* * *
――――。
眩い光と果てしない衝撃で意識が飛んでいたようだ。でもオレの復活回数は減っていないし、HPは残っている。結構ギリギリだけどな。身体中めっちゃ痛いんですけど。軋みあげてるんですけど。
対してソーエンはというと……HPゼロ、つまり一デスだ。
オレはギシギシの体を起こして立ち上がり、辺りを見渡す。周りは高く分厚い土の壁に包まれていて、壁の内部、つまりオレが今居る場所はクレーターのように抉れている。
目論見は成功したっぽいけど、成功したせいで衝撃が壁の内側で炸裂、拡散、集束……とにかくめっちゃヤバイ事になったらしい。
そんでソーエンの死体は土の壁に綺麗に埋め込まれていた。手足が開いてXみたいなポーズをしている。、このままスクショをとっておきたいくらいだ。
「なんだコレ……。結構骨イッてるんだけど、何なら筋肉もイッてるし……良く生きてんなオレ」
オレは体のありとあらゆる場所を確認し、状態を把握する。コレ人として生きてちゃダメな部類の損傷だろ。さっきの衝撃で体の内側グスグスだよ。
えぇ……何で生きてるのこの体……。
「ふむ……あれが虚無の暗闇か」
オレが、体やクレーター内部の確認をしている間にソーエンの復活が終わったようで、壁に埋め込まれてるオブジェクトもといソーエンが声を出す。
「な、経験したく無いだろ?」
「ああ、あの暗闇は進んで身を投じるものではない。……おい、この壁は何だ、うっとおしい」
「お前が一体化してる壁? それね、オレが作った――」
「<アースウォール>か」
「ご名答」
魔法<アースウォール>。土属性の魔法で、地面や壁に土の壁を作り出す。
地面や壁に触れている状態なら、射程距離内のどこにでも自由に壁を作ることが可能だ。
この魔法は足場から目隠し、単純な壁、などなど利便性が高く、愛用してる魔法でもある。
「一度に作ることの出来る壁は一枚のはずだ。こんな周りを囲むほどの壁など――」
「へいへい。それより早く降りて来いよ」
「待て。体勢が悪くて力が入らん」
「オレの全力を注いだ壁だからな、そんな簡単に抜け出せるようなもんでも無いだろうし……丁度いいや。罰だ、そこで反省してろ」
こんな事態を引き起こしたんだ。面白オブジェクトとしてもう少し晒しものになってもらおう。周りにオレしかいないのが悔やまれるな。クラメン皆と見て笑い倒したかった。
せめて頭には残しておこうと思い、ソーエンの姿を傍観して脳のメモリーに焼き付ける。
メモリーに焼き付けた後は、HPとMPの自然回復を待ちながら煙草を吸ってゆっくりと待つ。しばらくして、もぞもぞともがいていたソーエンが地面に落ちてきた。
「クソッ、装備が土まみれだ」
立ち上がったソーエンは、装備に付いた土を手で払う。でも全部は落ちなくて、所々に汚れが残ってしまっていた。オレはコイツみたいに土に埋まってた訳じゃないけど、結局爆発に巻き込まれて倒れてはいたから、前面には所々土が付いていた。二人して土まみれだ。
やっとこさ抜け出したソーエンと、二人して装備を叩きながらクレーターの中心に座り、さっきの話しの続きを始める。
「<アースウォール>をたくさん使えた理由はこれだ」
オレはソーエンに対して、五属性最弱魔法を右手の指に同時に発動し見せ付ける。
「モーションや詠唱を必要としない、もしくは邪魔をしない魔法やスキルは複数同時に発動できるっぽいんだよ」
詠唱といっても魔法名をやスキル名を叫ぶだけだけどね。
ちなみに、最下級魔法は詠唱しなくても使うことが可能だ。
「ふむ……。良いな、厨二心が擽られる」
「かっこいいだろ? んで、それで、同じ魔法ならモーションも邪魔しないし詠唱は同じだ。そしてMPは注ぎ込むことで威力を上げることができる。だからありったけのMPを使ってこの土壁を作った」
そのせいでMPはほとんどすっからかんになったけどな。
「MPを注ぎ込む……魔法銃に魔力を込める際の感覚か」
ソーエンにも思う所があったようで魔法銃を握っていた右手に眼を落とす。
「多分それであってると思う。ぶっつけ本番だったから上手くいくか分からなかったけど、成功してよかったわぁ」
「それにしても、良くここまで綺麗なクレーターがよくできたものだ」
「これは偶然だ。壁が思ったより強固に作れたからこうなった。周りに被害が出なくてよかった」
「……悪かった」
ソーエンが、急に謝ってきた。まぁそれもそうだよな。無事に済んだとはいえ、結構危険なことをしでかしたんだし当たり前か。
「初めてだったんだからしゃーないだろ。幸い被害はないみたいだしな。オレも牢屋で考えなしにログアウトボタン押して心配かけたしさ。考え無しに銃に魔力を込めたバカヤロウのオオマヌケと、考えなし同士これでチャラって事で」
「…………………ああ。そう言うことにして置こう」
渋々認めやがったなコイツ……。
「とえりあえず隠蔽工作始めるぞ。この壁とクレーターはバレたらヤバイ」
受付さんに怒られそう。いや怒られるくらいで済むなら良いけど、また賠償問題になったら金の無いオレ達には払えない。
ソーエンもその事を理解してるから、喧嘩はせずに渋々認めたところはある。
「俺に任せろ。試したい技術がある」
ソーエンは立ち上がり、壁の上を見つめながらそう言ってきた。
「なら任せるわ」
今のオレはHPもMPもほとんどないから、コイツがやるってんなら任せちまおう。
オレも同じく立ち上がって、ソーエンと同じように壁の上を見て距離を測る。
高さ的には七、八メートルくらいか? ありったけのMPをつぎ込んだせいか結構高いな。ゲームの頃は精精二メートルくらいしかなかったのに。一側からしか見てないからまだ分かんないけど、分厚さも全然違うんだろうな。
「先に行く」
ソーエンはその言葉を残し、スキル<空歩>を使って飛んでいく。これは空中を五回まで蹴られるスキルだ。着地判定で回数はリセットされる。
それのスキルを使って、ソーエンはこのオレが必死に作った壁を軽々と越えるもんだから感心しちまうよ。
オレはオレで<壁走り>で壁を蹴って越える。
<壁走り>は足場さえあれば、蹴る瞬間にどの方向でも飛べるスキル。垂直に上る姿が気持ち悪いと評判だ。
どちらも職業の基本スキルで何の消費もなしに発動可能。
そのスキルを使い、ソーエンの後に続いて壁を飛び越え、そのまま外側へ落下しようとして気がついた。
……結構高くね?
アイツが軽々飛び越えたから、オレも何も考えずに壁を飛び越えたけど、これじゃ足場無いじゃん。<壁走り>使えないじゃん!!
後悔は先に立たないことを実感ながら、宙に投げ出されたオレの身体は、勝手に自由落下を始めてしまった。
「ソーエン、受け止めてくれ!! ヘルプ!!自然回復間に合ってない!!オレHPギリギリ!! 何なら体の中グズグズなんですけど!?」
先に着地していてオレを見上げているソーエンに救援要請を出す。先に下りてるなら受け止めて!!
「お前ならば問題ないだろう」
アイツ受け止める気一切無いじゃん!! もう地面すぐそこだよ!!
「アイビリーブマイボディィィイイイイイイイイ!!」
大声で死なない事を祈りながら、体勢を立て直して足に力を込める。
落下を止められるものは何も無い。そして誰にも止められない、どうにも止まらない。
普通の身体なら、この森に入って2回死んでいることになる。爆発と落下だ。どっちもソーエンが原因でな。
地面がオレへと急速に近づいて来る。気がつけばもう目と鼻の先だ。
「ッアオ!!」
思いっきり高いとこから落ちた着地の衝撃で奇声を上げてしまう。
奇跡的に足から着地出来た。そんで即座に体中のチェックをする。足は、腰は、身体は。
「…おぉ……また生き残った……」
「もういいか。壁を壊す」
感動しているオレを無視して、ソーエンが<空歩>で空へと跳んだ。そして壁と同じ位の高さまでまで上がったところで、二丁魔法銃を構える。
「オーバーリロード」
<オーバーリロード>とは……ん? そんなガンナースキルあったっけ?
「連射」
直後、ソーエンの目の前にあった土壁が、落下に合わせてどんどん破壊されていく。
連続して壁を撃ち抜き、着地した後は足元に残った壁の一部を蹴って壊した。
一枚目の壁を破壊し終わったソーエンは、オレのほうを見て自信満々そうな目をすると――。
「な」
――と、その一言だけをオレに向けて放った。
「どれに対しての『な』だよ。あとオーバーリロードって何?」
「魔法銃のMP過装填で思いついたスキルだ。過剰にMPを装填して威力を上げることができる」
ドヤ顔、というか顔が見えないのでドヤ眼をしながら説明をする。
コイツさっき爆発を起こしたくせに懲りてねんじゃねぇか?
「お前、『コイツさっき爆発を起こしたくせに懲りてねんじゃねぇか』と思ってるだろ。勘違いするな、細かい調整はまだだが、装填限界はもう覚えた。二度と爆発は起こさない」
コイツはピンポイントでオレの思考を当ててくる。
長い付き合いのせいで、ある程度ならお互いの考え読めるからなぁ。
「へいへい、なら他の壁もさっさとよろしくな」
「任せろ」
この感じなら多分大丈夫そうだし、他の手段も考えるのもめんどくさいから全部こいつに任せちまおう。
爆発の影響なのかMPを使い果たした影響なのかは知らんけど、なんかすごい疲れた。HPも減ってるし、自然回復に身を任せよう。
「オレは少し休憩してるから頑張れー」
そしてオレは木陰に腰を下ろし、煙草を吸いながら、ソーエンの証拠隠滅作業をのんびりと見守ることにした。




