28.別働隊の行動2/隙があればサボりたい4
所変わって服屋にて。
「どうだ」
随分前にナターリアから開放されたロロは、棚に置いて居あった蝶ネクタイを付け、シルクハットを被り、ソーエンに感想を求める。
「いいんじゃないか。この蝶みたいなマスクも付けてみろ」
「我の目は一つしかないのだが」
ソーエンとロロは暇を潰すように店内を物色していた。
というのも、ラリルレとナターリア、ニーアの話は留まるところを知らず、ひたすら終わりが無いようにずっと会話をしていて、付き合うに付き合いきれなくなったからだ。
ならば店を離れてどこかに行けば良い。と言う選択肢は二人にはなく、万が一、億が一、ラリルレの身に何か危険なことが起こったときに直ぐに動けるようにそばで待機していようと言うのが二人の合致した、無言の意見だった。
暇を持て余しながら服屋の時間は流れていく。
* * *
只今オレは、遠距離部隊の訓練場に居ます。
剣の訓練はオレが居ると皆が集中出来ないといった理由で追い出されました。
遠距離部隊の主な武器は弓だそうで、みんな的に向かって弓を射っています。弓の他にも魔法使いが居るようで、弓と魔法は隣り合って訓練しています。
だから隣の射撃場にはシアスタ達が居ます。
そしてオレの隣には。
「なんでキアルが居るんだよ。お前槍使いだろ」
何故かキアルが居た。
「俺は訓練全体を見回る役割だから、部隊の枠には囚われないの」
「さいですか」
弓の訓練は順番に射って交代交代に行うはずが、今回は特別にキアルが一レーンを貸しきってくれた。要らんお世話だ。
「はい、これ弓」
オレが的の前に立つと、キアルが持っていた弓をオレに渡そうとしてくる。
見るからにフツーの弓。
「これ弓じゃないとダメなの?」
ゲームの頃に弓を使わなかった訳じゃない。MP切れとかで攻撃手段が無かったときはほんのたまに使っていた。でも、どうにも上手く扱えなかったんだよなぁ。苦し紛れに使うことしかなかった。
やっぱスローイングナイフよ。あっちの方が手に馴染む。
「弓が必須って訳じゃないけど…あの的に当てんのは弓じゃないと無理でしょ」
キアルがそう言って目を向けた的は、ここから四十~五十メートルは離れていた。
「あ、魔法は禁止ね。こっちは弓の訓練場だから」
「的変わんねぇじゃん」
「あっちは魔法防御高めてあんの」
「ふーん、なるほどね。じゃあ、スローイングナイフならオーケーってことか」
普通のスローイングナイフなら物理攻撃だけだから問題ないだろ。
ボックスから一本取り出して的に向かって投げる。
「いいけど当たるわけって…おいおい、マジかよ」
そんな物が当たる分けない。といった表情をしていたキアルは、的に刺さったナイフを見て驚いた表情を浮かべる。
舐めるなオレの投擲技術を。どうだ、ど真ん中にぶっさしてやったぞ。
ふふん。見たかこの正確さ。スローイングナイフなら目を瞑ってても当てられる自信がある。
「この距離でナイフを真ん中に当てるとか、初めて見たね」
周りの弓兵も驚いてオレを見ている。オレ、凄いだろ?オレにはダガーとスローイングナイフさえあれば事足りる。
「驚いたか?オレに弓なんて必要ないんだよ」
「素直に驚きだね。ちなみに弓は?」
キアルがオレに弓と矢を渡してきたので、ナイフとの比較の為に見せてやるか。
矢を弓にセットしてっと。
で、引いて、狙いを定めて。放つ!!
みょん。っといった音と共に矢はヘロヘロと飛んでいって的寸前の地面に落ちた。
「な?」
「ふはーっ!!」
その軌道を見たキアルはまたもや大声で笑い声を上げる。
スローイングナイフの凄さを見て期待の眼差しを向けていた弓兵達からも、何やら押し殺した笑い声が聴こえる。
「なんだあの矢!!優柔不断に飛んだぞ!!」
「運命に逆らって自由を求めたんだぞ」
あいつは叛徒の名にふさわしい矢だったよ。
「ま、デモンストレーションはここまでにして、次が本番だ」
オレは、この後に凄いことをするべく今のヘロヘロ矢を見せたのだ。
落として上げる。そうすることによってオレの凄さを認識させてこの遠距離の訓練は終わらせる。
「見てろよ」
オレは八本のスローイングナイフを左右の指の間に出現させて構える。
そして、腕を振りぬきながら手首のスナップを利かせてそのナイフ全てを的に向かって投擲した。
一本一本の軌道は様々だが、ナイフが的にたどり着く頃には例外なく的の中心へと向かっていって「アイススティング!!」全てのナイフが吸い付くように的の中心に刺さった。
合計九本。百発百中。間に障害物があったって、これくらいなら狙って当てることなど造作も無いわ。
「そんな…っ!!」
「まさかあれ程とは」
「すさまじい。何て威力だっ!!」
周りから賞賛する声が聞こえてくる。
やれやれ、オレは目立ちたくは無いんだが、賞賛くらいは受け取ってやるか。
仕方なく声のする方に目を向けると……。
なぜか皆オレとは逆方向に目を向けていた。
「ん?」
皆どこ見てんだよ。
あっちは、魔法部隊が訓練してる方だよな?
騎士達の目は魔法部隊が使ってる的の方に向けられている。皆何を見てるんだろう?
一体何がオレへの賞賛を邪魔したんだよ。手っ取り早く訓練を終わらせるチャンスだったのに。
そう思ってオレも皆が見ている方に目をやると。
どデカイ氷の槍が的を粉々に破壊していた。
「あれ?私何かやっちゃいましたか?」
氷の魔法を放った主は、すっとぼけたような声を出して周りに尋ねる。
真っ白な姿と相まってまさに白々しい。
「うおおおおおおお!!すげええええええ!!」
「小さいのにやるじゃないか!!」
そのシアスタの言葉を皮切りにこの場にいる騎士達全員が盛り上がっていた。
忘れていた訳じゃないが、流石は氷の精霊。子供らしくない強力な魔法の威力だったのだろう。あいつ、下手な大人より魔法の威力強いかんな。
確かに凄いと思う。が、賞賛を受けて少し得意げになってる顔のシアスタが少し腹立たしいわ。何でオレのほう見てドヤ顔してんだよ。お前の強さは知ってんだからオレを見る必要ないだろ。
「俺は見ていたよ。イキョウの投擲も同じくらい凄かった」
キアルはオレの肩に手を置いて慰めるように言葉を紡ぐ。
「なんだろう。王国最強に褒められたのに全然嬉しくない」
決めた。今日の事は全てソーエンに愚痴ってラリルレに慰めて貰おう。
とぼとぼと歩きながら的に刺さったナイフを回収した後、キアルから魔法も見せてくれと言われた。
そういえば、キアルはオレが魔法を使えることを知っるんだよなぁ。
護送中に魔法を見せてしまったことを後悔しながらオレはトボトボと弓の訓練場を後にした。




